Special Interview 2

西野 司氏

(株)AVC Technology Japan
代表取締役

西野 司
Tsukasa Nishino

矢野間 也寸志氏

(株)AVC Technology Japan
取締役/COO

矢野間 也寸志
Yasushi Yanoma


日本発「シグネオ」成功へ
徹底した品質管理体制

―― 日本でもDAPが大変盛り上がってきていますが、今後の動向をどのようにご覧になられますか。

矢野間 也寸志氏矢野間 今年は400万台とも500万台とも言われていますが、その中身を見ると、「アップルのiPod(iTunes/AAC)」「ソニー(ATRAC3)」「その他(WMA)」という三極化の現象が見られます。iPodの音楽配信が国内でも始まり話題を集めていますが、約8割が洋楽なんですね。今後、音楽配信サイトとどのようにパートナーシップを組んでいけるかというのもテーマのひとつとしてあげられます。当社でもそれに対する答えを、年末くらいまでにはきちんと出していきたいと思います。
 すでに、価格競争が激しく、倒産するところも出てきています。日本は「その他」に多くのメーカーが名前を連ねていますが、その中でどれだけのシェアを取ることができるか。年末には10%くらいは獲りたいと思います。
 もうひとつあげられるのが、メーカーの二極化と減少化です。今までの商社のように、中国でつくられた商品を単に持ってくるだけでは、非常に厳しくなっています。さらに、これだけ市場が伸びてくると、ある程度の資金力がないとやっていけません。これは資本力の問題で、単純に400万台市場なら、500〜700億円の規模となり、そこで戦い抜くには、まず部品の代金として15億程度は必要になってくる。小さな商社ではむずかしと思います。シェアをとるのは厳しいし、しかも、量をつくらなくては価格は下がらないということで、下位グループはますます厳しくなると思います。
 AVCは自社生産・自社調達ということで価格対応力はありますので、それを生かすためにも、早期にシェア10%を達成したいと思います。

西野 年末にかけて大きな淘汰の時代になると思いますね。

―― さきほどiTunesの話がありましたが、市場に対するその影響をどのように見ていますか。

矢野間 現時点では、DAPに直接結びつくような影響はあまりないと思います。価格も、安くなったと言っても、150円、200円というレベルでは、まだ、加速するという感じにまではならないと思います。後ろに付いているのはレーベルですから、どの配信サイトでも、曲数を揃えようと思えば揃えられるわけです。今年の年末にかけて、どこのサイトと、どう組んで、どうプロモーションしていくかということがきちんとできれば、iTunesに対しても十分対抗していけるのではないかと思います。
 来年には、定額制のサービスが日本でも始まろうとしています。インターネットや携帯電話の例を見ても、そこをしっかりと押さえていきたいと思います。WMAですから、新しいDRMに対応している商品をどんどん出し、定額制にフォーカスをあてた展開をしていきたいと考えています。


モバイルオーディオを
ホームオーディオに取り込む

―― DAPのマーケットは、各社が色々な切り口から商品を投入し、大混雑の様相を呈しています。その中で、シグネオの国内マーケットにおけるブランド戦略、商品戦略をお聞かせください。

矢野間 ブランド戦略で言えば、これはCIの部分でもありますが、例えば基調のカラーにはオレンジを使う。それを、交通広告や雑誌広告でも徹底して大量に行っていますし、店頭においても同様なプロモーションを展開していきます。
 商品戦略としては、「ユニーク・フォー・ライフ」がキャッチフレーズで、例えば、女性専用の商品、世界で一番薄い商品、HDDで世界で一番小さな商品といったものを出していきたい。デザインに特化した商品を出していくことも戦略のひとつ。デザインの戦いにもなっていますので、とにかくユニークな商品を出し続けたいですね。
 キリンビールとのコラボレーションでは、世界的デザイナーであるマーク・ニューソンがデザインしたデジタルオーディオプレーヤー1万台を、同社の「キリン氷結」の販促キャンペーン向けに提供します。
 また、音楽配信サイトと協力・提携をして、マイクロソフトのDRMに特化し、「マイクロソフト(Windows Media Player)を使うならシグネオ」ということで、ユニークなデザインを揃えたシグネオの商品の中から、お客様の一番好きなデザインの商品を選んでいただくような販売戦略をとっていきたいと思います。

―― DAPのユーザー層も拡大していますが、シグネオではどの層を狙ってブランディングしていくことを考えていますか。

西野 司氏西野 層としてはかなり広くなると思います。ただ、若い人でも、ある程度ものを知っているような人、それから、中年層や女性層に対し、中級以上のミドルからハイの部分において、デザインを含めてユニークな商品を出していけば、かなりのポジショニングはできると思います。

矢野間 家電メーカーさんも各社、まだ「これだ!」というものは打ち出せていないように思います。

―― 日本市場の場合には、携帯電話をDAPのライバルとして見る向きもありますが、この点についてはいかがですか。

矢野間 それについては反対にしていきたいですね。つまり、携帯電話というのは多機能型で、テレビも見られる、ラジオも聞ける、カメラも撮れる、音楽再生もできる。一方のDAPは音楽再生に特化していきます。大きさも、携帯電話が多機能化でどんどん大型化していくのとは反対に、どんどん小さくしていくことを考えています。

西野 我々が考えているのは、DAPをポータブルオーディオという世界の中に閉じ込めておくのではなく、ホームオーディオやホームシアターとコラボレーションを組むような形で、市場をもっと拡大していきたいと考えています。我々が持っているワイヤレスや高音質の技術を生かし、ホームオーディオやホームシアターに我々のDAPを加えることでどんな新しい楽しみ方ができるのか、そんな提案に力を入れていきたいと思います。

矢野間 PCを持っていても、未だにCDを買ってきて、ミニコンポでMDに録音をして、ポータブルMDで音楽を持ち歩くという人は少なくありません。こうしたシーンでも、ミニコンポを進化させた新しい形を提案していきたいと思います。

西野 モバイルオーディオの世界をホームオーディオに完全に取り込んでしまわないことには、外ではこれ、内ではこれというのは、非常に無駄だと思います。両方をうまく取り込むような商品企画を、今後創っていかなければいけないと思います。


音への関心が高まる中
AVCがそれに応える

―― 日本のオーディオが低迷する中、6月にJEITAのオーディオ部門の売上げが久し振りに前年を上回りました。そのけん引役がDAPです。これには色々な見方があるようですが、私は、オーディオ製品に対し、お客様が手を出し始めたと見ています。そうして、次の時代のオーディオを創造していく上で、それを形にできる力を持つのが御社ではないかと思います。

西野 オーディオの専門家、DAPの専門家が集まった集団ですから、新しい製品、ユニークな製品をつくっていかなければいけないと考えています。

矢野間 iTunesが日本に上陸してあれだけ話題を集めたことは、音楽配信を日本市場において認知させ、その市場を開拓したという意味では市場に追い風が吹いていると言えます。オーディオの世界、DAPの世界、PCの世界をどのように融合させ、どういう商品を出していくのか。ちょうどいま、そうした話も進めているところで、2006年には、その答えを出すことができると思います。

―― 心強いのは、アップルストア等のお客様の購買行動を見ていても、周辺のスピーカー等を一緒に買っていきます。ヘッドホンも大変よく売れている。部屋で聴きたい、もっといい音で聴きたいという要求が出てきていることは、大変頼もしいことではないかと思います。そうした声に応える周辺商品に対する取り組みも、大いに期待されますね。

西野 年末にかけて、ワイヤレス技術を使用した、ホームオーディオとコラボレーションを組めるような商品の発売を予定していますので、ご期待ください。また、新しいビジネス展開として、シグネオブランドではDAPにとどまることなく、総合オーディオメーカーに近いところまで商品分野を拡大していきます。
 それから、さきほどキリンビールさんとのお話が出ましたが、そのようなコラボレーション企画や、自分たちの持っている技術を生かしたODM(Original Design Manufacture)の展開も積極的に進めていきたいと思います。

―― それでは最後に、販売店に対するメッセージをお願いします。

矢野間 情報発信等も活発に行いどんどんユニークな商品を出して参りますので、ご拡販をお願いします。