巻頭言 「ファイル・ウェブ」10周年 和田光征 小社運営のオーディオ&ビジュアルのポータルサイト「ファイル・ウェブ」が、7月1日で開設10周年を迎えた。時間の流れの速さには只々驚かされる。10年前が昨日のように思われるからだ。 「ファイル・ウェブ」開設時を振り返ると、1998年に「AVレビュー」誌の臨時増刊として「ホームシアターファイル」誌を刊行した。“ファイル”とは同好者、仲間等々の意があって、それを誌名に採用したのである。さらに誌面に登場した読者、メーカー関係者、インストーラーさんに「ファイルナンバー」を差し上げようと、現小社常務の永井光晴が提案し、それは面白いと私は即座に承諾した。今やファイルナンバー取得者は、小倉智昭さんはじめ1500名にも達している。 永井からホームページ開設の提案があったのは翌1999年初め、それも即座に承諾した。1995年の“Windows95”から、時代は一変していたが、それ以前から私はインターネットに関心を持っており、国立天文台のサイトを開いてハレー彗星の画像をプリントアウトし、小社スタッフに配って、これからの時代が迎える大いなる変化を話したのだった。 “ファイル”の集う「ファイル・ウェブ」と命名した音元出版のホームページは、こうして1999年7月にスタートした。サイトに雑誌名を冠していないのは、そこからの発展性が全くないからである。また己を明かさず勝手なことを書ける掲示板については一切排除した。私の哲学に反するものであるからだ。 「ファイル・ウェブ」が開設1周年を迎えようとする頃、その方向性やコンセプトが完成した。まず第一に、事業として確立すること。そして音元出版が運営する自社サイトが単なるホームページでは、社是「業界の建設的発展に寄与する」の精神を果たせないため、「オーディオ&ビジュアルのポータルサイト」として運営することを第二とした。 こうした基本的なコンセプトが決すれば、成功の姿が見えてくる。全社一丸となって立ち向かい、しくみをつくり上げ、ついに「ファイル・ウェブ」は2000年の6月より本格的なスタートを切った。そして、「業界の建設的発展に寄与する」という社是の具現化が確実なものとなったのである。 音元出版の各媒体はコンテンツメーカーとして、ポータルサイトの命とも言える「毎日更新」を実施するため、編集スタッフ全員がニュースを毎日アップロードさせた。今やどこのサイトにもないスケールへと発展している「製品データベース」にもこの頃から着手した。さらにその後、コンシューマ・エレクトロニクス業界の世界最大の見本市であるベルリンの「IFA」日本語オフィシャルサイトの運営なども手がけている。 こうして10年の歳月を経て、「ファイル・ウェブ」は現在、月間3億余のファイルヒット、1200万以上のページビューを数え、常時100万人余のオーディオビジュアルファンが集結する、名実ともに業界を牽引するスケールのメガサイトとなった。事業としても充分な成果をあげており、オーディオビジュアル業界を始め多方面からご評価いただき、コラボレーションの話も多数頂いているという状況である。 「ウェブが強い出版社しか生き残れない」と、私は2000年の正月に宣言した。まさにそんな時代を迎えている10周年である。 |