日本オーディオ協会賞の顕彰式も実施
“音の日”に選ばれる第22回「音の匠」はアビーロードのスタジオ設計に携わった豊島政實氏
一般社団法人 日本オーディオ協会は、「音の日」の本日12月6日、東京・目黒の式典会場で「音の匠」の顕彰および授与式を行った。
日本オーディオ協会は、音楽とオーディオ産業発展のために、エジソンが蓄音機を発明した12月6日を「音の日」と制定し、1996年より毎年、「音の匠」を顕彰している。
「音の匠」は、日本オーディオ協会が「音の日」の記念行事のひとつとして、「音」および「音楽」を通じて、文化創造や社会貢献に卓越した能力を持ち、実践している「個人」また「組織」を顕彰し、広く一般の方に素晴らしい音の世界を認識してもらうための活動である。
第22回目にあたる本年の「音の匠」受賞者には、豊島総合研究所 所長の豊島政實(とよしま まさみ)氏が選ばれた。
豊島氏は、英国のアビーロードスタジオや、日本のビクタースタジオなど、国内外の著名音楽スタジオ設計に長年にわたり携わった。
レコード会社の録音スタジオの設計はもちろん、フィル・コリンズやスティングなど、ミュージシャンのプライベートスタジオを含めると、その数は250以上に及ぶ。豊島氏の仕事が、音楽録音文化に多大な貢献したことが評価され、「音の匠」の顕彰に至った。
豊島氏は顕彰を受け「音には終点がないので、これからもますます掘り下げていきたい」と挨拶。そして続く特別講演会『響きとともに』にて、豊島氏がなぜ音響設計に携わることになったのか、また設計にまつわる話などを聞くことができた。
豊島氏は幼少期、オーディオが好きなオーディオ少年として鉱石ラジオや並四ラジオ、アンプなどを組み立てていた。高校の頃にはレコードがSPからLPに代わり、さらにモノラルからステレオ音源となり、ますますオーディオにのめり込んだという。
そのなかで、部屋によって音が違うということを認識し、アンプやスピーカーばかり良くしても駄目ということに気がつき、良い音を録る・作るには、良い演奏、良い空間、良い設備、良いエンジニアが揃わなければならないと知る。それから、後の日本の音響を支えた人物を多数輩出している早稲田大学伊藤研究所で建築音響を学んだとのこと。
1964年に日本ビクターの研究開発本部に入社し、スタジオ機器の設計と、スタジオそのものの設計にも関わる。1978年に現MQA代表の鈴木弘明氏などと音響設計事務所を研究所内に独立生産部門として設立した。
そして1990年に、放送大学の大橋教授(当時)から放送大学スタジオの設計の依頼を受けハイパーソニックと出会い、自然界にはCDには無い情報が豊かにあることを実感したという。豊島氏は以後30年近くにわたり、ハイパーソニックの研究を手伝っている。
海外の著名スタジオを設計するようになった経緯として、84年にパリのAEESで写真の実績展示を行っていた際にTownhouse Studiosの第4スタジオの設計依頼を受けた。その後、そのレコーディング工事をキッカケにGenesis Studioの設計依頼が届くなど、海外スタジオを手がけるようになった。アビーロードスタジオは3年にわたる受注活動を行い、5社のコンペの末に受注に成功したという。
当時の苦労話として、アビーロードスタジオでは隔壁のレンガ積みに隙間ができており音漏れがするといった問題に対して、レンガの隙間をモルタルで埋め、30mmの石膏ボード遮音板4層で浮遮音層を構成して対応。しかし帰国後すぐに、別のスタジオからの音が聴こえるということでロンドンに戻り確認すると、前任者が取り付けた拡散板のベニヤ板がスピーカーのコーンのような役割を果たして音を鳴らしていたという。それを取り外して解決した、というエピソードが語られた。
また、「音の日」の記念行事として、「日本オーディオ協会賞」と「学生の制作する音楽録音作品コンテスト」の表彰式も併せて行われた。
日本オーディオ協会賞の顕彰式では、冒頭にオーディオ協会会長の校條亮治氏が挨拶。協会の創立からの歴史に簡単に触れ、「65周年を迎えることができたことを大変嬉しく思います」と喜びを語った。協会創立65周年にあたる本年度の選考委員会は、音の匠に選ばれた豊島政實氏、山楓F男氏、森 芳久氏、君塚雅憲氏、校條亮治氏および事務局に照井和彦氏で構成される。
以下、平成29年度「日本オーディオ協会賞」の顕彰内容となる。
〈経営戦略関係部門〉
1.ブランド復活と市場活性化の推進
パナソニック株式会社 アプライアンス社 ホームエンターテインメント事業部
2.CIとブランド戦略による市場活性化
株式会社JVCケンウッド
3.ブランド戦略による組織を超えた事業強化
三菱電機株式会社
〈技術部門〉
4.ハイレゾ・オーディオの提唱と推進
ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
5.「ハイレゾストリーミングサービス PrimeSeat」の開発および運営
株式会社インターネットイニシアティブ
株式会社コルグ
有限会社サイデラ・パラディソ
ソニー株式会社
この顕彰を受けて、インターネットイニシアティブの福田義弘氏は、「PrimeSeatはこの場の4社だけではなく、多くの皆様のご協力でこれまで続けることができた。これからも新しいことに挑戦していきたい」と感謝と意気込みを語った。
JVCケンウッドの辻 孝夫氏は「65周年の節目に栄誉ある賞をいただけたことを大変嬉しく思う。ビクターというブランドは統合時に一度なくなったが、オーディオ業界におけるブランドの重み、多数のファンの声に応えて復活させた。その第一号として、課題として挙げられているヘッドホンの頭外定位技術を発表した。厳しい声もあり、まだ先の道のりは長いが、ブランドの発展を目指していきたい」と述べた。
また会場では録音エンジニアの深田 晃氏が、「CD前夜からハイレゾまでの録音制作」をテーマに録音現場の移り変わりを講演。アナログ時代から録音を行ってきた深田氏が、エジソンからのオーディオ機器・録音の歴史を自身でまとめた資料を用いて解説した。
トラック順番やイコライザーの掛け方、モニターバランス、マイクの数や距離、VUかピークメーターの選択など「アナログとデジタルで大きく録音が変わった」として、各時代において深田氏が携わってきた現場でのエピソードが紹介された。
日本オーディオ協会は、音楽とオーディオ産業発展のために、エジソンが蓄音機を発明した12月6日を「音の日」と制定し、1996年より毎年、「音の匠」を顕彰している。
「音の匠」は、日本オーディオ協会が「音の日」の記念行事のひとつとして、「音」および「音楽」を通じて、文化創造や社会貢献に卓越した能力を持ち、実践している「個人」また「組織」を顕彰し、広く一般の方に素晴らしい音の世界を認識してもらうための活動である。
第22回目にあたる本年の「音の匠」受賞者には、豊島総合研究所 所長の豊島政實(とよしま まさみ)氏が選ばれた。
豊島氏は、英国のアビーロードスタジオや、日本のビクタースタジオなど、国内外の著名音楽スタジオ設計に長年にわたり携わった。
レコード会社の録音スタジオの設計はもちろん、フィル・コリンズやスティングなど、ミュージシャンのプライベートスタジオを含めると、その数は250以上に及ぶ。豊島氏の仕事が、音楽録音文化に多大な貢献したことが評価され、「音の匠」の顕彰に至った。
豊島氏は顕彰を受け「音には終点がないので、これからもますます掘り下げていきたい」と挨拶。そして続く特別講演会『響きとともに』にて、豊島氏がなぜ音響設計に携わることになったのか、また設計にまつわる話などを聞くことができた。
豊島氏は幼少期、オーディオが好きなオーディオ少年として鉱石ラジオや並四ラジオ、アンプなどを組み立てていた。高校の頃にはレコードがSPからLPに代わり、さらにモノラルからステレオ音源となり、ますますオーディオにのめり込んだという。
そのなかで、部屋によって音が違うということを認識し、アンプやスピーカーばかり良くしても駄目ということに気がつき、良い音を録る・作るには、良い演奏、良い空間、良い設備、良いエンジニアが揃わなければならないと知る。それから、後の日本の音響を支えた人物を多数輩出している早稲田大学伊藤研究所で建築音響を学んだとのこと。
1964年に日本ビクターの研究開発本部に入社し、スタジオ機器の設計と、スタジオそのものの設計にも関わる。1978年に現MQA代表の鈴木弘明氏などと音響設計事務所を研究所内に独立生産部門として設立した。
そして1990年に、放送大学の大橋教授(当時)から放送大学スタジオの設計の依頼を受けハイパーソニックと出会い、自然界にはCDには無い情報が豊かにあることを実感したという。豊島氏は以後30年近くにわたり、ハイパーソニックの研究を手伝っている。
海外の著名スタジオを設計するようになった経緯として、84年にパリのAEESで写真の実績展示を行っていた際にTownhouse Studiosの第4スタジオの設計依頼を受けた。その後、そのレコーディング工事をキッカケにGenesis Studioの設計依頼が届くなど、海外スタジオを手がけるようになった。アビーロードスタジオは3年にわたる受注活動を行い、5社のコンペの末に受注に成功したという。
当時の苦労話として、アビーロードスタジオでは隔壁のレンガ積みに隙間ができており音漏れがするといった問題に対して、レンガの隙間をモルタルで埋め、30mmの石膏ボード遮音板4層で浮遮音層を構成して対応。しかし帰国後すぐに、別のスタジオからの音が聴こえるということでロンドンに戻り確認すると、前任者が取り付けた拡散板のベニヤ板がスピーカーのコーンのような役割を果たして音を鳴らしていたという。それを取り外して解決した、というエピソードが語られた。
また、「音の日」の記念行事として、「日本オーディオ協会賞」と「学生の制作する音楽録音作品コンテスト」の表彰式も併せて行われた。
日本オーディオ協会賞の顕彰式では、冒頭にオーディオ協会会長の校條亮治氏が挨拶。協会の創立からの歴史に簡単に触れ、「65周年を迎えることができたことを大変嬉しく思います」と喜びを語った。協会創立65周年にあたる本年度の選考委員会は、音の匠に選ばれた豊島政實氏、山楓F男氏、森 芳久氏、君塚雅憲氏、校條亮治氏および事務局に照井和彦氏で構成される。
以下、平成29年度「日本オーディオ協会賞」の顕彰内容となる。
〈経営戦略関係部門〉
1.ブランド復活と市場活性化の推進
パナソニック株式会社 アプライアンス社 ホームエンターテインメント事業部
2.CIとブランド戦略による市場活性化
株式会社JVCケンウッド
3.ブランド戦略による組織を超えた事業強化
三菱電機株式会社
〈技術部門〉
4.ハイレゾ・オーディオの提唱と推進
ソニービデオ&サウンドプロダクツ株式会社
5.「ハイレゾストリーミングサービス PrimeSeat」の開発および運営
株式会社インターネットイニシアティブ
株式会社コルグ
有限会社サイデラ・パラディソ
ソニー株式会社
この顕彰を受けて、インターネットイニシアティブの福田義弘氏は、「PrimeSeatはこの場の4社だけではなく、多くの皆様のご協力でこれまで続けることができた。これからも新しいことに挑戦していきたい」と感謝と意気込みを語った。
JVCケンウッドの辻 孝夫氏は「65周年の節目に栄誉ある賞をいただけたことを大変嬉しく思う。ビクターというブランドは統合時に一度なくなったが、オーディオ業界におけるブランドの重み、多数のファンの声に応えて復活させた。その第一号として、課題として挙げられているヘッドホンの頭外定位技術を発表した。厳しい声もあり、まだ先の道のりは長いが、ブランドの発展を目指していきたい」と述べた。
また会場では録音エンジニアの深田 晃氏が、「CD前夜からハイレゾまでの録音制作」をテーマに録音現場の移り変わりを講演。アナログ時代から録音を行ってきた深田氏が、エジソンからのオーディオ機器・録音の歴史を自身でまとめた資料を用いて解説した。
トラック順番やイコライザーの掛け方、モニターバランス、マイクの数や距離、VUかピークメーターの選択など「アナログとデジタルで大きく録音が変わった」として、各時代において深田氏が携わってきた現場でのエピソードが紹介された。
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