新型タウに搭載された、超薄型フラットハイビジョンブラウン管を詳しく知る
左は同社従来品、右側が新しく開発されたブラウン管 |
新型タウに搭載された超薄型設計のブラウン管は、松下電子工業(株)が松下電器産業(株)、九州松下電器(株)と共同で開発したもの。36型で427mm(同社従来品比114mm短縮)、32型で398mm(同社従来品比96mm短縮)のフラットハイビジョン管を実現した。このブラウン管により、家具サイズ(奥行き:45cm)の大型テレビセットが可能となった。
このフラットハイビジョン管には、世界で初めて120°偏向角を採用している。一般に偏向角を広げれば広げるほど技術的な課題は多くなるが、それを解決するため、以下の新技術を導入したという。
1. マスクは既に29型等の大型テレビ管で導入している同社独自の“Super Slot Tension”方式の採用で、電子ビームによるマスク膨張を大幅に抑え白色品質を向上、 電子ビームの広角入射を可能とした。
2. 広角偏向化に伴う偏向収差・コンバーゼンスの改善とラスター歪の最適化を図るため、 偏向ヨーク本体に新たに追加した補助コイルとの合成磁場により、高画質化を実現した。
3. ブラウン管バルブは細ネック(φ29.1)/角型コーン等により、広角偏向化に伴う電力増加を3分の1に抑制した。
4. 電子銃は、主レンズを形成する2つの電極を非対称にすることにより大口径化を実現した「E4電子銃」を新開発し、画面中央での解像度を20%向上(同社従来比)。また、広角偏向時に悪化する画面周辺解像度も同社従来品と同等にした。これにより情報量が豊富なBSデジタルハイビジョン(1125i、750p)においても、画面の隅々までクリアな映像表示を可能とした。
5. パネル表面のコーティングは、全画面域で均一高輝度な画面表示を実現するため、ARAS(低反射/帯電防止)コートに着色層を設け、最適膜厚分布で実現する2次元塗布技術を新開発。これにより画面周辺での輝度を向上させ、当社従来品より均一な白色画面を達成した。
これらの新技術を開発した結果として、特許出願件数は87件に及んでいるという。LCD、PDP、DLPなど新デバイスに押されつつあったブラウン管だが、この技術的なブレークスルーによって、また息を吹き返しそうだ。(Phile-web編集部)