巻頭言
天の道
和田光征
WADA KOHSEI
「我々人間がいろいろの物や事を思ったり考えたりするのは、何のためにするのかということについての本当の意味を知っている人は案外少ない。むしろ、今日は今日、明日は明日だ、生きているそのままで生きていると思っていない。原因的なものを全然考えないで、これは俺の蒔いた種じゃないと思っている。
ところが、そうじゃない。心のなかの考え方や思い方が、現在あるがごとき人間にしている。自分の念願や宿願、つまり現在自分がああなりたい、こうなりたいと思っていることが、叶う叶わないということは、それが外にあるのではなくて、みんな人間の中に与えられた心の思う力、考える力の中にある。それが分からないと信念は固まらない」。
「…これから東京へ行こうと思って歩き出したら、もう東京に着いたと同じだ。原因と結果は統一されているのだから。ただ、時の問題によって、自分が到着する、しないだけの区別があって、観念のなかはもう行っちゃっているんだもの。
ある人が好きだなあと思ったときは、もう好きな最後の目的が何だってことを固めている」。
「…お前の生き方に誤りがあるぞ、と自覚を促すために病なり不運なりが与えられたとしたら、恨みどころか、感謝にふりかえ、喜びで誤りを是正する方へと、自分の心を積極的に振り向けることがいちばん必要だ。悔やんだり、嘆いたり、心を弱くする暇があるなら、本来の積極的な方面に心を振り向けかえる。結局、自分の心の置き所ひとつなんです、人生は。
たとえば事業がうまくいかない時でも『俺は運が悪いなあ』と思わないで、『ああ、何か俺の心構えなり、方法なりに大きな間違いがあったのを、こういう結果になって、天が教えてくれているんだなあ』と考えなさい。『どこかに俺の筋道の違っているところがあるんだなあ。ああありがたいことだ。このまま潰れてしまっても仕方ないのに、とにかく、生かしておいてくだされた。また盛り返すこともあるわい』」。
「心が積極か、あるいは消極かで、人生に対する考え方が全然両極端に相違してきてしまう。心が積極的であれば、人生はどんな場合にも明朗、颯爽溌剌、勢いに満ち満ちたものになるが、反対に消極的だと、人生のすべてがずっと勢いをなくしてしまう。人生を考
える自分の心が消極的だと、人生のすべてが勢いをなくしてしまう」。
「心の態度が積極的になると心の強さが不可能を可能に逆転させる…」。
私は1990年1月に入院した。その折、見舞いにこられた某メーカーの方から「成功の秘訣」という中村天風師の非売本を頂き、病床で何度も何度も読み感動したのだった。私にとってここから具体的に心の底に「真」が埋め込まれたと思っている。
その後、天風師は「成功の実現」はじめ多くの著書を出されて信奉者は圧倒的な多さである。私自身も積極を具現する思想の持ち主へと変質し今日を生きている。
そして私は天道が支配しているところに思想として行きついたと思っている。