<FPD2007:有機ELほか編>エプソンが“究極の黒”を実現した有機ELディスプレイを出品
本日から、パシフィコ横浜で、フラットパネルディスプレイや製造装置、部品、材料の総合展示会「FPD International 2007」が開幕した。会期は26日まで。
本項では、各社から様々な方式やサイズの製品が出展された有機ELディスプレイやフィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、電子ペーパーなどについてレポートする。
●エプソンやサムスンSDIなどが有機ELディスプレイを展示
有機ELディスプレイで最大の注目を集めていたのは、先日エプソンが開発を発表していた8インチの有機ELディスプレイ(関連ニュース)だ。画素数は800×480で、輝度は200cd/m2。輝度半減時間は50,000時間で、長寿命化も達成している。
コントラスト比は10万対1以上としており、同社説明員によると「測定機器でこれ以上の数値を計測できないため、10万対1“以上”と表記しているだけ。実際にはもっと出ている」という。
同社ではこの試作機の黒について“究極の黒”と表現している。実際に試作機を見てみると、画面の黒と周りの黒いフレームの境目がほとんど判別できない。究極という表現は決して大げさではないと感じた。
量産について同社は、小規模量産に対応できる開発製造ラインを富士見事業所に設置し、稼動を開始しているとのことだが、本格的な量産については、「2年後くらいまでに開始したい」(説明員)とのこと。テレビへの応用の期待が膨らむが、コスト低減やパネル大型化の難しさから、「有機ELは液晶テレビの代替とは考えておらず、今のところテレビ開発は検討していない」という。同社の考える試作機の用途として、店頭でのインフォメーションディスプレイや、車載用の表示パネルなどが紹介されていた。
なお同社は、2006年に40インチの有機ELディスプレイを発表していたが、これは高分子材料をインクジェットで吹き付けたもので、今回の試作機は低分子材料を蒸着させて画素を形成している。
エプソン以外では、サムスンSDIが多数の有機ELディスプレイを展示。モバイル機器向けの小型ディスプレイばかりだったが、中でも注目したいのは、3.1インチで480×800ドットを実現した、超高精細なディスプレイ。フルカラー表示が可能なのはもちろん、コントラスト比も1万対1を実現している。
また同社は、4インチの曲げられる有機ELディスプレイも展示。解像度は480×272ドットで、輝度は200cd/m2。コントラスト比は1,000対1で、寿命は2万時間となっている。なお、斬新なデザインが話題となっているauの携帯電話「INFOBAR2」には同社の有機ELディスプレイが採用されているようで、ブースにはINFOBAR2が何台か展示されていた。
台湾のCMEL(Chi Mei EL)社は、25インチのアクティブ・マトリクス方式の有機ELディスプレイを出展。昨年の同展示会にも出品したもので、解像度は1,366×768、コントラスト比は10,000対1。
ブースでは、隣に同じサイズの液晶ディスプレイを並べ、有機ELの画質の高さをアピール。また、消費電力もリアルタイムに表示し、液晶が常時66Wを表示しているのに対し、有機ELは2〜14W程度と、格段に低消費電力であることも訴求した。
実際の画を見てみると、黒の沈みはさすがに有機EL、と思わせるが、画面に近づくと幅1cm程度の色ムラが縦にいくつも伸びていたり、画素欠けも見られるなど、完成度には疑問も残った。
そのほか、東芝松下ディスプレイは、3.2型WQVGAの有機ELディスプレイなどを展示。またLG Philips LCDも3インチのWQVGAモデルを出品し、ASRという技術により、外光下でも鮮明な映像が得られることをアピールしていた。TDKも3.2型の有機ELディスプレイを展示し。パッシブマトリクス駆動方式ながら長寿命で、低コストで量産が可能という。
●10bit駆動のFEDが登場
エフ・イー・テクノロジーズは、CEATECでも公開した、240Hz駆動のFED(Field Emission Display)を出展。画面サイズは19.2型で、解像度は1,280×960。駆動は8bitとなる。
また、今回新たに、10bit駆動の試作機も展示した。サイズは同じく19.2型で、解像度も同様に1,280×960。
FEDは電界放出型ディスプレイとも呼ばれ、蛍光体に向けて電子を放出し、発光させるのはCRTと同様だが、CRTが一つの電子銃から電子ビームを放出するのに対し、FEDでは画素ごとに発光領域が設けられ、無数のエミッター(電子放出部)が用意されている。このため、CRTの高い色再現性、高速応答性、階調表現力に加え、固定画素ディスプレイの解像力が同時に得られる。
同社では2009年頃にFEDを製品化する計画で、当初は局用モニターや医療用途、クリエーター向けモニターなどでの採用を見込んでいる。
●ブリヂストンが曲げられるフルカラー電子ペーパーを出展
電子ペーパーは、ブリヂストンが注目すべき展示を行った。世界最薄の、曲げられるフルカラー電子ペーパーがそれで、ブースには実際に曲げられた製品が展示されていた。また、A3サイズ、4096色表示の製品も出品し、これは世界最大級の大きさなのだという。同社の電子ペーパーは「QR-LPD」という独自の方式を採用し、高速表示かつ低消費電力なことが特徴。ブースには従来からのモノクロタイプも置かれ、これらは時刻表やポスター、小売店のプライスタグなどへの応用を働きかけている。また、将来的には動画を表示できるよう、開発を進めているとのことだ。
電子ペーパーの雄、E-INK社は、すでに同社のモジュールを採用した製品を多数展示。ソニーをはじめ、韓仏中のメーカーが開発した電子ブックはもちろん、表示部が電子ペーパーのモトローラ製携帯電話や腕時計など、変わり種の製品も多く見られた。
(Phile-web編集部)
本項では、各社から様々な方式やサイズの製品が出展された有機ELディスプレイやフィールド・エミッション・ディスプレイ(FED)、電子ペーパーなどについてレポートする。
●エプソンやサムスンSDIなどが有機ELディスプレイを展示
有機ELディスプレイで最大の注目を集めていたのは、先日エプソンが開発を発表していた8インチの有機ELディスプレイ(関連ニュース)だ。画素数は800×480で、輝度は200cd/m2。輝度半減時間は50,000時間で、長寿命化も達成している。
コントラスト比は10万対1以上としており、同社説明員によると「測定機器でこれ以上の数値を計測できないため、10万対1“以上”と表記しているだけ。実際にはもっと出ている」という。
同社ではこの試作機の黒について“究極の黒”と表現している。実際に試作機を見てみると、画面の黒と周りの黒いフレームの境目がほとんど判別できない。究極という表現は決して大げさではないと感じた。
量産について同社は、小規模量産に対応できる開発製造ラインを富士見事業所に設置し、稼動を開始しているとのことだが、本格的な量産については、「2年後くらいまでに開始したい」(説明員)とのこと。テレビへの応用の期待が膨らむが、コスト低減やパネル大型化の難しさから、「有機ELは液晶テレビの代替とは考えておらず、今のところテレビ開発は検討していない」という。同社の考える試作機の用途として、店頭でのインフォメーションディスプレイや、車載用の表示パネルなどが紹介されていた。
なお同社は、2006年に40インチの有機ELディスプレイを発表していたが、これは高分子材料をインクジェットで吹き付けたもので、今回の試作機は低分子材料を蒸着させて画素を形成している。
エプソン以外では、サムスンSDIが多数の有機ELディスプレイを展示。モバイル機器向けの小型ディスプレイばかりだったが、中でも注目したいのは、3.1インチで480×800ドットを実現した、超高精細なディスプレイ。フルカラー表示が可能なのはもちろん、コントラスト比も1万対1を実現している。
また同社は、4インチの曲げられる有機ELディスプレイも展示。解像度は480×272ドットで、輝度は200cd/m2。コントラスト比は1,000対1で、寿命は2万時間となっている。なお、斬新なデザインが話題となっているauの携帯電話「INFOBAR2」には同社の有機ELディスプレイが採用されているようで、ブースにはINFOBAR2が何台か展示されていた。
台湾のCMEL(Chi Mei EL)社は、25インチのアクティブ・マトリクス方式の有機ELディスプレイを出展。昨年の同展示会にも出品したもので、解像度は1,366×768、コントラスト比は10,000対1。
ブースでは、隣に同じサイズの液晶ディスプレイを並べ、有機ELの画質の高さをアピール。また、消費電力もリアルタイムに表示し、液晶が常時66Wを表示しているのに対し、有機ELは2〜14W程度と、格段に低消費電力であることも訴求した。
実際の画を見てみると、黒の沈みはさすがに有機EL、と思わせるが、画面に近づくと幅1cm程度の色ムラが縦にいくつも伸びていたり、画素欠けも見られるなど、完成度には疑問も残った。
そのほか、東芝松下ディスプレイは、3.2型WQVGAの有機ELディスプレイなどを展示。またLG Philips LCDも3インチのWQVGAモデルを出品し、ASRという技術により、外光下でも鮮明な映像が得られることをアピールしていた。TDKも3.2型の有機ELディスプレイを展示し。パッシブマトリクス駆動方式ながら長寿命で、低コストで量産が可能という。
●10bit駆動のFEDが登場
エフ・イー・テクノロジーズは、CEATECでも公開した、240Hz駆動のFED(Field Emission Display)を出展。画面サイズは19.2型で、解像度は1,280×960。駆動は8bitとなる。
また、今回新たに、10bit駆動の試作機も展示した。サイズは同じく19.2型で、解像度も同様に1,280×960。
FEDは電界放出型ディスプレイとも呼ばれ、蛍光体に向けて電子を放出し、発光させるのはCRTと同様だが、CRTが一つの電子銃から電子ビームを放出するのに対し、FEDでは画素ごとに発光領域が設けられ、無数のエミッター(電子放出部)が用意されている。このため、CRTの高い色再現性、高速応答性、階調表現力に加え、固定画素ディスプレイの解像力が同時に得られる。
同社では2009年頃にFEDを製品化する計画で、当初は局用モニターや医療用途、クリエーター向けモニターなどでの採用を見込んでいる。
●ブリヂストンが曲げられるフルカラー電子ペーパーを出展
電子ペーパーは、ブリヂストンが注目すべき展示を行った。世界最薄の、曲げられるフルカラー電子ペーパーがそれで、ブースには実際に曲げられた製品が展示されていた。また、A3サイズ、4096色表示の製品も出品し、これは世界最大級の大きさなのだという。同社の電子ペーパーは「QR-LPD」という独自の方式を採用し、高速表示かつ低消費電力なことが特徴。ブースには従来からのモノクロタイプも置かれ、これらは時刻表やポスター、小売店のプライスタグなどへの応用を働きかけている。また、将来的には動画を表示できるよう、開発を進めているとのことだ。
電子ペーパーの雄、E-INK社は、すでに同社のモジュールを採用した製品を多数展示。ソニーをはじめ、韓仏中のメーカーが開発した電子ブックはもちろん、表示部が電子ペーパーのモトローラ製携帯電話や腕時計など、変わり種の製品も多く見られた。
(Phile-web編集部)