- 新たなお客様へ認知活動も強化し
プロジェクターの市場拡大を推進
- エプソン販売株式会社
取締役
販売推進本部長
- 小川 浩司
Koji Ogawa
プリンターやプロジェクターを柱に、コンシューマー商材や、BtoBなど多くの商材を展開、さまざまな分野で存在感を高めているエプソン。エプソン販売の販売推進本部長に新たに就任した小川氏が、これからの取り組みと意気込みを語る。
インタビュアー/徳田ゆかり Senka21編集長 写真/柴田のりよし
プロジェクターの
店頭展開を再強化する
── 販売推進本部長に就任されて、初めてのご登場です。まずご経歴をお聞かせください。
小川1987年にエプソン販売に入社後、プリンターのOEMに関連する業務に9年半ほど携わって、それからビジネス系の商品でご販売店を2年ほど担当し、販売推進本部に2年、その後5年ほど宣伝部におりました。2005年に首都圏営業本部で部長職を拝命し、初めて量販店様を担当させていただきました。さらに営業企画に携わり、広域営業本部を経てビジネス営業本部に携わり、この4月に販売推進本部に参りました。
4月の組織変更で新たにスマートチャージSBU本部が創設され、私の前任の鈴村が本部長に就任していますが、ここではエプソンが新たに投入した、オフィス向け複合機機能を持つ高速ラインインクジェットプリンター「LXシリーズ」の販売推進から営業までを担当しています。またオリエント時計が統合されたウエアラブルの分野は、コンシューマー営業本部で販売推進も展開します。
私ども販売推進本部では、それらを除いたすべての分野の商材の販売推進を担当しております。さらにサービスと広告宣伝については、オフィス向け高速プリンターもウエアラブルも含めてすべて販売推進本部が担当します。そういう意味では、私どもはすべての商品に関わっていることになりますね。
── プロジェクターの昨今の展開はいかがでしょうか。
小川ホームプロジェクターは、DVD一体型モデルを皮切りに、量販店様との協力体制で店頭展開も積極的に推進して参りました。その後フルハイビジョンのホームプロジェクター「EH-TW5200」が大ヒットし、販売を大きく伸ばしたものの、足元ではインバウンド需要の反動もあり、やや停滞しております。これを今後、どのように変えていくかが課題です。店頭プロモーションは、もう一度強化しなければならないと考えます。多くのお客様に対して、プロジェクターの魅力や存在そのものがまだまだお伝えできていない。つまり伸長の余地はおおいにあるのです。
また、ピコプロジェクターが近年各社から発売され、プロジェクターのひとつのジャンルとして市場成長が期待されています。エプソンとしましては、市場の裾野拡大を歓迎しつつ、より高画質で明るい映像を求めるお客様に対しては、多様なニーズでお応えできるよう、商品ラインアップの拡大を図りたいと思います。一方で、当社の調査によると、ピコプロジェクターを購入された方々の半分は、ホームプロジェクターをよくご存じない。そこで認知を拡げるべく、動画のPOPを店頭で流す取り組みを、5月中旬より全国100店舗ほどの店頭で行っております。明るさや解像度を始め、エプソンのプロジェクターのよさをわかっていただける内容になっています。
ホームプロジェクターは4Kやレーザー光源モデルも投入し、首都圏の旗艦店様で注力していただいています。それをさらに全国の地域にも拡げていく活動を、これから推進しなくてはと考えます。地方エリアはプロジェクターやホームシアターを楽しみやすい住宅環境ですし、ご販売店様の売り場面積も広く、展開の余地も十分にあると思います。量販店様や各地のホームシアターショップ様での展開をしっかりと推進して参ります。
エプソンのプロジェクターは、明るい環境下でも素晴らしい映像体験ができます。昨年発売しましたEH-TW6700を、私自身あらためて自宅でじっくり体験し、手前味噌ながら自社の商品の実力を見直したところです。それもあって、営業スタッフに対する勉強会にも注力していきたいと思います。昨年、一昨年と全営業スタッフを対象としたプロジェクターの体験会を行いましたが、内部の人間にもっと商品のよさを伝える活動をする。自身が納得できなければ、ご販売店様に対して、またお客様に対して商品をアピールし切れません。ぜひ推進していきたいと思います。
強い販売体制を構築して、本当の意味での顧客視点を貫いていく
体験と提案の両輪で
認知活動を推進
── 御社のホームプロジェクターの発表会では、プロジェクターをまだ知らない方に広くアピールする「dreamio Style」のコンセプトが紹介されました。
小川「dreamio Style」の展開では、イベントや体験レンタルサービスなども行なっております。まずは体験いただくということですね。こうした活動で、これまでのユーザー層とは違った方々、女性や30代以下の若い方々の興味喚起ができたと思います。新しいお客様には、設置や接続の仕方などもお伝えする必要があります。そこで昨年、Webでのプロモーションにも注力しました。たとえばテレビ放送をプロジェクターで見られることも、多くの方がご存じない。それも含めてプロジェクターで何ができるかひとつひとつ説明するコンテンツを、当社のWebサイトで掲載しました。こうした使い方提案活動と体験を拡げる活動との両輪で、「dreamio Style」をこれからも推進したいと思います。いい商品が揃っていますから、お伝えする活動をしっかりとやって参ります。
国内ではホームプロジェクターで70%強、ビジネスプロジェクターで60%強ほどと、エプソンは高いシェアを頂戴しております。しかしエプソングループ内におけるプロジェクターの構成比はまだまだ低く、事業部から我々へ市場拡大が要望されています。日本の市場規模はアメリカや中国と比べると1/8から1/10ほどしかなく、特に文教の規模がまだまだ小さい。昨年7月に文科省から教育のIT化推進も強化されましたし、文教専任の部隊でしっかり取り組んで参ります。
── ビジュアルとしてはさらに、スマートグラスの展開も期待されます。
小川2011年にコンシューマー向け第1号モデルのモベリオ「BT-100」を投入し、2014年に「BT-200」、2016年に「BT-300」、さらに5月より観光やエンターテイメントなどでお使いいただけるモデルの「BT-350」を発売しています。おかげさまで販売は順調に推移しており、近畿日本ツーリスト様をはじめさまざまな業種の企業様で採用いただいて、お客様にまったく新しい映像体験をご提供しております。
また製造業などの遠隔作業支援用の業務用スマートヘッドセット モベリオ「BT-2000」に加え、ヘルメットモデルの「BT-2200」を2月より発売し、こちらも好評をいただいております。アプリケーション開発のパートナープログラムを約100社以上と締結し、幅広い使い方が生まれることを期待しております。これから更なる認知を拡げ、市場を創っていきたいと思います。
営業のスタイルを変え
お客様視点を徹底する
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── コンシューマー商品以外にもさまざまな商材があり、お客様もさまざまですね。
小川セイコーエプソンでは昨年、2025年に向けた「Epson25」という長期ビジョンを設定し、インクジェット、ビジュアル、ウエアラブル、ロボティクスの4つのイノベーションの実現に向けて、各事業領域の戦略を明確に定め、そこに集中しています。エプソン販売の命題は、その商品をお客様にいかにお届けするかであり、活動の目的は明確です。商品数は多いですが、やるべきことははっきりと定まっているのです。
セイコーエプソンはほとんどの部品も含めて製造が自前の究極のものづくり企業ですが、一方でどうしてもプロダクトアウトな考え方になりがちだと言われてきました。それに対してセイコーエプソン社長の碓井は、顧客視点の考え方を徹底させています。この3月にグループの経営理念が一部改訂され、「なくてはならない」の言葉が加わりました。お客様にとってなくてはならない存在になりたいということで、グループ全社でこの思いを共有しています。
さらに「EXCEED YOUR VISION」のタグラインで、お客様に驚きや感動をもたらすために常に自分の常識を超えて挑戦せよ、ということを社員の心構えとしています。お客様に満足していただく対価が利益につながるという考え方、これを再確認して活動しようということです。
私は入社後すぐ事業部と常にやりとりする仕事をしていましたが、今再びそういう仕事に従事し、事業部もしっかりとお客様視点の考え方になっていると実感します。お客様はさまざまにいらっしゃいますが、我々が常にお客様視点でいてこそ、本質をはずさず活動できているのだと思います。
── 商品もサービスも、お客様本意のものが生まれますね。
小川そういう意味では、販売会社としての取り組みをもっともっと強化し、本当の意味での顧客視点を貫かなくてはと思います。エプソン販売にはある商品専任といった営業マンはいません。チャネルを軸に、関連する商品にはすべて関わることになります。さらに担当する内容についてはカテゴリーをまたいで共有化し、情報をやりとりする。そういう中で、営業スタイルを変化させています。
これまでは大量の広告宣伝を行って商品の認知を拡げ、お客様から販売店様にエプソンの商品が欲しいというアクションがあって、販売店様から当社に注文が来る、という流れ。しかし新しいカテゴリーの商品は、こちらからお客様を見つけ、お客様に対して働きかけをしなければいけない。これまでのようなプルではなく、プッシュ型営業に変わっていく必要があります。営業スタイルの変換を今まさに行っていて、スマートチャージSBU本部の活動がその見本となります。
今年2月に発表した高速ラインインクジェットプリンターは、オフィス用コピー機のカテゴリーになります。日本では9000億円の市場規模ですが、当社のシェアは現状ほとんどない、つまり新規市場です。レーザープリンター中心の市場に、インクジェットの優位性を活かした新提案でシェア拡大を図ります。この戦略商品をSBUが担い、専門部隊として販売店様、エンドユーザー様に対する営業活動を行っています。さらにクロスセルといって、1つだけでなく複数の商材を手がける。インクジェットプリンターのお客様に、高光束プロジェクターも訴求するといった取り組みです。
こうした今までとは違う営業スタイルを、社内に拡げるミッションもあります。従来の商材を扱うビジネス営業本部と、「LXシリーズ」を扱うSBUの部署は同じフロアにあり、常に密接な関係を保って情報のやりとりをしています。社内で同じ商材を扱いながら違うチャネルで仕事をしている者同士が、どう交流して情報をスムーズに流すか、実はこれがもっとも難しいことですね。これがしっかりとできれば、互いに相乗効果を生み質の高い仕事ができる。
販売推進本部でまさにそれを実現しようとしていて、役割は大きい。事業の責任は販売推進本部で持つことになっていますから、商品をどう売るかの作戦を考え、営業部とコミュニケーションをとりつつ活動しています。自分たちが売る商品自体をよく知る、体験することも随時すすめる。こうしたことをクリアして強い販売体制を構築し、ご販売店様とともにお客様の満足度向上に貢献したいと思います。