巻頭言

「パナソニック」へ

和田光征
WADA KOHSEI

松下電器産業が10月1日よりパナソニックに社名変更し、ナショナル、パナソニックに分散していたブランドもパナソニックに統一、全世界で「家まるごとパナソニック」を推進していく。

9月16日に開催されたプレス発表会は、1000名超のマスコミ関係者が集まり、巨大なレセプションとなった。巨大スクリーンに映し出されるイメージ映像、そしてPanasonicのブルーのロゴが時間差で左右に移動しながら会場の出席者にイメージを浸透させていく。大坪社長の登場には万雷の拍手。
 
「松下電器産業の大坪文雄として紹介されるのは最後になります。これからは、パナソニックの大坪文雄と紹介されます」と挨拶。
 
「松下、ナショナル、パナソニックと分散していたブランドをパナソニックに統一、世界中の従業員が一丸となって一滴の汗も無駄にせず、パナソニックに思いを込めていきたい」と、松下幸之助翁の「衆知を結集する」という言葉を引きながら力強く語り、「家まるごとパナソニックを推進していく」と結んだ。

続いてブランド推進の総責任者である牛丸副社長より「家まるごとパナソニック」の具体像が示され、とりわけブランド認知のテレビコマーシャルが12万本オンエアされることも報告され、場内からはそのスケールの大きさ、周知の徹底ぶりに驚きの声が上がった。

アプライアンス担当の高見取締役からは、パナソニックブランドの先陣を切るルームエアコン、冷蔵庫、洗濯機、掃除機の発表があった。すべて最新鋭技術の搭載により省電力、エコに対応した商品群。

私は業界生活が40年を超えたが、いつも疑問に思っていたことは、松下電器のブランドが分散していたことだった。とりわけソニーブランドが強烈になっていく中にあって、オーディオはテクニクスであり、ビジュアルはパナソニックであり、白物家電はナショナルであり、それ以上に松下というブランドの強さがあった。そしてそれぞれの事業間の閉鎖性や松下電工など独立型にあったナショナルのブランドの独立独歩、それは極論すれば身動きがとれないほど、巨大で重い組織体になっていたと言えよう。

そんな中、韓国勢、とりわけサムスンは、金大中大統領のIMFによる経済政策での事業の分散の禁止に添ってエレクトロニクス集中型へと転換、税制の優遇もあり、あっという間に世界を席巻していったのである。

成長著しいすべての世界企業がブランドと社名を同一にしており、強烈なる一体感を有している。そんな思いで松下電器を私は見ていたのである。

“中村大改革”から“大坪ブランド戦略”へ。

そして、松下電器は8年余の改革を経て、いよいよブランドと社名が一体となったのである。私自身にとっても感慨深いものがあり、パナソニックの新たな出発に心からエールを贈り、日本国企業として全世界で「家まるごとパナソニック」を実現して欲しいと願うものである。

パナソニックがめざす世界中の文化進展への寄与と、エクセレンスカンパニーに向けての力強い船出でもある2008・10・1は世界の人々にとっても記念碑として刻まれていくだろう。

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