新開発のベリリウムトゥイーターを採用
早くも品切れ、本国担当者が語るFOCAL新スピーカー「KANTA N゜2」。音質だけでなく設置性も追求
ラックスマンは、同社が取り扱う仏FOCALの新しいスピーカーシステム「KANTA N゜2」(カンタ ナンバー2)の製品内覧会を開催した。
既報の通り、「KANTA N゜2」は3月末に発売する新モデル。価格は120万円/ペア(税抜)となる。内覧会では、FOCAL製品の発売に先立ってその詳細が説明された。
KANTA N゜2は、FOCALの新たなスピーカーシリーズ“KANTA”の最初のモデルで、現時点では本機のみがラインナップされている。価格レンジ的にはSOPRAシリーズとARIAシリーズの中間に位置する。
3ウェイ・4スピーカー・バスレフ型のフロア型スピーカーで、27mm “IAL3” ピュアベリリウム・インバーテッド・ドーム・トゥイーター、165mm Flax NIC/TMDミッドレンジ、165mm Flax NICウーファー×2で構成されている。
エンクロージャーは、新開発の高密度ポリマーにより軽量化と剛性を両立させたフロントバッフル、高剛性の一体成型合板によるキャビネットで構成。前後に2ヶ所のバスレフポートを配置したPOWER FLOWマルチポート・テクノロジーにより、タイトかつ部屋の環境にも影響されにくい低域再現を実現している。また、全8色という豊富なカラーバリエーションを用意したことも特徴だ。
KANTA N゜2の詳細については、FOCALのExport Sales Managerであるクエンティン・モリエ氏が詳細を説明した。
まずはKANTAのコンセプトについて紹介。「KANTA」という造語はイタリア語の「cantabile(カンタービレ。歌う、楽器を演奏するの意)」を由来としているという。元の言葉の頭文字はCだが、本機の傾斜がついたエンクロージャーが「K」に見えることから「KANTA」という綴りにしたという。
クエンティン・モリエ氏は、「KANTA N゜2はカラーバリエーションも含めてその外観が特徴だが、パフォーマンスを第一に開発が行われた」と冒頭で強調。その技術の詳細について説明を行った。
トゥイーターについては、“IAL3”と呼ばれる新開発のピュアベリリウム・トゥイーターが採用された。従来モデルとなるElectraでは初代LAL、旗艦モデル「Utopia III」ではIAL2が搭載されたが、本機では第三世代となるIAL3が初搭載されたかたちだ。クエンティン・モリエ氏によれば、IAL3は、2015年に登場されたIALとはアプローチの異なるトゥイーター“IAH”とIALの両方の技術を用いて開発されたという。
具体的な構造としては、ベリリウム振動板の背後に材質の異なる吸音材を3種類用意して、それぞれ順番に排圧が通過するように配置。歪みの原因となる排圧を完全に吸音できるようにしたという。その成果は、歪みの少なさとして測定数値にも現れている。
クエンティン・モリエ氏はFOCALのキーテクノロジーであるベリリウム・トゥイーターについても改めて紹介。ベリリウムは同社がユニット開発において重視する重視する軽量・高剛性・ダンピング性能の3点を全てカバーできる理想的な素材であるとした。
また、同社の特許技術である“逆ドーム形状”のインバーテッドドーム・トゥイーターにも言及。その利点として、ボイスコイルを小型化できるので、結果としてトゥイーターの軽量化ができること、ドームの角度を小さくできるため歪みを減らせることを挙げた。これにより、繊細な表現が可能になるという。なお、同社のHi-FiスピーカーにおいてはChorus以上の全モデルにおいてこのインバーテッドドーム・トゥイーターが採用されている。
ウーファーおよびミッドレンジのユニットには、Flaxサンドイッチコーンが用いられている。Flax(フラックス)とは繊維の「亜麻」のことで、本機のユニットにはノルマンディー地方で収穫された亜麻が用いられている。「植物由来のエコな素材が使われている」とクエンティン・モリエ氏。実際に原料となる亜麻と、その成型過程のユニットも見せてくれた。
このサンドイッチコーンは、その名の通りFlaxの両側をグラスファイバーでサンドイッチした構造として、やはり軽さ・高剛性・ダンピング性能の3点に優れる振動板としている(Flax特有の軽さを活かしつつ、グラスファイバーでサンドイッチして高剛性を確保、中空構造によってダンピング性能にも優れている)。
また、FOCALは全てのユニットを自社設計・自社製造しているため、モデルや用いる形態に応じて振動板の大きさや厚さを最適化できることも強みであると紹介していた。
ミッドレンジに用いられたTMD(チューンド・マス・ダンパー)技術は、ユニットの外径に2本のリブを設けて不要振動を抑えるというもの。エッジの共振によって振動を効果的に減衰させ、歪みを抑える効果がある。台湾・台北市の高層ビル「台北101」には制振対策としてやはりTMDと呼ばれる、風による振動を緩和する球状の装置が配置されているが、このTMDも同じ原理なのだという。このTMDにより、人の声も担う1,000Hz-3,000Hzの帯域をフラットに再生することができるという。
ミッドレンジ/ウーファーの磁気回路に用いられているNIC(ニュートラル・インダクタンス・サーキット)は、マグネットのベースに同心円状のファラデーリングを追加するというもの。これにより、ボイスコイルの位置や電流、周波数に左右されずに磁界を最適にコントロールすることが可能になり、歪みを低減できる。
なお、クエンティン・モリエ氏は「KANTA N゜2」のミッドレンジは、フォーカルのスピーカー史上で最高のものだと述べていた。
キャビネットについては、上位モデルのSOPRAが分厚いMDFで高剛性を追求したのに対して、KANTA N゜2ではコンパクト化と剛性の確保の両立を狙った。そのためにKANTA N゜2ではMDFではなく、高密度ポリマー(HDP)をキャビネットに用いた。HDPはMDFと比較して密度で+70%、剛性で+15%、ダンピングで+25%の高い性能を備えている。結果としてKANTA N゜2のキャビネットはSOPRAより35%薄いながら同等の剛性を確保したという。
フォーカスタイムと呼ばれる湾曲したキャビネットも継承。各ユニットの距離を調整して各帯域が耳に届く時間を揃えている。また、トゥイーターを配置する場所もHDPで一体成形することで、最適な位置を実現している。
フロントバッフル、および後部キャビネットは下図のようにそれぞれ一体成形されている。これにより剛性がアップでき、歪み低減にも寄与する。
KANTA N゜2は、キャビネットの前後にバスレフポートを用いたPOWER FLOWマルチポート・テクノロジーを採用。前方からはタイトで素早い低域、後ろ側からは(背面への反射もあって)豊かな低域を放出し、よりダイナミックな低域再現が実現する。また、定在波の解消やポートから排出される気流の高速化という効用もあるという。なお、この前後のポートは径がまったく同一になっており、前後での干渉が起こらないように調整されている。
この2つのポートを用いたことで、より狭い部屋でも豊かな低音を鳴らすことができるとのこと。また、スピーカーと壁の間を最低15センチまで寄せても低音の再現性が崩れないように配慮されており、「日本の住環境にもマッチするだろう」とクエンティン・モリエ氏は語っていた。
脚部はアルミダイキャスト製のフットを採用。スパイクはSOPRAと同一構造のものが採用されている。
クエンティン・モリエ氏はKANTA N゜2を「FOCALのスピーカーの中でもまったく新しいDNAを備えた製品」と紹介。また、ユニットからエンクロージャーまで全てをフランス国内で製造していることもアピールした。
なおカラーバリエーションは、CARRARA WHITE LQR(カララホワイト・ラッカー)、GAULOISE BLUE LQR(ゴロワーズブルー・ラッカー)、SOLAR YELLOW LQR(ソーラーイエロー・ラッカー)、BLACK LACQUER LQR(ブラックラッカー・ラッカー)、IVORY MAT(アイボリー・マット)、WARM TAUPE MAT(ウォームトープ・マット)、DARK GREY MAT(ダークグレイ・マット)、GAULOISE BLUE MAT(ゴロワーズブルー・マット)の全8色を用意する。
内覧会の冒頭ではラックスマンの川上晃義社長が挨拶し、「FOCALはただ音質を追求するだけでなく、リスナーのライフスタイルまでを考慮して豊富なカラーバリエーションを用意している。このあたりは時代を先取りしていると感じるている」とコメント。また、KANTAは先行してワールドワイドで発売されているが「今年1月から品不足になるほどの売れ行き」と話していた。
内覧会では、ARIAシリーズにPrime Walnut仕上げ(価格は他仕上げと同じ)が追加されて3色展開になったことも発表された。
また、FOCALのハイエンドヘッドホン3機種が大幅に値下げ(関連ニュース)されたことにも触れられた。この値下げについては、FOCALと日本においてこれらモデルをどのように展開していくかを協議した結果、ワールドワイドで同じ価格設定を目指したいという意向もあり、今回の値下げに踏み切ったとのことだった。
既報の通り、「KANTA N゜2」は3月末に発売する新モデル。価格は120万円/ペア(税抜)となる。内覧会では、FOCAL製品の発売に先立ってその詳細が説明された。
KANTA N゜2は、FOCALの新たなスピーカーシリーズ“KANTA”の最初のモデルで、現時点では本機のみがラインナップされている。価格レンジ的にはSOPRAシリーズとARIAシリーズの中間に位置する。
3ウェイ・4スピーカー・バスレフ型のフロア型スピーカーで、27mm “IAL3” ピュアベリリウム・インバーテッド・ドーム・トゥイーター、165mm Flax NIC/TMDミッドレンジ、165mm Flax NICウーファー×2で構成されている。
エンクロージャーは、新開発の高密度ポリマーにより軽量化と剛性を両立させたフロントバッフル、高剛性の一体成型合板によるキャビネットで構成。前後に2ヶ所のバスレフポートを配置したPOWER FLOWマルチポート・テクノロジーにより、タイトかつ部屋の環境にも影響されにくい低域再現を実現している。また、全8色という豊富なカラーバリエーションを用意したことも特徴だ。
KANTA N゜2の詳細については、FOCALのExport Sales Managerであるクエンティン・モリエ氏が詳細を説明した。
まずはKANTAのコンセプトについて紹介。「KANTA」という造語はイタリア語の「cantabile(カンタービレ。歌う、楽器を演奏するの意)」を由来としているという。元の言葉の頭文字はCだが、本機の傾斜がついたエンクロージャーが「K」に見えることから「KANTA」という綴りにしたという。
クエンティン・モリエ氏は、「KANTA N゜2はカラーバリエーションも含めてその外観が特徴だが、パフォーマンスを第一に開発が行われた」と冒頭で強調。その技術の詳細について説明を行った。
トゥイーターについては、“IAL3”と呼ばれる新開発のピュアベリリウム・トゥイーターが採用された。従来モデルとなるElectraでは初代LAL、旗艦モデル「Utopia III」ではIAL2が搭載されたが、本機では第三世代となるIAL3が初搭載されたかたちだ。クエンティン・モリエ氏によれば、IAL3は、2015年に登場されたIALとはアプローチの異なるトゥイーター“IAH”とIALの両方の技術を用いて開発されたという。
具体的な構造としては、ベリリウム振動板の背後に材質の異なる吸音材を3種類用意して、それぞれ順番に排圧が通過するように配置。歪みの原因となる排圧を完全に吸音できるようにしたという。その成果は、歪みの少なさとして測定数値にも現れている。
クエンティン・モリエ氏はFOCALのキーテクノロジーであるベリリウム・トゥイーターについても改めて紹介。ベリリウムは同社がユニット開発において重視する重視する軽量・高剛性・ダンピング性能の3点を全てカバーできる理想的な素材であるとした。
また、同社の特許技術である“逆ドーム形状”のインバーテッドドーム・トゥイーターにも言及。その利点として、ボイスコイルを小型化できるので、結果としてトゥイーターの軽量化ができること、ドームの角度を小さくできるため歪みを減らせることを挙げた。これにより、繊細な表現が可能になるという。なお、同社のHi-FiスピーカーにおいてはChorus以上の全モデルにおいてこのインバーテッドドーム・トゥイーターが採用されている。
ウーファーおよびミッドレンジのユニットには、Flaxサンドイッチコーンが用いられている。Flax(フラックス)とは繊維の「亜麻」のことで、本機のユニットにはノルマンディー地方で収穫された亜麻が用いられている。「植物由来のエコな素材が使われている」とクエンティン・モリエ氏。実際に原料となる亜麻と、その成型過程のユニットも見せてくれた。
このサンドイッチコーンは、その名の通りFlaxの両側をグラスファイバーでサンドイッチした構造として、やはり軽さ・高剛性・ダンピング性能の3点に優れる振動板としている(Flax特有の軽さを活かしつつ、グラスファイバーでサンドイッチして高剛性を確保、中空構造によってダンピング性能にも優れている)。
また、FOCALは全てのユニットを自社設計・自社製造しているため、モデルや用いる形態に応じて振動板の大きさや厚さを最適化できることも強みであると紹介していた。
ミッドレンジに用いられたTMD(チューンド・マス・ダンパー)技術は、ユニットの外径に2本のリブを設けて不要振動を抑えるというもの。エッジの共振によって振動を効果的に減衰させ、歪みを抑える効果がある。台湾・台北市の高層ビル「台北101」には制振対策としてやはりTMDと呼ばれる、風による振動を緩和する球状の装置が配置されているが、このTMDも同じ原理なのだという。このTMDにより、人の声も担う1,000Hz-3,000Hzの帯域をフラットに再生することができるという。
ミッドレンジ/ウーファーの磁気回路に用いられているNIC(ニュートラル・インダクタンス・サーキット)は、マグネットのベースに同心円状のファラデーリングを追加するというもの。これにより、ボイスコイルの位置や電流、周波数に左右されずに磁界を最適にコントロールすることが可能になり、歪みを低減できる。
なお、クエンティン・モリエ氏は「KANTA N゜2」のミッドレンジは、フォーカルのスピーカー史上で最高のものだと述べていた。
キャビネットについては、上位モデルのSOPRAが分厚いMDFで高剛性を追求したのに対して、KANTA N゜2ではコンパクト化と剛性の確保の両立を狙った。そのためにKANTA N゜2ではMDFではなく、高密度ポリマー(HDP)をキャビネットに用いた。HDPはMDFと比較して密度で+70%、剛性で+15%、ダンピングで+25%の高い性能を備えている。結果としてKANTA N゜2のキャビネットはSOPRAより35%薄いながら同等の剛性を確保したという。
フォーカスタイムと呼ばれる湾曲したキャビネットも継承。各ユニットの距離を調整して各帯域が耳に届く時間を揃えている。また、トゥイーターを配置する場所もHDPで一体成形することで、最適な位置を実現している。
フロントバッフル、および後部キャビネットは下図のようにそれぞれ一体成形されている。これにより剛性がアップでき、歪み低減にも寄与する。
KANTA N゜2は、キャビネットの前後にバスレフポートを用いたPOWER FLOWマルチポート・テクノロジーを採用。前方からはタイトで素早い低域、後ろ側からは(背面への反射もあって)豊かな低域を放出し、よりダイナミックな低域再現が実現する。また、定在波の解消やポートから排出される気流の高速化という効用もあるという。なお、この前後のポートは径がまったく同一になっており、前後での干渉が起こらないように調整されている。
この2つのポートを用いたことで、より狭い部屋でも豊かな低音を鳴らすことができるとのこと。また、スピーカーと壁の間を最低15センチまで寄せても低音の再現性が崩れないように配慮されており、「日本の住環境にもマッチするだろう」とクエンティン・モリエ氏は語っていた。
脚部はアルミダイキャスト製のフットを採用。スパイクはSOPRAと同一構造のものが採用されている。
クエンティン・モリエ氏はKANTA N゜2を「FOCALのスピーカーの中でもまったく新しいDNAを備えた製品」と紹介。また、ユニットからエンクロージャーまで全てをフランス国内で製造していることもアピールした。
なおカラーバリエーションは、CARRARA WHITE LQR(カララホワイト・ラッカー)、GAULOISE BLUE LQR(ゴロワーズブルー・ラッカー)、SOLAR YELLOW LQR(ソーラーイエロー・ラッカー)、BLACK LACQUER LQR(ブラックラッカー・ラッカー)、IVORY MAT(アイボリー・マット)、WARM TAUPE MAT(ウォームトープ・マット)、DARK GREY MAT(ダークグレイ・マット)、GAULOISE BLUE MAT(ゴロワーズブルー・マット)の全8色を用意する。
内覧会の冒頭ではラックスマンの川上晃義社長が挨拶し、「FOCALはただ音質を追求するだけでなく、リスナーのライフスタイルまでを考慮して豊富なカラーバリエーションを用意している。このあたりは時代を先取りしていると感じるている」とコメント。また、KANTAは先行してワールドワイドで発売されているが「今年1月から品不足になるほどの売れ行き」と話していた。
内覧会では、ARIAシリーズにPrime Walnut仕上げ(価格は他仕上げと同じ)が追加されて3色展開になったことも発表された。
また、FOCALのハイエンドヘッドホン3機種が大幅に値下げ(関連ニュース)されたことにも触れられた。この値下げについては、FOCALと日本においてこれらモデルをどのように展開していくかを協議した結果、ワールドワイドで同じ価格設定を目指したいという意向もあり、今回の値下げに踏み切ったとのことだった。
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