巻頭言

継続は力

和田光征
WADA KOHSEI

「オーディオアクセサリー」誌の創刊40周年にあたり、オーディオ編集部の要請で創刊当時を昨日のことのように想起し語った。オーディオの日本全国での普及率が50%を超えたこと、15才〜26才の人口が1000万人近くになったこと、団塊世代の高校・大学の進学率が上昇したことが創刊の背景にある。

当時は「オーディオアクセサリー」なるタイトルに、「あれは純粋なオーディオ誌ではない」との声が巻き起こったものだが、普及率50%を超えていけば、使いこなしやお金をかけないクオリティアップを推進する一方、「グレードアップ」つまり機器の買換えを誘導するのが基本方針。従って「オーディオアクセサリー」誌は、オーディオ機器にアクセサリーの情報も加え、幅広く深い、圧倒的な情報量をもつオーディオ誌であると私は主張した。

そのことは、ハイエンドオーディオや普及価格帯の単品コンポに加え、ケーブルや電源などアクセサリー市場も繁栄した現状が証明していよう。マニアの楽しみをこれほどまでに高め、広げたオーディオ雑誌があろうか。基本的なポリシーを厳然と進めるものしか成長し得ない、私の哲学の具現である。

「オーディオ銘機賞」も1978年の創設から38周年となり、小社創業30周年の記念事業としてスタートしたものである。編集部は直近の162号で特別企画を組み、ここでも私は創設のいきさつを語った。

「オーディオ市場において希求される製品(商品)とは、まずユーザーが満足し安心して長期使用できるものであること、販売店も自信をもってお客様に奨められ、且つそれによって信用を保持できるものであり、メーカーも安定して生産、提供できるものとされる」との考え方を前提に、それらを選定することが創設の目的である。

いずれにしても、販売店もユーザーも安心して売り買いできるものが選ばれなければならない。評論家の突出した視点のみで選考されると市場の実情にそぐわないことも起こり得るし、販売店のみで選考すると販売効率の良い製品ばかりに目が向けられることも起こり得る。そこでオーディオ銘機賞では、審査員としてオーディオ専門店がオーディオ評論家と同数参画し、それぞれに審査委員長が存在する。そうしたことも他のアワードとは全く異なり、話題を呼んだ。

さらに対象製品に該当するには条件がある。当初は、国産・海外産を問わず国内市場で継続販売されていること、業務用やOEM用などの一般ユーザーを対象としない製品は除外することとされたが、これに対して選考委員が「たとえ流通性は低くとも、モデル自体がその性能や品格において他の模範となる製品。ユーザーにとって憧れを抱かせるものは対象とする」として一致した。また「名機」か「銘機」かの議論についても、我々主催側の「オーディオ銘機賞」の表記で承認され、現在に至っている。

第一回開催の1978年6月の審査会では、評論家側の審査委員長は浅野勇氏が、販売店側は鈴木七之丞氏が勤めてくださった。第38回目の本年10月の審査会では、評論家側の審査委員長は藤岡誠氏、販売店側は森田正二氏が勤めてくださる。創設時のポリシーをしっかりと守り、「オーディオアクセサリー」誌を始め、現在月間ユニークユーザー数150万人の「ファイル・ウェブ」、さらに店頭フリーペーパーで大々的に発表。世界からも注目を頂いているのが「オーディオ銘機賞」の現状であり、取り組みをさらに強化したい。

これからも一貫したポリシーで業界に貢献していきたい。まさに「継続は力」である。

ENGLISH