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【WEB版 飯塚克味 コレクター魂】多発するリメイク映画は是か非か?

公開日 2006/01/05 00:31
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2005年はハリウッドの収益が激減したそうである。理由は安直なリメイクとシリーズ作品が主流を占める企画不足とされている。確かに現在のハリウッドは、ストーリーを考える人材が不足しているとしか思えない状況だ。日本・韓国・フランスなど、世界各地からリメイク権を買いあさり、往年の名作も続々とリメイクし続けている。たまにオリジナル作品でヒットがあるとすぐシリーズ化。傑作『マトリックス』がシリーズ化することで評価を下げていったのも印象深い出来事だった。しかし、リメイクという流れそのものは否定する気にはなれない。映画は作られる時代によって、同じ内容でも全く違った顔を覗かせるからだ。最近そんな作品に出会った。


『悪魔の棲む家』オリジナル版

リメイク版『悪魔の棲む家』
それがライアン・レイノルズ主演の『悪魔の棲む家』だ。ちょっと前の映画ファンならご存知だろうが、オリジナル版は79年に製作され、監督は『燃えよ! ドラゴン』のスチュアート・ローゼンバーグ。主演は『ジャグラー ニューヨーク25時』のジェームズ・ブローリン、『スーパーマン』のマーゴット・キダー、『夜の大捜査線』のロッド・スタイガーという当時としては充分豪華な顔ぶれだった。引っ越ししたばかりの家族を幽霊が襲うという実話を基にしたこともあって、オリジナル版は空前の大ヒットを記録。シリーズ化も行われ、駄作のオンパレードではあったが、ホラーファンにとって『悪魔の棲む家』というブランドは定着していった。

しかし、畑違いのローゼンバーグ監督の演出は全体的に事実を追うことに終始して、観客を怖がらせるということにかけては残念ながらインパクトは薄かった。そんな作品をリメイクしようと立ち上がったのは『悪魔のいけにえ』を『テキサス・チェーンソー』に生まれ変わらせ成功したマイケル・ベイ監督。正直、この監督はプロデュースの方が向いているかもしれないと思わせるセンスの良さだったが、今回も作品の方向性がしっかりしていて、リメイクの意義を感じた。その理由としては挙げられるのは、家族構成が連れ子を持つ妻と若い夫の再婚であることが強調されていること。オリジナル版でも触れられているが、軽い扱いですぐ忘れてしまうほどだ。

このことは作品の後半、夫が精神に異常をきたし、子どもたちに冷たくあたることで大いに影響してくる。最近、義父が幼児虐待を行う報道がよく行われるが、そういった実際のDVを彷彿とさせるのである。また、オリジナル版ではかなり出番が多いわりに、何の助けにもならなかった神父の存在が希薄になったことも、作品にプラスに働いた。余計な脇役が削除されたことで、家族が家の恐怖に直面することがより露わになったのである。そして肝心なのは、家にひそむ恐怖の元凶だ。その存在が明らかになると全ての謎は解決するのだが、オリジナルとは微妙に扱いが異なり、神父が勝てない理由も明らかになる。詳しくはネタばれなので書けないが、是非ご覧になってその目で確認してもらいたい。

筆者はまず北米版のDVDでこの映画に接したが、最近のホラー映画らしくショッカー効果満点!椅子から飛び上がること間違いなしのショッキング・サラウンドを体験できる。1月からの劇場公開はかなり限定されているので、地域によっては交通費と映画代を合わせるとDVDの方が安上がりになってしまうかもしれないが、まずは劇場でご覧頂き、その後家庭劇場でも楽しんでもらいたい作品だ。

『悪魔の棲む家』について長々と語ってしまったが、その他にもリメイクで成功した作品は多い。トム・クルーズ主演、スピルバーグ監督の『宇宙戦争』はすさまじい音響と圧倒的な映像のパワーが鮮烈だったし、リチャード・ギアの『Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス』も夫婦愛への焦点のあわせ方が見事で何度も涙してしまった。


韓国版『戦国自衛隊』とも言うべき『天軍』
日本では千葉真一の『戦国自衛隊』が、江口洋介主演で『戦国自衛隊1549』としてリメイクされたが、こちらの評価はかなり厳しいものが多く、筆者も未見だ。替わりと言っては何だが、韓国版『戦国自衛隊』とも言うべき『天軍』という作品を韓国版のDVDでチェックした。北朝鮮と韓国が融和政策に向かう中、裏では北による核弾頭の強奪が発生。それを追って交戦状態に入った両軍だったが、謎の彗星の接近により、両軍数名ずつが過去にタイムスリップしてしまう。装備は日本版のように一個師団ではないので、ヘリも戦車も登場しないが、北と南の兵士が協力しなければ生きていけない設定を考えたのが面白い。『天軍』の制作者が『戦国自衛隊』を見ていたがどうか不明だが、クライマックスにはしっかり戦争シーンも盛り込まれていて、映画の構成はほぼ一緒だ。自分としては『戦国自衛隊1549』よりも意義のあるリメイクと捉えたいのだが、一般観客の反応はどうなるのか是非知りたいところだ。

そんなことを考えていたら韓国で『世界の中心で、愛をさけぶ』のリメイクが決定したニュースが舞い込んできた。最近一時期の勢いがやや失われつつある韓国映画だが、邦画リメイクで息を吹き返すのか、こちらも目が離せそうにない。

(飯塚克味)

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