松下電器産業AVC社・戸田一雄社長が21世紀を語る その2
●松下電器AVC社・戸田一雄社長にインタビューした、新生松下電器の21世紀のAVC戦略。第2回となる今回は、DVDやSDメモリーカードなど、同社の柱となる商品に対する2001年の取り組みについて聞いた。
インタビュアー/音元出版社長 和田光征(Senka21 1月号より)
●ネットワークの拡大と共に各商品さらに勢いを増していく
―― ネットワーク化という流れのなかで、2001年は各商品市場においても、大きな変化が予想されます。テレビ市場では、12月1日にBSデジタルがスタートしましたが、デジタルによる新しい放送文化の創造ということから、新たなご苦労もおありかと思います。
戸田 松下では、放送メディアの方々とも意見を交わしながら、今日まで、送出側の放送機器も手掛けてきましたが、今回、改めて思ったのは、デジタルネットワーク時代には「エンド・トゥ・エンド」でないとダメだということです。
放送の送出側は、どういう番組をつくろうとしているのか。それに合ったデータ放送の受け皿としての機器には何が求められているのか。相手の特性をきちんと把握することがこれまで以上に大事になっています。
BSデジタルのスタート当初には、放送の難しさもあり、思いも寄らないトラブルも発生はしましたが、全てをオープンにして、迅速に対応を行いました。ご迷惑はおかけしましたが、比較的トラブルも少なく、安定した性能の商品をつくり出せたのではないかと思います。これも、エンド・トゥ・エンドで取り組んできたことが、プラスに作用したからだと考えています。
―― BSデジタルは、本放送開始後の反響もまた、凄い勢いですね。
戸田 メーカーとしてはもちろん、たくさんの数を販売したいという思いはありますが、BSデジタルというのは半導体ひとつとっても、スケールは今までの商品の比ではないんですよ。例えばメモリー容量は、昔の画王の時の12万8千バイトに対して、今回は800万バイトですからね。しかし、せっかくの新しい文化が芽を吹き出したわけですから、送り出し側、受け側が一緒になって大事に育てていかなければなりません。
―― 一千日一千万台という目標が掲げられていますね。
戸田 デジタルの画像のよさを見たら、もう後戻りできないというひとがかなり多いようです。データ放送も、日々内容が充実していくと思います。そうなると、かなり早いピッチで需要が拡大し、メーカーサイドから見れば、採算ラインも予想より早く見えてくるのではないかと思います。
一千日一千万台に向けての第一ステップとして、今年度70万台という数字が業界目標としてありますが、12月でほぼ目標達成が見えてきたように思います。BSデジタルには我々も期待していましたが、それ以上に、消費者の関心が高かったように思います。
―― 御社では、クリエイティブ・ネットワークの中核を成す商品として、待望の本格派AVパソコン「HITO」を発売されましたが、パソコン市場についてはどのようにご覧になられていますか。
戸田 パソコン市場はここにきてややトーンダウンしてきています。誤算は、商品のだぶつきがかなり顕著になってきているということです。需要に急ブレーキがかかっているという見方もできるのではないでしょうか。それに伴い、パソコン市場全体が競争の中で価格低下が激しい状況ですが、当社についても、市場対応を図りつつ、順調に予定通りの販売をさせていただいています。
―― パソコンでは、インターネットがこれだけ普及し、情報取得にとどまらない多用途の広がりを見せてくると、デジタルデバイドの解消も、メーカーとしては大きな課題のひとつとなりますね。
戸田 商品にもいろいろな切り口があって、例えば当社のノートパソコン“レッツノート”の場合は、ヘビーユーザーをターゲットとした商品です。その一方で、文化を広げるということになってくると、おじいちゃんやおばあちゃんでも本当に楽しく簡単に扱える商品が必要になってきます。ノンPC、いや、もっと適切に表現すれば、ノンキーボードだと思いますが、そういう時代も21世紀初頭に具現化されてくると考えています。そうしたスタンスでの商品への取り組みにも、松下では力を入れていきたいと考えています。
―― 2000年に市場が急拡大したDVDでは、ビデオプレーヤーのみならず、オーディオに、パソコンに、録画機にとさらに輪が広がりを見せていますね。
戸田 世の中の文化が非常にネットワーク化され、いろいろな機能をきちんと満足させられる環境が整ってきました。例えば、現在あるAVパソコンも、パソコンはパソコンですが、立派なAVのプラットフォームとして機能しています。
今後、これらのネットワークはさらに充実していきますから、メーカーも、これはオーディオ専用機、これはパソコン用周辺機器といったくくりができにくくなると考えています。商品にはあらゆる可能性が搭載され、コンピューターにもオーディオにも使えるような商品が珍しくなくなってきます。それが、これからの21世紀型のハードであり、また、ソフトであると思います。そうした環境の変化を考えると、DVDにおいては、21世紀のネットワーク時代を視野に入れたRAMが主流になってくるのが自然ではないかと思います。
―― 対応商品が猛スピードで広がりを見せているSDの展開も、大いに注目されています。こちらはいかがですか。
戸田 SDはいわば、ネットワークのひとつの神経系統ですね。存在感を感じさせずに、まるで空気のごとく、毛細血管のごとく機能する。対応商品はどんどん増やしていきたいと思います。そのためには、松下電器1メーカーでなしに、いろいろなメーカーから、いろいろな使用環境で使える商品が出て、互換性を持つことが大事だと思います。今現在、グローバルで150社の賛同を得ていますし、その数はさらに拡大の方向にあります。2001年にはSDの可能性はさらに拡大し、皆の共通の財産だということを徹底してアピールしていきます。
(1月3日掲載 その3へ続く)
インタビュアー/音元出版社長 和田光征(Senka21 1月号より)
●ネットワークの拡大と共に各商品さらに勢いを増していく
―― ネットワーク化という流れのなかで、2001年は各商品市場においても、大きな変化が予想されます。テレビ市場では、12月1日にBSデジタルがスタートしましたが、デジタルによる新しい放送文化の創造ということから、新たなご苦労もおありかと思います。
戸田 松下では、放送メディアの方々とも意見を交わしながら、今日まで、送出側の放送機器も手掛けてきましたが、今回、改めて思ったのは、デジタルネットワーク時代には「エンド・トゥ・エンド」でないとダメだということです。
放送の送出側は、どういう番組をつくろうとしているのか。それに合ったデータ放送の受け皿としての機器には何が求められているのか。相手の特性をきちんと把握することがこれまで以上に大事になっています。
BSデジタルのスタート当初には、放送の難しさもあり、思いも寄らないトラブルも発生はしましたが、全てをオープンにして、迅速に対応を行いました。ご迷惑はおかけしましたが、比較的トラブルも少なく、安定した性能の商品をつくり出せたのではないかと思います。これも、エンド・トゥ・エンドで取り組んできたことが、プラスに作用したからだと考えています。
―― BSデジタルは、本放送開始後の反響もまた、凄い勢いですね。
戸田 メーカーとしてはもちろん、たくさんの数を販売したいという思いはありますが、BSデジタルというのは半導体ひとつとっても、スケールは今までの商品の比ではないんですよ。例えばメモリー容量は、昔の画王の時の12万8千バイトに対して、今回は800万バイトですからね。しかし、せっかくの新しい文化が芽を吹き出したわけですから、送り出し側、受け側が一緒になって大事に育てていかなければなりません。
―― 一千日一千万台という目標が掲げられていますね。
戸田 デジタルの画像のよさを見たら、もう後戻りできないというひとがかなり多いようです。データ放送も、日々内容が充実していくと思います。そうなると、かなり早いピッチで需要が拡大し、メーカーサイドから見れば、採算ラインも予想より早く見えてくるのではないかと思います。
一千日一千万台に向けての第一ステップとして、今年度70万台という数字が業界目標としてありますが、12月でほぼ目標達成が見えてきたように思います。BSデジタルには我々も期待していましたが、それ以上に、消費者の関心が高かったように思います。
―― 御社では、クリエイティブ・ネットワークの中核を成す商品として、待望の本格派AVパソコン「HITO」を発売されましたが、パソコン市場についてはどのようにご覧になられていますか。
戸田 パソコン市場はここにきてややトーンダウンしてきています。誤算は、商品のだぶつきがかなり顕著になってきているということです。需要に急ブレーキがかかっているという見方もできるのではないでしょうか。それに伴い、パソコン市場全体が競争の中で価格低下が激しい状況ですが、当社についても、市場対応を図りつつ、順調に予定通りの販売をさせていただいています。
―― パソコンでは、インターネットがこれだけ普及し、情報取得にとどまらない多用途の広がりを見せてくると、デジタルデバイドの解消も、メーカーとしては大きな課題のひとつとなりますね。
戸田 商品にもいろいろな切り口があって、例えば当社のノートパソコン“レッツノート”の場合は、ヘビーユーザーをターゲットとした商品です。その一方で、文化を広げるということになってくると、おじいちゃんやおばあちゃんでも本当に楽しく簡単に扱える商品が必要になってきます。ノンPC、いや、もっと適切に表現すれば、ノンキーボードだと思いますが、そういう時代も21世紀初頭に具現化されてくると考えています。そうしたスタンスでの商品への取り組みにも、松下では力を入れていきたいと考えています。
―― 2000年に市場が急拡大したDVDでは、ビデオプレーヤーのみならず、オーディオに、パソコンに、録画機にとさらに輪が広がりを見せていますね。
戸田 世の中の文化が非常にネットワーク化され、いろいろな機能をきちんと満足させられる環境が整ってきました。例えば、現在あるAVパソコンも、パソコンはパソコンですが、立派なAVのプラットフォームとして機能しています。
今後、これらのネットワークはさらに充実していきますから、メーカーも、これはオーディオ専用機、これはパソコン用周辺機器といったくくりができにくくなると考えています。商品にはあらゆる可能性が搭載され、コンピューターにもオーディオにも使えるような商品が珍しくなくなってきます。それが、これからの21世紀型のハードであり、また、ソフトであると思います。そうした環境の変化を考えると、DVDにおいては、21世紀のネットワーク時代を視野に入れたRAMが主流になってくるのが自然ではないかと思います。
―― 対応商品が猛スピードで広がりを見せているSDの展開も、大いに注目されています。こちらはいかがですか。
戸田 SDはいわば、ネットワークのひとつの神経系統ですね。存在感を感じさせずに、まるで空気のごとく、毛細血管のごとく機能する。対応商品はどんどん増やしていきたいと思います。そのためには、松下電器1メーカーでなしに、いろいろなメーカーから、いろいろな使用環境で使える商品が出て、互換性を持つことが大事だと思います。今現在、グローバルで150社の賛同を得ていますし、その数はさらに拡大の方向にあります。2001年にはSDの可能性はさらに拡大し、皆の共通の財産だということを徹底してアピールしていきます。
(1月3日掲載 その3へ続く)