巻頭言

10年先から今を見よ

和田光征
WADA KOHSEI

1999年夏に開設したウェブサイト「ファイル・ウェブ」は、2000年の6月から、業界発展に寄与するポータルサイトとして事業化、業界のインフラとしてのスタートを遂げた。今年は11周年、月間ヒット数3億、月間ページビュー1200万以上、ユニークユーザー100万人強のメガサイトへと成長したファイル・ウェブ。IFAベルリンショーの日本のオフィシャルサイトとしても機能し、高い評価を受けている。

1999年夏にファイル・ウェブをスタートさせるにあたり、(1)業界の建設的発展に寄与するものとする (2)故にホームページではなく専門ポータルサイトでなければならない (3)10年後の音元出版のあるべき姿を描ける強い存在でなければならない(ウェブの弱い出版社は生き残れないから) (4)掲示板は運営しない という方針を打ち立てた。

ファイル・ウェブは2000年6月から業界のポータルサイトとして事業化、スタートを切ったわけである。サイトを発展させていくためにはニュースの毎日更新が絶対条件であり、全編集部員に各々ニュースを毎日1本書くよう義務化した。さらに、週刊コンテンツとしてCDやDVDソフトのランキング、今週の発売新製品、週刊製品批評、週刊コラムを用意。月刊では本誌Senka21の売れ筋ランキングを掲載した。また、通販モール、製品データベース等々、多彩なコンテンツをリアル誌との連動で掲載し、着実にヒット数を上げていった。

私は、ギアナ高地の姿をファイル・ウェブのあるべき姿と思い、そんな説明をした。ギアナ高地はほぼ垂直に切り立ったテーブルマウンテンが数多く点在、その数は100を超える。特に西側は標高3000m級であり、世界最大の滝エンジェルフォールは高さが979m、東京タワーの約3倍である。

ギアナ高地の映像や写真を見たとき、その高さがヒット数であり、ページビューである。高地の上の台地はお祭り広場として魅力的なコンテンツをたくさん用意する。ここに回遊してきた訪問者たちのAV情報の“奥の院”を構成し、高質なユニークユーザーを増幅させる。

そして私は守衛に徹した。コンテンツの不備や必要とされるものを頭において、守衛のごとくファイル・ウェブの内部を点検し、その都度担当者に指摘し改善させた。いつしか全員が神経をとがらせた守衛となり、チャレンジャーへと変貌した。かくしてファイル・ウェブはギアナ高地の如く高度を増し、質を高めて完成領域へと向かうのである。

故に人材である。優秀なスタッフが自由闊達に腕をふるい得る環境を整えることがわたしの役目であり、未来に向かって確信と自信をもたせるための方向性を指し示すことが私の使命である。この流れは、次の世代へと受け継がれている。

12年目を迎えたファイル・ウェブは、業界のインフラとしていいところまできたと思っている。小社が10年前に描いた通りの姿となり、未来を描けるインフラとして確立されたと思っている。業界を取り巻く環境は、ここ数年で激変した。その影は色濃く、業界を苦悩させることとなったが、基本原則“いつもお客様のそばに”の深化があれば、道は開かれると思っている。

まず、人ありきである。10年先から現在を見ようではないか。いつも「ここからはじまる」のである。

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