(社)日本オーディオ協会 2004新春の集い 鹿井会長挨拶
(社)日本オーディオ協会 鹿井信雄会長 |
皆さん明けましておめでとうございます。恒例のJAS新春の集いを企画いたしましたところ、お忙しい中を、経済産業省の福田課長さんはじめ、関係団体、会員各社、並びに会員の方々にご出席いただき大変有難う御座います。
昨年、日本オーディオ協会はIT化時代の新しい時流変化に対応して行ける協会づくりを目指して、事務局も新旧交代し組織行動革新の第一歩を踏出した年でした。
一昨年中止した“オーディオExpo”は思い切って東京を離れ、開催場所をより居住地域に近い“パシフィコ横浜”に移し『A&Vフェスタ2003』として開催させて頂きました。その結果、入場者発券カウントで6万3千人の来場者があり、新規来場者は56%と増えました。また、来場者の評価も大変向上し「非常に良かった」「良かった」が54%、「ふつう」を含め86%となり、ご好評を頂きました。出展にご協力いただいた各社さん、並びに展博委員会関係者の方々のご努力に厚く御礼を申し上げます。
ここ数年来、事業システム変革による混乱と景気減速が響き、合従連衡の続いていたオーディオ業界も、昨年は再編成が進み、年半ばの頃からは漸く将来に向かって体制も整い、先行きに明るさが見えてきたように感じております。
日本のA&V国内市場は約2兆円弱としますと、TV、ビデオが1兆円、オーディオ系が4千億円、カーオーディオ系が5千億円、国内の生産は輸出を含めてその約55%民生系の商品というのが企業全体の事業規模なのでしょうか? 技術のクロスオーバーしている、テレビに組み込まれる分を考えれば、民生オーディオ系の世界は、カスタマーの価値では大雑把に約1兆円の貢献度の世界なのかと思います。
一方で、昨年暮には地上デジタル放送が始まり、ミュージック専用のネット配信の企画が具体化され、ソフトメディアの世界に新たな動きが始まりました。
また、DVDやSACDの機材の普及が進みソフトのタイトル数も順次増加し、衛星デジタル放送の5.1ch番組も増えて、いよいよマルチチャンネルやAVシアターの環境も現実のものとなり、デジタルメディア複合化時代への新しいトレンド転換が如実に感じられる時代となって参りました。
日本オーディオ協会の初代会長の故中島健蔵さんの随想文に、その昔1930年代、ベル研究所のメンバーがステレオを研究していた頃、日頃、ボストン交響楽団をラジオ放送で聞いている人達にステレオ再生についての意見を聞いたところ、いまのモノラルの再生音で十分満足しているという返事であったが、ボストンフィルの演奏音を生で聞いた後、ステレオで再生して聞かせたところ、全員がこんなにリアルに聞こえるものかと感激した、という逸話がありました。
昨年の暮の「音の日」に、放送記念館で行われた第1回の例会では、超高級スピーカーを並べた5.1chの音響再生システムでマルチチャンネル音源の再生実演が行われ、いろいろな音源で高音質のサラウンド効果を体験することができました。
しかし、所詮人間が五感で感じる音像を、限られた装置で自然のままに再生することには限度があります。一般家庭の狭い設置スペースで制限されたポピュラーなAVシアターでは、普及を進めるためには音質もさることながら、むしろ人間の感じている超低域や超高音の存在意義を再検討し、五感で感じ取っている音領域の再現能力を拡充する方向を再検討すべきではないのか? という感じを強く持ちました。
戦後の日本復興の過程で協会の先輩諸氏の思いは、“ボランティアで再生音の悪い拡声装置の音質を繕わさせる努力から始められた”ともいわれます。
放送でメディアソフトの音源のチャンネル数が決められ、新しく始まったサラウンド音では、その再生音作りは人間の持つ感性に照らしてどうあれば良いのだろうか? という課題で捉え、ヘッドホンによるモバイルオーディオを含めて、より自然な音再生の環境を提唱することが大切であると感じることしきりです。
これから2011年までデジタルテレビの普及につれて、大衆までA&Vサラウンドの放送環境が普及してゆき、ユーザーのなかのイノベーター(先進層)はデジタル・ネット・メディアのの新しい時代の流れに就くことでしょう。
人間と音像とのインターフェース改善を提案して技術改革を進めてきた諸先輩の思いに立ち戻って、人間の知覚と情感と再生音域の関係ろもう一度真剣に検討し、提案と普及に結びつけることが協会やオーディオファンの責務として問われているように思われます。
2004年はこのような考えで、新生オーディオ協会の行動を新しい視点を持ってすすめ、日本オーディオ協会の発展を考えて参りたいと思います。よろしく支援の程をお願いいたします。
最後になりましたが、ご出席下さった関連団体、会員会社、会員の益々のご発展を祈念して新年のご挨拶とさせていただきます。