巻頭言
DMS ─ ダイレクト・マーケティング構想 ─
和田光征
WADA KOHSEI
2016年のスタートに当たり、音元出版の理念と私の基本的な考え方につきましてお話し申し上げます。
理念と致しましては、創業者である先代の岩間正次が創設した「業界の建設的な発展に寄与する」という社是でございます。私は「業界」とは何かという本質の認識と致しまして、それを「商品」と理論づけました。そして業界の繁栄のための需要創造、市場創造こそ私どもの使命であると認識し、40年近くにわたって厳守して参りました。このことは未来においても不変であります。
その活動の第一歩は、1971年、27才の私が提案したカセットテープにおける「テープ元年」、そのシンポジウムを開催し大成功をおさめたことです。以来、「シスコン」「ミニコン」「単品コンポ」「オーディオアクセサリー」「ハイコンポ」「デジタルサウンド」「ホームシアター」「ヘッドホン」「アナログ」「ネットオーディオ」において、市場創造に全力投球して参りました。
私の考え方は、「仮説と検証によって未来を読む」という基本思想があり、それを「明日の今日」の思想として40年近くに亘って業界に訴えて参りました。このことは、私どもの全社の基本であり、全社員が共有している原則でございます。
また、1970年にオーディオ専門店を育成する主旨から「オーディオ専科」を創刊し、私は編集責任者として「市場創造」と「専門店経営」に全力で取り組みました。北海道から九州までの専門店、量販店すべてに取材に伺い、今なお、中には三世代にわたって店主さんとのお付き合いが続いていますが、音元出版が流通に強いのはそうした経緯によるものであります。流通、メーカーの経営陣との人のつながり、商品、マーケティングに精通しているのが音元出版の強さでもあります。
1978年、創業30周年を記念して「オーディオ銘機賞」をスタート、また1987年「ビジュアルグランプリ(現VGP)」、2007年「デジタルカメラグランプリ」、2008年「アナロググランプリ」を創設。市場創造のけん引に重要な役目を果たし、そのさらなる発展を期して、ファイル・ウェブを通じて世界にも発信致しております。
2016年の事業の要は、月間140万人のオーディオ・ビジュアルファンがユニークユーザーとして集結するポータルサイト「ファイル・ウェブ」と、リアルの専門誌、および店頭誌の理想的な有機的連携・連動を達成することです。人材を含めて、強いものをより強くし、皆様にお応えする1年になろうかと存じます。
ファイル・ウェブの読者は、オーディオファンの先頭集団と認識しております。30代、40代が中心であること、年収は800万円以上、持家率80%の富裕層であること、そして昔ながらの専門店に行かない方も多数いることに驚かされます。
そのことは、あるイベントで証明されました。700万円のスピーカーシステムの試聴会で、ファイル・ウェブにてそのグレードのスピーカーを鳴らせるオーディオシステムを保有しているかも調べ、厳正なるターゲットのお客様として120名を集客しました。そこで見る、聴く、触れる体験をしていただいたところ、購入したい方が5名、購入を検討する方が19名という結果を得ました。また700万円でなく200万〜300万円なら購入したい方は全員に上りました。
こうした富裕層が間違いなくファイル・ウェブの核を形成し、オーディオの先頭集団として存在し、さらに増殖しているのです。正直驚きました。ここに、ファイル・ウェブの凄さがあると認識しました。
そこで私どもは、このようなことに注力し、ダイレクト・マーケティング・システム(DMS)として展開致します。ファイル・ウェブ読者を対象に、我々の専門誌のノウハウも駆使し、2016年の業界のマーケティング戦略として展開して参ります。まさに「市場創造の極」として、業界に強く貢献して参りたいと存じます。