(株)マッキントッシュ・ジャパン 稗田 浩氏 マッキントッシュブランドの偉大な価値や人間性の魅力を ピュアオーディオの最高峰に位置付けられるブランド、マッキントッシュが、D&Mの日本法人マッキントッシュ・ジャパンとして今年4月に再スタートを切った。オーディオファイルだけにとどまらない、さらに幅広いファン層の獲得に向け、意欲的な展開を図ろうとする同社。人間性あふれるオーディオブランド・マッキントッシュの魅力を伝えるための新たなる取り組みを、同社代表取締役社長の稗田氏に伺った。 インタビュアー ● 音元出版社長 和田光征 「いつかはマッキントッシュ」、と思っていただける人たちを育てたい ―― ご就任おめでとうございます。あらためまして、マッキントッシュ・ジャパン設立の経緯をご説明いただけますでしょうか。 稗田 米国のMLI(マッキントッシュ・ラボラトリー・インク)は、2003年3月にD&Mグループのブランドのひとつとなりました。 ―― 日本においてマッキントッシュが製販一体となり、一気通貫でやりやすくなるのではないでしょうか。 稗田 設立発表会でMLIのチャーリー・ランドール社長が言っておりましたとおり、日本市場はマッキントッシュの全世界展開にとっても非常に重要なポジションにあります。MLI社にとっては、自身の会社を設立してやっていけるということで、従来以上のレスポンスと、ものづくりのやりとりができるということになります。 ―― こうした変化の中で、マッキントッシュは何が変わって何が残るのか、というところをお伺いします。 稗田 変えていいものと、いけないものがあります。我々は昨年、音楽愛好家の方たちに大勢集まっていただきグループインタビューを行いました。音楽が好きな方々であるにもかかわらず、マッキントッシュというブランドをご存じの方は実に半数しかいらっしゃらず、8割の方は実際に音を聴いたことがないとのお答えでした。 ―― ユーザーを増やす可能性があるということですが、そこに対してどういう方法でのアプローチをお考えですか。 稗田 業界や、ご販売店が独自に開催されているようなイベントを積極的に活用するのは当然のことですが、我々自らも、ぜひそういうことをやりたいと思っています。マッキントッシュ主催の体験の場というものを、地場の販売店様のご協力を賜って、スケジュールを組んでいきたいと思います。また、マッキントッシュを実際に使っておられるユーザーの方々の組織化も図っていきたいと思います。 ―― 中期計画について、5年間での具体的なテーマ、目標などをお聞かせいただけますか。 稗田 マッキントッシュとして、ワンブランドでハイファイ、単品コンポーネントの10%をとりたいと思っており、5年間の計画では、現在の倍となるようターゲットを据えて考えています。オーディオマーケット全体は下がっていますが、単品コンポーネントは反転して上がっています。我々が努力していけば、全体を持ち上げることにもつながるのではないかと思います。 ―― マッキントッシュ・ジャパンが設立され、商品を直接お取り扱いされるということになり、ご販売店さんの反応はいかがでしたでしょうか。 稗田 有り難いことに、我々の意図する方針、方向というものを大変ご理解いただきました。外から見ると、D&Mグループというのは商品のレンジが広く、そこにマッキントッシュもあてはめられていくのではないか、と捉えられていた方もいらっしゃったようです。 ―― 今回、製販一体となる一番大きなメリットはそこだと思います。本来は、商品の価値が値付けのポイントとなるべきものです。それは結果として、マッキントッシュの製品を選ばれた方に、未来にわたって満足感をもっていただけることになると思います。 稗田 マッキントッシュは、音を聴く装置、というだけの価値観ではないのです。ブラックガラスパネルに浮かび上がるブルーのメーターが聴く人に語りかけてくれるような、ヒューマンなところがあるのです。色々なオーディオ製品がある中で、マッキントッシュというのは唯一それを持っているような気がします。そういうことをアピールすることに相応しくないことは、今回排除したいということです。 ―― 先日の発表会では、スネルのスピーカーを組み合わせておられました。その素晴らしい音に、我々も感激しました。 稗田 スネルは、アメリカのハイエンド専門のスピーカーブランドで、1976年に会社が設立され、95年にボストンアコースティクスの傘下に入りました。そして2005年にD&Mに入ったのです。マッキントッシュのチャーリー・ランドール社長が、スネルの社長を兼務しております。アメリカの中でも専門店でしか展開していないブランドですから、日本でもマッキントッシュ・ジャパンの中で扱うのがチャネル政策としても一番好ましい、ということになりました。マッキントッシュのアンプとともに、スネルのスピーカーを組み合わせた形で、日本デビューを図りたいと思います。 ―― メンテナンスについては、どのようなお取り扱いになりますか。 稗田 これについては、マッキントッシュの修理専用の工房を横浜に新しくつくり、優秀なスタッフを選んで、何度もアメリカのマッキントッシュの工場に通わせました。修理についてはその工房一ヵ所に集約させて、専任の技術者が一台一台丁寧に見させていただくことにしました。私としては、米国のMLIでやっていることと同じことを、横浜の工房で実現したかったのです。過去何十年もマッキントッシュの製品を使ってこられた方にも、これから先買われる方にもご安心していただきたいと思います。 ―― 記念モデルについての詳細をお聞かせいただけますか。 稗田 日本限定の「MA6900G」というインテグレーテッドアンプで、もっともマッキントッシュらしいフィーチャーが入った「MA6900」をベースにしたモデルです。今回、スピーカーターミナルを上級機種と同等のものにグレードアップしたり、シャーシー部分をゴールドのステンレスにし、さらなる音質のリファインを重ねました。 ―― 最後に、マッキントッシュ・ジャパンの社長になると決まったときのご感想と、今後の抱負を聞かせていただけますか。 稗田 最初は驚きました。若い頃毎日のようにジャズ喫茶に通って感動しながら聴いていたのがマッキントッシュでしたので、マッキントッシュというブランドにずっと憧れを持っていました。今は一人でも多くの方々にマッキントッシュを知っていただき、体験の場を増やしたいという気持ちです。使うことの喜びと、所有することの誇りを感じていただけるマッキントッシュブランドの発展に邁進していきたいと思います。 ―― 本日は素晴らしい話を伺いました。有り難うございました。 ◆PROFILE◆ Hiroshi Hieda |