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ヤマハエレクトロニクスマーケティング
代表取締役 社長

中山二三夫 氏
Fumio Nakayama

 

お客様本意の
エクセレントカンパニーの
実現を目指していく


ハイエンドからエントリーゾーンまでの幅広い商品展開でホームシアター市場を牽引するヤマハ。同社のAV・IT事業本部から国内営業部が独立し「ヤマハエレクトロニクスマーケティング鰍ェ新たに発足した。10月1日から営業を開始した新会社の社長にはヤマハAV・IT事業本部国内営業部部長として活躍してきた中山二三夫氏。就任早々の同氏に新会社の方針や抱負を聞いた。

インタビュー ● 音元出版社長 和田光征

AVとITの専門家集団として
No.1の提案力と
問題解決能力を目指していきます

新しい枠組みで市場の変化に
フレキシブルに対応

―― 10月1日から新たにヤマハエレクトロニクスマーケティング鰍ェ立ち上がりました。まず、その狙いについて説明してください。

中山 今日の勝ち組は明日の負け組みという言葉があるように、世の中が速いテンポで大きく変化し、しかも環境が非常に厳しくなってきています。ヤマハが10年以上前に選択と集中を図ったホームシアター市場は、総需要が全体として拡大していく一方で、需要構造が大きく変化してきています。

そのようなホームシアター市場の中でNo.1戦略を継続していくためには、今まで以上に営業体制を強化していくことが求められています。競合に勝ちうる営業体制の構築、成長と収益体質基盤の確立、それからお客様本位のエクセレントカンパニーの実現の3点が大きなテーマになってきています。

そこで新しい枠組みを作ることによって、世の中の変化、市場の変化にフレキシブルに対応していくというのが今回の新会社設立の最大の狙いです。

―― 新会社では従来ヤマハ本体で行ってきたAV・IT関連機器のすべての営業を担当されるということですね。

中山 ルーター関連などで他社さんとのコラボレーションで商品開発を進めているものがあります。これについてはメーカーとしての機能が求められますのでヤマハ本体に残しますが、その他はすべて新会社に移行します。

アメリカやヨーロッパなどワールドワイドで考えると、以前から現地法人化しているわけで、そういう意味では、日本も同じような関係になったということです。

―― 新会社になって大きく変更される部分はありますか。

中山 営業形態の面では、土日営業の実施と受注センターの設立による土曜日受注を実現します。土日営業については営業マンの役割を本部との商談を主とするエリアマーケッター、オ店さんのフォローを主とするチャネルプロモーターの大きく2つに分け、チャネルプロモーターは毎土日営業、エリアマーケッターは需要期の土日営業を実施します。また土曜日受注は、まず需要月の毎土曜日と平常月の毎月末土曜日の受注・出荷を実施していきたいと思っています

また、新会社設立にあたっては浜松営業所を新設しました。浜松はヤマハの本拠地でもありますし、営業所の中に今回視聴室も設けました。

―― 最近は営業体制の中にレップ制度を組み込んでいろところもありますが、御社でもレップ制度を取り入れていくお考えはありますか?

中山 われわれとしてはレップ制度の導入は当面考えていません。現在の営業体制の強化を図っていきます。

メーカー販社としての役割や、新たに市場を創造していくための商品をどうやって売っていくかという面を考えることも必要です。

アメリカなどとは違って、日本ではまだレップ制度が社会的に確立されていません。そういう中で営業の生産性をどう高めていくかということも絡んできますので、課題としては捉えています。

これから本格的に進む
ホームシアターの普及

―― こだわり派に向けた単品コンポ、裾野層向けのシネマステーション、新しいライフスタイルを提案するミュージックキャスト、さらにデジタルアンプなど幅広い層に向けた商品が続々と投入されています。新会社の設立によって今後の商品戦略に変化が出ますか。

中山 基本的な路線は変わりません。以前から申し上げてきましたように、お客様をセグメントさせていただいて、それぞれのカテゴリーで、幅広いラインナップを揃えていきます。今回はハイエンドの領域ではDSP―Z9を、エンジョイ派の方にはDVDプレーヤー一体型のシネマステーションの120、200、それからDVDプレーヤー別売型S20を準備しています。また、こだわり派に対しては、今春発売した40番シリーズに続いて400番シリーズを導入するなど、シアターシステム、単品とも従来よりもさらに強化・充実していきます。

―― ホームシアター市場が裾野方向へ広ってきている中で、今後のホームシアター市場をどのように見通されていますか。

中山 昨年のJEITAの統計では一部の商品で前年を割れが起きていますが、ホームシアター市場の先行きについては大きな期待を持っています。

今年の12月から地上波デジタル放送が開始されます。さらに、2004年のアテネ五輪、2005年のワールドカップサッカーと、ホームシアターの動きを促進していく市場環境はこれから整ってくるように思います。その中でも特に地上波デジタル放送の開始は、5・1chを常識化させていくという点で、ひとつのエポックメーキングな要素になると思います。

ホームシアター市場の裾野が広がってきたといわれていますが、世帯普及率を見るとまだ数%でごく一部の方が楽しんでいるに過ぎません。それが、地上波デジタル放送が始まると、5・1ch音声を伴った番組がどんどん一般家庭に入ってくるようになります。

テレビも含めて、今はステレオが常識ですが、地上波デジタル放送によって、これからは5・1chが常識になっていくことになると思います。その流れの中でハードがどう変わっていくか、販売がどのように変わっていくかということです。

そういう意味で、今まではいわば助走期間のようなもので、これからがホームシアターの本格的な普及期に入っていくと考えています。

エントリーモデルでも
高音質化を徹底

―― HD映像と5・1ch音声の一般家庭への配信の開始という環境の大きな変化に対して、どのような戦略で臨んでいかれますか。

中山 地上波デジタル放送によって5・1chの音声が日常的に送り出されてくるようになることによって、ホームシアターの裾野層が飛躍的に拡大していきます。この層に対してはシネマステーションの充実とその長線上でのいろいろなバリエーションで対応していきます。

ただ、裾野層が広がるからといって従来の趣味嗜好の強いお客様がいなくなるわけではありません。むしろ、裾野層の広がりをベースに、ある一定のペースで増えていき、結果として全体が一回り大きいマーケットになると思います。当社では、従来からこだわり派の方々に向けた商品の充実を進めてきましたが、今後もこの層のお客様のニーズにきちんと対応できるような商品を出していくことによって、厚みのあるホームシアター市場を作り上げていきたいと思っています。

――ホームシアターの裾野の広がりによって、AVの知識は特にない方でもグレードの高いものを望まれるお客様も増えてきています。

中山 おっしゃるとおりで、すべてのお客様がエントリーグレードのものを求められているわけではありません。ヤマハでは「一桁違う・一味違う」モノ作りやマーケティング活動を展開してきました。今後、より一層この路線を明確にしていきます。

以前からヤマハはエントリーモデルでも非常に音がいいというご評価をいただいてきました。今回発表したシネマステーションでも、デザインと音の良さに加えて操作性のしやすさなどが非常に高い評価をいただいています。裾野の広がりに応じて、それらの商品でも高いグレードを実現していく。これがヤマハらしさの最大のポイントです。

ホームシアター製品では使い勝手の良さも大切な要素です。今回のシネマステーションでは新たにGUIを利用したリモコンを採用していますが、高級機に限らず普及価格帯のエントリーモデルでも「一味違う・一桁違う」差別化を強力に推し進めていきます。

音と音楽へのこだわりを核に
さらに高音質化を徹底

―― 高級機では新製品のDSP―Z9が大きな話題を呼んでいますね。

中山 おかげさまで内覧会では非常に高い評価をいただいています。デジタルアンプのMX―D1もそうですが、音質も含めて私どもが当初予想していた以上の高い評価をいただけました。

このような商品は決して量を売る商品ではありませんが、「一味違う・一桁違う」差別化された付加価値の高い商品が市場から求められているということだと思います。

―― DSP―Z9の特長を簡単に説明してください。

中山 ヤマハではホームシアターの歴史が長いので最近ではどちらかというとホームシアターメーカーとしてのイメージが強くなってきていますが、もともとはハイファイメーカーで多くの名機を産み出してきました。今までもピュアオーディオ用としての音質を重視してきましたが、今回発表した製品ではさらに高音質化を重視しています。

ヤマハのコアコンピタンスは音と音楽です。DSP―Z9は様々な特長が満載されていますが、中でもヤマハパラメトリックルームアコースティック・オプティマイザー(YPAO)という視聴環境最適化システムやDVDオーディオ、スーパーオーディオCDへの対応力の高さなどピュアオーディオとしての要素を非常に重視しています。

映画音声の再生では、YPAOに加えてHDシネマDSPが最大の特長です。これは従来のシネマDSPの臨場感をさらに高めたもので、YPAOと合わせて非常に高い評価をいただいています。また、THXUltraUにも準拠するなどすべてのフォーマットに対応しています。

とにかくすべての特徴を限られた時間で説明するのはとても無理なほど新機能を満載した自信作です。音質面以外にも、フルデジタルの映像信号変換/画質改善処理、直観的で判りやすいGUIによる操作性の向上など、フラッグシップ機の名を冠するに相応しいAVアンプに仕上がっています。

―― 今後のAV機器では、より高いオーディオ再生能力が求められていくということですね。

中山 DVDオーディオやスーパーオーディオCDのマルチチャンネルが登場したことによって、ピュアオーディオの世界もマルチチャンネルの時代に入ってきました。

先ほど地上波デジタル放送の開始はホームシアターにとってエポックメーキングな事だという話をしましたが、ハイファイオーディオにとってもマルチチャンネルが常識化していく契機になると思います。DVDでも音楽ソフトが大変充実してきています。今後はピュアオーディオ用、AV用ということではなくて、高音質のマルチチャンネルアンプがますます求められていくことになります。

―― そうなると今後ますますシステムスリューションを提案できるような売り方が必要になってきますね。

中山 例えばプラズマなどの映像ディスプレイを販売される時に、テレビということではなくてホームエンターテイメントというトータルシステムで提案していくことが必要だと思います。販売店さんではまだ映像機器とオーディオ機器をそれぞれスタンドアローンで売られているケースが多く見受けられますが、単品ビジネスはどうしても価格競争になってしまいます。

大変競争の激しいマーケットですから、その部分が突出してしまうとプラズマのような付加価値の高い商品でも付加価値がとれないということになってしまいます。マーケットを育てていくには、メーカーと販売店さんが一緒になってこの問題に取り組んでいくことが必要です。

IT技術とAVの組合せで
様々な音楽の楽しみ方を提案

―― ピュアオーディオとAVの融合が進む一方で、ITとAVの融合という流れも出てきています。先日発表されたミュージックキャストはそのITとAVを融合した新しいカテゴリーの商品として大変興味深いですね。

中山 ヤマハでは以前からIT分野でルーターを手がけてきました。IT技術とAVの融合商品としては、オーディオ用ハードディスク/CDレコーダー/CDR―HD1300が非常に好評をいただいています。今回のミュージックキャストはハードディスクレコーダーと無線の技術を結びつけて手軽に家の中でいつでもどこでも好きな音楽を楽しめるようにしたもので、ユビキタス生活音楽派に向けたユニークな商品として大変注目されています。

今回のミュージックキャストも含めて、今後、ヤマハが持っている様々な技術を組み合わせることによって、もっといろいろな形での音楽の楽しみ方を提案していきたいと思っています。

―― 様々なお客様に向けた提案をしていくことによって、AV市場を大きく花開かせていこうということですね。

中山 新たに発足したヤマハエレクトロニクスマーケティングという会社を、様々なお客様のこだわりに応えられる専門家集団にしていきたいと思っています。 AVについてはホームシアタージャンルのNo.1の知識、ノウハウ、提案力。ルーターについてはSOHO、ソリューションビジネスでのNo.1の提案力と問題解決能力を目指していきます。

新会社の最大の目標はお客様本意のエクセレントカンパニーの実現です。マーケットに密着することによって、販売店の皆様方と一緒になってお客様の視点に立ったお客様本位の「一味違う・一桁違う」営業活動を強力に展開していきたいと思っています。

 

◆PROFILE◆

Fumio Nakayama

1947年3月1日生まれ。東京都出身。中央大学法学部卒業後、1976年日本楽器製造梶i現ヤマハ)入社。東京・仙台営業所の営業職から本社営業課を経て1986年横浜営業所長。その後、東京営業所長、名古屋事業所長を経て、1999年国内営業部長。2003年10月 ヤマハエレクトロニクスマーケティング鰍フ設立に伴って代表取締役社長に就任。現在にいたる。