グローバルエクセレンスの実現に全力を:松下次期社長・大坪氏が会見【質疑応答全掲載】
松下電器産業(株)は24日記者会見を開き、前日開催の取締役会において内定された現・代表取締役社長の中村邦夫氏の代表取締役会長昇任、および現・代表取締役専務の大坪文雄氏の、代表取締役社長昇任を明らかにした。
会見は同社代表取締役社長の中村邦夫氏による挨拶からはじまった。中村氏ははじめに同社ナショナルブランドの石油暖房機に関する対策実施について触れ、今後も最後の一台をサポートするまで安全対策を継続していくことを宣言した。本件関係者の処分についても確定させたことを明らかにするとともに、グループの総力をあげて、お客様からの信頼回復を目指していきたいと語った。
引き続き、中村氏より6月28日開催の定時株式総会後、正式に同社の代表取締役社長に選任される大坪文雄氏が紹介された。大坪氏を新社長とした新しい役員体制は4月1日から実施される。
大坪氏は今回同社の社長に選任されたことについて「はじめにこのお話をいただいた時の気持ちは“驚いた”というひと言に尽きる。中村氏をはじめとした各氏より、強い要請を受け腹をくくってお引き受けすることにした」と語る。また今後の抱負については「現在担当しているパナソニックAVCネットワークス社の経営を通して、極めてスピーディーでグローバルな企業競争の厳しさを少しは体感して来たつもりだ。今後はその経験を松下グループ全体のマネージメントにあてはめて考えていくことが今後の私の責務である。非常に身が引き締まる思いだ。今後も全身全霊をあげてグローバルエクセレンスの実現に注力したい」とした。
以下に本日の会場で執り行われた質疑応答の模様を紹介する。
【質疑応答】
Q:(中村氏へ)2000年に社長に就任されて以降、ご自身で推進されてきた改革の中で「苦しかったこと」や反対に「自信を持つきっかけになったこと」はあったのか。また、御社はいかにしてここまで業績回復に成功することができたと考えているか。
A:(中村氏)私が当社の社長に就任した後、2000年の7月から改革の策定・実行を任せられたのだが、今振り返れば一番最初の試練は「国内家電の流通革命」に踏み切った頃であったように思う。改革の成果を少しずつ感じられるようになってきたのは、松下電工(株)の子会社化を実現した頃だ。2001年に大赤字となった時は、全社員が一致協力し、創業当時の経営理念を再確認して頑張ったことが、回復の大きな原動力となったと確信している。
Q:(大坪氏へ)中村氏のマネージメントスタイルから、ここは継承したいというところはどこか。また、中村氏のスタイルで真似のできないところ、逆にこれは「大坪流」で行きたいと考えるところはどこか。
A:(大坪氏)中村氏のマネージメントスタイルを可能な限り継承して進みたい。それは、公明・公正であり、透明性の高い経営スタイルを手本にしたいということだ。また、その上に企業として「闘う」気持ちを大切に、闘争心をベースとした価値観をしっかり持って、シナリオ性のあるマネージメントを心がけたいと思っている。
私が中村氏に「ここは追いつけない」と感じているところは、その大局観に基づく決断力の凄さだ。そこで私は自分の個性を活かす意味でも「現場」の目線を大切にしていきたい。製造現場だけでなく、マーケットをみて商品を企画し、設計、製造、品質管理していく各フィールドまで細かに気を配りながら、社内の衆知を集めてマネージメントを行うことが極めて大事と認識している。
Q:(中村氏へ)任期において、まだ手がけられなかった構造改革として思い残すことはあるか。
A:(中村氏)改革というものは決して終わりがなく、毎日継続して行かねばならないもの。中途半端で引き継ぐのは後任にも申し訳ないので、残りの任期に全力を尽くしたい。
Q:(大坪氏へ)今後グローバルな企業競争を闘って行く上で、御社が強化すべき所はどこか。
A:(大坪氏)電光石火で導き出せる解はないと考える。当社の持つ技術力をベースに、マーケティング力、販売力、技術力を結集して強い商品を着実に増やし、成長していくことが最も大事。中村氏の後を受けたから特別なことを始めるというのではなく、奇をてらわずに着実な成長を維持して行くことが自分の役目と認識している。
Q:(大坪氏へ)御社は技術立社であるという自負をお持ちだと考えるが、今後の成長を生み出す力として、御社は技術者に対する特別な配慮や方策を打ち出していく考えはあるか。
A:(大坪)私の入社以来の経験からすると、当社はこれまで「無から有を」生み出してきた経験はないと考える。ある商品が発展を遂げる時、そこに大きな技術は必ずしも必要ではない。多種多様な積み重ねによって得られる技術、開発プロセスを管理する技術こそが大事であり、それを守ることが私の役目と理解している。
しかしながら、やはり一方では10年・20年先の「大きな発展」を実現するためのチャレンジも必要だ。そういう観点からは、社内の関連組織を10年・20年先を見据えて変革し、技術の積み重ねと同時に、革新的な良い技術を求める活動も同時にスタートさせている。このような技術体系の総合力を養う土台が当社にはある。そして技術者とは、本来自分の夢や将来へのビジョンを実現できると確信した時にとてつもない大きな力を発揮するものだ。当社はそういった夢や将来のビジョンを技術者に感じてもらいながら、進化して行きたいと考えているし、これからもこのマインドを大切にしたい。
Q:中村氏は創業者の言葉や理念を大切にされているようだが、中村改革の中で創業者・松下幸之助氏はどういう存在だったのか。
A:(中村氏)当社は今でもクリアに創業者である松下幸之助氏の存在力が残っている企業だ。私は何か事を決断する時には「創業者であればどうしただろうか」ということをいつも意識し、創業者の言葉を思い出すようにしている。創業者の言葉の中でも「日々新たに」という言葉を大切にしている。今風に言うならば「イノベーション」ということだろうか。創業者が残してくれた言葉の一つ一つを大事にして、経営改革に取り組んでいくことが当社では大事なことであり、全社員が一致して心がけてもらいたいと思っている。
Q:大坪氏は創業者の理念をご自身の経営にどのように活かしていくつもりか。
A:(大坪氏)私は入社してから後、創業者の理念を折に触れて学習してきた。企業にとって、経営理念とは刻々と価値観が変化する時代において最も見失ってはいけない事のひとつだ。私は日常仕事しているときに「衆知を集めた全員経営」という創業者の言葉を大切にしているし、これからも心に持ち続けていきたいと思っている。
Q:(大坪氏へ)今年は薄型テレビ市場の動向をどのように予測されているか。特にシャープ、サムスンなどFPD陣営が大型化を進めているが、プラズマ陣営の雄と言われている御社はどのような戦略を持っているのか。
A:(大坪氏)薄型TVについては中村氏をはじめ、当社関係幹部で徹底的に議論しながら、薄型テレビの大画面化・高画質化で他社に先駆ける商品をつくり、「攻め」の姿勢をとり続けたい。これまでも貫いてきた攻めの姿勢を、これからも追求し加速することが競争に打ち勝つ唯一・最強の戦略だと考えている。
Q:(大坪氏へ)大画面テレビ以外にも、次世代DVD、SDカード、携帯モバイル分野ではどのような戦略をお持ちか。
A:(大坪氏)当社は年始にアメリカで開催されたCESショーに103インチのプラズマテレビを発表した。この製品を初めて観たアメリカのマスコミ各位をはじめとする来場者の方々からは、出画された際に大きなためいきと拍手をいただいた。これから大画面テレビをどのように楽しむべきなのかを考えた時、これにふさわしい高画質で大容量のコンテンツが不可欠と考えている。そうした場合、Blu-rayメディアへの取り組みに力を入れ、コンテンツへの柔軟な考え方を持って進化していくことが大画面テレビと一体になってこの市場で勝利する方法だろう。
SDカードについては、既に市場のデファクトであると考える。当社としてはマイクロSDカードの分野への参入にやや遅れをとってしまったが、もともとSDカードはAV機器のブリッジメディアとしてスタートしており、基本的には予定通りの成長を実現していると考える。今後いっそうの大容量化を進め、ハイビジョン画質のコンパクトムービーなどを提案して行くことで、ますます良いビジネスができると考える。携帯モバイル分野でも色々なビジネスが期待できる。目下、私の担当領域であればワンセグであるとか、あるいは地上デジタルを受ける端末機が今後必ずヒットすると思う。ここでも小型で高画質を実現する技術を投入し、優れたモバイル機器を提案して行けると確信している。
Q:(両氏へ)今後、グローバルなレベルで企業間の競争が激烈化していくと考えられる。中村氏はこれまで何を一番重視して「グローバルエクセレンス」を目指した展開を進めてきたのか。そして大坪氏はこれからどう「グローバルエクセレンス」を実現していくのか。
A:(中村氏)当社がグローバルなレベルで競争し、成長を遂げるために、私は当社の存立基盤が何であるかということを常に考え、提示してきた。私が経営を任された6年間は、すなわち製造業に徹して、他社がつくれないもの、他社に勝てるものを「事業」として確立して行こうという価値観のもと、それをグローバルに展開しようと考え、これまで進んできた。中でも商品の世界同時発売・垂直立ち上げを実現できたことは一つの成果とみている。しかしながら私の積み重ねはまだまだ道半ばであり、これからの努力においてぜひ成功して欲しいと思っている。
(大坪氏)当社はものづくりの会社だ。グローバル競争においても「強い商品を継続してつくる」ということに尽きると思う。広大な世界の市場に対して、製造・販売が一体となって、最強の商品供給力、マーケティング力を製造事業と結びつけていくことが最高の答えである。世界同時発売・垂直立ち上げの戦略を今後も着実に強化していくことで、グローバルエクセレンスを実現できるだろう。
Q:(中村氏へ)御社の構造改革は成果を得ているようだが、一方で日本の企業全体にはいまだ低迷感がつきまとっている。御社としては今後、国内企業の景気回復へ積極的な行動を示していくつもりなのか、あるいは御社の独自路線を掲げていくのか。
A:(中村)当社としてもまだ至らない所がいくつもある。当社としては安易な同質競争をなくして行き、本当の意味での競争をして行こうという考えのもとで進んできた。現在はこの戦略に少し効果が見られてきたのだと考える。これからも大坪氏には「選択と集中」を進めてもらい、当社の構造改革を実現させて欲しい。
Q:(大坪氏へ)次世代DVDの競争が激しくなっているが、御社としてはどのような戦略をもってBlu-rayを伸ばして行く考えなのか。
A:薄型テレビの高画質化・大画面化が進むにつれ、ユーザーはそれにふさわしいコンテンツを求めてくるだろう。当社はこれまでBlu-rayをサポートしてきた。過去にはディスクの製造コストの議論などもあったが、容量の大きさという意味ではBlu-rayに大きな強みがあると考えるからだ。現在はハリウッドの各社からBlu-rayのソフトが数多くリリースされるというお話もいただいているし、当社もハリウッドの研究所において、各社様の要望に対応できるようオーサリング施設を充実させている、Blu-rayの優位性を市場でアピールする準備は既に整っている。陣営各社と一体になって進めていきたい。
Q:(中村氏へ)御社はこれまで製造業、ものづくりに力を入れてこられたが、中村氏は今、日本のものづくりは復活したと考えているか。
A:日本のものづくりは電器業界に限っては復活しているという実感を抱いている。日本独自の、他国にない技術をもって日本の国内で生産して行くという体制が確立しつつある。そういう点で、私は日本の産業の一翼を担う電器産業は復活していると感じているし、ものづくりについても日本独自の生産体制を確立しつつあると見ている。総合的な競争力も高まっている。
【問い合わせ先】
松下電器産業(株)
コーポレートコミュニケーション本部
TEL/03-3436-2621
(Phile-web編集部)
会見は同社代表取締役社長の中村邦夫氏による挨拶からはじまった。中村氏ははじめに同社ナショナルブランドの石油暖房機に関する対策実施について触れ、今後も最後の一台をサポートするまで安全対策を継続していくことを宣言した。本件関係者の処分についても確定させたことを明らかにするとともに、グループの総力をあげて、お客様からの信頼回復を目指していきたいと語った。
引き続き、中村氏より6月28日開催の定時株式総会後、正式に同社の代表取締役社長に選任される大坪文雄氏が紹介された。大坪氏を新社長とした新しい役員体制は4月1日から実施される。
大坪氏は今回同社の社長に選任されたことについて「はじめにこのお話をいただいた時の気持ちは“驚いた”というひと言に尽きる。中村氏をはじめとした各氏より、強い要請を受け腹をくくってお引き受けすることにした」と語る。また今後の抱負については「現在担当しているパナソニックAVCネットワークス社の経営を通して、極めてスピーディーでグローバルな企業競争の厳しさを少しは体感して来たつもりだ。今後はその経験を松下グループ全体のマネージメントにあてはめて考えていくことが今後の私の責務である。非常に身が引き締まる思いだ。今後も全身全霊をあげてグローバルエクセレンスの実現に注力したい」とした。
以下に本日の会場で執り行われた質疑応答の模様を紹介する。
【質疑応答】
Q:(中村氏へ)2000年に社長に就任されて以降、ご自身で推進されてきた改革の中で「苦しかったこと」や反対に「自信を持つきっかけになったこと」はあったのか。また、御社はいかにしてここまで業績回復に成功することができたと考えているか。
A:(中村氏)私が当社の社長に就任した後、2000年の7月から改革の策定・実行を任せられたのだが、今振り返れば一番最初の試練は「国内家電の流通革命」に踏み切った頃であったように思う。改革の成果を少しずつ感じられるようになってきたのは、松下電工(株)の子会社化を実現した頃だ。2001年に大赤字となった時は、全社員が一致協力し、創業当時の経営理念を再確認して頑張ったことが、回復の大きな原動力となったと確信している。
Q:(大坪氏へ)中村氏のマネージメントスタイルから、ここは継承したいというところはどこか。また、中村氏のスタイルで真似のできないところ、逆にこれは「大坪流」で行きたいと考えるところはどこか。
A:(大坪氏)中村氏のマネージメントスタイルを可能な限り継承して進みたい。それは、公明・公正であり、透明性の高い経営スタイルを手本にしたいということだ。また、その上に企業として「闘う」気持ちを大切に、闘争心をベースとした価値観をしっかり持って、シナリオ性のあるマネージメントを心がけたいと思っている。
私が中村氏に「ここは追いつけない」と感じているところは、その大局観に基づく決断力の凄さだ。そこで私は自分の個性を活かす意味でも「現場」の目線を大切にしていきたい。製造現場だけでなく、マーケットをみて商品を企画し、設計、製造、品質管理していく各フィールドまで細かに気を配りながら、社内の衆知を集めてマネージメントを行うことが極めて大事と認識している。
Q:(中村氏へ)任期において、まだ手がけられなかった構造改革として思い残すことはあるか。
A:(中村氏)改革というものは決して終わりがなく、毎日継続して行かねばならないもの。中途半端で引き継ぐのは後任にも申し訳ないので、残りの任期に全力を尽くしたい。
Q:(大坪氏へ)今後グローバルな企業競争を闘って行く上で、御社が強化すべき所はどこか。
A:(大坪氏)電光石火で導き出せる解はないと考える。当社の持つ技術力をベースに、マーケティング力、販売力、技術力を結集して強い商品を着実に増やし、成長していくことが最も大事。中村氏の後を受けたから特別なことを始めるというのではなく、奇をてらわずに着実な成長を維持して行くことが自分の役目と認識している。
Q:(大坪氏へ)御社は技術立社であるという自負をお持ちだと考えるが、今後の成長を生み出す力として、御社は技術者に対する特別な配慮や方策を打ち出していく考えはあるか。
A:(大坪)私の入社以来の経験からすると、当社はこれまで「無から有を」生み出してきた経験はないと考える。ある商品が発展を遂げる時、そこに大きな技術は必ずしも必要ではない。多種多様な積み重ねによって得られる技術、開発プロセスを管理する技術こそが大事であり、それを守ることが私の役目と理解している。
しかしながら、やはり一方では10年・20年先の「大きな発展」を実現するためのチャレンジも必要だ。そういう観点からは、社内の関連組織を10年・20年先を見据えて変革し、技術の積み重ねと同時に、革新的な良い技術を求める活動も同時にスタートさせている。このような技術体系の総合力を養う土台が当社にはある。そして技術者とは、本来自分の夢や将来へのビジョンを実現できると確信した時にとてつもない大きな力を発揮するものだ。当社はそういった夢や将来のビジョンを技術者に感じてもらいながら、進化して行きたいと考えているし、これからもこのマインドを大切にしたい。
Q:中村氏は創業者の言葉や理念を大切にされているようだが、中村改革の中で創業者・松下幸之助氏はどういう存在だったのか。
A:(中村氏)当社は今でもクリアに創業者である松下幸之助氏の存在力が残っている企業だ。私は何か事を決断する時には「創業者であればどうしただろうか」ということをいつも意識し、創業者の言葉を思い出すようにしている。創業者の言葉の中でも「日々新たに」という言葉を大切にしている。今風に言うならば「イノベーション」ということだろうか。創業者が残してくれた言葉の一つ一つを大事にして、経営改革に取り組んでいくことが当社では大事なことであり、全社員が一致して心がけてもらいたいと思っている。
Q:大坪氏は創業者の理念をご自身の経営にどのように活かしていくつもりか。
A:(大坪氏)私は入社してから後、創業者の理念を折に触れて学習してきた。企業にとって、経営理念とは刻々と価値観が変化する時代において最も見失ってはいけない事のひとつだ。私は日常仕事しているときに「衆知を集めた全員経営」という創業者の言葉を大切にしているし、これからも心に持ち続けていきたいと思っている。
Q:(大坪氏へ)今年は薄型テレビ市場の動向をどのように予測されているか。特にシャープ、サムスンなどFPD陣営が大型化を進めているが、プラズマ陣営の雄と言われている御社はどのような戦略を持っているのか。
A:(大坪氏)薄型TVについては中村氏をはじめ、当社関係幹部で徹底的に議論しながら、薄型テレビの大画面化・高画質化で他社に先駆ける商品をつくり、「攻め」の姿勢をとり続けたい。これまでも貫いてきた攻めの姿勢を、これからも追求し加速することが競争に打ち勝つ唯一・最強の戦略だと考えている。
Q:(大坪氏へ)大画面テレビ以外にも、次世代DVD、SDカード、携帯モバイル分野ではどのような戦略をお持ちか。
A:(大坪氏)当社は年始にアメリカで開催されたCESショーに103インチのプラズマテレビを発表した。この製品を初めて観たアメリカのマスコミ各位をはじめとする来場者の方々からは、出画された際に大きなためいきと拍手をいただいた。これから大画面テレビをどのように楽しむべきなのかを考えた時、これにふさわしい高画質で大容量のコンテンツが不可欠と考えている。そうした場合、Blu-rayメディアへの取り組みに力を入れ、コンテンツへの柔軟な考え方を持って進化していくことが大画面テレビと一体になってこの市場で勝利する方法だろう。
SDカードについては、既に市場のデファクトであると考える。当社としてはマイクロSDカードの分野への参入にやや遅れをとってしまったが、もともとSDカードはAV機器のブリッジメディアとしてスタートしており、基本的には予定通りの成長を実現していると考える。今後いっそうの大容量化を進め、ハイビジョン画質のコンパクトムービーなどを提案して行くことで、ますます良いビジネスができると考える。携帯モバイル分野でも色々なビジネスが期待できる。目下、私の担当領域であればワンセグであるとか、あるいは地上デジタルを受ける端末機が今後必ずヒットすると思う。ここでも小型で高画質を実現する技術を投入し、優れたモバイル機器を提案して行けると確信している。
Q:(両氏へ)今後、グローバルなレベルで企業間の競争が激烈化していくと考えられる。中村氏はこれまで何を一番重視して「グローバルエクセレンス」を目指した展開を進めてきたのか。そして大坪氏はこれからどう「グローバルエクセレンス」を実現していくのか。
A:(中村氏)当社がグローバルなレベルで競争し、成長を遂げるために、私は当社の存立基盤が何であるかということを常に考え、提示してきた。私が経営を任された6年間は、すなわち製造業に徹して、他社がつくれないもの、他社に勝てるものを「事業」として確立して行こうという価値観のもと、それをグローバルに展開しようと考え、これまで進んできた。中でも商品の世界同時発売・垂直立ち上げを実現できたことは一つの成果とみている。しかしながら私の積み重ねはまだまだ道半ばであり、これからの努力においてぜひ成功して欲しいと思っている。
(大坪氏)当社はものづくりの会社だ。グローバル競争においても「強い商品を継続してつくる」ということに尽きると思う。広大な世界の市場に対して、製造・販売が一体となって、最強の商品供給力、マーケティング力を製造事業と結びつけていくことが最高の答えである。世界同時発売・垂直立ち上げの戦略を今後も着実に強化していくことで、グローバルエクセレンスを実現できるだろう。
Q:(中村氏へ)御社の構造改革は成果を得ているようだが、一方で日本の企業全体にはいまだ低迷感がつきまとっている。御社としては今後、国内企業の景気回復へ積極的な行動を示していくつもりなのか、あるいは御社の独自路線を掲げていくのか。
A:(中村)当社としてもまだ至らない所がいくつもある。当社としては安易な同質競争をなくして行き、本当の意味での競争をして行こうという考えのもとで進んできた。現在はこの戦略に少し効果が見られてきたのだと考える。これからも大坪氏には「選択と集中」を進めてもらい、当社の構造改革を実現させて欲しい。
Q:(大坪氏へ)次世代DVDの競争が激しくなっているが、御社としてはどのような戦略をもってBlu-rayを伸ばして行く考えなのか。
A:薄型テレビの高画質化・大画面化が進むにつれ、ユーザーはそれにふさわしいコンテンツを求めてくるだろう。当社はこれまでBlu-rayをサポートしてきた。過去にはディスクの製造コストの議論などもあったが、容量の大きさという意味ではBlu-rayに大きな強みがあると考えるからだ。現在はハリウッドの各社からBlu-rayのソフトが数多くリリースされるというお話もいただいているし、当社もハリウッドの研究所において、各社様の要望に対応できるようオーサリング施設を充実させている、Blu-rayの優位性を市場でアピールする準備は既に整っている。陣営各社と一体になって進めていきたい。
Q:(中村氏へ)御社はこれまで製造業、ものづくりに力を入れてこられたが、中村氏は今、日本のものづくりは復活したと考えているか。
A:日本のものづくりは電器業界に限っては復活しているという実感を抱いている。日本独自の、他国にない技術をもって日本の国内で生産して行くという体制が確立しつつある。そういう点で、私は日本の産業の一翼を担う電器産業は復活していると感じているし、ものづくりについても日本独自の生産体制を確立しつつあると見ている。総合的な競争力も高まっている。
【問い合わせ先】
松下電器産業(株)
コーポレートコミュニケーション本部
TEL/03-3436-2621
(Phile-web編集部)