世界に発信するアジアの監督たち 〜マレーシア編〜 アミール・ムハマド監督インタビュー (7) (8)
映画「ビッグ・ドリアン」で女優サンドラ・ソディを撮影するアミル監督と、カメラマン (写真:Danny Lim) |
Interview with Amir Muhammad
インタビュー・文 / 山之内 優子
by Yuko Yamanouchi
7. マレーシアの映画事情
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−マレーシアではどんな映画が多く見られていますか?
監督:ポップスターの出演するラヴストーリーと、警察もの。それにスラスプティックコメディ。
−ハリウッドの映画は人気がありますか?
監督:ハリウッド映画は、多くの国の映画市場を支配していると言えるとは思うんだけれど、マレーシアは特別なところがあります。マレーシアの映画市場は、ハリウッド、香港、ボリウッドといわれるインド映画の3つに支配されている。この3つに人気があって、マレーシア映画は、4番目かな。
−ムハマド監督は、若い人に映画の指導もされているのですか?
監督:教えるというより、若い人と一緒にブレーン・ストーミンをするワークショップです。彼らのアイデアがどうしたら実現できるか、提案をしたり、時々、助けたりします。
−ワークショップには、将来映画の監督になりたいと思っている人がくるんですか?
監督:なにか映画を作りたいから来るんですよ。ただ、マレーシアには、大きな商業映画産業は実際には、まだないので、最終的に映画の世界に進む若い人の数は、あまり多くはない。広告とか、メディアなどの、もっとイージーで、給料がいい分野に進みますね。
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8. 身近なものを撮影するようなドキュメンタリーは、アンディ・ウォホールがルーツだ
−日本の若い人の間では、自分の家族とか、自分の身近な人とか、自分自身を撮影しているドキュメンタリーを作る人が増えているんです。それは、時に、セルフ・ドキュメンタリーと言われたりしているんですが、こういう映画をどう思いますか?
監督:それは、怠けているかも(笑)。いや、いや。それは、メディアが民主化したことのひとつの現れだと思いますね。僕の考えでは、そのルーツは、アンディ・ウォホールにある。
ウォホールは、すごく面白いというわけではない人を撮影した。しかし、その人たちのほうでは、自分たちは、面白いと思っていた。そしてその人たちが、自分たちを面白いと思っていたので、見る人もそれを面白いと思うのだ、というわけなんですね。
ただ、例えばかつての60年代のドキュメンタリーは、政治的なかかわりが今よりあったけれど、今では、若い人は、政治に対して、懐疑的になっている。
−アンディ・ウォホールのドキュメンタリーは、そうすると、日本で最近セルフドキュメンタリーと呼ばれているような映画の一種といえるんでしょうか?
監督:ウォホールの映画はドキュメンタリーではなかったけれど、彼は有名ではない人間を有名人のように使った。誰でもがスーパースターになれるかのようにね。
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