村本 理恵子氏

テレビの大画面を最大限に活かす新たな体験
テレビの価値もビジネスももっと高められる
エイベックス・デジタル株式会社
常務取締役 デジタルビジネス本部 本部長
エイベックス通信放送株式会社
取締役
村本 理恵子氏
Rieko Muramoto

2009年、携帯電話向け映像コンテンツ配信サービス「BeeTV」としてスタートを切った「dビデオpowered by BeeTV」は、4月22日からサービス内容を大幅強化し、名称も新たに「dTV」としてリニューアルした。テレビの楽しみ方を大きく変え、テレビ周りのビジネスに新風を巻き起こす注目の新サービス。陣頭指揮を執る村本理恵子氏に意気込みを聞く。

 

dTVがあれば
テレビを買い替えても絶対に損をしない
そんな最強パートナーでありたいですね

パソコンチックからの脱却が
テレビ新時代を呼び込む鍵

── 新生「dTV」が4月22日にスタートを切りました。これまでのモバイル向けのサービスから、新たに自宅のテレビで楽しめるターミナルも用意されたのが大きな特長のひとつとなります。

村本映像を映し出すスクリーンは、映画、テレビ、そしてモバイルへと進化を遂げてきました。私たちは2009年に「BeeTV」として、フィーチャーフォンやスマートフォンなどのモバイルをターゲットにして、映像配信サービスをスタートしました。ユーザーは20代から40代の若い方が中心です。レンタルビデオを借りてきてテレビで見るのはごく当たり前のことですから、映像配信サービスをスマホだけでなく、家ではテレビで見ていただくことは自然の流れのように思われますが、実はそのつながりがあまりスムーズではありません。今回新たに用意したターミナルでは、そうした課題を解消し、気軽にテレビにつないで家では大画面でも楽しめる。そうしたところまでつくり込んだことが最大のポイントとなります。

── セットトップボックス(STB)ではなく、“ターミナル”という呼称を用いられました。

村本STBと言ってもほとんどの方がおわかりにならないでしょう。dTVというサービスがあり、それとテレビとをつなぐ、まさに“ターミナル”というわけです。

── ユーザーインターフェイスにも相当力を入れられています。

村本スマートテレビなどではアイコンがずらりと並んでいますが、テレビを使う人からすれば違和感を覚えます。そこを、普段使っているテレビ同様に抵抗感なく使えることが大切だと考えました。敷居が低く、ご年配の方でもリモコンを使って簡単に好きなものをご覧いただけるはずです。習慣を変えるのは物凄く大変なことですから、この点には大いにこだわりました。

── トップ画面では、予告編の映像が自動で切り替わって次から次へと流れていきます。

村本これも、見たい番組を探してチャンネルを変えていく普段使いのテレビの感覚です。最初からあれこれ動作を起こす必要がないので、迷うこともありません。面白そうだと思ったら本編を再生すればいいわけです。また、dTVを流しておくだけで、「こんな番組があったのか」と新しい出会いが生まれるきっかけにもなる、新しい体験も提供できます。店頭で展示・展開いただく場合にも、アイコンが並んだテレビを置いておく味気なさとは違って、お客様の関心を大いに引き寄せることが可能となります。

── 映像配信では、ネットフリックスの日本上陸が話題を集めています。

村本皆さんに映像配信について関心を持っていただくことは、日本市場にとってとてもいい刺激になると前向きに捉えています。海外では映像配信がごく普通なのに、日本ではちょっと事情が違うなということを理解いただくきっかけにもなるはずです。そこで配信に興味を持ち、どれにしようかという時に、dTVを選んでもらえるよう力を入れていきます。

── これまでも色々な配信サービスがありますが、お客様へその魅力を伝え切れずにいるのが実情です。

村本大きな原因のひとつは、どこか“パソコンチック”なため、どうしても手を出しにくくなる。dTVでは、そこから脱することを大きな命題のひとつに掲げました。リモコンだけで左右に自由に動かせる、アイコンが出てこない、料金は月500円で楽しめる。これまでのサービスとは一線を画した使い勝手が実現できていると自負しています。

目指したのは、dTVさえあれば、取り敢えずは何でも簡単に楽しめてしまうこと。映画はもちろん、音楽のライブもありますし、レンタルだって楽しめます。新しいチャンネルもこれからどんどん増えていきます。CATVなどでより深く楽しみたい方もいらっしゃいますが、私どもが狙ったのはもっとライトに楽しみたいユーザーです。だから価格もライト。ターミナルの価格は7000円ですが、14ヵ月間のレンタルクーポンが付いており、実質無料と大変お買い得になっています。これだけ楽しめるならとエントリープランとして手軽に手を伸ばしやすいサービスになっています。

テレビの価値は
もっと高められる

村本氏── テレビ業界では若者のテレビ離れが指摘されるなど、テレビに対して若い人の目を向ける観点からも、dTVの提案される“新しいミカタ”が注目されます。

村本テレビ離れを引き起こしている面も否めないと思います。しかし、若い方はスマホで映像を見ていますし、映画館へも行くわけですから、テレビ離れではあっても映像離れではありません。

今、若い人から人気を集めている私たちのコンテンツに「ムービーコミック」というものがあります。自動でマンガのコマが送られて、セリフや効果音、音楽も入っている。つまり、ページを自分でめくらずに、見ていればマンガが楽しめるというものです。いちいち読む手間も省けるし、マンガをドラマっぽく、しかもスピーディーに楽しめると大変好評です。

やはり、見ている人が楽しくなることが大事。若い人たちからすると、dTVのザッピングで流れている予告編を見ているだけでも楽しくなると思います。「dTV」は制約なく色々なことにチャレンジできる。年代に合わせた提案もできますし、そうした特長はこれからますます大きな強みになると考えています。

── 属性を分けてアピールすることも可能になりますね。

村本チャンネルは増やせますから、ひとつのインフラと捉えてチャレンジされたい方は、是非、dTVにご参加いただきたいですね。コンテンツは大変ロングテールです。dTVが既存のテレビと違うのは、視聴者各々へレコメンドできること。これはテレビにはなかった体験です。しかし、お薦めばかりだとお腹いっぱいになってしまいますから、いろいろなチャンネルを用意しています。見逃し視聴やタイムシフトという意味からも、いつでも初めから見られるという点が特色だと思います。さらに、チャンネルを並べ替えるなど、パーソナライズ化もさらに進化していきます。テレビは今、茶の間で一家団欒というかつての世界観とは大きく変わり、ひとりで見るケースが増えていますので、パーソナライズという機能の持つ意味は大変大きくなってきます。

── 必ずしもスマホひとつで十分というわけではない。これは、音楽にもカメラにも共通したテーマになります。

村本スマホでもザッピングという新しいUIの提案を行ってきましたが、やはりスクリーンの大きさによる限界がありました。そこで、もっと気持ちよく楽しめるユーザー体験を提供するためにテレビが不可欠なのであれば、そこへどうやってつなげていくかが重要なテーマです。

dTVはテレビに取って替わるものではなく、デバイスとしてのテレビの大きなスクリーンを最大限に活用させていただくもの。これまでになかった新しい体験や、例えば、気軽に映画やドラマを楽しめるといういままで気づかなかった利便性を、テレビというデバイスを通じて創造していきます。「やっぱりテレビだね」と思っていただくことができれば、お客様にとってのテレビの価値はもっと高められるはずです。

村本氏身を持って実感いただく
肝は売り場での体験

── テレビ売り場での体験、提案が大切になりますね。

村本お子様連れでテレビを買いに来られたお客様に、dTVなら簡単に映像を出し、「妖怪ウォッチも見られますよ」とお薦めできます。オンデマンド性を備えているので、売り場では色々な薦め方が可能になります。様々なコンテンツの中にはカラオケなどもあり、お客様に合わせて、テレビをもっと魅力的に見せることができます。テレビメーカーや、家電量販店の方々とも力を合わせ、テレビの価値を高め、市場をさらに活気づかせることができるよう今までとは違う形でテレビを訴求していきたいですね。

── 「ビデオオンデマンド(VOD)はない」というのは村本さんの持論です。

村本やはり、実際に流れているものを目にして初めて、「これが見たかった」と人は感じます。だから、売り場での出会いがとても大切なのです。また、そうした強い憧れが、テレビに対しても、もっと大きな画面で見たい、高画質で見てみたいといった気持ちを引き出していきます。

dTVがあれば、テレビを買い替えても絶対に損をしない。そんな最強パートナーでありたいですね。これまでは携帯キャリアのお店が我々の売り場でしたが、これからは、家電店のテレビ売り場が私たちの販売パートナーとなります。

── 最後に、目標として掲げられた1000万ユーザー獲得への意気込みをお願いします。

村本テレビも格段に性能が向上し、ネットにつなげることもできますが、無理にテレビをPCに寄せるのではなく、あくまでテレビの本質を活かした、楽しく見られるデバイスであってほしいと思います。そこへ、dTVも貢献していきます。

いい映画やいい映像は山のようにあり、私たちは単に作品を流通させる業者ではなく、一つ一つの作品に愛情を持ち、それらにどうしたら出会っていただけるかを常に考えてきました。また、今後もオリジナル作品を始めとしたプレミアムコンテンツを配信していきますので、dTVでなくては見られない作品もどんどん増えていきます。様々な映像サービスがありますが、そこへdTVという新しい“ミカタ”を入れることで、映像の楽しみ方がさらに広がっていきます。

選ぶのはお客様です。選んでいただくためには、dTVを実際に体験して、「これは便利だな」と感じていただくことに尽きます。ご販売店とは対話を重ねながら、dTVをお薦めするとテレビが売れる、お客様に喜んでいただける、そんなシナジーを生み出すサービスとして、今後もさらに新しい映像の楽しみ方を提案して参ります。

◆PROFILE◆

村本 理恵子氏 Rieko Muramotoo
4月27日生まれ、東京大学文学部社会学科。時事通信社にて世論調査分析に携わる。専修大学にて経営学部教授としてマーケティング戦略を研究。2000年に(株)ガーラ 代表取締役会長に就任し、ネットコミュニティビジネスの立ち上げを行い、2001年ナスダックジャパン(現在の新ジャスダック)に上場。同年ウーマン・オブ・ザ・イヤー ネット部門を受賞。2007年より、エイベックスの「レッドクリフ」の宣伝戦略立案に携わる。2009年にエイベックス通信放送(株)に入社し、宣伝部事業・マネジメント戦略室副室長に就任。「BeeTV」立ち上げと、立ち上げ後の事業戦略、マーケティング戦略、 編成戦略策定に携わる。現在もエイベックスのデジタル事業を推進。現在エイベックス・デジタル(株) 常務取締役、エイベックス通信放送(株) 取締役。

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