- まずはハイファイビジネスに注力
ピュアオーディオでの地位を固める
- CAVジャパン(株)
- 代表取締役社長
- 法月利彦氏
Toshihiko Norizuki
2006年の設立以来急成長を続けるCAVジャパンが、2011年に新たなステージを迎える。テレビ販売の大きな変化が予測される今年、業界全体での次の一手が取沙汰される中、同社が着々と進める戦略とは何か。売上げ100億円の達成に向け、動き出したCAVジャパンの最新動向を法月社長に聞く。
ブランドの違い、商品の違いが
伝わりやすい店頭づくりを目指す
4つのビジネス展開における
2011年のさらなる進展
── 昨年は100年に1度というようなテレビ販売の爆発がありました。御社の状況はいかがでしたか。
法月 テレビ販売に伴って、私どもの扱うシアターラックの勢いもめざましいものとなりました。昨年11月にピークだったテレビの勢いはエコポイントの点数が半減した12月に失速しましたが、これは常体に戻ったというところ。そしてこの後は、エコポイント制度が終わる3月の駆け込み需要のヤマが来て、いよいよ7月の最終的な地デジ移行のタイミングでまたヤマが来るでしょう。問題は地デジ移行後、テレビとテレビ関連商品はどうなるのかです。我々はこの一連の勢いの中で、ある程度安い値段でテレビを手に入れた数多くのお客様に対して商品開発をすることが来期のポイントになってくると思います。
── 御社のテレビ周りの事業がさらに進んでいくということですね。
法月 まずCAVジャパンとしてどのように事業を展開していくかということを、あらためてご説明したいと思います。我々はオーディオ業界において事業をスタートさせ、ハイファイオーディオの事業から、テレビまわりでラックという簡易型のホームシアタービジネスに着手し、さらにポータブルで若い人たちをメインターゲットとしたデジタルオーディオビジネス、そして昇降機や埋め込みスピーカーを扱うビルトインビジネス、この4つを柱として展開しています。
来期はまず、ハイファイ事業にさらに注力していきたい。中国のCAVと協調して広州でつくったものを日本国内に導入するのですが、日本向けに仕様も変更させます。まだ値段など細部まで決定していないのですが、早晩発表できるというところまで来ましたのでご期待いただきたいと思います。そしてもうひとつ、このたびカントンというドイツのスピーカーブランドにおける日本と極東の代理店契約をし、今後これを積極的にマーケティングしていこうと考えています。こうした展開で、CAVジャパンのピュアオーディオブランドとしてのイメージをもっと高めていきたいと思います。
デジタルオーディオでは、マーケットもさらに大きくなると思っています。これまで我々はアップル系のポータブルプレーヤーを中心に展開してきましたが、近々にソニー系のポータブルプレーヤーまわりにも着手したい。ライセンス契約をして、商品開発をしていこうと今動いています。
デジタルオーディオのマーケットを分析すると、ソニー系のポータブルプレーヤーは圧倒的に日本、そして女性が多い。我々はこれまでiPodを中心に据えて、「アイピグレット」や「ハローキティ」など女性をターゲットにした商品を展開してきましたが、実際にはiPodユーザーは男性が主体となっています。女性向けのキャラクターを使う以上、ソニー系のプレーヤーにも早急に対応し、本来のお客様を取り逃がすことのないような展開をしていきたいと思っています。
そしてもうひとつ。CAVはもともとスピーカーメーカーです。そして昨今は、スピーカーは家の中に置かれるだけでなく、時代の変化とともにさまざまな場所に持ち出し聴けるような可搬性が要求されます。そういう意味でヘッドホン、イヤホンというカテゴリーも重要視しています。昨今は様々なオーディオイベントでヘッドホン、イヤホン、またソファや照明などの生活グッズに組み込まれたような様々な形のスピーカーを見る機会が非常に増えてきました。我々もそういったものを開発し、市場に投入したいと考えます。
地デジ化でチャンスが広がる
ホームシアタービジネス
── ホームシアタービジネスは、今年大きな可能性が広がりそうです。地デジ完全移行によってテレビの販売状況が大きく変化しますが、お客様の家庭のテレビがアナログからデジタルへ、薄型大画面へと変わり価値が高まる中で、シアターシステムの存在価値も大いに高まって来ます。
法月 シアターラックはCAVジャパンにとっての稼ぎ頭であり、このビジネスを今後どう展開していくかは大きな課題です。ひとつの考え方として、テレビの絶対数が増えているということがあります。もはや一家に一台ではなく、個室のテレビ需要も地デジ化によって先取りされている状態です。
テレビの買い替え需要を10年と考えますと、薄型テレビが出始めた初期に買われた方々の買い替え需要もそろそろ始まってきますが、地デジ移行ぎりぎりになって買われる際の需要はダウンサイジング化されていくことが考えられ、どちらかといえば今後は中・小型サイズの需要の方が大きいでしょう。そこで我々はシアターラックにおいて、中・小型サイズのテレビに向けた提案をしていきます。
さらに、テレビ自体の形状の変化、たとえば有機ELなどによる薄型化といったことを考えると今のようなラックスタイルでなく、壁寄せ、壁掛けスタイルに合う音響システム、薄くて格好いい、そして音のいいものが求められると思っていますし、すでに開発に着手しています。
ここでは海外展開も進めます。すでに香港、シンガポールと着手しており、さらにヨーロッパや北米を考えています。また欧米ではラックシステムではなくサウンドバーが主流になっており、我々もそこへの対応が必要だと考えます。日本でシアターラックはなくなりませんが、サウンドバーの需要も高まってくると思います。
── 2011年の事業展開も大きなものになりそうですね。
法月 成長していくには、商品の幅・事業の幅を増やすこと、チャネルを増やすこと、エリアを拡大することしかありません。エリアは香港、シンガポールから着手し、今後インドやヨーロッパ、アメリカを考えています。また国内の家電のチャネルではおかげさまでほとんどの法人様と契約を結ぶことができたと思いますし、ネット販売にも着手するなどいろいろな形でチャネルも広げています。
2006年の10月30日にCAVジャパンが発足し、2011年3月で第四期決算を迎えます。ここまで順調すぎるほど順調にやってきて、第四期では売上げ70〜75億円となる見通しがついています。しかしこれを100億円とするには我々の事業の幅を広げ、さらにチャネルを増やしていかなくてはなりません。我々が持っていない領域への広がりとなると、ほかの会社さんと提携して商品開発、事業開発をしていく方向性が考えられますが、売上げ100億円を達成するにはそういったことが必須だと思っています。
── 2011年は大きな変化の年となりそうですね。
法月 テレビ販売については相当落ちると考えます。しかし楽観的に見ると通常に戻るということ、2010年の5割といっても大変なものです。そしてテレビ販売は絶対にゼロにはなりません。また各家庭にブラウン管テレビから地デジ対応の薄型テレビが入ったということも大きな要素です。
お客様はデジタルテレビを買って初めて、画がきれいなだけでなく、様々なデジタルコンテンツが見られること、5.1chの音が聴けることに気づいていきます。その気づきのきっかけを与えるのがシアターラックです。
当社にもシアターラックのお客様からたくさんの感動の声が届いています。今までテレビの音に関心がなかった方々が、CAVのラックを使うことによって初めてその音場効果に触れ、感動する。するとさらに本格的なシアターシステムを体験してみたいという人たちが出てくるでしょう。そこに次のビジネスの余地があると思います。デジタルテレビが大量に買われたことによって、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が出てくるのです。
すべての層に向けた
積極的なマーケティング展開
── 我々も、2011年のポイントは「使いこなす」ことと考えています。本格的に仕掛ければホームシアターは動くと思います。テレビだけでなく、プロジェクターの世界も広がりますし、100インチを求める動きも出てくるはずです。そうすると御社ではホームシアターが2011年の最注力ビジネスとなるのでしょうか。
法月 それだけでなく、全てですね。シアターラックでファミリー層、デジタルオーディオで若い層、ハイファイオーディオではこだわり層。扱う商品により客層は全く違いますから。日本がかつてオーディオを本格的に展開できたのは、オーディオマーケットがまだ未成熟だったからです。マニアは富裕層でしたし、オーディオの趣味を持つこと自体がステイタスでした。当時の若い層は所得が少なく、真空管アンプが欲しいと願ったものです。そういう人々が大人になってある程度自由になるお金を持ち、子供が巣立った後の部屋なども確保できて欲しかったものを手に入れたくなる時、ある一定のマーケットが見えてくるわけです。
しかし今の若者層は真空管など知らない。これからオーディオファンは育てなくてはなりません。耳は鍛えることができるのですから。美味しいものを食べたことがない人が美味しい料理を上手くつくれないように、音楽をいい音で聴いたことがなければ聴覚は育たないのです。すると若者層はいつまでもいい音で音楽を聴こうとは思わず、ハイファイの再生装置を使おうとは思わないのです。価格の問題でなく、我々はハイファイ装置をつくって世の中に啓蒙していかなくてはなりません。それをしっかりと行なわなくては、若者層はハイファイオーディオに来てくれません。
しかし今は啓蒙も難しく、若い人たちは1万9800円のセットで満足し、なかなかその先へ行こうとは思わない。ハイファイオーディオのファンが高齢化していく一方で、若い人たちの興味は価格の安いデジタルオーディオに止まっている、オーディオ市場の低迷の要因はそこだと思います。
ただ、音楽が嫌いだという人はいないでしょう。今は家の中から外へと音楽を聴く場所も広がっていますし、若い人たちの間でもヘッドホンで高音質を求める大きな動きがあります。またPCとオーディオのつながりもあり、ネットオーディオの分野はこれからもっと広がるでしょう。そういった様々なことの中でいい音を求める動きは高まるでしょうし、我々がハイファイを展開する余地も広がってくると思っています。
── 今年のご活躍がますます楽しみになって参りました。大いに期待しております。