第4回東京フィルメックス閉幕〜中国、イランの若い監督の才能を評価
<左>最優秀作品賞を受賞したニン・ハオ監督 <右>クロージング作品「ニワトリはハダシだ。」の森崎東監督と倍賞美津子氏ら出演者 |
最優秀作品賞『コダックVISIONアワード』は、中国のニン・ハオ監督の「香火」(INCENSE)(2003年 98分 DV撮影 COLOR)に決定。
ニン監督は、生地、山西省の田舎町で、仏像復興の資金を集めようとする僧侶の姿をユーモアを交えて描いた。素朴だった僧侶は、お金のためにやがて、狡猾なこともするようになってしまう…。
ニン・ハオ監督は、北京電影学院撮影科に在籍中の26歳。ミュージック・ビデオやCFの制作も手がけ、ミュージシャンとしても活躍中。この作品は、5万元(約65万円)の予算で15日間の撮影で作ったという。監督は、「あまりに意外な結果に驚いている。僕を支えてくれた友達たち、故郷の山西省の人々に感謝を述べたい」とコメントした。
審査委員長のベルナール・エイゼンシッツ氏は、「この作品は、変貌を遂げる中国の複雑な姿を、明瞭かつ感傷的にならずに描いている。世俗的な世界と神聖な世界の間でとらわれた僧侶のコミカルな描写が秀逸である」とし、日本人審査員の森崎東監督は、「この作品の受賞がとても嬉しい。この作品のお坊さんにそっくりな男がいて、非常に親近感を覚えた。人間をまるごとちゃんと描いているという、あの覇気のなさとか、それでいて政治批判をしっかりしている。非常に優れた作品だ」と述べた。
作品賞と共に、監督には、副賞としてコダック株式会社より、賞金100万円が授与された。
審査員特別賞(副賞50万円)はイランのハナ・マフマルバフ監督が、今日のアフガニスタンを、映画を製作する映画製作クルーと現地の人々の交流を通じて描いた「Joy of Madness」(2003 73分 DV→35ミリ Color)に授与された。監督は撮影時13歳。8歳から映画を製作し、この作品が長編デビュー作。今回、その優れた洞察力を評価された。
観客が感銘を受けた作品を投票によって選ぶ観客賞では、京橋の国立近代美術館フィルムセンターと共催して上映特集が組まれていた清水宏監督の「簪」(1941年 田中絹代主演)が選ばれた。
今回のフィルメックス映画祭に、清水宏特集が組み入れられたことに対しては、審査員から特に敬意を示すという言及があった。エイゼンシッツ氏は、「レトロスペクティヴ特集の清水宏監督作品が観客賞を受けたことに感銘を受けている。これは、映画には、古い、新しいはなく、全ての映画は現在であるということの証明である」とコメントした。
有楽町朝日ホールでは、授賞式後に、森崎東監督の最新作「ニワトリはハダシだ。」(肘井美佳、石橋蓮司、余貴美子、倍賞美津子、原田芳雄他 2003 カラー 114分)をクロージング・プレミア上映し、閉幕した。
本年度の山形国際ドキュメンタリー映画祭でも、中国電影学院出身の若手監督がDVにより制作した映画が大賞を受賞した。今回のニン監督の受賞もあわせ、中国で映画を制作する若手監督の力が世界に発信されている状況だ。
第4回東京フィルメックスについての詳細は下記リンクを参照のこと。
(山之内優子)