【レビュー】世界初のワンセグ内蔵ポータブルDVD「DVD-LX97」を試す
4月1日からの地上デジタルテレビ「ワンセグ」本放送開始に合わせ、各社から対応機器が続々と発表されている。先日試用レポートを掲載したauの携帯電話「W41H」や、パナソニック製のNTTドコモ向け端末「P901iTV」(関連ニュース)など、モバイル機器にワンセグチューナーを内蔵することが新たなトレンドになりつつある。
そんな中、松下電器はワンセグ対応のポータブルDVDプレーヤー「DVD-LX97」(関連ニュース)を発表、3月15日から発売する。9インチという大画面液晶ディスプレイを搭載し、ワンセグチューナーと地上アナログチューナーをダブルで装備した。同社では「世界初のワンセグ対応ポータブルDVDプレーヤー」と謳っている。ほかに、DVDプレーヤー機能はもちろん、SDカードスロット内のJPEG画像やMPEG4動画、G.726音声を再生する機能なども備える。価格はオープンだが9万円前後での発売が予想される。
●車載用を意識したサイズと重さ
実際に手に持った第一印象は、「かなり大きいな」というもの。9インチ液晶ディスプレイは、ほぼサブノートPCの画面サイズに匹敵する。重さはバッテリー装着時で約1154gと、最軽量クラスのノートPCをも上回る。デザイン的にも、ディスプレイを固定するアーム部分がかなりゴツく、気軽にカバンに入れて持ち歩く雰囲気ではない。
ただしこの大きさや重さは、同社の想定どおりの仕様のはずだ。本機のメイン用途は、カーDCアダプターやヘッドレストブラケットなどが同梱され、FMトランスミッター機能が内蔵されていることからも分かるとおり、車載用、とりわけ後部座席での視聴だと思われる。また、家庭内で気軽に移動できるDVDプレーヤー内蔵テレビとしても活用できそうだ。通勤・通学や出張時に持ち歩く用途には、携帯電話や7インチクラスの小型プレーヤーなど、別のソリューションが数多く用意されるだろう。
ディスプレイは、同社の従来機種と同様、様々なスタイルが楽しめる「フリースタイル機構」を採用。熟練を重ねた使いやすさが感じられ、思った場所でディスプレイが自然に固定され、動かすときもストレスなく操作ができる。屋内で使用するときなど、視聴位置にあわせてディスプレイの角度を自由自在に変えられるのは非常に便利だ。
●360度回転するアンテナで受信性能を高めた
ワンセグ機能を見ていこう。本機でワンセグを視聴する際、威力を発揮するのが本体右側面に収納されたデジタルTVアンテナだ。アンテナを引き出して、360度自由に角度を変えられる。電波の強い方向にアンテナを向ければ、常に高い受信性能を発揮できる。
ワンセグチューナーは、「TVモード」ボタンを押すと起動する。ボタンを押してから出画までが約20秒、選局には約5秒程度必要で、特に選局の遅さには若干ストレスを感じる。
ワンセグのチャンネルリストは「ホーム」と「おでかけ」の2パターンを設定可能。たとえば自宅とオフィスで放送局が異なる場合でも、あらかじめリストを設定しておけば即座に切り替えられる。本体の「CHリスト」ボタンを押すと局名を表示し、ダイレクト選局を行う機能も備える。
ワンセグ視聴時に「画面表示」ボタンを押すと操作メニューが表示される。ここから番組表を表示したり、現在の番組内容を表示したりすることが可能。ただし番組表は視聴中の局の番組表のみで、複数局をまたいだデータは表示できない。そのほか、チャンネル設定やチャンネルリストの切り替え、初期設定などもメニューから行う。
●解像感はそれなりだがワンセグのクリアな映像は十分楽しめる
ワンセグ受信時の精細感は、地上アナログに比べれば格段に高いが、DVDなどを見慣れた目からすると少々物足りない。ワンセグそのものの解像度が320×240ピクセル(QVGA)、もしくは320×180ピクセルと高くない上、これを9インチの大きな画面に引き延ばしているからだろう。ただし、デジタルならではのノイズの少なさはワンセグの大きなメリットで、そのクリアさは称賛に値する。
数値は非公表だが、液晶ディスプレイそのものの解像度はそれほど高くない。また、画面隅にバックライトの光漏れがあり、暗いシーンなどでは若干気になった。視野角については、左右方向はかなり粘るが、上下方向はあまり広くない印象だ。もっとも、前述の「フリースタイル機構」でディスプレイの向きは自由自在に変えられるから、視野角で困る場面は少ないだろう。
映像のプリセットモードは、DVD視聴時は「ノーマル」「シネマ1」「シネマ2」「ユーザー」の4つから選択できるが、ワンセグ受信時は利用できない。音声メニューについても、重低音やアドバンストサラウンドなど、DVDで設定可能な各種機能をワンセグ視聴時に利用することはできない。
バッテリーをフル充電にするには約6時間必要。連続使用時間はDVD再生で6時間、TV視聴で約9時間と長い。別売りのバッテリーパック「DY-DBLS55」(26,250円)を使用すれば、再生時間はそれぞれ倍に増える。数日間の出張なら充電をしなくても済むレベルで、ヘビーユーザーにとってはありがたい仕様だ。
●車載時の機能は非常に充実している
前述したとおり、車載用の装備や機能は非常に充実している。まず、FMトランスミッターを内蔵し、音声をFM電波にして飛ばすことにより、DVDとワンセグの音声をクルマのFMチューナーで受信、再生することが可能。本体にFMトランスミッターの専用操作ボタンが設けられており、ON/OFFやステレオ/モノラルの切り替え、周波数の設定などができる。さらに、カーDCアダプターも付属しており、バッテリー残量を気にせずに使用することが可能。車内で使用する時は、付属のヘッドレストブラケットを利用し、シートの後ろに本機を固定すれば、後席の搭乗者がテレビやDVDを自由に楽しむことができる。
●モニターの大きさを活かした高画質モデルの登場に期待
見てきたように、世界初のワンセグチューナー内蔵ポータブルDVDプレーヤー「DVD-LX97」は、受信性能やバッテリーの持続時間など基本的な部分がしっかりと作られた、非常に堅実なモデルという印象だ。特に車載用途では、9インチという大画面でワンセグやDVDのクリアな映像を楽しめるメリットは大きい。放送局をまたいだ番組表が表示できない、ワンセグ視聴時の画質調整が行えないなど、今後の改良を期待したい部分もあるが、車内でのエンターテイメント体験を大きく進化させうる本機のポテンシャルの前では、あまり大きな問題ではない。
ポータブルDVDプレーヤーの多くが地上アナログチューナーを装備、あるいは外付けで対応していることを考えると、地アナより消費電力が低くクリアな映像を実現できるワンセグは、今後ポータブルDVDの標準的な機能として搭載されることになるだろう。
同じように携帯電話でもワンセグ対応モデルは増えるだろうが、携帯電話と比べた際のポータブルDVDプレーヤーの強みは、そのモニターサイズの圧倒的な大きさにある。スケーリング処理の精度などを高め、画面の大きさを最大限に利用した高画質モデルが登場すれば、ワンセグの魅力をさらに高めることができるはずだ。今後の展開に期待したい。
(Phile-web編集部)
そんな中、松下電器はワンセグ対応のポータブルDVDプレーヤー「DVD-LX97」(関連ニュース)を発表、3月15日から発売する。9インチという大画面液晶ディスプレイを搭載し、ワンセグチューナーと地上アナログチューナーをダブルで装備した。同社では「世界初のワンセグ対応ポータブルDVDプレーヤー」と謳っている。ほかに、DVDプレーヤー機能はもちろん、SDカードスロット内のJPEG画像やMPEG4動画、G.726音声を再生する機能なども備える。価格はオープンだが9万円前後での発売が予想される。
●車載用を意識したサイズと重さ
実際に手に持った第一印象は、「かなり大きいな」というもの。9インチ液晶ディスプレイは、ほぼサブノートPCの画面サイズに匹敵する。重さはバッテリー装着時で約1154gと、最軽量クラスのノートPCをも上回る。デザイン的にも、ディスプレイを固定するアーム部分がかなりゴツく、気軽にカバンに入れて持ち歩く雰囲気ではない。
ただしこの大きさや重さは、同社の想定どおりの仕様のはずだ。本機のメイン用途は、カーDCアダプターやヘッドレストブラケットなどが同梱され、FMトランスミッター機能が内蔵されていることからも分かるとおり、車載用、とりわけ後部座席での視聴だと思われる。また、家庭内で気軽に移動できるDVDプレーヤー内蔵テレビとしても活用できそうだ。通勤・通学や出張時に持ち歩く用途には、携帯電話や7インチクラスの小型プレーヤーなど、別のソリューションが数多く用意されるだろう。
ディスプレイは、同社の従来機種と同様、様々なスタイルが楽しめる「フリースタイル機構」を採用。熟練を重ねた使いやすさが感じられ、思った場所でディスプレイが自然に固定され、動かすときもストレスなく操作ができる。屋内で使用するときなど、視聴位置にあわせてディスプレイの角度を自由自在に変えられるのは非常に便利だ。
●360度回転するアンテナで受信性能を高めた
ワンセグ機能を見ていこう。本機でワンセグを視聴する際、威力を発揮するのが本体右側面に収納されたデジタルTVアンテナだ。アンテナを引き出して、360度自由に角度を変えられる。電波の強い方向にアンテナを向ければ、常に高い受信性能を発揮できる。
ワンセグチューナーは、「TVモード」ボタンを押すと起動する。ボタンを押してから出画までが約20秒、選局には約5秒程度必要で、特に選局の遅さには若干ストレスを感じる。
ワンセグのチャンネルリストは「ホーム」と「おでかけ」の2パターンを設定可能。たとえば自宅とオフィスで放送局が異なる場合でも、あらかじめリストを設定しておけば即座に切り替えられる。本体の「CHリスト」ボタンを押すと局名を表示し、ダイレクト選局を行う機能も備える。
ワンセグ視聴時に「画面表示」ボタンを押すと操作メニューが表示される。ここから番組表を表示したり、現在の番組内容を表示したりすることが可能。ただし番組表は視聴中の局の番組表のみで、複数局をまたいだデータは表示できない。そのほか、チャンネル設定やチャンネルリストの切り替え、初期設定などもメニューから行う。
●解像感はそれなりだがワンセグのクリアな映像は十分楽しめる
ワンセグ受信時の精細感は、地上アナログに比べれば格段に高いが、DVDなどを見慣れた目からすると少々物足りない。ワンセグそのものの解像度が320×240ピクセル(QVGA)、もしくは320×180ピクセルと高くない上、これを9インチの大きな画面に引き延ばしているからだろう。ただし、デジタルならではのノイズの少なさはワンセグの大きなメリットで、そのクリアさは称賛に値する。
数値は非公表だが、液晶ディスプレイそのものの解像度はそれほど高くない。また、画面隅にバックライトの光漏れがあり、暗いシーンなどでは若干気になった。視野角については、左右方向はかなり粘るが、上下方向はあまり広くない印象だ。もっとも、前述の「フリースタイル機構」でディスプレイの向きは自由自在に変えられるから、視野角で困る場面は少ないだろう。
映像のプリセットモードは、DVD視聴時は「ノーマル」「シネマ1」「シネマ2」「ユーザー」の4つから選択できるが、ワンセグ受信時は利用できない。音声メニューについても、重低音やアドバンストサラウンドなど、DVDで設定可能な各種機能をワンセグ視聴時に利用することはできない。
バッテリーをフル充電にするには約6時間必要。連続使用時間はDVD再生で6時間、TV視聴で約9時間と長い。別売りのバッテリーパック「DY-DBLS55」(26,250円)を使用すれば、再生時間はそれぞれ倍に増える。数日間の出張なら充電をしなくても済むレベルで、ヘビーユーザーにとってはありがたい仕様だ。
●車載時の機能は非常に充実している
前述したとおり、車載用の装備や機能は非常に充実している。まず、FMトランスミッターを内蔵し、音声をFM電波にして飛ばすことにより、DVDとワンセグの音声をクルマのFMチューナーで受信、再生することが可能。本体にFMトランスミッターの専用操作ボタンが設けられており、ON/OFFやステレオ/モノラルの切り替え、周波数の設定などができる。さらに、カーDCアダプターも付属しており、バッテリー残量を気にせずに使用することが可能。車内で使用する時は、付属のヘッドレストブラケットを利用し、シートの後ろに本機を固定すれば、後席の搭乗者がテレビやDVDを自由に楽しむことができる。
●モニターの大きさを活かした高画質モデルの登場に期待
見てきたように、世界初のワンセグチューナー内蔵ポータブルDVDプレーヤー「DVD-LX97」は、受信性能やバッテリーの持続時間など基本的な部分がしっかりと作られた、非常に堅実なモデルという印象だ。特に車載用途では、9インチという大画面でワンセグやDVDのクリアな映像を楽しめるメリットは大きい。放送局をまたいだ番組表が表示できない、ワンセグ視聴時の画質調整が行えないなど、今後の改良を期待したい部分もあるが、車内でのエンターテイメント体験を大きく進化させうる本機のポテンシャルの前では、あまり大きな問題ではない。
ポータブルDVDプレーヤーの多くが地上アナログチューナーを装備、あるいは外付けで対応していることを考えると、地アナより消費電力が低くクリアな映像を実現できるワンセグは、今後ポータブルDVDの標準的な機能として搭載されることになるだろう。
同じように携帯電話でもワンセグ対応モデルは増えるだろうが、携帯電話と比べた際のポータブルDVDプレーヤーの強みは、そのモニターサイズの圧倒的な大きさにある。スケーリング処理の精度などを高め、画面の大きさを最大限に利用した高画質モデルが登場すれば、ワンセグの魅力をさらに高めることができるはずだ。今後の展開に期待したい。
(Phile-web編集部)