巻頭言 ここからはじまる 和田光征 あけましておめでとうございます。 2008年9月に端を発した世界不況から1年半を経ての2010年の幕開けであり、まだまだその後遺症の中で苦労があるのが実態である。 本年は後遺症を修復しながら成長戦略を模索するという年で、いっきに浮揚することはあり得ない。まさに0から始まるのであり、今年のテーマ「ここからはじまる」1年目と言えるのではないか。故にチャレンジイヤーでもある。 昨年の大事件は政権が交代したことである。そしてその政権が、4月以降の新年度から新しい予算を執行することになるわけで、いよいよ本領発揮ということになろう。国民目線のしっかりした政策を実行してもらいたいし、そのことによって国民生活も経済も安定するのであり、大いに期待してやまない。 昨年暮れ、日経新聞のインタビューに直嶋経済産業相が「日本を含めたアジアの所得倍増こそ重要で、それが内需を押し上げる結果となる。所得倍増させるためには何よりもインフラの整備が重要で、日本の役割は極めて大きい」と話されていた。 首相の東アジア構想や、小沢幹事長の中国訪問や、中国ナンバー2の日本訪問等のトピックスが、産業界において頼もしく映ったのではないだろうか。 いい意味での受給バランスは間違いなく経済を押し上げ、日本の成長戦略のための「ここからはじまる」になるだろうと確信する。新政権が真骨頂をみせるのは2010年度からであり、アメリカや世界との関係もいい方向で動き始めることは言うまでもない。10年から始まって13年が始まる頃には素晴らしい成長基調にあるのではないだろうか。 ところで、ここまで苦しめられた経営者は、どうしてもそれまでの流れから抜け出せないで、その流れの中で明日を見てしまい、計画することが多い。明日を描く余裕がなく、今をいかに切り抜けていくかが現状に影を深く落としているのが実態であるから、仕方のないところであるが、しかし明日は必ず来るのである。 明日に向かっての施策が結果として昨日の続きであるならば、それは必ず消滅の方向へと向かうだろう。何故ならば、昨日までの延長線上では上昇カーブを描けないからである。 明日から考え、今日を計画することが必定であり、そのことをベースにして明日を計画する。そのスタートが2010年であり、「ここからはじまる」チャレンジイヤーの本質である。 私は、考え続ける中で「観(かん)の目」「見(けん)の目」のことに思い至り、自分自身がいつしか流れの中で思い考えていたことに気づいたのである。 私は「明日の今日」「昨日の今日」についてよく語るが、今回の不況ばかりは「昨日の今日」の流れが私をも包んでいたし、またそれは現在進行形でもある。 「目に見るを見(けん)と言ひ、心に見るを観(かん)と言ふ。近きところを遠く見よ」 まず全体を見て、それから局所を見るということが今こそ大切なのである。 同時に感謝(ありがとう)と思いやり、笑顔をもって2010年をしっかり歩いていきたいと思う。 |