HOME > インタビュー > ポッドキャストの波は日本にも来るのか?Amazon Musicが番組強化、担当者に戦略を聞く

話題作は「映像化」も

ポッドキャストの波は日本にも来るのか?Amazon Musicが番組強化、担当者に戦略を聞く

公開日 2023/03/22 06:00 山本 敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
Amazon Musicはポッドキャストに、没入感が高いストーリーテリングに定評のあるスタジオ「Wondery(ワンダリー)」のコンテンツを3月22日から追加する。Wonderyのコンテンツを含む日本のポッドキャスト番組の制作を統括するAmazon Musicの柴田周平氏に、今後に向けた意気込みを聞いた。

Amazon MusicのHead of JP Podcast Content, Wondery 柴田周平氏にインタビューした

■ハリウッドのスタジオ「Wondery」の番組が始まる



Amazon Musicは2020年9月からポッドキャストの配信を開始。以後独占配信やオリジナル制作コンテンツを17本にまで拡大してきた。今回、米国で人気のポッドキャストコンテンツを作り続けてきたWonderyが、日本の制作チームとノウハウを共有しながら「日本のリスナーが魅力を感じる、日本発の高品位なコンテンツ」配信に本腰を入れる。

Wonderyが制作するポッドキャストの第1弾として、3月22日には『ビジネスウォーズ』シリーズの最新エピソード「ファストファッション戦争」が配信される。Amazon Musicでは3月22日に全5話を一挙に公開するが、その他のサービスでは3月22日にエピソード1と2を配信、エピソード3以降は毎週水曜日に順次更新する。

日本のWonderyの制作チームが手がける新作『ビジネスウォーズ』シリーズの最新エピソード「ファストファッション戦争」が3月22日から公開される

落語家の春風亭一之輔氏がナレーターを務める番組としても話題を呼びそうだ。同番組のダイアローグはナレーターによる「ひとり語り」であり、ナレーターが複数の役柄を「ひとりで演じ分ける」ことが求められる。春風亭一之輔氏は、落語家として、一人でパーソナリティを演じ分けたり、登場人物たちの人間関係や距離感を描き分けることに挑んできた経験を、ポッドキャストにも活かしたいとコメントしている。

ビジネスウォーズのナレーターを務める春風亭一之輔氏

では、Wonderyはそもそもどういう存在かというと、2016年にアメリカ・ハリウッドで創立したポッドキャスト番組の制作スタジオだ。人物描写を重視した没入感豊かなストーリーづくりに定評があり、これまでに米国では『ビジネスウォーズ』のほかにも『死の医師(Dr. Death)』『British Scandal』『Even the Rich』などのヒット番組を次々に生んできた。2021年にWonderyはAmazon Music傘下のスタジオとなった。

なお、Amazon Musicのポッドキャストは無料のフリープランでも楽しめる。この場合は再生時に広告が挿入されるが、有料のAmazon Music Prime/Amazon Music Unlimitedに契約すると、すべてのエピソードが広告なしで聞けることも覚えておきたい。

■日本人の生活スタイルに合わせた番組をつくる



筆者も2000年代の始め頃には、iTunesでダウンロードしたポッドキャスト番組をiPodに転送してよく通勤時間に聞いていた。その後はネットワークに常時接続できるスマートフォンが普及し、移動中に視聴できるコンテンツも動画や音楽、ゲームなど幅が広がったことから、ポッドキャストを聞く機会が自然と減っていったように思う。

欧米ではいまだにポッドキャストが根強い人気を保っている。柴田氏の肌感覚では「米国は日本の数倍ほどポッドキャストのリスナーが多い」というが、それでも2020年秋にAmazon Musicがポッドキャストの配信を始めてから「1年間でリスナーの数はおよそ2倍に増えた。現在も成長を続けている」と柴田氏は強調する。

「欧米では自動車による通勤など、移動時間にポッドキャストを楽しんでいる方が多いと言われています。日本の都市部は自動車よりも電車による移動が主流かもしれませんが、Amazon MusicとWonderyは今後、日本のリスナーの皆様がポッドキャストを楽しむ際のライフスタイルに合ったコンテンツ制作に注力します」(柴田氏)。

■国・地域独自のカルチャーも反映させる



Wonderyのポッドキャスト向けコンテンツは、米国で人気の番組をただ単に日本語に対応させるだけでなく、日本独自の切り口で「多様性のあるコンテンツを開発する」と、柴田氏は展望を語る。

日本らしい多様性がどのように描かれるのか、今回筆者が柴田氏にインタビューをした時点で具体に踏み込んだコメントは得られなかったが、柴田氏は「従来にないタイプの番組づくりにもチャレンジする」と明言した。

Wonderyのスタジオが誕生してからの変遷。Amazon Musicでは日本のカルチャーに合わせた番組が制作される

日本が世界に誇る独自のコンテンツといえばアニメも思い浮かぶ。またアニメ作品のクリエーションには声優の存在が欠かせない。これら日本独自のアニメ文化をAmazon Musicのポッドキャストが取り込むのか、今後の展開にも注目だ。柴田氏は「各国や地域の文化と伝統を、Wonderyのストーリーテリングとマッチングさせ、良い作品を作ることが、今後に向けた大事なミッションのひとつ」と説明している。

■ポッドキャストの話題作が「映像化」もされている



Wonderyはコンテンツ制作のほか、マーケティングにも力を入れているスタジオだ。日本国内でも今後、様々な活動を通じて最新のコンテンツを戦略的にアピールしていくという。

アメリカのテレビや動画ストリーミングサービスでは、Wonderyが制作したポッドキャスト番組の脚本とベースにした「映像化」も成功を収めている。米国でも動画配信サービスの普及拡大に伴い、映像作品の「元になるストーリー」が不足しているそうだ。音声のみのポッドキャスト番組は映像コンテンツを1から作るよりも安いコストで制作できる。ポッドキャストでヒットしたストーリーを下地にすれば、制作コストの肥大というリスクを抑えながらハイリターンも期待できる。

映像化や書籍化など、ヒットしたポッドキャストの作品はマルチメディア展開も期待される

日本ではコミックス(漫画)やゲームを原作にしたアニメやドラマによる実写化、舞台などのディアミックスが盛り上がっている。ポッドキャスト発のストーリーも、その輪に加わることができるのか、Amazon Musicによる今後の展開に注目したい。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック: