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RX-A1020

YAMAHA
RX-A1020 (AVENTAGE)

¥120,000(税抜)

発売:2012年9月上旬
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新YPAO搭載/VPSダイアログ調整ができるAirPlay対応“AVENTAGE”

【SPEC】●ch数:7.2ch ●定格出力:140W(6Ω、0.9%THD)/110W(6Ω、0.06%THD) ●HDMI:入力8/出力2 ●デコーダー:ドルビーTrueHD/DTS-HD Master Audio ●ネットワーク対応音声フォーマット:WMA/MP3/MPEG-4 AAC/WAV/FLAC ●外形寸法:435W×182H×432Dmm ●質量:15.1kg

※原則として製品発表時のデータを掲載していますので、内容・価格は変更されている場合があります。また、この製品データベースには生産・販売を休止したモデルの情報も含まれています。

テストレポート

ヤマハのAVアンプ上位機種“AVENTAGE”3機種が第二世代に発展した。今回はRX-A2020/1020の試聴レポートをまとめてお届けしよう。

●細部を見直した高音質設計

まずは製品プロフィールをまとめて確認していこう。ヤマハにおけるAシリーズ(AVENTAGE)の立ち位置は、普及帯の機種であるVシリーズにも共通の高音質・臨場感・操作性に、<ヤマハのクラフツマンシップ>が加わることにある。パワーアンプ部はアナログ構成を採用している。

A2020は9ch、A1020は7ch構成である。それぞれシリーズ第一世代の機構・主要部品を継承するが、それぞれに細部でブラッシュアップが図られている。例えばシリーズ全体では、内部配線が変わりZ系で初搭載したDACオンピュアグラウンド(D.O.P.G.)設計を採用した。DACはアナログオーディオ基板にグラウンドを落とすことでS/Nの向上を達成している。

機能面は大幅な進展を見せているが、その中でもっとも注目されるのが、A2020に新規採用されたハイレゾリューション・ミュージックエンハンサーだ。44.1k/48k非圧縮ステレオ音源(PCM、FLAC、WAV)をアンプのデジタル回路内で88.2k/96kにアップサンプリングしてハイレゾ処理する。本稿の後半でその絶大な効果もレポートしているので、ぜひご参照頂きたい。

音場補正機能YPAOには、積極的に部屋の一次反射を抑え込むよう改良された「YPAO R.S.C.」が搭載された。最大8箇所の計測結果を総合して補正精度を高めるマルチポイント計測も採用している。

次に音場関係。「シネマDSP」については、2機種とも3Dモードを採用している。また、A2020におけるVPS+ダイアログリフトとダイアログレベル(エンハンス)の採用も目新しい。前者はフロントプレゼンスを使用しない環境でセリフを5段階リフトアップする機能。スクリーンを高い位置に設置した場合や、L/Rとディスプレイ画面に対してセンタースピーカーが低い位置にあり音源と映像の中心が一致しない場合に有効である。後者はセリフの帯域をバンドパスフィルターで抜き取りエンハンスを掛けて効きやすくする機能だ。

そのほか、1次側トランスの電圧を切り替えコントロールし、消費電力を通常使用時の20%削減できる「ECOモード」も搭載。ECOモードにすることでやはり音質への影響はあるというが、例えば「ながら聴き」などのシーンにはちょうど良い機能だろう。また、スマホ/タブレット用の操作アプリ「AV CONTROLLER」がVer.3.0に発展し、タブレットでの表示が見やすくなったことで使い勝手もより高まっている。

●試聴レポート − 絶大な効果のハイレゾリューション・ミュージックエンハンサー

さてまずはA2020で、最も注目されるハイレゾリューション・ミュージックエンハンサーの機能から試してみた。この効果は想像以上に絶大である。

ソースはNAS内のWAV音源。44.1k/16bitの音源がハイレゾ・オンで88.2k/24bitにアップサンプリングされる。空間の広がりが全く異なることと、ジャズの場合シンバルの余韻がきめ細かく、ドラムスの打撃は引き締まった輪郭と芯がくっきり浮かび上がる。クラシックの場合、透明感を増し倍音表現が大幅に進展する。

2機種共通の新機能となるダイアログリフトは、先述のようにセンターchの音声と映像中心が一致しない場合に便利な機能だが、レベルを上げていくとサラウンドチャンネルからのクロストークが気になり出すので、リフトアップの効果が認められる適切なポイントを見つけてそれに止めるのがいいだろう。

●サラウンド表現の先鋭度はRX-A2020と1010で差が認められる

A2020/A1010の基本的な音作りについて、ヤマハは「中低域の量感確保に加えヌケのいい高域を狙った」と説明する。そのためにはアナログ方式のアンプとして電源部の強化が大前提だ。

今回はヤマハ東京事務所のスタジオと音元出版の試聴室の両方で試聴を行ったのだが、まずヤマハスタジオでの試聴の際はフロントプレゼンススピーカーの実機を使用した。オーパスアルテのBD近作ヴェルディ『マクベス』第一幕の魔女のコーラスを再生すると、雷鳴が後方の高い位置で第一波が轟き、その後波のように試聴室の天井伝いに音場全体に広がっていく。その効果は圧巻で過去どのシステムでも再現出来なかった不気味さである。

そして、音元出版試聴室の5.1ch環境でもそれに近い効果が得られた。電源の足許がしっかりしていないとこのように高く広い表現は出来ない。

なお、ブロックケミコンの容量がA2020とA1020では異なっており、定格出力のワッテージも両機の差は大きいため、サラウンド表現の鮮鋭度はやはり2機種で差が認められる。

映画作品は、『ドラゴンタトゥーの女』の終盤のカーチェイスのシーンを視聴した。YPAO R.S.C.による補正が精度を増し、部屋の固有の癖が抑えられていることを実感する。スピーカーの設置位置による帯域とレスポンスの凹凸がないため、犯人を追跡するバイクのエンジン音の蛇行する軌跡が鮮明で美しいS字曲線を描いて音場に焼き付けられる。音と映像が完璧に一致して小気味よい。

●2機種ともしっかり引き継がれているヤマハの魅力 − アコースティックソースへの強み

一般にAVアンプ製品の中で、アナログ音声入力を搭載しない製品が中級機種でも出始めているが、今回のA2020/1020は共に7.1chマルチチャンネル入力を装備する。

SACDの田部京子『ブラームス後期ピアノ小品集』(4.0chマルチ)を再生したが、素晴らしかった。さすがに楽器メーカーであるヤマハの製品だけあってピアノ再生に手抜かりはなく、響きが柔らかく重厚で音色に艶と輝きがある。

アンジェラ・ヒューイット『ベートーヴェン・ピアノソナタ第三集』は5.0chマルチだが、ピアノの低域から高域まで楽音がフラットなバランスで、高さ・深さという空間の奥行きを伴って現れる。ピアノの等身大再生というと、えてしてグランドピアノを眼前に描き出すスケール感の表現になりがちだが、このように細部を描き込んでいって響きを再現するのも等身大再生であろう。

ヤマハのオーディオはアコースティックなソースに強い。データに頼るのでなく楽器固有の音色と表現性の理解が、ヤマハのオーディオ製品の中に聴感上の経験として生きている。磨きぬかれた音楽表現・豊かな音色数はフラグシップZ系の領分として、本機の魅力は録音・演奏における“直截で誇張のない音”の追求にある。今回の試聴を通して、本シリーズが「表現者(AVENTAGE)」という自己のポジションを第二世代で確立したことを実感した。

(text:大橋伸太郎)

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