HOME > ニュース > 【一条真人の体当たり実験室】バッファローVSアイ・オー PC用地デジチューナー対決

【一条真人の体当たり実験室】バッファローVSアイ・オー PC用地デジチューナー対決

公開日 2008/05/02 18:21
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
ようやくという印象だが、5月半ば、PC用地デジチューナーユニットが数社から発売されることとなった。今回はアイ・オー・データとバッファローという代表的なメーカーの製品を比較検証してみた。

■3製品の接続インターフェースはすべて異なる

アイ・オー・データからは1製品、バッファローからは2製品が登場するのだが、奇しくもその接続インターフェースはすべて異なっている。アイ・オー・データの「GV-MVP/HS」はPCI Express×1、バッファローは「DT-H50/PCI」がPCI、「DT-H30/U2」がUSB2.0の外付けとなる。ノートPCなどのユーザーであれば、USBタイプを選択せざるをえない。バッファローがアイ・オー・データにない外付けUSBタイプを先行して発売できたのは大きなリードと言えるだろう。

上がアイオー「GV-MVPHS」、下がバッファロー「DT-H50/PCI」。アイオー地デジチューナーがコンパクトなのがわかる

コンパクトなバッファロー「DT-H30/U2」

■低スペックPCに優しいバッファロー

地デジのハイビジョン映像は次世代DVD同様、再生にかなりのマシンパワーを要求するため、そのスペックをクリアできないPCも多いことだろう。

バッファローはそんなローパワーPCで地デジ視聴を行うため、映像をより低解像度に変換する機能を搭載している。この変換はソフトではなく、ViXSのチップで実行されるため、CPUに負荷をかけずに処理できる。通常の地デジチューナーは地デジ放送をTSでそのまま視聴、録画するしかないが、バッファローの地デジチューナーでは4つのTVモードを持っている。

モード 解像度 ビットレート
DP 1,440×1,080(送られてきたデータそのまま) 送られてきたデータそのまま
HP 720×1080 8Mbps
SP 720×480 6Mbps
LP 720×480 4Mbps


SPモードはDVD並の解像度とビットレートなので、再生に要求されるマシンパワーはDVD再生と同程度となり、多くのPCで利用することができる。

設定のTVプロファイルで視聴画質を変更できる

■利用環境はHDCPのデジタル接続が基本

地デジ対応レコーダーとハイビジョンテレビをHDMIでデジタル接続するのは普通になってきたが、PC用地デジチューナーを使う場合、デジタル接続では著作権保護した接続が必要になる。

PCではHDCP対応のDVIポート搭載のビデオカードと、HDCP対応DVI接続可能なディスプレイの組み合わせが基本だ。バッファローやアイ・オーなど地デジチューナーのメーカーサイトを見ていると、COPP、DXVA対応が必要という言葉が出てくるので、これについて説明しよう。

COPPとはマイクロソフトが開発したセキュリティ保護プロトコルであり、DirectShowとGPUの間でデータをやりとりするときに、暗号鍵をやりとりして相手が正規のものであることを確認し、暗号化したデータを転送するという仕組み。Windows XPSP2以降で対応しており、当然Vistaでも対応している。

そして、DXVAはHDCPのためのセキュリティ機能を実現するビデオカード側のドライバ機能だ。わかりやすく言えば、アイ・オー・データの必要環境にある「COPP&DXVA」というのは、HDCP機能に対応したビデオカードということになる。

単にCOPP対応というのは、COPPに対応したビデオチップとドライバの組み合わせということになる。これはHDCP(COPP&DXVA)に対応しなくとも、世代の新しいビデオチップなら対応している。たとえば、GeForceでは6200以降などPureVideo対応ドライバのある世代から、HDCP、COPPに対応するようになっている。インテルであれば945以降、RadeonならX1300以降なら通常、COPPに対応しているはずだ。

バッファローの場合、ビデオカード(内蔵でも外付けでも)がCOPP対応環境であれば、HDCP対応・非対応を問わず、どんなディスプレイにもアナログ出力できることになる。ただし、この場合、解像度はSP/LPモードのみとなり、DVD並の解像度になってしまう。

これに対し、アイ・オーの場合、アナログ出力でCOPP対応が必要なのは同様だが、52万画素以下の低解像度に変換され、チップセット内蔵グラフィックスからしか出力できないという制限がある。当然、アナログ出力なのでディスプレイ側がHDCPに対応している必要はない。

この両者のアナログ出力の違いは、ARIBの規定がアナログ出力に関してあまり細かくないか、どちらかがそれを遵守していないことが理由ではないかと思う。

自分のディスプレイ、ビデオカード環境が対応しているかを確認するプログラムがメーカーサイトからダウンロードできるので、よくわからない場合、これらを使って自分で確かめてみるといいだろう。

■アイ・オー・データの視聴環境

アイ・オーの視聴環境はプレーヤーである「mAgicTV Digital」と番組表や録画管理機能を持つ「mAgicガイドDigital」の2つから構成される。ガイドで録画した番組を再生する場合は、チャンネル表示を待たない「mAgicプレーヤーDigital」が使われる。また、予約操作はガイドで行うが、予約の一覧や削除などはタスクマネージャに常駐する「mAgicマネージャDigital」で行われる。

ちなみにこのアイ・オーの地デジチューナーカードを最初にテスト機にインストールしたとき、Vista、XP環境ともにアプリケーションが起動不能になるというトラブルに見舞われた。OSをクリーンインストールしたところ、正常に動作したが、市販前の試作機ということで、まだ、動作安定性が確保されていないレベルだったのだろう。市販製品ではより改良され、問題はなくなっているとは思うが、一応、読者にご報告させていただく。

TVを視聴する「mAgicTV Digital」

予約タイトルには赤いバーが表示されて識別できる


おまかせ録画機能を使えば、キーワード、ジャンルなどから自動的に録画予約ができる

きちんと番組名がリスト表示される

■バッファローの視聴環境

バッファローでは「PcastTV for 地デジ」というプログラム1つで、視聴から予約まですべてを行う。番組表もこのプログラムから1つのウィンドウとして起動することができる。そのため、番組表は全体表示のボタンがなく、やや不便だ。また、予約タイトルを識別するマークも表示されないし、自動予約機能もないなど、現代のTVチューナーの番組表としてはやや不満が残る。

「PcastTV for 地デジ」画面。カーソルがウィンドゥ外にあるとボタンが表示されず、映像がフル表示になる

録画一覧表示画面で、番組名ではなくチャンネル名と数字で表示されるものがあり、そのファイルが再生できないということが時折あった。これはPCI版でもUSB版でも発生した。今回、試用したものは市販前のもので、製品版ではない。製品版では改善されているはずだ。

視聴時に録画ボタンを押すと録画が開始されるが、このときの録画は視聴モードと同じモードで録画される。予約録画時は好きなモードを指定して録画することができる。

番組表。フル画面表示ボタンがないのは不便。また、予約したタイトルをあらわすマークもないため、そのたびに予約一覧を確認する必要がある

録画は「ファイル一覧」で表示できる。チャンネル名と数字で表示されたものは再生ができない

■第1世代だけに得手不得手がはっきり

今回比較した製品は、PC向け地デジチューナーの第1世代ということで、それぞれの得手不得手が大きく、個性的なものに仕上がっている。視聴環境として使いやすいものが欲しければアイ・オーの「GV-MVP/HS」を選択するのがいいだろう。ノートPCなどで使いたいなら「DT-H30/U2」を使うしかないし、録画番組をブルーレイにムーブしたいなら「DT-H50/PCI」しかない。パワーのないマシンではトランスコーダで低解像度に変換表示できるバッファローの製品を選択するといいだろう。

(一条真人)

執筆者プロフィール
デジタルAV関連、コンピュータ関連などをおもに執筆するライター。PC開発を経て、パソコン雑誌「ハッカー」編集長、「PCプラスワン」編集長を経てフリーランスに。All Aboutの「DVD ・HDDレコーダー」ガイドも務める。趣味はジョギング、水泳、自転車、映画鑑賞など。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

トピック