鈴木桂水氏が体験する「NETJUKEのある生活」 − 第5回:開発担当者に訊いたNET JUKEのホントウの魅力
ネットジュークを使い始めた頃、操作方法に分からない部分が多く、よくソニー広報でこの製品を担当するEさんに問い合わせをしていた。たしかに多機能なので分かりづらい部分のある製品なのだが、こちらに届いていたのが、たぶんベータ版と思われるマニュアルで、ちょっとした操作につまずくことがあったからだ。日に何回も問い合わせをするうちに、ついにEさんもシビレを切らし「開発担当者と一度会ってくださいっ!」ということになってしまった。
ということで品川ソニーTECにあるウォークマンルームへの“呼び出し”が、かかってしまった。この企画で「使いづらい」とか「スピーカーケーブルが…」など、文句をつけていたので、なんとなく足取りは重かったのだが…。今回お話を伺ったのはネットジュークの開発全体を見渡す商品企画担当の瓜谷尚大さんと、ソフトウエアの開発を担当された平居孝博さんのお二人だ。
写真は左からパーソナルオーディオ事業本部 HDA商品設計部 1課 シニアソフトエンジニアの平居孝博さん、中央は筆者、オーディオ事業本部統合商品企画MK部門PA商品企画MK部 企画2課 プロダクトプロデューサー瓜谷尚大さん。ネットジュークを前に開発者直々に操作方法を伝授されている。ちなみに、取材場所のウォークマンルームは初号機から2002年ごろまでに発売された「ウォークマン」と名の付く商品が壁一面を埋め尽くしている。広報のEさん曰く「どの機種の前に立つかで世代が分かる」とのこと。その話を聞いたとき、しっかりと、初号機の前に立っていた(苦笑)。
せっかくなので、ネットジュークを使っていて分からなかったことをお二人にぶつけてみた。以下、インタビュー形式でお伝えしよう。
━━この製品の開発コンセプトは?
瓜谷氏:いままでラジオ録音とパソコンは遠い関係にありました。たとえば録音したラジオ番組を、CDのように携帯音楽プレーヤーに転送して楽しむことが簡単にできませんでした。カセットテープやMDなどの音源を携帯音楽プレーヤーで楽しむのも、同じように困難でした。ネットジュークはHDDを搭載することで、それらをすべて解決した新しいコンポです。
━━ラジオ録音のオートチャプター機能と、録音番組に自動で曲名をつける「CD情報情報取得」機能がなかなか上手く動作しないのですが…。
平居氏:トーク部分と音楽がしっかりと別れている番組だと、ほぼ成功率は高いですね。NHK FMで13時から放送している「歌謡スクランブル」という番組でテストしたときは、ほぼ全曲でオートチャプターが機能しました。トークと音楽がフェードイン、フェードアウトするような番組の場合は、分割が曖昧になります。それから、オートチャプターはノイズの影響を受けるので、ちゃんとアンテナをつけて、クリアな音声でFM受信できるようすると精度はあがります。
瓜谷氏:録音番組に対しての「CD情報情報取得」機能ですが、これもノイズの影響を受けるので注意していただきたいですね。この機能は楽曲の“アタマ”から15秒の波形をチェックして曲名を判断しています。FMのようにノイズが乗っていると、正確な曲情報を取得できないことがあります。
>>このあたりのオートチャプターやCD情報情報取得についての情報はすでにお伝えしたとおりだ。この音声と音楽を分ける技術にはソニーのノウハウがあるらしく、その鍵は担当した開発者が握っているらしいことが分かった。現在、音声分析プログラムを担当した開発者へのインタビューを申し込んでいるので、後日をお楽しみにしていただきたい。さらに気になることがあったので質問を続けた。
━━音楽CDを再生したときに、ドライブの音が気になるのですが。
瓜谷氏:音楽CDを後送でATRAC3やMP3などに変換するために、高速読込みに対応したドライブを搭載しています。ですから、多少の動作音は発生してしまいます。ただ、ネットジュークは音楽をいちどHDDに保存して利用することを前提に設計されています。その方が聴きたい音楽をネットジューク上で探せるから便利です。そのためにNAS-D50HD、NAS-M70HDは80GB、最上位モデルのNAS-M90HDは250GBものHDDを搭載しています。音楽CDはそのままの音質で保存できる非圧縮のPCM録音にも対応しているので、音質にこだわりつつ利便性も求めるならHDD容量に余裕があるNAS-M90HDがオススメです。
なるほど、一度、HDDに音楽を保存して利用すると考えれば、CDドライブを使用するのが読み込み時だけなので動作音は気にならないだろう。できたら静かな方が望ましいと、僕は思っている。最後にエニーミュージックの利用法を聞いてみた。
エニーミュージックはネットジュークを使った音楽ダウンロードサービス。ATRC3形式の音楽をネットジュークから購入できたり、FMで放送中の曲の情報をネット経由で入手し、さらに音楽CDも発注できる。しかし毎日ネットジュークを使っているが、エニーミュージックは、月額利用料315円も必要な割に「これは、便利だ!」と膝を打つようなことがなかったのだ。利用料が発生するぐらいなのだから、なにか僕の知らないいいサービスがあるのではないかと考えていたのだ。どうだろう?
平居氏に伺ったとところ「エニーミュージックの便利な機能に「連続視聴」機能があります。エニーミュージックがセレクトしたアーティストやテーマについて20曲程度の視聴を連続で行えます。パソコンで聴くよりも高音質で楽しめるので、試聴と言うよりはメドレーのように楽しめます」とのことだった。
エニーミュージックの機能の一つに「FMオンエア情報」がある。FMラジオで放送中の曲情報をリアルタイムで確認できる便利なサービスだが…。都内だと東京FMしか対応していない。有料ならNHKFMなど全局対応していただきたいのだが、いかがだろう。
取材後、連続視聴を体験してみた。確かに音質もよくメドレーのように楽しく聴けた。しかし、だ。じつは先日ナップスターを試して以来、定額制の音楽配信サービスをえらく気に入ってしまった。せっかく有料にするなら、(難しいことは分かっているが)ネットジュークでも聴き放題にして欲しいものだ。
たとえば…(妄想タイム)…HDDの容量を500GBぐらいにして、聴き放題の楽曲はウォークマンのみ持ち出し可能で、それ以外はNG、なんてサービスをはじめれば、さらに深い音楽中毒になりそうなだ。じつはネットジュークって、ナップスター端末よりも、音楽の定額ダウンロードサービスに向いている商品なんじゃないだろうか?それに4.3型ワイドのきれいな液晶もついていることだし、つでにPVも配信すればさらに楽しく使えそうだ。
十数万曲を聴き放題できるミニコンポ━━そんな製品が登場したら、すごいことになりそうなのだが。コンポを中心としたサービスとなると、アップルコンピュータも入ってこられないだろう。
さて、妄想はさておき、最後にネットジュークのバージョンアップがあったので、ご報告しよう。バージョンアップはネット経由で1時間程度かかる。バージョンアップ後はバグの修正とNDDドコモの携帯電話903シリーズへ直接音楽を転送できるようになる。ユーザーは気長にバージョンアップしていただきたい。
それと、今回、せっかく開発担当者の顔も見えたことだし、読者の方で瓜谷さんへの質問があれば、受け付けたいと思う。質問を記入の上、編集部あてにメールを送っていただければ、僕がセレクトして質問してくるというのはどうだろう。次回はMDのバックアップに挑戦するつもりだ。
鈴木桂水(Keisui Suzuki)
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
※本コラムをお読みいただいた読者の方々からのご質問・ご感想を受け付けています。また本文中に筆者より提案のありました「ネットジューク開発者への質問」も応募いたしますので、気軽にご連絡下さい。ご応募は下記メールアドレスまでどうぞ。(Phile-web編集部)
メールアドレス:phileweb@ongen.co.jp
件名:NET JUKEへの質問係宛
ということで品川ソニーTECにあるウォークマンルームへの“呼び出し”が、かかってしまった。この企画で「使いづらい」とか「スピーカーケーブルが…」など、文句をつけていたので、なんとなく足取りは重かったのだが…。今回お話を伺ったのはネットジュークの開発全体を見渡す商品企画担当の瓜谷尚大さんと、ソフトウエアの開発を担当された平居孝博さんのお二人だ。
写真は左からパーソナルオーディオ事業本部 HDA商品設計部 1課 シニアソフトエンジニアの平居孝博さん、中央は筆者、オーディオ事業本部統合商品企画MK部門PA商品企画MK部 企画2課 プロダクトプロデューサー瓜谷尚大さん。ネットジュークを前に開発者直々に操作方法を伝授されている。ちなみに、取材場所のウォークマンルームは初号機から2002年ごろまでに発売された「ウォークマン」と名の付く商品が壁一面を埋め尽くしている。広報のEさん曰く「どの機種の前に立つかで世代が分かる」とのこと。その話を聞いたとき、しっかりと、初号機の前に立っていた(苦笑)。
せっかくなので、ネットジュークを使っていて分からなかったことをお二人にぶつけてみた。以下、インタビュー形式でお伝えしよう。
━━この製品の開発コンセプトは?
瓜谷氏:いままでラジオ録音とパソコンは遠い関係にありました。たとえば録音したラジオ番組を、CDのように携帯音楽プレーヤーに転送して楽しむことが簡単にできませんでした。カセットテープやMDなどの音源を携帯音楽プレーヤーで楽しむのも、同じように困難でした。ネットジュークはHDDを搭載することで、それらをすべて解決した新しいコンポです。
━━ラジオ録音のオートチャプター機能と、録音番組に自動で曲名をつける「CD情報情報取得」機能がなかなか上手く動作しないのですが…。
平居氏:トーク部分と音楽がしっかりと別れている番組だと、ほぼ成功率は高いですね。NHK FMで13時から放送している「歌謡スクランブル」という番組でテストしたときは、ほぼ全曲でオートチャプターが機能しました。トークと音楽がフェードイン、フェードアウトするような番組の場合は、分割が曖昧になります。それから、オートチャプターはノイズの影響を受けるので、ちゃんとアンテナをつけて、クリアな音声でFM受信できるようすると精度はあがります。
瓜谷氏:録音番組に対しての「CD情報情報取得」機能ですが、これもノイズの影響を受けるので注意していただきたいですね。この機能は楽曲の“アタマ”から15秒の波形をチェックして曲名を判断しています。FMのようにノイズが乗っていると、正確な曲情報を取得できないことがあります。
>>このあたりのオートチャプターやCD情報情報取得についての情報はすでにお伝えしたとおりだ。この音声と音楽を分ける技術にはソニーのノウハウがあるらしく、その鍵は担当した開発者が握っているらしいことが分かった。現在、音声分析プログラムを担当した開発者へのインタビューを申し込んでいるので、後日をお楽しみにしていただきたい。さらに気になることがあったので質問を続けた。
━━音楽CDを再生したときに、ドライブの音が気になるのですが。
瓜谷氏:音楽CDを後送でATRAC3やMP3などに変換するために、高速読込みに対応したドライブを搭載しています。ですから、多少の動作音は発生してしまいます。ただ、ネットジュークは音楽をいちどHDDに保存して利用することを前提に設計されています。その方が聴きたい音楽をネットジューク上で探せるから便利です。そのためにNAS-D50HD、NAS-M70HDは80GB、最上位モデルのNAS-M90HDは250GBものHDDを搭載しています。音楽CDはそのままの音質で保存できる非圧縮のPCM録音にも対応しているので、音質にこだわりつつ利便性も求めるならHDD容量に余裕があるNAS-M90HDがオススメです。
なるほど、一度、HDDに音楽を保存して利用すると考えれば、CDドライブを使用するのが読み込み時だけなので動作音は気にならないだろう。できたら静かな方が望ましいと、僕は思っている。最後にエニーミュージックの利用法を聞いてみた。
エニーミュージックはネットジュークを使った音楽ダウンロードサービス。ATRC3形式の音楽をネットジュークから購入できたり、FMで放送中の曲の情報をネット経由で入手し、さらに音楽CDも発注できる。しかし毎日ネットジュークを使っているが、エニーミュージックは、月額利用料315円も必要な割に「これは、便利だ!」と膝を打つようなことがなかったのだ。利用料が発生するぐらいなのだから、なにか僕の知らないいいサービスがあるのではないかと考えていたのだ。どうだろう?
平居氏に伺ったとところ「エニーミュージックの便利な機能に「連続視聴」機能があります。エニーミュージックがセレクトしたアーティストやテーマについて20曲程度の視聴を連続で行えます。パソコンで聴くよりも高音質で楽しめるので、試聴と言うよりはメドレーのように楽しめます」とのことだった。
エニーミュージックの機能の一つに「FMオンエア情報」がある。FMラジオで放送中の曲情報をリアルタイムで確認できる便利なサービスだが…。都内だと東京FMしか対応していない。有料ならNHKFMなど全局対応していただきたいのだが、いかがだろう。
取材後、連続視聴を体験してみた。確かに音質もよくメドレーのように楽しく聴けた。しかし、だ。じつは先日ナップスターを試して以来、定額制の音楽配信サービスをえらく気に入ってしまった。せっかく有料にするなら、(難しいことは分かっているが)ネットジュークでも聴き放題にして欲しいものだ。
たとえば…(妄想タイム)…HDDの容量を500GBぐらいにして、聴き放題の楽曲はウォークマンのみ持ち出し可能で、それ以外はNG、なんてサービスをはじめれば、さらに深い音楽中毒になりそうなだ。じつはネットジュークって、ナップスター端末よりも、音楽の定額ダウンロードサービスに向いている商品なんじゃないだろうか?それに4.3型ワイドのきれいな液晶もついていることだし、つでにPVも配信すればさらに楽しく使えそうだ。
十数万曲を聴き放題できるミニコンポ━━そんな製品が登場したら、すごいことになりそうなのだが。コンポを中心としたサービスとなると、アップルコンピュータも入ってこられないだろう。
さて、妄想はさておき、最後にネットジュークのバージョンアップがあったので、ご報告しよう。バージョンアップはネット経由で1時間程度かかる。バージョンアップ後はバグの修正とNDDドコモの携帯電話903シリーズへ直接音楽を転送できるようになる。ユーザーは気長にバージョンアップしていただきたい。
それと、今回、せっかく開発担当者の顔も見えたことだし、読者の方で瓜谷さんへの質問があれば、受け付けたいと思う。質問を記入の上、編集部あてにメールを送っていただければ、僕がセレクトして質問してくるというのはどうだろう。次回はMDのバックアップに挑戦するつもりだ。
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、日経BP社デジタルARENAにて「使って元取れ! ケースイのAV機器<極限>酷使生活」、徳間書店「GoodsPress」など、AV機器を使いこなすコラムを執筆中。
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※本コラムをお読みいただいた読者の方々からのご質問・ご感想を受け付けています。また本文中に筆者より提案のありました「ネットジューク開発者への質問」も応募いたしますので、気軽にご連絡下さい。ご応募は下記メールアドレスまでどうぞ。(Phile-web編集部)
メールアドレス:phileweb@ongen.co.jp
件名:NET JUKEへの質問係宛