テレビの前に家族が集まる
リビングルーム復権目指す


ソニーマーケティング(株)
代表取締役 執行役員社長
栗田伸樹




倍速最高峰である「4倍速」、独自の省エネ機能やネットワーク対応などの高付加価値を打ち出した液晶テレビ〈ブラビア〉をはじめ、BDレコーダーやハンディカムなど数多くの商品がビジュアルグランプリ金賞に輝いたソニー。7月1日よりソニーマーケティングの新社長に就任された栗田氏に受賞の言葉をいただいた。
インタビュアー:音元出版社長 和田光征

■「4倍速」で差異化を図る

――金賞受賞のご感想をお聞かせください。

栗田 皆様に高く評価していただき、本当にうれしい限りです。いいものを引き続き出していけるように、今回のご評価を事業部のメンバーともシェアして、切磋琢磨していきたいと思います。本当にありがとうございます。

――液晶テレビ〈ブラビア〉で金賞を受賞されたW5シリーズ、F5シリーズ、J5シリーズは非常に特徴的な商品群ですね。

栗田 高付加価値モデルであるW5シリーズをしっかりご評価いただいたことは、特にうれしく思います。

ブラビアは今年「4倍速」を切り口に差異化していますが、店頭にもしっかりと浸透させるため、矢沢永吉さんを起用したCM「4倍速でコマ数4倍」もスタートさせました。またコマ数が多いと動きがなめらかになるということをわかりやすく体感いただく為に、“〈ブラビア〉パラパラマンガ・メモ帳”という販促アイテムも用意しました。4倍速の認知度が高まり、W5シリーズの拡販につながれば、我々にとってもご販売店様にとっても喜ばしいことです。

この夏商戦に向けては、「4倍速」「省エネ」、そして「先進機能」の3点に重点を置くなど、ブラビアはさまざまなラインナップをご用意しております。

――先進機能が充実し、テレビの役割が広がりました。

栗田 ブラビアのW5シリーズは、付属のリモコンにFeliCaポートを搭載し、Edyカード等をかざすだけで簡単に決済もできるようになり、アクトビラ ビデオ・フルで、NHKオンデマンドなどを手軽に楽しめるようになりました。

またauの携帯電話で撮った写真をメッセージとともに、ネットを通じてブラビアに送れる「ブラビアポストカード」というサービスをこの春に開始しました。離れて暮らす実家の両親に携帯電話から手軽に孫の写真を送るなど、ブラビアを通じて新しいコミュニケーションが実現するのです。

テレビがネットにつながるのは当たり前、という時代になってきました。これからは、どういう楽しみ方を提案できるかが差異化のポイントとなりそうです。

――ブラビアのエコ対応については、無駄な電力消費を省くということで画質と省エネを両立させています。

栗田 ブラビアのV5シリーズのエコ対策は、新しいHCFLバックライトで電力を大幅に削減するものであり、明るく美しい映像と省エネの両立を実現しました。V5シリーズでは、人がいなくなると自動で電源をOFFにする人感センサーをつけました。このようなソニーにしかないわかりやすいフィーチャーが、店頭でもお客様の支持をいただいています。

――薄型テレビの現状のマーケット状況と、その中の御社の方向性についてお聞かせください。

栗田 テレビに関しては、昨年のリーマンショックの影響もあり、本年度は厳しい市場環境を予想していましたが、実際には予想したほどの落ち込みはありません。11月が一番底で、12月以降は比較的いいペースで推移できました。また4月にエコポイント制度の導入が決まり、5月15日まで買い控えがあったものの、それ以降はエコポイントの追い風が吹いている状態です。今年のテレビビジネスは業界の台数ベースで2ケタ成長できるのではと予測しています。

アナログ停波まであと2年となり、そして、サッカー日本代表が2010年のワールドカップへの出場を決めるなど、マーケットは活気づいてきています。市場拡大のチャンスについていきたいと思います。


 左から液晶テレビ「KDL-52W5/KDL-40W5」「KDL-32F5」「KDL-19J5」、有機ELテレビ「XEL-1」


リビングルームに家族が集まる

――BDZ-X95も金賞を受賞されました。BDの今後の戦略についてはいかがでしょうか。


栗田 BDレコーダーをブラビアと組み合わせ、さらにラック一体型のシアタースタンドシステムを合わせたベストマッチングでホームシアターという展開ができます。これを「おき楽リモコン」で簡単に操作ができるということもポイントであり、これらの「4点セット展示」を店頭ですすめているところです。

また、地デジ対応という意味でもまだVHSをお使いになっているお客様に対するBDの訴求をもっと積極的に行っていかなくてはなりません。画質や音のよさはもちろん、使いやすさということも大切だと思います。ソニーらしいブルーレイのラインナップを、ますます拡充していきたいと思います。

――レコーダーは、デジタルカメラやムービーで撮影したコンテンツのストレージとしても活躍し、家中のコンテンツがブラビアのまわりに集約します。

栗田 当社のBDレコーダーは、写真を取り込み、BGMを選んでビデオクリップのように自動再生したり、それをBDにハイビジョン画質で保存できるといった「x−Pict Story HD」という機能も搭載しており、単なるストレージだけでなく楽しく見ることができ映像の世界がますます広がります。

私は個人的に、「リビングルームの復権」があるべきだと思っています。今は家族が個々にテレビを持ち、それぞれの部屋で楽しむような時代ですが、家族がリビングの中心にあるブラビアの前に集まることが意味を持つと思います。それぞれが自分の部屋から出て自然に集まり、写真集や旅日記のようなものを見るなど、ブラビアを通じて情報をシェアする。そんな役割を担えればいいと思います。

またさまざまな状況で美しいハイビジョン映像を撮影できる“ハンディカム”HDR−XR500Vでは金賞を頂戴しましたが、このカメラは、新開発の「“Exmor R” CMOSセンサー」を搭載し、手ブレや低照度撮影を徹底的に改善しています。歩きながら撮りたいというようなニーズにしっかりお応えしているのです。お客様にはこの製品の良さを理解していただいております。

――ウォークマンやシステムコンポといった、オーディオカテゴリーについての今後の展開はいかがでしょうか。

栗田 私自身、非常に楽しみにしている分野です。ソニーの新しい組織の中で、ゲームやバイオ、ネットワーク系ウォークマンなどがネットワーク プロダクツ&サービス グループとしてひとつの本部となりました。ネットワークの広がりの中で、コンテンツを取り巻く環境は大きく変化しますから、今後の商品展開にご期待ください。

ウォークマンについては、音や映像を極めたXシリーズや、スピーカー一体型のSシリーズ、ヘッドホン一体型のWシリーズなど、ソリューションに合わせてラインナップを拡充しました。また、BDとの連携など、ソニー製品がつながることによる新しい楽しみの提案などの方向性があるでしょうし、そうしていかなくてはと思います。

――夏商戦への意気込みをお聞かせください。

栗田 エコポイントなどの追い風が吹いています。店頭にいらっしゃるお客様が増えていますから、テレビだけでなくBDやシアタースタンドシステムなどいろいろな製品にポジティブな波及効果が現れます。

ソニーとしては、この流れにのって、ソニー製品ならではの、新しい楽しみ方の提案をしていきたいと思います。そのためには、店頭展示の充実、差異化の説明を確実に行っていただけるようなセミナーを実施するといった、お客様にソニーからのメッセージをきちんと伝えていくための地道な活動が大切であり、ここに力を入れていきたいと思います。必ずやいい結果が出るチャンスと、大きく期待しています。


栗田伸樹氏 プロフィール
Nobuki Kurita
1979年4月 ソニー(株)入社。99年 Sony de Mexico プレジデント。2003年 ソニー(株)IT&モバイルソリューションネットワークカンパニー・e-ビークルカンパニー プレジデント。05年オーディオ事業本部・車載機器事業部 事業部長。06年 Sony Electronics Inc.(米国)Consumer Product Marketing, EVP。08年4月 ソニーマーケティング(株)代表取締役 執行役員副社長。09年7月1日代表取締役 執行役員社長に就任。


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