東芝・藤井氏「PS3が次世代DVDの普及を阻んでいる」 − 安価なレコーダーを近々発表か
HD DVDプロモーショングループは本日、「HD DVD Trade Convention 2007」を開催した。
コンベンションには、(株)東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏やソフトメーカーの担当者らが出席。ハード市場の現状と今後の動向、またソフトの発売ラインナップなどを説明した。
初めに登壇した藤井氏は、プレゼンテーションについて「藤井流でざっくばらんにいく」と宣言。北米市場については、次世代DVD CE市場でシェア55%を得ているほか、年末に向け安価な第3世代HD DVDプレーヤー3モデルを投入済みであり、さらにソフトについても、「タイトル数が9月末で300作品を突破した。年末には500タイトル目標としている」などと現状を説明した。
ハードウェアについては、「ハードの品揃えではBDを凌駕している。これは事実だから仕方がない。アメリカでちゃんとしたBDプレーヤーはどこが出しているんだ。ソニーとサムスンだけだろう」とBD陣営を牽制。さらに「BD陣営からは、中国はBDが圧倒的なシェアを持っている、という声が聞こえているが、中国でソフトが出ていないのだから、まったく意味がない。1台だけ中国国内に入れたから、それでシェア100%と言うのはいかがなものか」と皮肉った。
藤井氏はさらに、国内マスコミの報道があまりに偏向している、と主張。「アメリカと日本で報道の内容があまりに違う。アメリカでは、夏頃までは7:3くらいでBDが勝ち、という報道が多かったが、パラマウントの8月22日の発表以後、がらっと調子が変わった。想像を超える変化が起きた」とした。
続いて藤井氏は、欧州の状況を説明。「欧州でコンテンツホルダーの75%、45社がHD DVDタイトルを発売済み」であり、「30社のオーサリングハウス、レプリケーターが支持」しているとも述べた。また、「年末までに400タイトルが発売を予定している。ハイデフの番組が少ないので、パッケージへの期待が大きい。制作コストがBDの半分程度ということも、HD DVDへの支持が大きい原因では」とした。
藤井氏の発言はPS3へも向かった。「当時はセミコンにいたので、ソニーの久夛良木と組んでCellを作って、PS3には思い入れがある」としながらも、「PS3の購入者は映画ソフトを買わない。これがはっきり結果として出ている。ヨーロッパや日本では若干違う数字が出ているようだが、ゲームユーザーと映画ユーザーは本質的に異なる」と、PS3のBDソフト購入率について言及。藤井氏はさらに、「PS3ユーザーがBDソフトを買わない、というのは我々の読み通りだったが、誤算だったのは、PS3を購入したユーザーは、『いつでも購入できる』という安心からか、BDプレーヤーもHD DVDプレーヤーも買わないということ。これが次世代DVD普及を阻んでいる大きな理由の一つだ。BD陣営も、このことに早く気づいて欲しい」と訴えた。
藤井氏は続いて、次世代DVD市場の今後について説明した。世界市場ではPC市場が2008年度以降に急拡大する、と予想。「様々な市場調査の結果から、次世代DVDの再生機器として、PCがその存在感を高めることが見えてきている」とした。「今後、HPなどから、1,000ドル近辺のHD DVD搭載PCがどんどん出てくる。PS3はBDドライブを積んでいるのでBDプレーヤーと称しているが、PCにHD DVDドライブを搭載すればHD DVDプレーヤー。何も変わらない」。さらに藤井氏は、「世界シェア60%以上のPCメーカーがHD DVDを支持している」と、PC市場での優位性を強調した。
国内市場に話を進めた藤井氏は、ややトーンダウン。「国内のソフトメーカーさんには申し訳ないと思っている。日本市場は特殊で、日本人の多くは、DVDはVHSの置き換えと認識している。これに対して、アメリカでは、DVDは映画を観る機械と認識されている。この違いが現れている」とした。
このような状況を変えるための施策として藤井氏は、「近々、非常に求めやすい価格帯のレコーダーの発表会をしようかなあ、と思っている」と、新レコーダーの発表を示唆。具体的な価格や仕様については、「私といえども口止めされているので」と明らかにしなかったが、「いろいろな機能が付いている」という。プレーヤーとレコーダーの今後の出荷目標については、「1日も早く30万台という数字を達成したい」と述べるにとどめた。
さらに藤井氏は、「HDi」についてもあらためて説明。「インタラクティブ機能はHD DVDの仕様であり、第1号機からインターネット接続機能を搭載していた」と主張。ピクチャー・イン・ピクチャーなどのほか、ユーザー同士のコミュニティやEコマースなどもHDiによって可能になるとした。
最後に藤井氏は、「アメリカで起きていることは日本でも起きる。これだけはギャランティーする」と、国内市場での巻き返しを宣言した。
続いて、トランスフォーマー、バイオハザード、機動警察パトレイバーなど、HD DVDタイトルのトレーラーがいくつも上映されたあと、ソフトメーカー2社によるプレゼンテーションに移った。
パラマウントジャパン(株)代表取締役社長の鈴木順一郎氏は、次世代DVD市場について説明。鈴木氏はまず、2006年11月に両フォーマットで販売を開始したこと、そして2007年8月20日にHD DVDへの独占供給を決めたことなど、これまでの経緯を振り返った。
さらに鈴木氏は、HD DVDへの独占供給を決めた背景として、長期的な複製コストが優位なこと、廉価なハードウェアの開発・発売が可能であること、またツインフォーマットやコンボディスクなど、消費者が次世代ディスクを試しやすい環境が整っていること、さらにHDiによるP-in-P機能や、インターネットへのアクセスなどにより、次世代特典を提供できること、という4つの理由を挙げた。
今冬のタイトルについては、「最重要期に最強のラインナップを発売する」と宣言。12月19日に「トランスフォーマー」、「スター・トレック 宇宙大作戦 デジタル・アップグレード版 Season 1」を発売することを改めて説明し、トランスフォーマーについては「世界興行収入7億ドルのブロックバスタータイトルであり、すでにトランスフォーマー2の発売も決定している」とした。スター・トレックについても、国内初のコンボディスクタイトルであり、CBSパラマウントがデジタル放映に向けSFX、音楽、マスターを改良していることなどを訴えた。
続いて(株)ポニーキャニオン 第一映像本部 本部長 大柳英樹氏が、DVDと比較した際のHD DVDの魅力を説明。画質、音質ともに優れていることや、AACSにより無許諾コピーなどが撲滅できることなど、いくつかの例を挙げて説明した。また、マスターレベルの向上や、HD解像度に見合った構図や編集の工夫、コストと労力の節減といった、HDコンテンツ制作の課題についても説明した。
さらに大柳氏は、BDと比較した際のHD DVDの魅力として、パラマウントの鈴木氏と同様、ツインフォーマットやコンボディスクの存在を挙げた。
最後に、マイクロソフト(株)執行役常務の堺和夫氏が、マイクロソフトのHD DVDへの取り組みについて説明。「DVDをPCで見ることは当たり前になった」と、PCでパッケージソフトを見る利便性を強調。また、HDiなどを使ったインタラクティブ機能については、Eコマースなども今後積極的に展開していくとした。また、同社が発売している「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」などの魅力も訴えた。
(Phile-web編集部)
コンベンションには、(株)東芝 執行役上席常務 デジタルメディアネットワーク社 社長の藤井美英氏やソフトメーカーの担当者らが出席。ハード市場の現状と今後の動向、またソフトの発売ラインナップなどを説明した。
初めに登壇した藤井氏は、プレゼンテーションについて「藤井流でざっくばらんにいく」と宣言。北米市場については、次世代DVD CE市場でシェア55%を得ているほか、年末に向け安価な第3世代HD DVDプレーヤー3モデルを投入済みであり、さらにソフトについても、「タイトル数が9月末で300作品を突破した。年末には500タイトル目標としている」などと現状を説明した。
ハードウェアについては、「ハードの品揃えではBDを凌駕している。これは事実だから仕方がない。アメリカでちゃんとしたBDプレーヤーはどこが出しているんだ。ソニーとサムスンだけだろう」とBD陣営を牽制。さらに「BD陣営からは、中国はBDが圧倒的なシェアを持っている、という声が聞こえているが、中国でソフトが出ていないのだから、まったく意味がない。1台だけ中国国内に入れたから、それでシェア100%と言うのはいかがなものか」と皮肉った。
藤井氏はさらに、国内マスコミの報道があまりに偏向している、と主張。「アメリカと日本で報道の内容があまりに違う。アメリカでは、夏頃までは7:3くらいでBDが勝ち、という報道が多かったが、パラマウントの8月22日の発表以後、がらっと調子が変わった。想像を超える変化が起きた」とした。
続いて藤井氏は、欧州の状況を説明。「欧州でコンテンツホルダーの75%、45社がHD DVDタイトルを発売済み」であり、「30社のオーサリングハウス、レプリケーターが支持」しているとも述べた。また、「年末までに400タイトルが発売を予定している。ハイデフの番組が少ないので、パッケージへの期待が大きい。制作コストがBDの半分程度ということも、HD DVDへの支持が大きい原因では」とした。
藤井氏の発言はPS3へも向かった。「当時はセミコンにいたので、ソニーの久夛良木と組んでCellを作って、PS3には思い入れがある」としながらも、「PS3の購入者は映画ソフトを買わない。これがはっきり結果として出ている。ヨーロッパや日本では若干違う数字が出ているようだが、ゲームユーザーと映画ユーザーは本質的に異なる」と、PS3のBDソフト購入率について言及。藤井氏はさらに、「PS3ユーザーがBDソフトを買わない、というのは我々の読み通りだったが、誤算だったのは、PS3を購入したユーザーは、『いつでも購入できる』という安心からか、BDプレーヤーもHD DVDプレーヤーも買わないということ。これが次世代DVD普及を阻んでいる大きな理由の一つだ。BD陣営も、このことに早く気づいて欲しい」と訴えた。
藤井氏は続いて、次世代DVD市場の今後について説明した。世界市場ではPC市場が2008年度以降に急拡大する、と予想。「様々な市場調査の結果から、次世代DVDの再生機器として、PCがその存在感を高めることが見えてきている」とした。「今後、HPなどから、1,000ドル近辺のHD DVD搭載PCがどんどん出てくる。PS3はBDドライブを積んでいるのでBDプレーヤーと称しているが、PCにHD DVDドライブを搭載すればHD DVDプレーヤー。何も変わらない」。さらに藤井氏は、「世界シェア60%以上のPCメーカーがHD DVDを支持している」と、PC市場での優位性を強調した。
国内市場に話を進めた藤井氏は、ややトーンダウン。「国内のソフトメーカーさんには申し訳ないと思っている。日本市場は特殊で、日本人の多くは、DVDはVHSの置き換えと認識している。これに対して、アメリカでは、DVDは映画を観る機械と認識されている。この違いが現れている」とした。
このような状況を変えるための施策として藤井氏は、「近々、非常に求めやすい価格帯のレコーダーの発表会をしようかなあ、と思っている」と、新レコーダーの発表を示唆。具体的な価格や仕様については、「私といえども口止めされているので」と明らかにしなかったが、「いろいろな機能が付いている」という。プレーヤーとレコーダーの今後の出荷目標については、「1日も早く30万台という数字を達成したい」と述べるにとどめた。
さらに藤井氏は、「HDi」についてもあらためて説明。「インタラクティブ機能はHD DVDの仕様であり、第1号機からインターネット接続機能を搭載していた」と主張。ピクチャー・イン・ピクチャーなどのほか、ユーザー同士のコミュニティやEコマースなどもHDiによって可能になるとした。
最後に藤井氏は、「アメリカで起きていることは日本でも起きる。これだけはギャランティーする」と、国内市場での巻き返しを宣言した。
続いて、トランスフォーマー、バイオハザード、機動警察パトレイバーなど、HD DVDタイトルのトレーラーがいくつも上映されたあと、ソフトメーカー2社によるプレゼンテーションに移った。
パラマウントジャパン(株)代表取締役社長の鈴木順一郎氏は、次世代DVD市場について説明。鈴木氏はまず、2006年11月に両フォーマットで販売を開始したこと、そして2007年8月20日にHD DVDへの独占供給を決めたことなど、これまでの経緯を振り返った。
さらに鈴木氏は、HD DVDへの独占供給を決めた背景として、長期的な複製コストが優位なこと、廉価なハードウェアの開発・発売が可能であること、またツインフォーマットやコンボディスクなど、消費者が次世代ディスクを試しやすい環境が整っていること、さらにHDiによるP-in-P機能や、インターネットへのアクセスなどにより、次世代特典を提供できること、という4つの理由を挙げた。
今冬のタイトルについては、「最重要期に最強のラインナップを発売する」と宣言。12月19日に「トランスフォーマー」、「スター・トレック 宇宙大作戦 デジタル・アップグレード版 Season 1」を発売することを改めて説明し、トランスフォーマーについては「世界興行収入7億ドルのブロックバスタータイトルであり、すでにトランスフォーマー2の発売も決定している」とした。スター・トレックについても、国内初のコンボディスクタイトルであり、CBSパラマウントがデジタル放映に向けSFX、音楽、マスターを改良していることなどを訴えた。
続いて(株)ポニーキャニオン 第一映像本部 本部長 大柳英樹氏が、DVDと比較した際のHD DVDの魅力を説明。画質、音質ともに優れていることや、AACSにより無許諾コピーなどが撲滅できることなど、いくつかの例を挙げて説明した。また、マスターレベルの向上や、HD解像度に見合った構図や編集の工夫、コストと労力の節減といった、HDコンテンツ制作の課題についても説明した。
さらに大柳氏は、BDと比較した際のHD DVDの魅力として、パラマウントの鈴木氏と同様、ツインフォーマットやコンボディスクの存在を挙げた。
最後に、マイクロソフト(株)執行役常務の堺和夫氏が、マイクロソフトのHD DVDへの取り組みについて説明。「DVDをPCで見ることは当たり前になった」と、PCでパッケージソフトを見る利便性を強調。また、HDiなどを使ったインタラクティブ機能については、Eコマースなども今後積極的に展開していくとした。また、同社が発売している「Xbox 360 HD DVDプレーヤー」などの魅力も訴えた。
(Phile-web編集部)