- 歴史ある2大ホームAVブランドの個性を活かし
新たなシナジーの創出へまい進する
- オンキヨー&パイオニア マーケティングジャパン株式会社
代表取締役会長
- 松本 智 氏
Satoshi Matsumoto
オンキヨーとパイオニアのホームAV事業が統合して1年、新組織での歩みが着々と進んでいる。2つの強いブランドを展開し市場を活性化する。強い信念のもとに進められている新たな取り組みを、新会長の松本氏に聞く。
産業政策としてのオーディオは
コアなマーケットで体験を通じて
新たなお客様の興味をひくチャンスを広げ、
能動的に行動する
新たな価値創造で
驚きと感動を与える
── 本年の2月より現職に就任された松本会長にご登場いただきました。
松本まずは、このたびの熊本地震において、お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、 被災者の皆様に心よりお見舞いを申し上げます。私どものパートナーであるご販売店様も数多く被災しておられ、ご心労はいかばかりかとお察し申し上げます。皆様の一日も早い復旧・復興を心よりお祈りいたしております。
── オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンがスタートして、1年が経過しました。昨今のお取り組みをご紹介ください。
松本4月からスタートした2016年度は、新たな覚悟でまい進しております。我々が掲げる企業ビジョンは、時代の一歩先を行く価値観の創造。他にないもの、新しい提案のある商品を1台でも多く供給して、驚きと感動を世の中に常に提供していきたいという思いを持ち、バイタリティに満ちた、お客様に信頼される元気な会社として活動していきたいと考えています。
ホームAVの市場は徐々にシュリンクし競争が非常に激しくなっていますので、これまでと同じことを行っていては現状を打破することはできません。まずは市場としっかりと向き合い、ニーズを吸い上げる。お客様の一番近くにおられるご販売店の皆様とともに取り組ませていただき、それを事業部門にフィードバックして新しい提案を形にしていきたいと考えます。パイオニアブランドの事業部門はこれまでの新川崎から両国オフィスに移管し、我々営業部門とのコミュニケーションがとりやすくなりました。切磋琢磨しながら最適な商品をご提供し、ホームAV事業の活性化を継続して参ります。
そのためにも、新しい価値観を創造し、事業を拡大していくことは必須で、これが事業方針です。市場を活性化するための価値の創出がなくてはオンキヨーもパイオニアも、ブランドを支えることはできません。その資産を確保していくことが大前提となります。それを支える3つの戦略として、コアコンピタンスの活性化、事業拡大と新規事業の創造、マーケティングによる顧客創造機能の強化を掲げています。
コアコンピタンスの活性化、これは言わずもがな、ホームAVの市場がフィールドになります。過去数十年にわたり誕生してきたいろいろなテクノロジーを通じて提案できるもの、現在の市場で求められるものは何か、ずっとディスカッションしてきました。そしてハイレゾとオブジェクトオーディオという2大キーワードのもとで、我々の力を発揮していきたいと考えています。
事業拡大と新規事業の創造では、ホームAV商品をベースに新たな事業範囲の拡大を図ります。我々がこれまで努力し拡大してきた特機事業、インストールビジネス、そして住宅販売の場と、販売網をより活性化していく考えです。さらに新規協業も視野に入れています。我々が培った営業力を駆使し、他の企業様をパートナーとした新たなサービス提案をしていきたいと考えています。我々の資産、人材、モノを利用して事業を拡大して参ります。
顧客創造機能の強化としてオンキヨー、パイオニアという我々の2つのブランドにおいて注力しなければならないのは、コアコンピタンスであるオーディオとAVの領域でのハイレゾとオブジェクトオーディオです。我々がもっとも得意とし、お客様にも期待されるところ。2つのブランドそれぞれが持つ強みや経験値を活かした商品開発、マーケティングを行って、顧客創造を実現して参ります。
私の信条として重視したいのは、ソフトとハードの両輪での展開です。カーオーディオを初めて展開する際には、楽曲のパッケージである8トラックテープが必要でしたし、映像の展開では私自身、前職を通じて、ハリウッドの映画会社と交渉して作品の販売権を獲得し、レーザーディスクとしてパッケージを提供しました。コンテンツがなければ、どんな優れた機器でも真の感動をご提供することはできません。注力していくハイレゾの展開でもそれは同様です。オンキヨーはe-onkyo musicというコンテンツ配信サイトを有し、多くのハイレゾコンテンツを抱えていますが、これが大きな力になります。オンキヨー、パイオニアのハード機器とe-onkyo musicで力強く市場を拡大して参ります。また、オブジェクトオーディオの展開では特に、体験の場を広げていくことが重要と考えます。そのためにはAVレシーバーを核に高音質な製品を提供し、ご販売店の皆様にご協力をいただきながら一緒にマーケットをつくっていきたいと考えています。こうした取り組みを喫緊の課題として進めて参ります。
新たな年度が発進し
いよいよシナジーを発揮
── オンキヨーとパイオニア、2つのブランドを扱うことになって1年ですが、ブランドの棲み分けや組織はどのようになっているのでしょうか。
松本別々に成長してきた2つのブランドには、互いにバッティングする部分がありました。それぞれで競合し合うのでなく、カテゴリーや商品をうまくまとめ、ラインナップをきちんと揃えていくことが第一歩となります。そういう意味ではこの1年間で、商品ラインナップの整理ができました。また製造の部分でも部品の共通化などのいろいろなメリットが出せています。それをご販売店様のご商売につなげ、販売のしやすさや利益につながっていくよう工夫していくのが我々の使命です。
そして数だけを追うのではなく、すぐれた商品を効率的に展開して利益を創出する。新しいテクノロジーはどんどん出てきますが、そこに敏感に反応していかなくてはなりません。事業部門はシーズをとらえて商品化していき、我々はマーケティングを駆使して販売していく。私見ではありますが、同じ価格帯の中でも個別の価値をご提供できるのであれば、それぞれに活かすことはできるはずですね。そういうところに、2つのブランドの新たな色、新たな個性をつくっていければさらなる強みになります。2つのブランドがそれぞれに輝けるような状態にしていきたいですね。オンキヨーとパイオニア、お互いのブランド力を最大化しながら取り組んで参ります。
── 2つのブランドを同じ組織に統合するには、いろいろな調整が必要です。1年間を経て、いよいよシナジーを発揮するタイミングになったのではないでしょうか。
松本オンキヨーは今年70周年を迎え、パイオニアは78年のブランドの歴史があります。それぞれが培ってきた個性はしっかりと活かしてこそ、シナジーが生まれると考えます。それぞれのよさを社内でもしっかりと認識しながらマーケティング展開を進めていますが、ようやくその方向性がまとまってきました。あと必要になるのは、我々自身の認識のすりあわせだと思っています。オンキヨーでやってきた人間とパイオニアでやってきた人間、それぞれ固有の経験がありますから、枠から解き放ち熟成させ、新たな組織としてのシナジーを創出したいと思います。
── ご販売店対策はどのように進められていますか。
松本この統合にあたっては社内調整にある程度時間がかかってしまい、その間はご販売店様にもご迷惑をおかけする場面があり、大変申し訳なく思っております。ただご説明に上がる中で、ご販売店様に「頑張っているじゃないか」とのお声も頂戴し、おかげさまで我々がやろうとしていることをご理解いただけていると感じています。
私自身も直接お伺いして2つのブランドへの応援をお願いしながら、ご販売店様からご期待いただいていることを実感する場面は多々あります。大変ありがたく身の引き締まる思いで、2つのブランドの個性を発揮させ、シナジーにつながる取り組みをしっかりと行って参りたいと思います。
大きな可能性を秘めた
オーディオに期待
── 昨今の市場動向をどのようにご覧になりますか。
松本景気そのもののよくない雰囲気は続いていますね。しかし、人々が音楽を聴くシーン、音楽に親しむ時間は飛躍的に広がっています。音楽を聴く方の数が増えて、家の中でも外でも、車の中でも皆さんが音楽を楽しんでいます。そう言う意味では、オーディオはこれからまだまだいろいろな可能性を秘めていると思います。音楽は新しいものもあれば、古いものもある。古いものは言わばタイムマシーンですよね。かつて聴いていたその時代の記憶が瞬時に頭のなかに蘇る。いつでもどこでも音楽を取り出して聴けることは、非常な喜びです。その再生に携わる我々の役割は、そういう意味でも非常に重要なもの。人の感情を揺り動かし、感動を起こす、そんな存在でありたいと思います。
前年割れが続くホームAVのマーケットですが、そんな中でも必ず残っていくブランドがある。それはなぜか、ほかとは何が違うのかということを、しっかり認識しなくてはなりません。市場のニーズを的確に把握し、それに対して提案ができる。新しい素地をいち早く見つけて商品に結集させる。そうした総合力が問われると思います。
マーケットはどんどん変わっていますが、その中でもコアなマーケットは残っています。また逆に、これまでそんなマーケットの存在を知らなかった方が、体験をきっかけに興味を示してくださる可能性もおおいにあります。チャンスを広げ、いち早く能動的に行動しなくてはならないと思います。
あとはサービスも大事ですね。すぐれたアフターサービスをご提供し、さすがオンキヨー、さすがパイオニアと思っていただく。商品の品質がしっかりしていることは大前提ですが、それをバックアップするサービス部門も強化することは鉄則です。ここもオンキヨー、パイオニアの経験を活かして取り組んでおります。たとえばサービスマンの体験としてこんな例がありました。修理の依頼をうけてオーディオ製品をお預かりした。それは亡くなったご主人が大事にしていたもので、奥様からの依頼でした。古いものでしたが何とか修理してお納めした時、また元の通りに鳴った音楽を聴いた奥様の顔が忘れられないと。
音楽はそういうことができる存在ですし、そういう仕事に我々は携わっている。仕事のすべてが感動につながるということですね。そして人を感動させることこそ、ブランドの価値だと思います。
オンキヨーもパイオニアも歴史あるブランドです。それぞれしのぎを削ってきたわけですが、こうして統合し、力を合わせて価値訴求にまい進しています。互いに切磋琢磨して多くの感動をご提供し、1+1が3にも4にもなるよう、志をひとつにしてやって参ります。同時に、我々の志をご販売店様にご理解いただき、2つのブランドを愛していただけるように努めて参ります。こうした現場の会長の任を与えられたことを、大変光栄に感じます。これからもしっかりと頑張って参ります。