巻頭言
すべてが「地殻変動」の時代
和田光征
WADA KOHSEI
夏の盛りである。そして世界中で異常気象が発生し、そのスケールは尋常ではなくすべてが巨大化している。私は早朝5時、6時にNHKのワールドニュースを必ず見るが、世界のどこにでも大洪水が発生し、そのスケールは「かつてないもの」と恐怖に怯えた被害者の声である。このことは温暖化現象によるものであることは間違いない。対策は講じられているはずだが、その呑気なスピードでは拡大化を阻止するのは難しいであろう。
「地震が多いけれど東京は大丈夫?」と故郷の友人からのメール。私は「地球が変動期に入っていると認識しているので警戒し、なおかつ準備もしていますよ」と応える。そのメールの後にも火山が次々と爆発している。御岳山に始まって、今年に入ってから箱根山、口永良部島、浅間山、西之島、さらにカムチャッカのジュパノフスキー火山の噴火、インドネシアのバリ島ラウン山の噴火、メキシコのコリマ山の噴火などがあり、地震もネパールの巨大地震は記憶に新しい。
これらは完全に地球の活動期の成せる現象であり、今後も当分続くのではないか。プレートのエネルギー放出はもとより、ヒマラヤ山脈に代表されるプレートの衝突と海の隆起によって誕生した巨大山脈周辺で巨大地震が発生している。火山の噴火とも無縁ではないだろう。
こうした天変地異は世界の有様を変化させてしまうのだろうか。人間社会においての巨大な地殻変動は1995年の“ウィンドウズ95”から始まった。あれからわずか20年で世界は激変した。その変化と、天変地異やさまざまな異変とが重なり合うのも不気味なことである。
イスラム国の出現が象徴的である。テロ組織がいつの間にか国家的なものを創ってしまい、ネットを通じて世界中から「戦士」を呼び込んで既存国家の秩序を破壊しようとしている。現在の国家や国々による連合関係なども無視して描いた道を行き、巨大な脅威となっている。こうした動きがアフリカ等にも拡散していくと、近代の力を見せつけ破壊を試みても情勢は悪化するばかりであろう。
太古の昔を振り返ってみると、すべては広い大地でしかない。大航海時代におこった植民地主義は、先住民がいる土地におかまいなしに大国が乗り込み領土としていった。宗教戦争も起こり、神の名のもとに土地を奪っていった。歴史の中でイスラムはいつも、奪われる側にあった。
ソーシャルメディア時代となって地勢も人間もボーダレスになっているのに、太古の歴史までも現在に呼び起こされて、人類は怖い世界へと導かれていく。ギリシャ問題の根本にもそれを感じる。ギリシャ文明がなければヨーロッパは存在しない。ラテン語、英語、ドイツ語、フランス語はギリシャ語に語源をもつと言われ、理工系の単語の80%は古代ギリシャが発祥だという。哲学もギリシャで生まれた。しかし現代のギリシャ問題に対する追加支援後の債務残高は、何と43兆4000億円である…。いずれにしてもユーロ圏は悩みの種を抱え込んで動き出していくしかないであろう。
(ギリシャの項、参考資料・文芸春秋七月号 塩野七生氏コラム)