受賞インタビュー「エソテリック」
- SACDプレーヤーのシリーズを一新
国内外で勢いを増し、顧客接点を拡大
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エソテリック株式会社
代表取締役社長
- 大島 洋
ハイエンドオーディオのデジタルプレーヤーをリードするエソテリックが一挙にシリーズを一新、新次元の高付加価値を訴求する。銘機賞受賞の数々の製品とともに、施策の原点となるのは販売店との絆づくりと体感の場の提供。国内外に活躍の場を広げる同社の展開を、大島社長が語る。
インタビュアー/樫出浩雅 音元出版副社長、写真/柴田のりよし
オーディオ銘機賞「製品特別大賞」受賞おめでとうございます。
大島今年当社はK-01Xs、K-03Xs、K-05Xs、K-07XsとSACDプレーヤーの製品群を一新しましたが、ここはエソテリックの本丸とも言えるカテゴリー。そのすべてをご評価いただけたことが大変ありがたく、我々自身非常にやりがいを感じます。
エソテリックは、ハイエンドのデジタルプレーヤーでトップを走っている自負があります。ここでは常にトップでなければならず、常に注目を集めなければならない。そして技術的にも最先端でなければならないと、かなりの気負いを持っています。今回のモデルチェンジはおよそ4年ぶりですが、最新のテクノロジーを投入し、基本的なところもすべて見直し手を加えました。2年前に発売した最高峰のGrandioso K1でご評価いただいたアナログ的な立体感のある音楽性を踏襲し、大きく進化致しました。
エソテリック、そして親会社のティアックも含めて我々は、ディスクプレーヤーをずっと手がけていくことをコミットメントとしています。業務用の放送機器を扱うタスカムブランドも、CDプレーヤーの占有率は世界トップレベルです。世界中の皆様から信頼をいただいているあかしあり、それを誇りにディスクプレーヤーづくりを全うしていきたいですね。
市場導入は順次進んでいますが、手応えはいかがでしょうか。
大島当社ではアンプ、SACDプレーヤー、ネットワークプレーヤー、クロック、SACDソフトのカテゴリーを展開しておりますが、今年は昨年比でどのカテゴリーも伸長しています。中でもSACDプレーヤーはKシリーズXsエディションの投入によって格段の伸びとなり、期待以上の状況です。
Xsエディションは出力にES-LINK Analogという新しい技術を搭載しており、アナログコンソールで聴いている音そのものが、非常に臨場感のある音だと評価していただいています。ES-LINK Analogは独自伝送でアンプ側にも入力対応が必要で、そこで専用のオプションボードを出しました。これを組み合わせて、エソテリックのプリメインアンプ4機種はすべてES-LINK Analogに対応します。これを受けて、Xsエディションとアンプを同時にプロモーションさせていただき、それぞれに伸びています。
ネットワークトランスポートのN-03Tが銅賞を受賞しました。
大島ネットワーク関連は新しく展開しているカテゴリーですから、昨年比での伸長率は目覚ましいものがあります。ハイエンドの価格帯では日本メーカーとして我々が唯一の存在でもあり、非常に強い手応えです。
昨年のN-01は今海外でベストセラーになっています。Grandioso K1のDACを使用した最高峰の位置付けにあり、ロングセラーで着実に毎月売れているのです。一方でN-03Tは、ネットワークトランスポートということで、セパレート型のネットワークプレーヤーの初めてのご提案。日本のお客様はDACをセパレートで、ご自分でお持ちのものを組み合わせて使われる場合が多く、N-03Tの方がより日本市場でのニーズに合っていると実感しました。生産分完売の状況が毎月続いています。
ハイレゾソースの再生機器は、これからますます充実しそうですね。
大島ビジネス的にはSACDプレーヤー以外に軸足をもう一つ据えておく必要はあります。海外は完璧にネットワーク社会ですから、SACDプレーヤーと共に両輪としていくのは基本方針です。
TANNOYのAutograph mini/GRも銅賞を受賞しています。輸入製品の手応えはいかがでしょうか。
大島国内では輸入製品も我々のカテゴリーのひとつ。おかげさまでこちらも伸長しています。Autograph mini/GRは人気で、ここが大きく牽引して、輸入商品はTANNOYを中心に伸長しています。TANNOYでは加えて既存のPRESTIGE シリーズも伸長しています。昨年のLEGACYシリーズ以来既存製品も活性化されて、全体に伸びている状況です。
TANNOY社のロングラン商品だったAutograph miniは、ユニットがつくられなくなり生産が断念され、お客様から再生産を熱望されていました。そしてお客様のご要望に応えて、自社工場に設備投資してユニットの生産を実現しました。その本気の姿勢がお客様にも伝わったのだと思います。TANNOY社はこのように非常にアグレッシブに商品を投入しています。今年これから、来年初旬にかけても新製品が用意されています。非常に面白いものが展開されていくとご期待ください。
昨今のハイエンド市場をどのようにご覧になりますか。
大島今年前半は伸長してきましたが、10月が軟調でした。色々な要因で株価も降下したことなどが影響したと思われます。ただ今後は落ち着き、市況も11月以降は回復すると見ています。とはいえ我々が特別な対策をとるわけではなく、するべきことの基本は常に変わりません。販売店様との絆をいかに維持し強固なものにしていくかということ。さらにその先のエンドユーザー様のところまで行って、体感の場をつくる。それを時間の許す限り丁寧にやっていく。今回のKシリーズXsエディションも、ぜひお客様に進化のほどをご体感いただきたい。タッチポイントでの試聴の機会を増やしていくことに力を注いで参ります。
昨今の海外での展開はいかがでしょうか。
大島香港、中国を中心とした東アジアで非常に伸長しています。日本と同様、Xsエディション新展開に伴うES-LINK Analog対応のアンプとの組み合わせを訴求し、これがじわじわと奏功しています。さらに我々が手応えを感じるのはアメリカ市場。アンプを高く評価いただきご理解いただいており、今年販売規模がかなり大きくなると見ています。ある程度の売上げボリュームを求めるという意味でも、海外の市場は大事です。製品のクオリティを維持して適正な価格でお届けするには、海外である程度の数が出ていかなくては成り立ちません。
海外での日本のブランドはプロダクト主義、モノのつくりの良さで勝負するところはあります。日本ブランドの特長として、品質の充実がアイデンティティになります。そうしたしっかりしたものづくりを海外で評価していただけるのはありがたいことですし、その良さをもっともっと発信していきたいと思います。
今後は来年に向けて、エソテリックの違ったテイストをお見せできるでしょうし、TANNOYも新たな展開があります。製品がどんどん出てきますので、ぜひともご期待をいただきたいと思います。
◆PROFILE◆
大島 洋
85年 ティアック(株)に入社。98年 ティアック香港事務所所長。2001年 ティアック・オーストラリア取締役、08年 コンシューマ・オーディオ・ビジネスユニット商品部長、14年 執行役員同ビジネスユニット長、エソテリック(株) 取締役、17年 エソテリック(株) 代表取締役社長就任。