桂 幹氏

これからの大きな柱に据えた
オーディオ事業
お客様の心を動かす“こだわり”で
存在感を示す
イメーション(株)
常務取締役
コンシューマビジネス統括本部長
桂 幹氏
Miki Katsura

ヘッドホンに続き、スピーカーでもメキメキと存在感を放つTDK Life on Record。個性溢れるラインナップが充実。その源泉にあるのは、多様化するライフスタイルに根差した徹底した提案の姿勢。オーディオ事業における提案力をさらに加速していく構えだ。

 

お客様のニーズをどこまで細かに、確実に
捉えることができるかが求められています

“聴く”提案に
切り拓く新境地

── オーディオ市場において、TDK Life on Recordのブランド認知がお客様の間にも急速に拡大しています。

 多くの方にご評価をいただき、大変うれしいですね。TDKブランドの備える音楽に対する親和性の高さを背景にスタートしたオーディオの展開も4年目を迎えます。音響製品をお考えのお客様がひとりでも多く、TDKもその中のひとつのブランドとしてイメージしていただけるよう、さらに力を入れて参ります。

現在、イメーションの売上構成比では、光ディスクが市場の縮小により、7割から6割へ縮小する一方で、15%だった音響関係は20%に達する勢いにあります。将来に向けての重要カテゴリーと位置付けています。

── ヘッドホンもスピーカーも、売り場では数多の商品で溢れかえるなかで、存在感を発揮しています。

 オーディオ事業を手掛けるにあたり掲げたモットーが「聴く、をデザインする」です。“デザイン”には、製品そのもののデザインから、音楽を聴くスタイルやライフスタイルに至る幅広い意味があり、わたしたちがそこで何ができるのか。新しい提案をどんどん行っていくことを目指しています。

── その想いがひとつひとつの商品に込められているわけですね。3年間を振り返っていかがでしょうか。

 400メートルのトラックをやっと1周してきた感じですね。事業の実態やそこで私たちがやらなければいけないことが、はっきりと見えてきました。私たちは新参ブランドですから、いきなりハイエンドの分野で認めていただくことは、正直ハードルが高いと認識しています。ですから、目指しているのはもう少しカジュアルな使い勝手のいいもの。価格的にもマニアしか買えないような高価なものではありません。

そこで埋もれてしまわないために、常に考えているのは、些細なことにもこだわり、必ずお客様に何か独自の提案ができる商品であること。今、ブルートゥースのスピーカーも本当に数多くの商品が登場していますが、私たちは「ブルートゥースプラス」をコンセプトに、プラスαの付加価値のあるラインナップで差別化を打ち出しています。

── お客様それぞれに多様な価値観やライフスタイルがあるわけですから、それこそ、いろいろな付加価値の提案が待望されているのではないでしょうか。

 スマートフォンで圧縮音源を聴く世界と、マニアを中心としたハイエンドの世界との間には、大きな空白が存在します。音楽は屋内のみならず、例えば、屋外でバーベキューをする時にもワイヤレスで楽しめることを提案した「A33」、浴室でお風呂に入りながら音楽を聴ける「TW233」、無接点充電でスマホの音楽を聴きながらスマホの充電まで行える「Q35」など、スピーカーでもいろいろな提案を行っています。

テレビ周りにも力を入れており、昨年発売したサウンドバーの「SP-XATV900/1000BK」では、コストパフォーマンスの提案を行いました。テレビスピーカーを目的としたお客様ではなく、テレビだけで構わないと思っているお客様に、手軽にプラスしていただこうという狙いです。「テレビ番組の音って実はこんなに違うんだ」ということを一人でも多くの人に知っていただきたいのです。

今秋、手元スピーカー「SP-TV24WA」を新たに投入しましたが、他社の製品ではご高齢者をターゲットにした形状・デザインのものが多く見受けられますが、私たちは、例えば「キッチンでテレビの音が聴こえない」といったニーズにもお応えできる、シンプルでどこにおいても邪魔にならないイメージをご提案させていただいています。

メッセージ発信の鍵は
気づきを与えられること

 こうした提案はもちろん、うまくいくときもあれば、メッセージとしてしっかり伝わらない時もあります。今、メーカーには、お客様のニーズをどこまで細かに、確実に捉えることができるかが求められていると感じています。

── スピーカーにしても、今は、単に“スピーカー”とひとくくりには片付けられません。そこへ投入した個々の商品のコンセプトや背景、用途をお客様に伝えることは、大切であると同時に、ますます難しくなってきています。

 例えば浴室用のスピーカーなどは、できれば、浴室用のテレビなどとも一緒に展開いただくのが理想ですね。先ほどの屋外用途を訴えた「A33」では、ミニチュアのビーチのような店頭販促物を用意して、その上に置いて展開いただくと、「あっ、これは海水浴でも使えるんだな」と連想いただける展示を仕掛けました。私たちも与えられたスペースの範囲で、でき得る限りのメッセージ発信を行っていきたい。

カセットやビデオテープ、光ディスクなどメディア商品を手掛けてきましたから、店頭で商品の内容や価値をお客様に伝えることがいかにむずかしいことかは、身に染みて感じています。ここに答えはありません。まさに試行錯誤の連続。これからもご販売店と一緒になって、もっといろいろなことをトライしていきたいですね。

── 売り場でのお客様の“発見”や“気づき”はますます重要になりますね。

 リアル店舗とWEB販売との競合が話題になっていますが、リアル店舗の強みは商品を手に取れること、触れられること、実際に見て聴いて試せることです。そのためのサポートをどれだけできるかは、私たちメーカーにとってもひとつの大きな課題であり、また、目標でもあります。

ヘッドホンには
遊び心も必要になる

桂 幹氏── お客様からの手応えはいかがですか。

── 活況を呈すヘッドホンも、売り場はバンと目立ちますが、足を踏み入れると、商品の数が多過ぎてどれにしたらいいのかわからなくなります。

 メディア以上にむずかしいと思います。実際の店舗さんにご協力いただき、お客様がどのような視点でヘッドホンを選ばれるのか、アイトラッキングも利用した調査を調査会社さんと行ったことがあります。そこでわかったことは、お客様の求めるものに個人差が大きく、共通項が見出しにくいこと。外観、音質、値段などこだわり方は多種多様です。

そのような市場環境を捉えて、9月に発売したのが、ケーブルが夜、暗闇で光る新商品です。いろいろなお客様のニーズがあるからこそ、こうした遊び心もこれからは必要になると考えています。

今、ワイヤレスのヘッドホンでは、Kleerワイヤレステクノロジーを採用した商品が高い評価を集めています。音楽はもちろん、大音量で楽しめない深夜にもテレビで映画を臨場感たっぷりに楽しむことができます。テレビとケーブルがつながっているわずらわしさ、不快感のないワイヤレスタイプですから、ちょっとお茶をいれながら、ということも可能です。そんな提案もさせていただいています。

── 機器に付属されたヘッドホンで済ませず、是非一度、音の違いを体感いただきたいですね。

 音質には大きな違いがあります。3000円クラスの商品でも、「音ってこんなに違うんだ」と必ず実感いただけるはずです。そういう意味からも、3000円から1万円くらいのゾーンというのは、もっと拡がっていい。イメーションでも昨年から重点的に、このゾーンのラインナップを充実させており、新しい技術にもトライしています。店頭で試聴していただくところまでお客様をどのように誘導するのか。なかなか簡単なことではありませんが、メーカーとしてもそうした場の準備を整えて参ります。

迅速に対応できる
機動力が持ち味

── 商品ラインナップもますます充実してきました。

 ヘッドホンもスピーカーも、お陰さまでラインナップが拡充し、それに呼応するように売上も伸長しています。今後もコツコツとラインナップを拡げていくとともに、TDKブランドならではのこだわりをお客様に訴えて参ります。

── いろいろな提案があると、「次はこんなものをつくってほしい」という声もどんどんと入ってくるのではないでしょうか。

 販売店のバイヤー様やお客様からたくさんのご助言をいただき、本当にありがたいですね。また、そうした声に対して迅速にお応えできるスピード感、機動力が求められていると強く感じています。

記録メディア商品というのは大変チャネルが幅広いのが特徴で、その資産を、現在のオーディオやスピーカーに活かせていることも私たちにとってはひとつの大きな強みになっています。

── 幅広いチャネルを背景とした顧客層の厚さは、新しい提案をされていく上でも、大きなヒントがそこにありますね。

 様々な意見をいただけるだけでも大きな価値があります。チャネルによってご要望も全然違ってきますが、あるチャネルからいただいた声が、別のチャネルで活かせないということはまずありません。

── 次に目指すステージをお聞かせください。

 スピーカーは、ブルートゥースが軸になるトレンドはここしばらく変わらないと思いますので、「ブルートゥースプラス」のこだわりの提案にさらに力を入れて参ります。

一方のヘッドホンでは、メジャーブランドと同じことをやっていたのでは敵いません。「これはちょっと毛色が違うぞ!」「この商品のコンセプトは面白いな」と、実際に購入まで結びつくようなアイデアをさらに追求していきます。それは究極的には、どこまでこだわるかということ。流れ作業のようにものをつくっていくのではなく、些細なこと、例えばパッケージのデザインひとつとっても、「こういう方がもっと面白い」「こんな可能性もあるのでは」ということをとことん議論していきます。それをやり続けていきます。

── そうしたこだわりの姿勢を背景に、TDK Life on Recordに対する市場からの期待もますます高まっています。販売店へのメッセージをお願いします。

 イメーションとしてTDK Life on Recordブランドの音響製品に対しては、人、モノ、金、時間とあらゆる面において、今後ますます力を入れていきます。持ち味である機動力を活かし、ご販売店やお客様のニーズ、また、店頭における売り場づくりの展開にも柔軟に対応し、市場のさらなる活性化へ力を注いで参ります。

◆PROFILE◆

桂 幹氏 Miki Katsura
1961年11月11日生まれ。大阪出身。1986年 TDK(株)入社。記録メディア国内営業、アジア統括部経営企画、米州事業部経営企画を経て、2008年 イメーション(株)に入社。日本国内B2C事業を担当し、2010年より現職。現在に至る。趣味はテニス、映画鑑賞。座右の銘は「本当に大切なことは目には見えない」。

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