ネットワークオーディオ界を席巻するトップランナーに迫る
音楽への“Passion”を妥協なく届ける、エディスクリエーションが製品に込める想いを特別インタビュー
日本上陸とともにオーディオファイルからの熱烈な支持を集めるエディスクリエーション。光アイソレーションやオーディオ用スイッチングハブ、そしてリニア電源装置など、登場とともに瞬く間にそれら製品分野の代表的地位を獲得したことも記憶に新しい。
筆者もそんな同社の製品に魅せられて即刻自宅へと導入したユーザーのひとりであるが、やはりその魅力はなんといっても、優れた音質にあるだろう。オーディオファイルが楽しむメディアとしてもストリーミングやネットワーク・オーディオのシェアが増す中で、ネットワーク関連アクセサリーの重要性や注目度も日に日に高まっていることを実感する。
そんなさなか、エディスクリエーション主宰のエディソン・ウォン氏が来日されたので、バックボーンや設計開発の考え方を伺った。同社の、そして、ネットワーク周辺機器の音質の勘所に迫る。
――まず、ウォンさんの経歴から教えてください。
E.ウォン 私は幼い頃から音楽を聴くことが大好きで、毎日のように音楽をたくさん聴いて過ごして来ました。同時に、エレクトロニクスの設計にも興味があり12歳ころから独学で色々と作り始め、16歳の時に職業訓練校(日本でいう専門学校)に進学したんです。
そこでは、アナログ回路などのエレクトロニクスのほか、コンピューター言語やネットワーキングなどを習得しました。実は、在学中の18歳のときに既に「自らが作った商品で人々を幸せにしたい」というビジョンを抱いていて、自分の名前を取り入れた「エディスクリエーション」というブランド名を温めていたんですよ。
――素晴らしいですね。まさにその学校で学ばれたことは、いま開発している製品にすべて必要な要素といえます。やはり、それを見越して学ばれていたんですか?
E.ウォン いえ、当時はまだネットワークオーディオというもの自体が存在しなかったですし、エディスクリエーションも、オーディオ機器を商材とすることになるとは思っていませんでした。
学校を卒業した後は、小規模な玩具メーカーにパートタイムで勤務しました。玩具内部のエレクトロニクスの設計にはじまって、次第に会社からの信頼を得て、生産工程のデザイニングや筐体のデザインなどを担当させて貰うまでになりました。まさにここでプロダクト設計から生産までのノウハウを、実際の仕事の中で体得していったのです。そして、この会社で働きつつ、30歳の時にエディスクリエーションを立ち上げました。
――どのような経緯からスタートされたんですか?
E.ウォン エディスクリエーションとしてのファースト・プロダクトは「LPS」、すなわちリニア電源でした。現行製品のLPSはさらに回路が改良されているのですが、それの原型にあたるものです。
当時は、そういったリニア電源のマーケットが確立されていなかったので、知人のリクエストに応える形で手作りで開発を始めました。実はそれより以前から、知人のために、既存のオーディオ機器をモディファイして音質向上していたんです。そこで、オーディオ機器は、どういう風にすれば音が良くなるのかを掴んでいきました。
――そのLPSがSNSなどで話題を呼んで、一気にブレイクしたんですよね。
E.ウォン はい。ありがたいことに世界中の方から注目していただきました。そしてその後、2013年には光絶縁の「FIBER BOX」(現在はmk2)を開発し、さらにその後には「SILENT SWITCH OCXO」を開発していきました。
――まさに市場のニーズにいち早く応えていった結果、今の代表製品が生まれていったんですね。ウォンさんの手掛ける製品は、一貫して高いS/N感や低い歪み感による透明性高いサウンドを実現することに加えて、窮屈さのない、伸びやかなサウンドを実現していることが何よりもの特徴だと私は感じています。具体的には、どのような点にこだわって製品を設計されているのですか?
E.ウォン ありがとうございます。私は、次の4つのポイントを大切にして設計しています。
まずは、一つ目PCBレイアウト、つまり基板のパターン設計です。もっとも重視するのは、グラウンドをシングルポイントとして動作を安定させることです。これを重視すると設計やパターンがとても煩雑になってしまうのですが、音質のために遵守しています。
2つ目は良質なコンポーネント(パーツ)を使うことですね。コストが掛かっても、なるべくローノイズなものを使うようにしています。3つ目が性能評価です。リスニング評価と測定評価をフィフティ・フィフティの配分で用いることで、理想的な評価判断を行なっています。
そして最後がいちばん大事なことなのですが、4つ目としてこれらの全てを自分一人で完遂させるということです。弊社は現在5人で運営しているのですが、設計は完全に私一人で行なっています。
――非常に明快な設計思想ですね。最後の“全てを自分一人で完遂させる”というのは、どういった理由からそうされているのでしょうか?
E.ウォン 「マインド」を大切にするというのが最大の理由です。多数の人で作る製品は、大衆受けもするし、操作性なども良いものになるでしょう。スタンダードなものを作り様々なリスクを減らして、大量生産して利益を追求していくのがマスプロダクションの概念です。しかし、それでは、私の音楽に対する“Passion”がなくなってしまうと私は考えます。
例えば、FIBER BOX 2やSILENT SWITCH OCXOに使っている高精度なクロックはアメリカから取り寄せていますが、これは非常に高価な上、手元に届くまでに4週間もかかってしまいます。マスマーケティングでは、決してこのリスクを負うことはないでしょう。
少量生産だからこそ、このリスクを負うことができるのです。リスクを負ってでも、自分のPassionを妥協なしに届けることを大切にしています。ですから、生産に関しても、私と、信頼の置けるもう一人のスタッフだけで組み上げています。何事も、シンプル・イズ・ベストなのです。
――高いクオリティと一貫した音質が実現されている理由が分かりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。では最後に、日本のユーザーへのメッセージをお願いできますか。
E.ウォン 日本の皆様にお伝えしたいのは、「No Music, No Life」ということと、「Always Music First」ということです。音楽を聴く時は、少しだけ聴くのではなくて、全部を通して聴いてください。なぜなら、音楽にはストーリーがあるからです。その曲の最初から最後までを通して聴いて、ミュージシャンの、そして、私のパッションを感じて頂ければ幸いです。
以上のように、ウォン氏の熱いPassionによってエディスクリエーションの優れた製品の数々が生み出されているということを強く実感させられたインタビューであった。エディスクリエーションのサウンドは、まさに妥協を排したシンプル・イズ・ベストの精神、そして、音楽への強いリスペクトによって実現しているのである。
Qobuzの日本国内サービスインもアナウンスされ、同社のプロダクトは益々注目を集めていくだろうが、これからも画期的なアイデアとほとばしるPassionによる素晴らしい製品の登場を期待したい。
筆者もそんな同社の製品に魅せられて即刻自宅へと導入したユーザーのひとりであるが、やはりその魅力はなんといっても、優れた音質にあるだろう。オーディオファイルが楽しむメディアとしてもストリーミングやネットワーク・オーディオのシェアが増す中で、ネットワーク関連アクセサリーの重要性や注目度も日に日に高まっていることを実感する。
そんなさなか、エディスクリエーション主宰のエディソン・ウォン氏が来日されたので、バックボーンや設計開発の考え方を伺った。同社の、そして、ネットワーク周辺機器の音質の勘所に迫る。
知人のリクエストに応える形で手作りで開発を始めた
――まず、ウォンさんの経歴から教えてください。
E.ウォン 私は幼い頃から音楽を聴くことが大好きで、毎日のように音楽をたくさん聴いて過ごして来ました。同時に、エレクトロニクスの設計にも興味があり12歳ころから独学で色々と作り始め、16歳の時に職業訓練校(日本でいう専門学校)に進学したんです。
そこでは、アナログ回路などのエレクトロニクスのほか、コンピューター言語やネットワーキングなどを習得しました。実は、在学中の18歳のときに既に「自らが作った商品で人々を幸せにしたい」というビジョンを抱いていて、自分の名前を取り入れた「エディスクリエーション」というブランド名を温めていたんですよ。
――素晴らしいですね。まさにその学校で学ばれたことは、いま開発している製品にすべて必要な要素といえます。やはり、それを見越して学ばれていたんですか?
E.ウォン いえ、当時はまだネットワークオーディオというもの自体が存在しなかったですし、エディスクリエーションも、オーディオ機器を商材とすることになるとは思っていませんでした。
学校を卒業した後は、小規模な玩具メーカーにパートタイムで勤務しました。玩具内部のエレクトロニクスの設計にはじまって、次第に会社からの信頼を得て、生産工程のデザイニングや筐体のデザインなどを担当させて貰うまでになりました。まさにここでプロダクト設計から生産までのノウハウを、実際の仕事の中で体得していったのです。そして、この会社で働きつつ、30歳の時にエディスクリエーションを立ち上げました。
――どのような経緯からスタートされたんですか?
E.ウォン エディスクリエーションとしてのファースト・プロダクトは「LPS」、すなわちリニア電源でした。現行製品のLPSはさらに回路が改良されているのですが、それの原型にあたるものです。
当時は、そういったリニア電源のマーケットが確立されていなかったので、知人のリクエストに応える形で手作りで開発を始めました。実はそれより以前から、知人のために、既存のオーディオ機器をモディファイして音質向上していたんです。そこで、オーディオ機器は、どういう風にすれば音が良くなるのかを掴んでいきました。
――そのLPSがSNSなどで話題を呼んで、一気にブレイクしたんですよね。
E.ウォン はい。ありがたいことに世界中の方から注目していただきました。そしてその後、2013年には光絶縁の「FIBER BOX」(現在はmk2)を開発し、さらにその後には「SILENT SWITCH OCXO」を開発していきました。
4つのポイントを大切にして設計している
――まさに市場のニーズにいち早く応えていった結果、今の代表製品が生まれていったんですね。ウォンさんの手掛ける製品は、一貫して高いS/N感や低い歪み感による透明性高いサウンドを実現することに加えて、窮屈さのない、伸びやかなサウンドを実現していることが何よりもの特徴だと私は感じています。具体的には、どのような点にこだわって製品を設計されているのですか?
E.ウォン ありがとうございます。私は、次の4つのポイントを大切にして設計しています。
まずは、一つ目PCBレイアウト、つまり基板のパターン設計です。もっとも重視するのは、グラウンドをシングルポイントとして動作を安定させることです。これを重視すると設計やパターンがとても煩雑になってしまうのですが、音質のために遵守しています。
2つ目は良質なコンポーネント(パーツ)を使うことですね。コストが掛かっても、なるべくローノイズなものを使うようにしています。3つ目が性能評価です。リスニング評価と測定評価をフィフティ・フィフティの配分で用いることで、理想的な評価判断を行なっています。
そして最後がいちばん大事なことなのですが、4つ目としてこれらの全てを自分一人で完遂させるということです。弊社は現在5人で運営しているのですが、設計は完全に私一人で行なっています。
――非常に明快な設計思想ですね。最後の“全てを自分一人で完遂させる”というのは、どういった理由からそうされているのでしょうか?
E.ウォン 「マインド」を大切にするというのが最大の理由です。多数の人で作る製品は、大衆受けもするし、操作性なども良いものになるでしょう。スタンダードなものを作り様々なリスクを減らして、大量生産して利益を追求していくのがマスプロダクションの概念です。しかし、それでは、私の音楽に対する“Passion”がなくなってしまうと私は考えます。
例えば、FIBER BOX 2やSILENT SWITCH OCXOに使っている高精度なクロックはアメリカから取り寄せていますが、これは非常に高価な上、手元に届くまでに4週間もかかってしまいます。マスマーケティングでは、決してこのリスクを負うことはないでしょう。
少量生産だからこそ、このリスクを負うことができるのです。リスクを負ってでも、自分のPassionを妥協なしに届けることを大切にしています。ですから、生産に関しても、私と、信頼の置けるもう一人のスタッフだけで組み上げています。何事も、シンプル・イズ・ベストなのです。
――高いクオリティと一貫した音質が実現されている理由が分かりました。本日は貴重なお話をありがとうございました。では最後に、日本のユーザーへのメッセージをお願いできますか。
E.ウォン 日本の皆様にお伝えしたいのは、「No Music, No Life」ということと、「Always Music First」ということです。音楽を聴く時は、少しだけ聴くのではなくて、全部を通して聴いてください。なぜなら、音楽にはストーリーがあるからです。その曲の最初から最後までを通して聴いて、ミュージシャンの、そして、私のパッションを感じて頂ければ幸いです。
これからも画期的なアイデアによる製品を期待
以上のように、ウォン氏の熱いPassionによってエディスクリエーションの優れた製品の数々が生み出されているということを強く実感させられたインタビューであった。エディスクリエーションのサウンドは、まさに妥協を排したシンプル・イズ・ベストの精神、そして、音楽への強いリスペクトによって実現しているのである。
Qobuzの日本国内サービスインもアナウンスされ、同社のプロダクトは益々注目を集めていくだろうが、これからも画期的なアイデアとほとばしるPassionによる素晴らしい製品の登場を期待したい。