トップインタビュー

山本喜則 氏

ソニー
業務執行役員
ホームエレクトロニクスネットワークカンパニー
オーディオ事業本部本部長

山本喜則 氏
Yoshinori Yamamoto

A&Vフェスタを通して
お客様に楽しさを訴求し
AVファンの裾野を拡げる

コンセプトを明快にしお客様に立脚した発想で、年々、進化を遂げ成功を収める新生「A&Vフェスタ」。3回目となる2005年も多くのお客様にオーディオ&ビジュアルの楽しさを訴求し、さらなる飛躍を目指す。市場環境が整い、マーケットに明るい光が差し込む今、いかにチャンスと捉え掴み取るか。ソニーの山本喜則氏にA&Vフェスタ2005実行委員長としてのお話を伺った。

インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征

インターネットを強化し
情報を上手に発信することで
段階的に集客数を増していく

ライフスタイル訴求型の
総合的な展示を目指す

―― 昨年のA&Vフェスタでは、入場料の無料化、ライフスタイルをテーマにされるなど新しい試みをいくつか出され、成功裡に終りました。いよいよ2005年に向けてキックオフされましたが、今年のテーマと全体の概要についてお聞かせください。

山本喜則 氏山本 昨年はライフスタイルの提案ということをサブテーマ的に進めてきましたが、今年はさらにそれを加速し、全体としてわかりやすく感じられるような展示会にしたいと思います。より良い方向に向かうと思いますので、期待していただきたいですね。
大きなテーマのひとつとしてホームシアターが挙げられると思いますが、いかに身近にしていくかが大切です。ホームシアターの場合は部屋の片隅にというわけにはいきません。普通の家で最も実現しやすいスペースはリビングルームになりますから、それが明快にわかるようにリビングルーム寄りのホームシアターの楽しさを伝えたいです。さらに誰もが受け入れやすい姿であることもポイントに、しっかり見せていきたいと思います。

―― 昨年、入場料が無料になりましたが、家族連れ、カップル、友達同士など来場者の層を大きく拡大できたのではないでしょうか。

山本 ちょうどライフスタイルというテーマと入場料無料ということがうまく合致したと思います。実際、奥様が積極的にAV機器を購入してくださるケースは少ないと思います。ホームシアターをやりたくても家族をいかに説得するかが問題ですから、家族連れや女性の姿が多くなったことは狙い通りだったと思います。そういう意味で、昨年、来場者の層が広がりよかったと思います。

―― 今年の会場の規模はいかがでしょうか。

山本 昨年、2階は主に講演会を中心に使用しました。今年は2階も積極的に使いますので、展示スペースはかなり広くなる予定です。1階の大きな会場ではライフスタイル提案ということで大規模な展示を中心として見せていきますが、2階では趣味性の高い特徴のあるメーカーさんにもご出展いただき、しっかりと音を聴かせるような展示をしたいと思っています。いろいろなメーカーさんを集めて総合的な展示をしようと思います。
ライフスタイルということではホームシアターが中心になっていくわけですが、オーディオとのバランスをとる必要もあります。映画を見るという楽しみ、音楽を聴くという楽しみを、もっと知って欲しいです。
音楽を聴くということではデジタルオーディオプレーヤー、携帯電話の着うた等が広がっていますので、音楽を聞くチャンス、要求そのものは非常に増えてきています。それをいかにいい音で聞かせるか、上手く導いていきたいという狙いもあります。映画に興味を持っている人をホームシアターへ、デジタルオーディオプレーヤーなどで音楽を好きになった人はオーディオファンへ、裾野を拡げていきたいですね。


展示会が良くなれば出展数も
増え、いい方向に回り出す

―― 出展社の拡大について、今年の見通しはいかがですか。

山本 A&Vフェスタも復活してきたと思います。先日、説明会を行いましたが、多くのメーカーさんにお集りいただきました。出展社数も今年は増えることが予想されます。小さなメーカーさんも増えますし、昨年は出展されなかった大手メーカーさんも今年は出展されます。
昨年まではA&Vフェスタとして新たにスタートして1回目、2回目ということもあり、メーカーさんとしては様子見ということもあったと思います。しかし、A&Vフェスタに大きな流れが戻ってきた、大きな力になると捉えていただけるようになりました。昨年は出展を迷っていたメーカーさんが今回はすぐに賛同してくださったり、出展されていなかったところも前向きに考えていただいています。展示会が良くなれば出展数も増え、さらに展示会そのものも良くなってくる。いい方向に回り出したと思います。そこが非常に大きいですね。
昨年は新しいお客様にも多くご来場していただきましたが、コアなお客様や趣味性の高いお客様にも、ご満足いただけるような展示も工夫していきたいと思います。比較的小規模なメーカーさんにも出展していただきやすいよう、条件、場所等しっかり配慮していきます。また、出展者さんからもアクセサリー等の販売をされたいというご要望もいただいておりますので、そういったこともできる方向で話を進めているところです。ショウとして広がりや厚みが出てくると思います。

―― 今年も出展者さんとの間で全体のテーマ、ブースづくりについてご相談されているのですか。

山本 いろいろな分科会に別れて進めています。この分科会は各メーカーさんが自由に参加でき、自分達で自分達が展示したいようなテーマを自分達の意思でつくっていくことができます。もう実際には始まっていて、4月からは本格化します。その分科会にぜひ参加していただき、一緒にやっていきたいですね。

―― 非常に悩ましい問題のひとつとして今、オーディオ関係のショウが3つに分かれています。

山本 その点につきましても様々な話し合いがされています。気持ちとしてはとにかく一緒にやりたいという話はしています。どこか一箇所に集り、そこに全部揃っているのがご来場いただくお客様には一番理想だと思います。ただ、タイミングとか費用とかいろいろと難しい問題もあります。長い眼で見れば可能だと思いますので、その一環として今度のA&Vフェスタでは、そういうところに対しても大きく門戸を開いていきます。先々には、一緒に集まれる流れを少しずつつくるための第一歩だと思います。とにかく来場者がどう思うかを中心に考えるべきですから、そういう方向に持っていきたいと思います。


インターネットに力を入れ
来場者数の増加を狙う

―― もうひとつの課題である集客策についてはいかがでしょう。まだ認知のしていただき方が弱いように思いますが、今年はさらにどういったことに取り組まれていきますか。

山本 駅貼り、電車の中吊り等、従来通りのことは全て行いますが、今年はネットでの告知もより強化していきます。インターネットで内容を見て、ご来場いただくお客様が多くなっています。ネットの影響力は大きいですね。より強く早く、早くというのは早い時期からということも含め、盛り上げていきたいです。
情報を出すことでお客様が集まってきます。何が目玉で、何がおもしろいのかという情報が、ある程度始まる前にわかることも重要です。事前の情報の出し方をどうするかはもちろん、展示会が始まってからでも集客はできます。初日にどれだけ今年のショウが魅力的かを上手に発信できれば、会期は何日かあるわけですから、お客様を集めることができます。2段階の集客ということも工夫したいですね。

―― 来場できない人に対しても情報を送り出さないといけません。

山本 会場へ行けなかった人でも、ある程度インターネット等でバーチャル的に体験できるといいですね。来年は実際に来場してみようということにも繋がっていきます。来場者を増やすのは直近の課題でもありますし、ショウを通してオーディオ、ホームシアターというものに対して興味を持っていただいて、購買まで動く人をどれだけ増やしていけるがポイントになっていくかと思います。

―― 昨年、理科の時間に先生と来場した学生さんの姿もみられました。これも非常に良かったことですね。

山本 横浜市内の多くの学校にポスターを貼ってアピールしていますので、そういうルートも大切にしたいと思います。

―― 今のお客様に来ていただくこと、次の世代を育てること。非常にコンセプトが明快になりました。

山本 オーディオフェアの歴史は長く、とにかく毎年開催するものだということで事務的に行ってきたために、コンセプトが不明確になっていました。いったん休んだ間に何もしていなかったわけではありません。むしろ休んだことにより、毎週メーカーが集まり、活発に議論してきました。やるべきかどうか、やるならどういうふうに開催したらいいのか。そこで、再スタートを切れたことは、内容的にもよりコンセプトが明快になったことを意味していると思います。


オーディオの楽しさを体験させ
次の世代を育てていきたい

―― 将来に向けてということでは昨年、工作教室も好評でしたね。

山本 昨年はメインの場所で行い、全体的な雰囲気も良くなりましたし、入場料無料ということで、親子連れで来たお子様にもたくさん参加していただき良かったと思います。自分のつくった機械が動いたり、音が出たらうれしいものです。オーディオが好きな大人なら誰もが経験した、まさに原点になっていることではないでしょうか。今のお子様はなかなかそういうチャンスがないので、ぜひ味わって欲しいという思いもあり、より充実させていきたいです。工作教室をやっていることをどうアピールできるかも課題です。今のお客様、将来のお客様にオーディオの面白さを体験していただくためにも、ひとりでも多くの人に参加していただける工夫もしていきたいです。
それから昨年は著名な方に講演をしていただき、とても好評でした。もちろん評論家の先生やエンジニアの方のお話も興味深いのですが、テレビで普段見ているような人がご自分の趣味として話してくれる内容は、とても身近に感じ、これからやってみようというお客様には非常におもしろい話だと思います。さらに充実させて楽しいものにしていきたいですね。

―― ホームシアターやオーディオの導入に対する心理的なバリアを低くすることも大切ですね。

山本 いかにライフスタイルに溶け込むか。リビングルームということは先ほど申し上げましたが、ベッドルームであったり、キッチンであったり、様々なところで上手に音楽が聴けるような雰囲気等を含めて、全体を創出していくことが大切です。ライフスタイルを提案するのに横浜は相応しい場所でもあると思います。最初は遠いというご意見もありましたが、アクセスもよくなっています。また、遠方からでも来たいと思っていただけるようなショウにしていかないといけません。


商品の繋がり、将来への道筋を
いかに提示するかが課題

―― マーケットとしてはオーディオに対して、光があたりつつありますし、ホームシアターという点でも大画面が家庭の中に入ってきて、環境そのものは、整ってきていますね。

山本 そうですね。短期的に考えればDVDレコーダー、デジタルオーディオプレーヤー、フラットディスプレイテレビ等が市場の中心です。お金は限られていますから、お客様をとられているという見方もありますが、それは全て先に繋がるものなので、必ず次を考えていくことが必要です。その道筋をどう提示できるかが、大きな課題だと思います。
先に申しましたが音楽は聞くチャンスが非常に増えていますし、映画も上向いていると感じます。観客動員数の記録をつくっている作品もあります。音楽の好きなお客様、映画の好きなお客様は増えているわけですからその人たちをその先へと導きたいですね。ホームシアターがはやるには映画がはやらなければ話になりません。携帯でも何でも音楽を聴くのに音楽が嫌いだったらどうしようもありません。好きということが基本になりますから、マーケットの雰囲気としては良くなっていますし、これからチャンスがくると思います。

―― それが訴求できた時にA&Vフェスタが大成功ということになりますね。

山本 ピンチと思うか、チャンスと思うか、私は大きなチャンスだと思います。

―― A&Vフェスタ2005実行委員長としてメッセージをお願いします。

山本 昔は怎Iーディオフェアモデル揩ニ呼ばれましたが、ショウに間に合うように商品開発を行ってきたものです。秋商戦に繋がるようなかたちで、ショウでまずデビューを飾る。そうした新商品を各社ひとつ以上はつくって欲しいと思います。少しでも商品化を早め、A&Vフェスタに間に合わせてデビューをし、商戦を迎えるという流れをぜひ考えて欲しいですね。そしてそれをいかにきちんとお客様に訴求するか、それが自ずとライフスタイルの提案に繋がっていくと思います。
また、A&Vフェスタは大手メーカーが中心であるというイメージもありましたが、マニアであるとか、オーディオが本当に好きな人に訴えられるような、特徴あるメーカーさんにとっても出展しやすくなっていますので、ぜひA&Vフェスタをうまく利用していただきたいと思います。

◆PROFILE◆

Yoshinori Yamamoto

1949年5月14日生まれ。神奈川県出身。1973年ソニー潟Xテレオ事業部入社以来、テープレコーダー、カセットデッキ、DATフォーマットを立ち上げ、システムステレオなどホームオーディオ美辞根雨を一貫して歩み、99年HNCホームオーディオカンパニープレジデント、03年業務執行役員に就任。現在に至る。趣味はオーディオ鑑賞、コンサート観劇、ゴルフ。

2000年日本オーディオ協会理事、2002年日本オーディオ協会副会長に就任。A&Vフェスタ2003副実行委員長、2004年、2005年は実行委員長を務める。