池田 達史氏

自社の強みを生かした新経営戦略を推進
販売店様とのWIN-WINの関係構築を強化
オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン株式会社
代表取締役 社長
池田 達史 氏
Tatsushi Ikeda

オンキヨーとパイオニアAV部門の経営統合から1年半。さらなる飛躍を目指し、組織力を高めて取り組む事業展開について、新社長の池田達史氏が語る。

新たな商材とともに自社ブランドを高めていく
組織を活性化し、次なるステップに備える

有機ELテレビの販売にも
新たに着手

── オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパンの新社長となられた池田さんにお越しいただきました。

池田ここ数年オーディオ業界は厳しい状況にあります。当社はマーケティング会社としてメーカー営業を行っていくのが本筋ですが、業界自体が苦戦している今、それだけではなかなか効率的にまわしてはいけません。自社の強みをあらためて掘り下げ、経営資源を有効活用したいという思いでいろいろな活動に着手しています。昨今では、同業他社様の営業拠点はほとんど東京と大阪の2ヵ所に集約されています。しかし当社は今なお仙台、東京、名古屋、大阪、福岡に拠点を持ち、北海道や沖縄にも人材を置いて地域密着の営業体制をとっています。専門性を持った営業マンを全国に抱えているわけで、これを有効に活用するのが我々の強みとなります。この体制のもと、市場に軸足を置き変化の先取りをして、新しい価値を提案する。世の中の一歩先をいく価値観で市場創造商品を提供し、事業を拡大する。これが経営の考え方のベースです。

そして我々はいろいろなチャネルを持っています。ホームAVでは、インストール事業、オンキヨーでずっと培ってきた住宅ルート、カラオケやレンタル業界などパイオニアが培ってきた業務用のチャネル。さらにはPASS店と呼ばれる地域店のルートです。パイオニアではオーディオだけでなくAVも展開していた際、テレビやレコーダーも商材として地域店様との関係も構築できました。それがパイオニアのパートナーショップであるPASS店です。しかしその関係も、商材がなくなってからは休眠状態になっていました。けれども、ここに商材が存在すれば、得意先様とふたたびWIN-WINのなりわいができるわけです。ではこうしたチャネルに何を提案していくかと考えますと、既存のオーディオ商品群だけでは不十分な部分があります。

実はこのほど7月1日に、LGエレクトロニクス・ジャパンさんとある契約を結びました。先方では、有機ELディスプレイを日本市場で立ち上げるにあたって量販店様での展開をされていますが、さらなる価値提案拡大の方法を模索しておられました。そこでパイオニアがかつて行ったプラズマテレビ「KURO」での高付加価値訴求の展開について、昨年私どもへ相談に来られたのが始まりです。そしていろいろな話し合いをしていき、LGブランドの商材を、我々が持つLG様とすみ分けられた販売ルートにて販売することとなりました。まずはLG OLED TVのフラグシップモデル、65型の「OLED 65E6P」と55型の「OLED 55E6P」を我々のチャネルで展開します。すでに7月1日に販売がスタートしました。シリーズにいろいろなバリエーションがありますが、この2モデルを私どもとしてはメインで取り扱うと言うことで、互いに戦略を共有しています。

「KURO」のノウハウで
有機ELテレビを訴求

池田 達史氏── すごいニュースです。御社はオンキヨー、パイオニアのブランドに加えてLGブランドの商品を扱う。そしてあのKUROの展開が有機ELテレビで再開されるわけですね。

池田そういうことです。すなわち当社がLG OLED TVをLGエレクトロニクス・ジャパンさんから仕入れ、販売するというスキームを契約しています。ただ大物商品ですので、在庫と物流はLGエレクトロニクス・ジャパンさんにもっていただきます。有機ELは、KUROの時代のプラズマテレビと同様に自発光パネルです。画質のポイントとして黒のよさを全面に出してきたKUROと、訴求の方向性もマッチして共感を得られるものとなりました。そして新しい素材である有機ELの量産化に成功したのはLGエレクトロニクスさんだけ、その価値も非常に大きい。

これだけ価値あるLG OLED TVですが、日本で本格的に普及させるためには、日本のお客様が重視する品質とアフターサービスの面をしっかりとフォローする。そこでパイオニアサービスネットワークさんにもご協力をいただくこととし、お客様に安心して買っていただける体制を整えました。販売においては、まさにKUROを扱われていた有力PASS店様が皮切りです。昨年末頃から数店様をLGエレクトロニクス・ジャパンの本社にご招待し、LG OLED TVのプレゼンテーションを受けていただきました。お客様に一番密接な販売店の皆様が商品を気に入り、ぜひ売りたいと言ってくださらなくては話になりませんし、そうでないと当社はご協力できないとも明言していたのです。KUROを売ったご販売店は、高付加価値テレビのよさをすべて理解し、売り方のノウハウを熟知されています。そういう方々が商品を見てやる気になるかどうかがポイントでしたが、説明会では皆様から「これはすばらしい」と言っていただけました。PASS店は現在100店ほどですが、私どもの考えに共感してくださる流通様と積極的に手を組み、取扱店舗の数も増やして参りたいと考えています。

KUROの高付加価値に共感してくださったお客様を抱えておられる販売店様がやる気になって、販売店様も、そしてLGエレクトロニクス・ジャパンさんも私どももWIN-WINの関係となる。そうしたことを推進していくのです。それからもちろん、オンキヨー、パイオニアの商品にもますます注力致します。LG OLED TVの展開でも、ホームシアターシステムとのセット販売をご提案して参ります。またハイレゾとオブジェクトオーディオの2つを切り口とした商品展開も加速して参ります。自社のブランド商品を高める戦略と、自社のパワーを高める戦略の双方を、しっかりとやっていく所存です。

そうなると、ますます重要になってくるのが営業力です。営業マンの育成、営業品質の向上を実現しなくてはこうしたスキームは成り立たなくなります。ご販売店との関わりをより強くし、ご販売店の商売が上手くいくしくみを構築して参ります。

池田 達史氏万全の体制を整え
新たな夢を描く

── 冒頭におっしゃったとおり、抜きん出た営業体制を活かす恰好の商材を得て、組織がさらに活性化できるわけですね。

池田オンキヨー&パイオニアという新会社が設立して1年半ほどが経過しました。当初はオンキヨーとパイオニアそれぞれの会社ですでに計画されていた商品がリリースされてきましたが、新会社として企画・開発・設計・生産部分を共有化してからの商品もようやく出て来るタイミングとなりました。オンキヨーブランドでのハイレゾミニコンポX-NFR7TXや、パイオニアブランドでのホームシアターシステムのHTP-CS1を皮切りとし、9月以降は新商品がどんどん登場して参ります。今年はオンキヨーの70周年に相応しいモデルのご提案も検討しております。

それらを展開するにあたっては、コンテンツとの両輪がキーとなりますが、e-onkyo musicとのタイアップもより強化して参ります。こうした両輪での展開ができるのは当社ならでは。ハイレゾコンテンツもどんどん増えていますから、ハードとソフトの戦略をしっかり固めていきます。また業界として、テレビ放送の音についても言及していきたいですね。映像は2020年に向けて4Kや8Kの提案がどんどん展開されていますが、音の部分はついてきていない。日本オーディオ協会の一員として連携し、テレビから出てくる音がハイレゾであるような取り組みを提案していきたいと思います。やらなくてはいけないことは盛りだくさんです。

── 有機ELの展開についても楽しみです。テレビの既存の概念を超え、可能性が無限に広がると思います。

池田有機ELは液晶やプラズマとは違う特性を持ち、ディスプレイを紙のように丸めて持ち運んだりすることもできます。あとは提案力。特性をどう活かして市場に展開するのか。そういったことを、LGエレクトロニクス・ジャパンさんと話し合い、我々のノウハウを活かして展開していきたいと思います。

── 商品の仕入れ販売だけでなく、企画の段階から関わっていくということですか。

池田将来的にはその可能性もあります。市場に対してこんな提案をしたい、そのためにこんな商品が必要になる、といった呼びかけをすることもあるかもしれません。我々がKUROの経験で培ったものを活かし、その上でさらに新しい市場提案をすることが、一緒にやらせていただく大きな目的のひとつですから。KUROの展開では、ユーザー登録、定期的なメンテナンスのご案内、電話でのご用伺いなどを常々行いました。お客様のお宅に商品があれば、さらにいろいろなご提案もできます。これからもLGエレクトロニクス・ジャパンさんとはいろいろな話をさせていただくことになると思います。

── これからが楽しみです。

池田社内の皆がやる気を出して盛り上がっています。統合した当初は、流通の皆様にご迷惑をおかけし、お叱りをいただく場面もありましたが、こうして組織も商品もまわるようになりました。いよいよ次のステップに入ります。社内もいろいろと変えて、来年4月に向けてセールス機能やサービス、物流ももういちど見直し、情報システムの変更にも着手しています。すべてを一新させる意気込みでしっかりと整え、次の動きに備えます。

有機ELという価値あるパネルをビジネスとして取り扱うことができる。LGエレクトロニクス・ジャパンさんと手を組み、ノウハウを共有しましょうというところにいます。それはテレビを売るというよりも、未来につながる絵を描くということと考えています。今後とも『驚きと感動』をお客様へご提案していくことを念頭に、持てる商材を通しての価値創造を推進して参ります。

◆PROFILE◆

池田 達史氏 Tatsushi Ikeda
1956年2月6日生まれ、1978年7月 パイオニア(株)入社。2007年4月 パイオニアマーケティング(株)取締役に就任。2013年7月 パイオニアホームエレクトロニクス(株)取締役に就任。2015年3月 オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン(株)取締役副社長に就任。2016年6月 オンキヨー&パイオニアマーケティングジャパン(株)代表取締役社長に就任、現在に至る。

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