宮地晋治氏

テクニクス集大成のリファレンスに加え
ラインナップ展開で新規層にアピール
パナソニック株式会社
日本地域コンシューマーマーケティング部門
コンシューマーマーケティング ジャパン本部
AVC商品部 部長
宮地晋治氏
Shinji Miyachi

テクニクス製品と次世代規格のBDレコーダーを投入、オーディオ銘機賞とVGPで栄冠に輝いたパナソニック。あこがれを抱かれる製品づくりとともに新たなマーケティング展開で拡販を推進する同社、宮地部長が意気込みを語る。

コンテンツの新たな楽しみ方を追求し
4K、ハイレゾ推進をさらに加速する

テクニクスの復活が
オーディオ市場を刺激

── R1シリーズ、C700シリーズがオーディオ銘機賞の開発特別大賞を受賞致しました。テクニクス復活のスタートを切った2つのモデルが大きな賞を獲得して、ブランド推進の弾みとなりますね。

宮地ハイファイオーディオのブランドとして展開していたテクニクスは、2010年のアナログプレーヤーの生産終了をもって休止しておりましたが、昨年IFA2014にてブランドの復活を宣言し、新製品としてリファレンスクラスのR1シリーズと、プレミアムクラスのC700シリーズを発表致しました。国内では今年の2月から順次発売しております。

復活にあたってはテクニクスファンのお客様を始め、業界の皆様に大変好意的に迎えていただけたと実感しています。こうして大きな賞を頂戴できたのも皆様のおかげと大変感謝しております。

R1シリーズは、新しいテクニクスブランドのトップエンドモデル。パワーアンプとプリアンプ内蔵のネットワークプレーヤー、そしてフロア型の大型スピーカーシステムの構成としています。復活に際してオーディオ市場の中で存在をしっかりと認識いただけるよう、現在のテクニクスの技術の粋をアピールするブランドの象徴的存在です。そのためにもしっかりとご試聴いただける環境づくりに務め、お客様に体感していただけるようさまざまに展開しております。

まず弊社ではパナソニックセンター東京とパナソニックセンター大阪の内部にそれぞれ試聴室を常設し、試聴イベントを精力的に行っておりますし、全国10店ほどのオーディオ専門店様でお取り扱いをいただき、店頭試聴会なども開催しているところです。

C700シリーズはオーディオファンの皆様にお求めやすい存在と位置づけています。プリメインアンプとネットワークプレーヤー、そしてCDプレーヤーも加え、同軸平板を採用した2ウェイの小型スピーカーシステムを揃えました。量販店様を含めて全国で100間口ほどに展示をいただき、うち80間口ほどは試聴いただける状況になっています。

さらにC700シリーズは、テクニクス事業の責任者である小川が推進し、コンサート会場などにも出展させていただいております。パナソニックセンターやご販売店様には自ら試聴をご希望される方々に来ていただいている一方で、音に対する感度の高い音楽ファンの方々にアピールする活動は、ブランドをあらためて認知していただくための重要性を感じております。

── ショップ店さんでの取り組みも進んでいますね。

宮地C700は全国の主要な合展で積極的に展示させていただき、試聴の場を設けています。また大きい会場ではR1も試聴させていただく機会を増やしています。オーディオ専門店様をなかなか訪れられないお客様でも、身近な合展の場で聴いていただけるようなご提案を強化していく取り組みです。ただR1となると音の位相などもすべて合わせて整った環境で試聴していただきたいですから、テクニクスを推進する専門のメンバーを直接会場に派遣しており、一度に多くのお披露目は困難な状況です。

C700はすでに実売にも結びついています。合展の開催期間中に連日聴きにきていただいたお客様もいて、認知が進んでおります。R1についても、合展からショップ店様での販売にどうリーチさせるかを今後もトライしていきたいと思います。ショップ店様でも、オーディオにもともと興味をお持ちのお客様に事前にアピールし、聴きにきていただくといった手だてを講じていて、成約率も高まっています。

── ご購入いただいたお客様へは、アフターフォローも重要です。

宮地売って終わりではなく、お客様とどうつながっていくかが重要です。それぞれのご販売店様でのフォローも期待致しておりますし、我々もお客様に対するクラブパナソニックへの会員登録を推進し、会員様へは定期的な情報発信をしています。テクニクスのお客様はご登録の率も高くなっています。ご販売店様とともにお客様との距離を縮めていきながら、ブランドを大事に育てていくことが必要だと思っております。

ラインナップを強化し
本格展開を加速する

── これまでの手応えのほどはいかがでしょうか。

宮地C700の販売状況は今年我々が計画した数字をクリア致しました。R1についてはじっくりと認知いただきつつ、さらに訴求を加速してお客様にリーチしたいという思いです。ありがたいことに商品に対する高いご評価をいただいており、これを励みとしてこれから本格的な攻勢をかけたいと思います。

ブランドの再スタートにあたっての2モデル展開でしたが、やはりラインナップ拡充を求める声はたくさん頂戴しました。それに対してはこのほど、来年投入する新製品を発表させていただいております。

── 新たに強力なモデルが加わりましたね。

宮地テクニクスは今年ブランド誕生の50周年を迎えていますが、次の50年へ弾みをつけるべく、ますます取り組みを強化しています。新製品はそうした中で投入されたもので、プレミアムクラスの中での新たな製品としてCDステレオシステムのSC-C500を、そしてハイファイヘッドホンのEAH-T700を来年の1月より発売します。またプレミアムクラスとリファレンスクラスの間に新たに展開するグランドクラスをご提案し、新製品としてGシリーズを準備しています。さらにご要望の高いアナログプレーヤーも計画して、順次発表する予定です。

スピーカーに相対してじっくりと聴いていただくR1やC700に対して、C500は部屋のどこで聴いても拡がり感や音楽表現を楽しんでいただけるもの。ライフスタイルに寄り添うデザインも採用して、音楽ファンのお客様にアピールして参ります。現在のテクニクスのお客様はオーディオファンを中心としていますが、C500を加えたことでお客様層を広げていきたいと思います。こうしてライフスタイルに合わせた音楽の聴き方もご提案しながらラインナップを拡充していくことによって、さらにそこからR1やC700へのお客様の導引も図って参りたいと思います。

── 御社は昨今、モノ単体の訴求ではなくひとりひとりの生活に対する訴求へとご提案の方向性をシフトしています。

宮地家電の価値について、機能価値から感性価値へ、家電にあこがれをもっていただくことに重点を置いています。基本機能がしっかりとあって、さらにお客様の感性に響く価値提案をお客様ひとりひとりにどう行っていくのか。テクニクスブランドは特にそうした考え方で丁寧に、お客様と一緒に作り上げていく存在だと考えています。これからの取り組みにも、ますますご期待いただきたいと思います。

宮地晋治氏次世代BD規格に初対応
4K化を加速するレコーダー

── 次世代のBDレコーダーDMR-UBZ1が、VGP2016の批評家大賞を受賞されました。

宮地高い評価をいただき、大変ありがたいと思います。レコーダーのディーガは、業界の様々な提案のトップランナーとして開発されてきましたが、ブランドを立ち上げて以来多くの皆様に支持されて参りました。UBZ1は新たなブルーレイの規格であるUltra HDブルーレイの再生に世界で初めて対応したエポックメイキングなモデル。今年のCEATECやIFAで参考出品して大きな反響をいただいており、レコーダーとしてのブランドが確立した日本の市場をターゲットに開発を進めてきたものです。今後はグローバルに展開していきつつ、この新たなブルーレイの規格を各メーカー様と連携して作り上げながら、4Kテレビと組み合わせての感動の映像体験や、レコーダーの新しい価値をお客様にご提供していきたいと思います。

── DMR-UBZ1のディーガの中での位置づけは。

宮地我々は従来からいい画、いい音で映像を楽しむ体験を追求し、ディーガの9000シリーズとして展開してきましたが、DMR-UBZ1はその集大成。新開発の4K対応エンジン「4Kリアルクロマプロセッサplus」を搭載して、自然な質感と立体感にあふれた4K映像を実現、さらに高剛性・低重心の筐体や高音質パーツの採用など徹底した高音質設計と振動対策を施し、ハイレゾオーディオにも対応した最高峰、最先端のモデルです。画と音に対してこだわりをもつお客様を中心に訴求して参ります。

またパナソニックは今年、「全自動ディーガ」の訴求で録画の煩わしさをなくしながらテレビの新しい視聴スタイルをご提案してきました。さらにこの10月には、レギュラーモデルでも6番組同時録画モデルを始め、トリプルチューナー、Wチューナー、シングルチューナーモデルなど5機種をラインナップしました。

ディーガの中ではトリプルチューナー以上のモデルの販売構成比が大きく上がっております。特に全自動ディーガでは録画予約しなくとも見逃した番組を見られることや、それを外出先からも楽しめるといった新たな価値がご提供できます。タブレットやスマートフォン、PCなどディスプレイのあるものに対して、時間と場所を問わず見る楽しみ方をご提案し、お客様の生活スタイルを変えるようなチャレンジをしていきたいと思います。

レコーダーとコンポで
ハイレゾワールドも推進

── 店頭でのお取り組みは。

宮地各法人様と一緒に売り場作りを進めております。DMR-UBZ1は発売に際してUltra HDブルーレイ規格の映像ソフト「るろうに剣心 京都大火編、伝説の最期編」のプレゼントキャンペーンも実施していますが、店頭でもこのコンテンツを絡めて我々がご提案する画質を皆様にご確認いただけます。4KテレビCX800シリーズのHDR対応へのファームウェアバージョンアップが可能になり、レコーダーとテレビの相乗効果で4K化を加速して参ります。

また、全自動ディーガの「なにもしなくてイイんです!」をキャッチとしたプロモーション、さらに全国のご当地映像を使ったプロモーションも進めています。地区ごとにご当地にちなんだイベントも仕掛けてのスポット展開や、電車の車両ジャック、当社提供のテレビ番組でのCMなど、録画の機会が増す年末に向け、さらなる需要喚起を行っていきたいと思います。

さらにはオーディオでハイレゾコンポと絡めた訴求も進めたいと思います。UBZ1を始めとするハイレゾ対応レコーダーにダウンロードしていただき、ハイレゾ音源をSC-PMX100/70で再生して楽しむ。ここではクラブパナソニックを利用したキャンペーンを推進します。パナソニック商品のご購入者が登録する会員サイトクラブパナソニックで、ハイレゾレコーダーを所有されている方に向け、PMX100を購入された方に「CLUB Panasonicコイン」をプレゼントするキャンペーンです。

これはテストマーケティング的な要素があって、「CLUB Panasonicコイン」の使用実績に応じてお客様のリピート率が明らかになり、そのデータを解析し売り方についてご販売店様へのご提案にも結びつけます。お客様の購入履歴を分析して、お店様との販促提案に結びつけるということです。また年末からは、ハイレゾ対応レコーダーにチラシを同梱して、PMX100/70を組み合わせてハイレゾ再生が楽しめるという訴求も行います。

店頭でも、ハイレゾコンポとレコーダー、ハイレゾヘッドホンを連携させた提案を、全国で100間口での展開を目指します。パナソニックとしてのハイレゾの聴き方提案で、年末から積極的に着手し春需要を視野に形にして参ります。新しい音の聴き方の提案としてレコーダーの価値も変えられると思っています。こうした取り組みで、複数商品の連携によるハイレゾ提案をすすめ、ご販売店様の単価アップに貢献したいと思います。

◆PROFILE◆

宮地晋治氏 Shinji Miyachi
1988年、九州松下電器株式会社(現パナソニックシステムネットワークス株式会社)入社。2012年 AVCマーケティング ジャパン本部 商品グループ グループマネージャー。2013年 コンシューマーマーケティング ジャパン本部 AVCグループマネージャー。現在に至る。

back