来場者に楽しさを提供

第2回「北陸オーディオショウ」レポート。コミュニケーション重視の “文化を育てる” イベント

公開日 2017/05/11 12:00 編集部:押野 由宇
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
2017年5月6日(土)〜7日(日)、第2回「北陸オーディオショウ」が富山県で開催された。その模様をレポートしたい。

北陸オーディオショウとは、2016年3月26日(土)にスタートした北陸初の大型オーディオイベントだ。主催は北陸オーディオショウ実行委員会、共催は富山県のオーディオ専門店クリアーサウンドイマイ。地方のオーディオの活性化を目指し、あえて地方で開催するという理念のもと、多くのメーカー/ブランドが参加するコミュニケーションを重視したイベントだ。

第1回北陸オーディオショウは盛況の内に幕を閉じたが、その時点から第2回の開催が予告されていた。前回より2ヶ月時期をずらしての開催となった今回、初日である6日は朝から大粒の雨が降りしきるあいにくの空模様。またゴールデンウィークの終わりということもあり、人の動きが読めないとスタッフやメーカーの担当者は口にした。

初日はあいにくの空模様となった

しかしそんな不安も、オーディオへの熱意にあふれる人々によってかき消される。開始時刻の15分前には多くの来場者が訪れ、そのままの流れでイベントがスタートした。そして時間が経つに連れ、目的意識を持って来場したオーディオファンだけでなく、イベント開催を目にしてたまたま訪れる方が増えてきた。

会場は前回と同様、富山国際会議場。富山市の中心に位置し、北陸新幹線が停車する富山駅からもほど近く、市電も間近を走る。周辺には大型の駐車場を備えるなど、足を運びやすい立地にある。この立地条件は第1回でも集客に寄与した感があったが、今回も良いかたちに働いたように思う。

晴れた日の富山国際会議場

今回は国内メーカーや輸入商社37社が協賛、103ブランドの製品が展示される。またジャンルにおいてはCDやハイレゾ、アナログレコード、ワイヤレス再生にオープンリール、ドルビーアトモスのホームシアターシステムなど、エントリークラスからハイエンドモデルまでを揃えた多様なブースを展開。会場は同じでも、さらに濃い内容が楽しめるようになっていた。

会場のロビーではCDやレコードの発売も行われた

オープンリール・テープも販売

第1回でも感じたことだが、来場者には高校生〜20代の若年層や女性、夫婦や家族連れが多い。そして、その比率が今回、さらに多くなったように思う。ブースでは「オーディオに詳しくない」と言う若い方がメーカー担当者に話を聞く姿があり、実際に「初めてこういうイベントに来た、オーディオの音を聴いたという方が多い」と担当者も感じたようだ。

「オーディオに詳しくない」という来場者も、ブースの担当者に質問しつつ試聴を行っていた

そうした若い層やオーディオエントリー層も楽しめるよう、ワイヤレススピーカーの展示ブースを強化。ワイヤレス再生についてはカーオーディオなどでも認知が広がっているが、これほど音が良くデザインも豊富なものがあることは知らなかったという声があった。

ワイヤレススピーカーの出展も数を増やした

デジタル音楽再生に特化したイベント「デジタル研究会(デジ研)」も、コメンテーターに逆木 一氏を迎えて開催。部屋に収まりきらないほどの参加者のうち、ハイレゾに限らずデジタルファイル再生を行ったことがないという方が半数を超えていた。それでも積極的にその再生方法や従来のオーディオとの違いを学び、音に耳を傾ける様子からは旺盛なチャレンジ精神が見て取れた。

デジ研会場では大勢の来場者がデジタルファイル再生やその仕組みに耳を傾けた

ライブ&生録イベントには富山県出身のアーティスト、小馬崎達也&パンゲアが前回に引き続き参加。自身もオーディオ好きである小馬崎氏は、クリアーサウンドイマイとも長い交流があり、その縁から出演が決まったという。6日は小馬崎氏、7日は篠笛、能管、箏・十三弦、十八弦の奏者である仲林利恵氏も参加した。

小馬崎達也氏の演奏をオープンリールとDSDで生録、再生する

世界で一本という小馬崎氏のために作られたギターや久乗編鐘による演奏は、オープンリールデッキ「STUDER A807」を76cm/sと38cm/sで2台使用した録音のほか、TASCAM「DA3000」でのDSD 5.6MHzのハイレゾでも録音。その場でB&Wのスピーカー「800 D3」を用いて再生された。音響エンジニアには芝山佳久氏、芝山哲也氏が参加し、4日間にわたる入念なリハーサルが行われたという生録/再生は見事に成功。今後、このときの音源が販売される可能性もあるとのこと。

STUDER A807

ブースにはマランツ・ブランドアンバサダーの澤田龍一氏の姿も

クリアーサウンドイマイ代表の今井芳範氏は、北陸オーディオショウは“コミュニケーション”と“楽しさ”を提供し、地方のオーディオ文化を育てるイベントと語る。

クリアーサウンドイマイ代表 今井芳範氏

「地方で開催することについて、人口が少ないから仕方ない、という考えを捨てるところからはじめました。活気は都心でのイベントに劣るかもしれませんが、潜在的なオーディオへの需要は高いと考えています」という今井氏は、北陸オーディオショウに大きな手応えを感じている。

一方で「第1回北陸オーディオショウで分かったのは、クリアーサウンドイマイの知名度が思っていた以上に低いということ。ただ、お客さんが来ないのは販売店のせいであり、来ていただけるようにするのも我々の努力が必要。そうした理由から、地方のオーディオ文化を育てることが重要と感じています」と地方でオーディオを持ち上げるための課題を挙げた。

「北陸オーディオショウでは、出展各社にもお客さんとのコミュニケーションを大事にして欲しいとお願いしています。また良質なオーディオ機器で聴く、音楽の素晴らしさ、楽しさをお伝えすることを最も大切にしています」(今井氏)。

オーディオ趣味の楽しさは自分の好きな音で好きな音楽を聴くことにあるとして、再生される音を耳にするというきっかけは重要だ。また、同好の士とコミュニケーションを取れる、知り合う場となるのも、販売店やこうしたイベントの重要な機能だろう。

だからこそ、北陸オーディオショウのようなイベントには、オーディオファンだけでなく地域の若い方やオーディオに触れたことがないといった方にも一度参加してみて欲しい。夢のあるハイエンドシステムから、安価であっても音の良いエントリークラスの製品の音に触れることができ、その使い方など基礎的な質問にも知識ある担当者が答えてくれる。オーディオ趣味の入り口として、これ以上ない機会となるはずだ。

第2回北陸オーディオショウの来場者は1,800名を数え、好評につき、すでに第3回の開催が来春に予定されている。ユーザー目線のコンセプトはそのままに、2回のイベントを通じて得たノウハウからさらに“楽しさ”を増したものになることは間違いないだろう。

以下、第2回北陸オーディオショウのイベントの様子を写真でお伝えしたい。

どのブースでも音出しが始まると、多くの来場者が足を止め音に聴き入った

プレーヤーのみならず、クラウディオのレコード・クリーニングマシンなどアクセサリーも展示


ホームシアターシステムの展示も、用意された席では足りないほど人気があった

OPPO「Sonica DAC」など、ネットオーディオ関連機器も豊富


オーディオを楽しむための注意点といった内容も交えたデモ

PENAUDIOのスピーカーシステムをはじめ、トールボーイだけでなくブックシェルフ型も各ブランドが展示


ラックスマンの真空管プリメインアンプ「LX-380G」など新モデルも多数用意された

ヘッドホン関連の展示も、来場者からの注目を集めた

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック