シーラス・ロジック、同社新製品のデモを開催〜新規格Enhanced DVDのサンプル機も展示
<左>IEEE802.11bのベースステーション <右>Enhanced DVDのサンプル機(手前)。TVに表示されているのが画面例 |
デモは、先日開催されたCES(Consumer Electronics Show)で発表したものを中心に構成。まずは同社が買収したstream machine社の資産が活かされたMPEG2エンコード/デコードチップ「CS9228」。前世代モデルではエンコードのみ可能だったが、本チップではデコードもできるようになった。エンコードのプロセスにも工夫を凝らし、低ビットレート時でも高画質を実現できるという。コストも低く抑えられており、ローコストなDVDレコーダーの製造を可能にすると言う。
二つ目はIEEE802.11b関連技術。これにも買収した企業のテクノロジーが応用されている。帯域幅は通常の11bとおなじ11Mbpsだが、同社独自の“ホワイトキャップ2”という拡張プロトコルを用いることにより、特にマルチメディアデータの伝送時に圧倒的なハイパフォーマンスを実現する。その能力を示す例として、2台のパソコンを用意し、片方のHDDに記録されたMPEG2データをもう片方のPCで再生するというデモンストレーションが行われた。通常の11bではコマ落ちがひどく正常に再生できないが、同社のシステムではスムーズに動画が再生されていた。また、コードレス電話や電子レンジで使用される2.4GHz帯の電波との干渉を防ぐため、自動的に帯域を変更する機能も搭載。民生機器用に強くアピールしたいという。
次は「CS742」のデモだ。これはWMA/MP3のコンパクトなデコーダーチップ。ポータブルCDプレーヤーなどに組み込む。RISC CPUを採用することでファームウェアのアップデートが可能となっており、AACやATRAC3などのフォーマットに対応することもできる。
デジタルアンプ技術のデモを挟んだ後、いよいよDVDプレーヤー用のチップのデモに移った。シングルチップでDTS96/24のプロセッシングを行う「CS49400」と、安価なDVDプレーヤーでもプログレッシブ走査を可能にする「CS98100」だ。CS49400のデモではDTSのデモディスク(AVレビュー101号に付属のもの)からQUEENの楽曲をプレイ。スピーカーが小型だったためその音質を云々することはできないが、当然のことながらスムーズに再生が行われていた。CS98100ではそのコストパフォーマンスの高さをアピール。本チップにより2万円程度のプログレッシブDVDプレーヤーが可能になりそうで、CPの高さを重視するユーザーには朗報となるはずだ。搭載したDVDプレーヤーの発売は来年以降になりそうだが、楽しみに待ちたい。
最後に、現在仕様を策定中の“Enhanced DVD”用STBも、サンプルモデルながら展示されていた。Enhanced DVDとは、DVDプレーヤーにインターネット接続機能を持たせ、DVDディスク内の情報とネットの情報を統合して表示する新しい規格だ。仕様がまだ固まっていないことから、既存のCS98100を2つ使用して作ったサンプル機だが、出荷時にはもちろんワンチップ化し、統合的なソリューションを目指すという。
同社の抱えるテクノロジーやソリューションは、オーディオビジュアルのほぼすべての領域をカバーしている。同社では、この幅広さを武器に「形態を徐々に変えつつあるオーディオビジュアル機器にベストなソリューションをいち早く提供する」と自信のほどをのぞかせる。今後の展開も注意深く見守りたい。(Phile-web編集部)