<ケースイのCEATEC2008レポート>デジタル録画の進化を感じる!レコーダーの注目展示
CEATECの会場では毎年センセーショナルな録画機が発表されてきた。今年、2008年はどうかというと、例年に比べると、派手さのない製品が多かったように思う。録画ファンからすれば少し物足りなくも感じたが、その中でもいくつか将来につながる興味深い技術に触れることができた。
■パナソニック編
将来に期待が持てる展示が多かったのがパナソニックブースだ。なんと言っても録画機能付きテレビの“VIERA”PZR900シリーズの存在が大きい。録画機能付きテレビとしては始めて、保存した番組をフルHD画質のまま、対応するBDレコーダーにi.Link経由で転送して保存できる。いままで録画機能付テレビの弱点だった、光ディスクへのアーカイブ保存の課題を解決した製品だ。
すでに発表済みのDMR-BW930/BW830/BW730の展示も目を惹いた。レコーダーとしてはじめてアクトビラのIPTVサービス「アクトビラ ビデオ・フル」に対応した。アクトビラのサービスには、静止画と文字情報の「アクトビラ ベーシック」、SD画質の動画配信「アクトビラ ビデオ」、そしてハイビジョン画質の「アクトビラ ビデオ・フル」がある。新しい“DIGA”シリーズは、この最高画質の「アクトビラ ビデオ・フル」に対応している。(アクトビラの詳細についてはこちらの記事を参照していただきたい)
これまでアクトビラを視聴するにはサービスに対応するテレビを購入しなければならなかったが、今回レコーダーの側で対応したことで、テレビを持たない人にもサービスが楽しめるようになった。アクトビラではすでに3,000タイトルの映画・ドラマをはじめとするバラエティ豊かなコンテンツを配信しており、2008年12月からはNHKの番組をネット配信する「NHKオンデマンド」も開始される(関連ニュース)。本サービスではNHKの「大河ドラマ」や「朝の連続テレビ小説」が放送後1週間配信され、有料で試聴できる。現時点で料金は発表されていないが、もし手頃な価格なら便利に使えそうなサービスだ。他に「NHKスペシャル」など過去に放送した人気番組もスタート時点で1,000本配信されるという。
新DIGAシリーズはアクトビラが2008年12月から開始する「ダウンロードサービス」にも対応する(関連ニュース)。まずツタヤが映画やドラマのダウンロード販売をはじめるが、これにいち早く対応した。ダウンロードサービスは買い取りの「セルスルー」と、期限付き視聴の「ダウンロードレンタル」の2種類がある。セルスルーはダウンロードしたコンテンツをHDDに保存し、さらにBDメディアにムーブして保存できる。
これを聞いて、カンのいい方はストリーミング配信とダウンロードレンタルの違いはどこにあるのか、と疑問に思うだろう。ダウンロードレンタルはストリーミングに比べて速度の影響を受けないので、リッチなデータが配信できる点が特徴だ。ストリーミング配信のビットレートは6MbpsのCBR(固定レート)だったが、ダウンロードレンタルは平均10Mbps、最高で20MbpsのVBR(可変レート)になっているので、ダウンロードレンタルの方が数倍画質が良くなる。DIGAシリーズを手に入れれば、最新のIPテレビ環境が手に入ると考えると、これはかなりエキサイティングなトピックスだ。
■東芝編
東芝ブースは、絶好調の録画テレビ“REGZA”とは対照的に、HD DVD撤退以降、あまり目立たない“VARDIA”の展示コーナーをキャッチアップしてみた。既報の通り、東芝のVARDIAシリーズはハイビジョン映像をHD Recという機能を使い、HDDとDVDに記録ができる。デジタル放送を無劣化で記録できるBDに比べ、使い勝手に違いが出ている。高画質技術の「XDE」を搭載することで、DVDの画質をハイビジョンのように美しく表示できる点をアピールしていた。
同社製品の機能として注目したいポイントは、スカパー!HDチューナーとの連携機能だ。「スカパー!HD」はスカパー!のアンテナで受信し、専用のチューナーを揃えることで視聴できるハイビジョンコンテンツのサービス。このチューナーとの連携機能に、最新のVARDIAシリーズの「RD-X8/S503/S303」が最新機種の中で対応している。チューナーとの接続はLAN経由で、予約はチューナー側から行うかたちになるという。とても期待の持てる機能だ。
■iVDR編
デジタル録画の未来について、筆者の妄想をかき立ててくれたのがiVDRのブースだ。ハイビジョンの記録メディアがBDで一本化されつつある中、リムーバブルHDDという新たなアプローチで録画文化を支えている。
展示ではラック型サーバーがユニークだった。これにはiVDR用のスロットの他に、iVDRのインターフェースを活用した外付けチューナーパックがセットできるようになっていた。例えばIPTVはサービスがグレードアップするごとに、STBや本体の買い替えが必要になっている。これをチューナーパック化することで、手軽に最新の機能が追加できるようになっている。この機能がテレビに対応すれば、例えばテレビ本体を買い替えなくても、IPTVの技術的な進化に合わせてカートリッジ交換で対応できるようになる。カートリッジ式のメディアの新たな可能性を感じさせる提案だった。
見逃せないのがフラッシュメモリーを使用したSilicon iVDRだ。iVDRはBDなどの光ディスクに比べて容量単価が高いのが普及を妨げていると筆者は感じている。HDDよりも量産化による低価格化が見込めるフラッシュメモリーを使えば、一気に値段も手頃になるのでは?と期待してしまった。例えばもし、東芝のRDシリーズがSilicon iVDRに対応すれば、それはそれで面白いことになりそうなのだが…。
今回はデジタル録画の未来を期待させる展示のいくつかを駆け足で紹介した。デジタル放送が始まって以来、様々なデジタル録画の制約によってビデオレコーダーはややつまらない製品になってしまったと筆者は感じている。H.264による長時間録画の提案はとても便利だが、現時点ではまだエンコーダーが1系統しか搭載されていないので、2番組録画では録り逃しが発生してしまう。今後エンコーダーが安価になれば、「ツインチューナー・ツインエンコーダー機(TT/TE)」の登場もあり得るだろうが、しばらくはガマンしないといけないようだ。
来年のCEATECでは、録画ファンが驚くような多くの製品に出会いたいと期待している。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
>>鈴木桂水氏のブログはこちら
■パナソニック編
将来に期待が持てる展示が多かったのがパナソニックブースだ。なんと言っても録画機能付きテレビの“VIERA”PZR900シリーズの存在が大きい。録画機能付きテレビとしては始めて、保存した番組をフルHD画質のまま、対応するBDレコーダーにi.Link経由で転送して保存できる。いままで録画機能付テレビの弱点だった、光ディスクへのアーカイブ保存の課題を解決した製品だ。
すでに発表済みのDMR-BW930/BW830/BW730の展示も目を惹いた。レコーダーとしてはじめてアクトビラのIPTVサービス「アクトビラ ビデオ・フル」に対応した。アクトビラのサービスには、静止画と文字情報の「アクトビラ ベーシック」、SD画質の動画配信「アクトビラ ビデオ」、そしてハイビジョン画質の「アクトビラ ビデオ・フル」がある。新しい“DIGA”シリーズは、この最高画質の「アクトビラ ビデオ・フル」に対応している。(アクトビラの詳細についてはこちらの記事を参照していただきたい)
これまでアクトビラを視聴するにはサービスに対応するテレビを購入しなければならなかったが、今回レコーダーの側で対応したことで、テレビを持たない人にもサービスが楽しめるようになった。アクトビラではすでに3,000タイトルの映画・ドラマをはじめとするバラエティ豊かなコンテンツを配信しており、2008年12月からはNHKの番組をネット配信する「NHKオンデマンド」も開始される(関連ニュース)。本サービスではNHKの「大河ドラマ」や「朝の連続テレビ小説」が放送後1週間配信され、有料で試聴できる。現時点で料金は発表されていないが、もし手頃な価格なら便利に使えそうなサービスだ。他に「NHKスペシャル」など過去に放送した人気番組もスタート時点で1,000本配信されるという。
新DIGAシリーズはアクトビラが2008年12月から開始する「ダウンロードサービス」にも対応する(関連ニュース)。まずツタヤが映画やドラマのダウンロード販売をはじめるが、これにいち早く対応した。ダウンロードサービスは買い取りの「セルスルー」と、期限付き視聴の「ダウンロードレンタル」の2種類がある。セルスルーはダウンロードしたコンテンツをHDDに保存し、さらにBDメディアにムーブして保存できる。
これを聞いて、カンのいい方はストリーミング配信とダウンロードレンタルの違いはどこにあるのか、と疑問に思うだろう。ダウンロードレンタルはストリーミングに比べて速度の影響を受けないので、リッチなデータが配信できる点が特徴だ。ストリーミング配信のビットレートは6MbpsのCBR(固定レート)だったが、ダウンロードレンタルは平均10Mbps、最高で20MbpsのVBR(可変レート)になっているので、ダウンロードレンタルの方が数倍画質が良くなる。DIGAシリーズを手に入れれば、最新のIPテレビ環境が手に入ると考えると、これはかなりエキサイティングなトピックスだ。
■東芝編
東芝ブースは、絶好調の録画テレビ“REGZA”とは対照的に、HD DVD撤退以降、あまり目立たない“VARDIA”の展示コーナーをキャッチアップしてみた。既報の通り、東芝のVARDIAシリーズはハイビジョン映像をHD Recという機能を使い、HDDとDVDに記録ができる。デジタル放送を無劣化で記録できるBDに比べ、使い勝手に違いが出ている。高画質技術の「XDE」を搭載することで、DVDの画質をハイビジョンのように美しく表示できる点をアピールしていた。
同社製品の機能として注目したいポイントは、スカパー!HDチューナーとの連携機能だ。「スカパー!HD」はスカパー!のアンテナで受信し、専用のチューナーを揃えることで視聴できるハイビジョンコンテンツのサービス。このチューナーとの連携機能に、最新のVARDIAシリーズの「RD-X8/S503/S303」が最新機種の中で対応している。チューナーとの接続はLAN経由で、予約はチューナー側から行うかたちになるという。とても期待の持てる機能だ。
■iVDR編
デジタル録画の未来について、筆者の妄想をかき立ててくれたのがiVDRのブースだ。ハイビジョンの記録メディアがBDで一本化されつつある中、リムーバブルHDDという新たなアプローチで録画文化を支えている。
展示ではラック型サーバーがユニークだった。これにはiVDR用のスロットの他に、iVDRのインターフェースを活用した外付けチューナーパックがセットできるようになっていた。例えばIPTVはサービスがグレードアップするごとに、STBや本体の買い替えが必要になっている。これをチューナーパック化することで、手軽に最新の機能が追加できるようになっている。この機能がテレビに対応すれば、例えばテレビ本体を買い替えなくても、IPTVの技術的な進化に合わせてカートリッジ交換で対応できるようになる。カートリッジ式のメディアの新たな可能性を感じさせる提案だった。
見逃せないのがフラッシュメモリーを使用したSilicon iVDRだ。iVDRはBDなどの光ディスクに比べて容量単価が高いのが普及を妨げていると筆者は感じている。HDDよりも量産化による低価格化が見込めるフラッシュメモリーを使えば、一気に値段も手頃になるのでは?と期待してしまった。例えばもし、東芝のRDシリーズがSilicon iVDRに対応すれば、それはそれで面白いことになりそうなのだが…。
今回はデジタル録画の未来を期待させる展示のいくつかを駆け足で紹介した。デジタル放送が始まって以来、様々なデジタル録画の制約によってビデオレコーダーはややつまらない製品になってしまったと筆者は感じている。H.264による長時間録画の提案はとても便利だが、現時点ではまだエンコーダーが1系統しか搭載されていないので、2番組録画では録り逃しが発生してしまう。今後エンコーダーが安価になれば、「ツインチューナー・ツインエンコーダー機(TT/TE)」の登場もあり得るだろうが、しばらくはガマンしないといけないようだ。
来年のCEATECでは、録画ファンが驚くような多くの製品に出会いたいと期待している。
(レポート:鈴木桂水)
筆者プロフィール
元産業用ロボットメーカーの開発、設計担当を経て、現在はAV機器とパソコン周辺機器を主に扱うフリーライター。テレビ番組表を日夜分析している自称「テレビ番組表アナリスト」でもある。ユーザーの視点と元エンジニアの直感を頼りに、使いこなし系のコラムを得意とする。そのほかAV機器の情報雑誌などで執筆中。
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