トップインタビュー パイオニア(株) 徳田敏夫 氏
プラズマとDVDを中心に インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 商品の本当の楽しさや使い易さを 営業にとっての販促の基本は ―― 最初に五輪商戦で沸いた上半期を振り返っていかがですか。 徳田 上期はほぼ計画通りの数字を達成できました。特にアテネ商戦の6月、7月は新製品の導入も含めてプラズマもDVDレコーダーも大変好調でした。当社の国内営業部始まって以来の売上げを達成できたのではないかと思っています。昨年は8月に旧製品の処分をして9月に新製品を導入しましたので、前年比はあまり意味がありませんが、この6・7月は2倍以上と大幅に伸びました。 ―― 今年の夏商戦では特にDVDの伸びがすさまじかったですね。 徳田 DVDレコーダー市場はわれわれが当初予測した年間380万台を上回ることは間違いありません。420〜430万台はいきそうです。オリンピック商戦のあと一時落ち込みましたが、すぐに回復し、その後は昨年の2・5倍程度の実販で推移しています。薄型テレビとDVDレコーダーは今後さらに伸び続けていくことは間違いありません。 ―― そのためには商品面での強化だけでなく、営業面での工夫も求められると思われますが。 徳田 以前の営業の販促策は法人さん単位でのタイアップが中心でした。もちろんこれも大切ですが、店舗を中心とした販促活動をしっかりやっていかないとセルインはできてもセルアウトにはなかなかつながりません。 ―― それが「核店千店構想」ですね。 徳田 当社には人・モノ・金で大手さんほどのパワーがありません。限られた力で実販を上げていくためには、営業面でも選択と集中を進めていく以外に方法はありません。そこで全国で千店のお店と緊密なコミュニケーションをとって、商品の勉強会や販促活動などの販促パワーをそこに集中的に注ぎ込んでいこうということで「核店千店構想」をスタートさせました。 ―― それには売りの現場に密着した営業体制が必要になってきますね。 徳田 これは本来パイオニアが得意にしていた方法です。それがこのところ少し足らなかったように思います。量を売ることももちろん考えなければいけませんが、パイオニアの提案をきちんと受け入れていただける店舗を作っていかないといけません。 期待の声に応えいよいよ登場 ―― 下期の重点商品についてきかせてください。 徳田 下期の商品面での最大のテーマはDVDレコーダーです。この年末に向けて、パイオニアが強みを持っている高級機の分野で強力な新モデルを投入します。お客様からはパイオニアの高級機に対して大きな期待が寄せられています。いよいよそれがこの年末に向けて出てきます。工場に対しては年末商戦に向けて十分な量を作るように指示していますので、欠品で販売店さんにご迷惑をかけることはないと思います。 ―― 高級機とともに下位機種も新モデル化されますね。 徳田 DVDレコーダーをお求めになるお客様の多くが求められていることは、「使いやすさ」と「簡単さ」です。録画機ですから当然クオリティーの高さは求められますが、使いづらいものはお客様に受け入れていただけません。特に女性や中高年の方は、使い方の易しさが求められています。 ―― プラズマでも新製品を投入されますね。 徳田 従来は43V型と50V型の2サイズでしたが、10月下旬に61V型の新製品を投入してラインナップを拡大します。これはモニタータイプということもあって、どちらかというと専門店さん中心で売っていただく商品です。主力の43V型・50V型では、今年の夏に投入した既存の製品でこの年末を戦っていきます。他社さんも新製品を出されていますが、画期的なダイレクトカラーフィルターを採用した当社の商品は市場での評価が非常に高く、まだまだ負ける気はしません。 「S―A77シリーズ」を皮切りに ―― オーディオと違って映像の世界ではニッチ戦略は難しいと話されていました。 徳田 オーディオと違ってテレビや録画機の世界ではライバルメーカーが多く、しかもその規模は巨大です。その中で存在していくためにはパイオニアらしさとシェアの確保を両立していかなければいけません。この点が非常に難しいところです。競合メーカーさんでは、長年にわたってテレビ事業を展開されてきています。テレビは家庭の中心にある商品です。家族全員がそのブランドを見続けていますので、自然に愛着を持つようになります。ですからそのテレビによほど大きな不満がない限り、次もまたそのブランドの商品を選ぶことが多くなります。 ―― ホームシアターへの取り組みについてはいかがでしょうか。 徳田 パイオニアにはプラズマもDVDレコーダーもオーディオもあります。本格的なホームシアターを提案できる数少ないメーカーとして、ホームシアター商品をさらに強化していきます。中でも今後最も注力していきたいと思っているのが単品コンポの分野です。本格的なホームシアターを楽しむためには、プラズマのクオリティーとレコーダーのクオリティーにあったコンポーネントが必要です。ピュアオーディオも含めて、単品コンポの市場は極端に伸びることはないと思いますが、一定の市場規模は存在し続けていくことは間違いありません。 プラズマと高級DVDで ―― 大画面テレビが絶好調な中でエントリーゾーンのホームシアターが期待されたほど動いていません。 徳田 当社のHTZ―300DVと500DVで行ったホームシアターの提案は大変好評でした。特にHTZ―500DVはコードレスリアスピーカーが人気を呼んで大変ヒットしました。その結果、当社のシェアは高まりましたが、市場そのものは当初期待していたほど拡大しませんでした。 ―― 新しい商品ではお客様に実際に体験していただける場が大切ですね。 徳田 本当の楽しさは実際に体験していただかないと、口頭では伝わりません。特にある程度年齢の高いお客様は使い方を質問することに強い抵抗感があります。お客様に製品の楽しさや使い易さを理解していただくには、実際に体験していただくのが一番です。そこで「ユーザーさんを集めて、新しい商品に対する啓蒙活動をやったらどうですか」というご提案をディーラーさんにしているところです。 ―― 年末商戦の見通しと抱負をお願いします。 徳田 上期の好調な勢いにさらにドライブをかけて、年末商戦では国内営業部始まって以来の売上げに挑戦していきます。昨年は地デジチューナーの未搭載などで大変苦労しましたが、今年はそういうことはありません。中心になるのがプラズマとDVDレコーダーです。プラズマとDVR―920H―Sや720H―Sをセットにした訴求をしてシナジー効果を狙っていきます。
◆PROFILE◆ Toshio Tokuda 1948年1月23日生まれ。山口県出身。71年3月神奈川大学経済学部貿易学科卒業。71年4月パイオニア鞄社、87年10月宇都宮営業所所長、89年7月札幌営業所所長、92年7月東京中央営業所所長、96年4月東京支店HE東京販売部長、99年4月HEC国内営業部東日本販売部長、01年8月HEC国内営業部次長、02年7月HEC国内営業部長。現在に至る。趣味は愛犬とともに過ごすこと |