【特別企画】村瀬孝矢が薄型テレビを斬る!最新4モデルの画質インプレッション
なお、今回は締め切りの都合上、日立製作所やビクター、パイオニアなどのテストは行えなかった。リクエストがあれば、これらのメーカーの製品を含めた完全版をお届けしたい。
本文中に「視聴室でテストを行った」旨の記述がある製品については、弊社「AVレビュー」10月号(詳細はこちら)にて、より詳しいテストレポートを掲載している。あわせてチェックしてみてほしい。(Phile-web編集部)
●東芝 REGZA「42Z2000」 (関連ニュース)
IPS液晶パネルに新メタブレインプロを組み合わせた最新モデル。視野角の広さはさすがIPSで、横からでも十分に質感豊かな表示をこなす。動画ボケ対策はオーバーシュート技術のみでさして大袈裟なことを行っていない。だからやや動画ボケは多め。それでも十分な説得力を持ち合わせるのはその優秀な画質にある。表示するシーン毎に常に適格な表現性になるようテレビ側でガンマカーブから信号の強さ色の濃さ、それにバックライトなどを素早く調整し、美しい表現になるようコントロールするのだ。
本モデルは視聴室に持ち込んで視聴しているが、HD DVD、BD、それにDVD、地デジなどハイビジョンからSD系まで網羅して行った。外部機器との接続は主にHDMIである。一部、D端子でも見ているが、HDMIに劣ることもあり、できる限りHDMIをお薦めする。見事なのはHD DVDプレーヤーとの相性の良さだった。同社XA1プレーヤーは少しハイコントラストな画作りプレーヤーだが、本テレビと組み合わせるとぴったりとフィットしテレビ側でうまく補正しているのが分かる。素直なエッジ表現、バランスの良い色合いなどが好ましい。むろんDVDソースもきれいの一言である。視野角も良く、黒浮きも少ない。液晶、プラズマの範囲を越えた高画質モデルである。
●シャープ AQUOS「LC-46GX1W」 (関連ニュース)
新しく稼動を始めた亀山第2工場産の最初のモデルだ。52型、46型、42型の3モデルが発売になったが、特に注目は46型と52型で、中でも52型のコストパフォーマンスの良さが魅力的。ただ今回の視聴の中心は46型とした。それは42型のバランスの良さが手頃かと思われるが1つサイズアップをと考慮すると46型になるだろうと考えたから。しかし視聴は発表会場での印象である。視聴室への持ち込みは時間的に難しく、まだ行えていない。
新しいパネルは第8世代マザーガラス、インクジェットカラーフィルターの採用など意欲的な内容なのでその出来映えにも関心が向かう。そのパネルに組み合わさるのが4波長バックライトだ。深紅部分の発光成分を追加した新しいバックライトで前作から使用している同社の切り札でもある。また、動画ボケ対策は新QS技術を取りれた4msのもので、マルチ画素タイプのMPD構造とあいまって先端パネルを構成している。
画質の印象は原色系が鮮やかな見映えを主張したものと感じた。黒浮きもほとんど感じないほどしっかりとコントラスト管理が行われる。もっともやや黒つぶれ傾向を示しながらの鮮やかな表現力で、多少好みが別れるかも知れない。しっかりと視聴室で視聴しないと結論付けできないが、視野角、動画ボケ性能など合わせて再報告してみたい。
●パナソニック VIERA「TH-65PZ600」 (関連ニュース)
フルHDパネルを大々的に採用したシリーズがこのPZ600である。50型から103型まで一挙に4モデルも揃えた意欲作だ。なかでも最小サイズの50型はライバルがモニター仕様ということもあって価格的な面からも注目度が高く、指名買いも多いと聞く。ただここで注目したいのは65型だ。無理して50型にとどまらず、もう1つ大画面に向かっても楽しいではないだろうか、との判断である。プラズマは大きい方が実力を発揮しやすく効果も上がるから。
このモデルは視聴室で画質チェックを行った。視聴用ソースはBD、HD DVD、地デジ、DVDソフトなどである。いつものチェックソースを洗いざらい使用したのでかなり精密な視聴ができたと思う。そこで捉えた画質は、素晴らしい出来映えということだ。質感表現力が上手でノイズを浮き立たせず情報量も適度に引き出すもので、この兼ね合いが良かった。少し黒つぶれ傾向にあるが、これはシネマの意識が強めなのかも知れない。そして色合いはこってりとした表現性で、暖かみのあるまとめ方である。リビングで大画面シアター鑑賞を狙った画作りだと感じた。フロントプロジェクターよりも手軽にホームシアターのお薦めがプラズマなのだからこの狙いは正しい。ついでに簡単に50型も視聴したので比較を述べると、サイズが大きくてもフルHDパネルの威力で粗さもなくまとまりの良さは65型に分があった。
●ソニー BRAVIA「KDL-52X2500」 (関連ニュース)
ブラビアも2500シリーズにバージョンアップした。1000から2000、そして2500へとアップしてきたが、その代表作がこのXシリーズである。なかでも強力に推すのが新サイズのフルHDの52型だ。40型、46型(共にフルHD)と姉妹機を揃えるが、主力モデルはこの52型である。もっともXシリーズと言えども、従来の製品から多少機能の省略があるほか、価格面への配慮もなされ、X1000シリーズほどの充実度ではない。大きな特徴はブラビアエンジンプロ、広帯域バックライトシステムのライブカラークリエーション、新しい動画色空間技術xvYCCなどの採用である。もっともxvYCCは対応した放送/ソースなどがなくては効果を発揮しないので、今は保険的なもの。ここで画質に関わるのは前の2つで、特にブラビアエンジンプロの初搭載に注目が集まる。
画質チェックは発表会で行った。したがって詳細な視聴ではない。いくつかのモデルが視聴用として会場に並べられ、エンジンの良さやバックライト効果の良さなどを比較デモしていたので、ある程度は理解できた。プロエンジンはDRC-MFv2.5の復活が特徴。それもV2.5になっている。2000シリーズはこれを省いたので少々もの足りなかったが今回は不足なし。バックライト効果も加わって非常にしゃきっと色鮮やかな表現力が特徴である。HDソースもくっきりするのが見どころ。画素数に不足もないのでダイナミックなメリハリのある画質を望む方にふさわしい。
(村瀬孝矢)
村瀬孝矢 プロフィール
愛知県生まれ。オーディオ専門誌「ラジオ技術」誌の編集を経て、1978年よりフリーでA&V評論やコンサルティング活動を始める。1991年に AV&Cの普及を目指したAVC社を設立。1998年よりプロジェクター専門誌「PROJECTORS」誌を編集、発行。国内外メーカーの最新プロジェクターを同一条件でチェックしており、国内でもっともプロジェクターの素性を知る人間のひとりである。日本画質学会副会長も務める。