【更新】ソニー、平井CEOが経営方針を説明 − 他社との有機EL開発、Crystal LEDテレビ商品化に言及
ソニーは本日、経営方針説明会を開催。同社社長兼CEOの平井一夫氏が今後の方針を説明した。
同氏は冒頭、2011年度の連結業績見通しが5,200億円の赤字見通しとなったことに触れ「CEOとして大変重く受け止めている。それとともに、必ずやソニーを変革し、再生させることをあらためて決意した」とし、「ソニーを変える、ソニーは変わる。必ず変わると信じている」と語気を強め、力強く宣言した。
平井氏はまず、今後の経営について「エレクトロニクス事業再建が最大の課題」と指摘。その上で「エレキ事業の再建に奇策はない。しかしたっぷり時間をかける余裕もない」と述べ、「着実に、しかしスピーディーに変えていく」と語った。
平井氏はさらに、今後の同社の課題について「事業経営のスピード加速」「長期戦略に基づく投資領域の選択と集中」「イノベーティブな商品/サービス、技術開発力」「テレビ事業の8期連続の赤字」の4点を挙げ、業績回復するためにはこれらを解決することが必要とした。
この課題を解決するため、ソニーの強みを発揮することが不可欠とも平井氏は指摘。「グローバルな事業展開とブランド力」「デジタルイメージング/ゲーム領域などの技術開発力」「映画/音楽/ゲームのコンテンツ資産およびノウハウ」「ソニーの新しい価値創造への挑戦意欲/エネルギーというDNA」が同社の強みであり、これらを業績向上に役立てていくという考えを示した。
具体的な事業展開では、今後の重点事業領域をデジタルイメージング、ゲーム、モバイルの3事業に設定。この3事業だけで、2014年度の売上高構成比で70%を占めることを目指し、営業利益については全体の85%を創出することを目指していく。
デジタルイメージングでは、2014年度にデジタルイメージングの売上高1兆5,000億円、営業利益率2桁を目指す。デジカメやビデオカメラなどだけでなく、業務用機器やイメージセンサーなどもこの数字に含まれる。平井氏は、センサーが医療など幅広い販路が見込まれることを強調。またビデオカメラやデジカメについては「大きな成長が難しいが、シェアを維持することで利益率は確保できる」とした。ただしミラーレス一眼については「伸び率が高い」とし、今まで以上に拡大を図っていく旨が説明された。
ゲーム事業については、PS3やPS Vitaに加え、ソフト、ネットサービスなどを含め、2014年度に売上高1兆円、営業利益率8%を目指していく。平井氏は「カジュアルゲームやソーシャルゲームの台頭で事業モデルが変化しているが、こういった環境変化の中でも、ソニーは没入感のあるエンタテインメント体験を提供していく」とした。
平井氏はまた「6年目を迎えたPS3は収穫期にあたる。PS Vita/PSPと合わせて利益を出していく」と述べるとともに、ネットワークサービスの充実も行い、定額課金サービスを強化する姿勢も強調した。
モバイル事業については、2014年度に売上高1兆8,000億円を目指すと宣言。2011年度は6,000億円程度だったことから、約3倍程度に増やす意欲的な計画だ。また2011年度の収益が赤字だったのに対し、2014年度には収益性を大幅に改善させる。
特に注力するのはスマートフォン事業。XperiaシリーズとSony tablet、VAIOなどの連携を進め、高速回線化/クラウド化時代のスマートフォンのハブ化を推し進める考えだという。平井氏は「スマートフォン市場でリーディングポジションとなるために、開発体制の見直しにすでに着手した。従来の半分以下というリードタイムでスピーディーに市場投入する。設計や販売の効率化、効果的人員配置でコスト改善も図る。また、ソニーモバイルコミュニケーションズ(旧ソニー・エリクソン)とソニーの強みを合わせることで、シェアの拡大を図る」とした。
■テレビ事業の再建を加速
平井氏は続いて、テレビ事業の再建について説明。「2013年度の黒字化に向け、収益改善プランを行っているが、今後さらに加速させる。着実に課題を解消し、事業の健全化に努めたい」とした。
事業構造の改革に取り組み、サムスンとのジョイントベンチャーを解消しパネル調達を機動的に行えるようにしたほか、モデル数の削減を行い、2012年度は、2011年度比で40%のモデル数削減を行う。
コストを下げるだけでなく、商品力強化も図り、液晶テレビでは高画質/高音質を追求。また地域ごとのニーズを取り込んだ商品開発を行っていくという。
「テレビ事業の考え方としてはまず、現状の液晶テレビで魅力的なモデルを出していくことに注力する。さらに、他社との協業も視野に入れ、幅広い事業のあり方を考えて行くつもりだ」。
さらに次世代ディスプレイの開発も行い、「他社との協業も視野に入れた有機ELディスプレイの開発を行うほか、『Crystal LED』の開発・商品化も進める」とした。ただし、詳細な商品化時期は未定とのこと。そのほかモバイル機器との連携、ネットワークサービスの活用強化も重点テーマとして定め、事業を展開していく。
会場では「8期連続で赤字のテレビ事業を続けるのはなぜか」という厳しい質問も飛んだが、平井CEOは「テレビはやはり家庭の、そして様々なデバイス/コンテンツの中心にあるもので、いちばん大切な商品だからだ」と説明した。
さらに「2013年度でテレビ事業を黒字化できなかった場合のオプションは考えているのか。また黒字化を目指す場合のテレビ販売台数の規模はどのくらいになるのか」という質問に対しては、「黒字化した場合もしなかった場合も、そのオプションは当然考えている。販売台数や金額的売上がフラットだとしても黒字化できるようなアクションを起こしていく考えだ。販売台数規模としては、テレビの単価が下がっているため、2,000万台よりも台数が増えると見ている。しかしエレクトロニクス事業全体に占めるテレビの割合が現在より著しく変わるとは考えていない」と回答した。
■新規事業創出やイノベーションも加速
メディカル事業では、医療用周辺機器事業で2014年度までに売上高500億円を目指す。イメージセンサーやレンズ、画像処理技術などを活用し、内視鏡など医療機器向けビジネスを拡大する意向。「M&Aなども積極的に行い、メディカル事業をソニーの事業の柱のひとつに育成。将来的には1,000億円の売上を目指す」(平井CEO)。
またイノベーションの加速として、4K技術関連に力を入れることも説明された。現在、ハイエンドコンシューマー向けから業務用まで幅広く展開する4K関連製品はソニーの大きな強みのひとつ。今後製品を順次追加していくという。
■2014年度の売上高8兆5,000億円が目標
これらの施策を行っていくことで、2014年度にグループで売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE 10%を目指す。エレクトロニクス事業単体では、同じく2014年度に売上高6兆円、営業利益率5%が目標となる。
「高収益体質の確立を目指し、重点領域以外については提携や譲渡などの可能性も検討していく」と語る平井CEO。「シナジーが少ない、製品のコモディティ化により成長が見込めない、他社と提携した方が成長/事業再生しやすそうだと判断したものについてはポートフォリオの組み替えもおこなっていく」という。具体的には、化学製品事業を売却。EV向けバッテリーについては他社提携を検討しているとのことだ。
また、販売体制も見直し。全世界で10,000人の人員削減を行うことが発表された。これに伴う工場の閉鎖やラインの見直しについては「まだ発表できることがない」とし、詳細には触れなかった。
■「社員一丸となって徹底的にやり抜く覚悟」
新経営体制のもとでの戦略についてプレゼンテーションした平井CEOは最後に、この発表内容については「現時点のベースライン」であると付け加える。
「これは私の信念でもあるが、戦略・施策は、どれほど周到に事前準備を重ねたとしても、実績が伴って初めて意味があると考えている。これからの試みを評価してもらうためには、私たちがひとつひとつ確実に実績を積み重ねていくしかない。ソニーの復活は、わたし、そして社員ひとりひとりの実行力にかかっている。ソニーの再生、成長への過程では避けて通れない痛みなどもあると思うが、それに臆していてはソニーを変えられない。これからも世界中の人々の好奇心を刺激し、感動を提供する企業で有り続けること、それがソニーのゴール。社員一丸となって徹底的にやり抜く覚悟だ」と強い口調で締めくくった。
以下、発表会で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q. 近年のソニーは、ウォークマンのようなイノベーティブな商品を送り出せて来られなかったが、これは何が原因だと考えているか。また、それを踏まえた上での戦略はどんなものがあるか。
A. イノベーティブな商品、という定義はいろいろあると思うが、ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」などは非常にソニーらしい製品だと評価していただいているし、ミラーレス一眼やプレイステーションシリーズも好評いただいている。
これからの商品については、まず市場のニーズ(特にネットワークを活用した楽しみ方のニーズ)を見極め、それを技術面でどう叶えるかを徹底的に掘り下げていく必要があると考えている。また、商品の魅力をユーザーに効果的に伝えるコミュニケーションやマーケティング能力、セールス、物流パワーなど全てを合わせた総合力でイノベーティブな商品を届けたいと考えている。
Q. これまで良いアイディアがあってもうまく商品に結びつかなかったのは、各事業部間の溝のためだったと言われているが、これは改善されると思うか。また、エレクトロニクス事業の立て直しに注力しすぎるがゆえに、ネットワーク事業での遅れが指摘されているが、この点はどう考えているか。
A. つい先日も、とある部署から200近いアイディアをまとめたものが提出されたが、社内の色々なところにアイディアがあるのだなと感じた。今回の新体制では、事業部間やR&Dのコミュニケーションをスムーズにし、ソニーらしい商品を送り出すためのしくみを強化した。
また、今日はエレクトロニクス事業が喫緊の課題であるということで説明の中心となったが、ネットワーク事業はこれからのソニーのエレクトロニクス事業を大きくしていくうえで非常に重要だと考えている。複数事業を私(平井CEO)が見ていくと経営スピードが遅くなるかも知れないが、担当役員制を設けてそれをカバーしている。
また、テレビ、ネットワーク、SCEについては私が直轄で事業を見ていく部門。スピードの落ちない事業展開をしていきたいと思っている。
Q. 「One Sony」と、ストリンガー氏が提唱した「Sony United」は何が違うのか。
A. 「Sony United」は、これまで部門間、会社間の壁が厚かったので“全社一丸となってやっていこう”という決意の表れ。しかし現在はその壁がだいぶ無くなってきた。「One Sony」は、マネージメントをはじめ様々なものを集中してやっていく、ということを表している。経営スピードなども、マネジメントチームがひとつになり、一度決断が出たらそれを実行に移すというマインドセットと改革が必要であるという姿勢を表現しているものだ。
同氏は冒頭、2011年度の連結業績見通しが5,200億円の赤字見通しとなったことに触れ「CEOとして大変重く受け止めている。それとともに、必ずやソニーを変革し、再生させることをあらためて決意した」とし、「ソニーを変える、ソニーは変わる。必ず変わると信じている」と語気を強め、力強く宣言した。
平井氏はまず、今後の経営について「エレクトロニクス事業再建が最大の課題」と指摘。その上で「エレキ事業の再建に奇策はない。しかしたっぷり時間をかける余裕もない」と述べ、「着実に、しかしスピーディーに変えていく」と語った。
平井氏はさらに、今後の同社の課題について「事業経営のスピード加速」「長期戦略に基づく投資領域の選択と集中」「イノベーティブな商品/サービス、技術開発力」「テレビ事業の8期連続の赤字」の4点を挙げ、業績回復するためにはこれらを解決することが必要とした。
この課題を解決するため、ソニーの強みを発揮することが不可欠とも平井氏は指摘。「グローバルな事業展開とブランド力」「デジタルイメージング/ゲーム領域などの技術開発力」「映画/音楽/ゲームのコンテンツ資産およびノウハウ」「ソニーの新しい価値創造への挑戦意欲/エネルギーというDNA」が同社の強みであり、これらを業績向上に役立てていくという考えを示した。
具体的な事業展開では、今後の重点事業領域をデジタルイメージング、ゲーム、モバイルの3事業に設定。この3事業だけで、2014年度の売上高構成比で70%を占めることを目指し、営業利益については全体の85%を創出することを目指していく。
デジタルイメージングでは、2014年度にデジタルイメージングの売上高1兆5,000億円、営業利益率2桁を目指す。デジカメやビデオカメラなどだけでなく、業務用機器やイメージセンサーなどもこの数字に含まれる。平井氏は、センサーが医療など幅広い販路が見込まれることを強調。またビデオカメラやデジカメについては「大きな成長が難しいが、シェアを維持することで利益率は確保できる」とした。ただしミラーレス一眼については「伸び率が高い」とし、今まで以上に拡大を図っていく旨が説明された。
ゲーム事業については、PS3やPS Vitaに加え、ソフト、ネットサービスなどを含め、2014年度に売上高1兆円、営業利益率8%を目指していく。平井氏は「カジュアルゲームやソーシャルゲームの台頭で事業モデルが変化しているが、こういった環境変化の中でも、ソニーは没入感のあるエンタテインメント体験を提供していく」とした。
平井氏はまた「6年目を迎えたPS3は収穫期にあたる。PS Vita/PSPと合わせて利益を出していく」と述べるとともに、ネットワークサービスの充実も行い、定額課金サービスを強化する姿勢も強調した。
モバイル事業については、2014年度に売上高1兆8,000億円を目指すと宣言。2011年度は6,000億円程度だったことから、約3倍程度に増やす意欲的な計画だ。また2011年度の収益が赤字だったのに対し、2014年度には収益性を大幅に改善させる。
特に注力するのはスマートフォン事業。XperiaシリーズとSony tablet、VAIOなどの連携を進め、高速回線化/クラウド化時代のスマートフォンのハブ化を推し進める考えだという。平井氏は「スマートフォン市場でリーディングポジションとなるために、開発体制の見直しにすでに着手した。従来の半分以下というリードタイムでスピーディーに市場投入する。設計や販売の効率化、効果的人員配置でコスト改善も図る。また、ソニーモバイルコミュニケーションズ(旧ソニー・エリクソン)とソニーの強みを合わせることで、シェアの拡大を図る」とした。
■テレビ事業の再建を加速
平井氏は続いて、テレビ事業の再建について説明。「2013年度の黒字化に向け、収益改善プランを行っているが、今後さらに加速させる。着実に課題を解消し、事業の健全化に努めたい」とした。
事業構造の改革に取り組み、サムスンとのジョイントベンチャーを解消しパネル調達を機動的に行えるようにしたほか、モデル数の削減を行い、2012年度は、2011年度比で40%のモデル数削減を行う。
コストを下げるだけでなく、商品力強化も図り、液晶テレビでは高画質/高音質を追求。また地域ごとのニーズを取り込んだ商品開発を行っていくという。
「テレビ事業の考え方としてはまず、現状の液晶テレビで魅力的なモデルを出していくことに注力する。さらに、他社との協業も視野に入れ、幅広い事業のあり方を考えて行くつもりだ」。
さらに次世代ディスプレイの開発も行い、「他社との協業も視野に入れた有機ELディスプレイの開発を行うほか、『Crystal LED』の開発・商品化も進める」とした。ただし、詳細な商品化時期は未定とのこと。そのほかモバイル機器との連携、ネットワークサービスの活用強化も重点テーマとして定め、事業を展開していく。
会場では「8期連続で赤字のテレビ事業を続けるのはなぜか」という厳しい質問も飛んだが、平井CEOは「テレビはやはり家庭の、そして様々なデバイス/コンテンツの中心にあるもので、いちばん大切な商品だからだ」と説明した。
さらに「2013年度でテレビ事業を黒字化できなかった場合のオプションは考えているのか。また黒字化を目指す場合のテレビ販売台数の規模はどのくらいになるのか」という質問に対しては、「黒字化した場合もしなかった場合も、そのオプションは当然考えている。販売台数や金額的売上がフラットだとしても黒字化できるようなアクションを起こしていく考えだ。販売台数規模としては、テレビの単価が下がっているため、2,000万台よりも台数が増えると見ている。しかしエレクトロニクス事業全体に占めるテレビの割合が現在より著しく変わるとは考えていない」と回答した。
■新規事業創出やイノベーションも加速
メディカル事業では、医療用周辺機器事業で2014年度までに売上高500億円を目指す。イメージセンサーやレンズ、画像処理技術などを活用し、内視鏡など医療機器向けビジネスを拡大する意向。「M&Aなども積極的に行い、メディカル事業をソニーの事業の柱のひとつに育成。将来的には1,000億円の売上を目指す」(平井CEO)。
またイノベーションの加速として、4K技術関連に力を入れることも説明された。現在、ハイエンドコンシューマー向けから業務用まで幅広く展開する4K関連製品はソニーの大きな強みのひとつ。今後製品を順次追加していくという。
■2014年度の売上高8兆5,000億円が目標
これらの施策を行っていくことで、2014年度にグループで売上高8兆5,000億円、営業利益率5%以上、ROE 10%を目指す。エレクトロニクス事業単体では、同じく2014年度に売上高6兆円、営業利益率5%が目標となる。
「高収益体質の確立を目指し、重点領域以外については提携や譲渡などの可能性も検討していく」と語る平井CEO。「シナジーが少ない、製品のコモディティ化により成長が見込めない、他社と提携した方が成長/事業再生しやすそうだと判断したものについてはポートフォリオの組み替えもおこなっていく」という。具体的には、化学製品事業を売却。EV向けバッテリーについては他社提携を検討しているとのことだ。
また、販売体制も見直し。全世界で10,000人の人員削減を行うことが発表された。これに伴う工場の閉鎖やラインの見直しについては「まだ発表できることがない」とし、詳細には触れなかった。
■「社員一丸となって徹底的にやり抜く覚悟」
新経営体制のもとでの戦略についてプレゼンテーションした平井CEOは最後に、この発表内容については「現時点のベースライン」であると付け加える。
「これは私の信念でもあるが、戦略・施策は、どれほど周到に事前準備を重ねたとしても、実績が伴って初めて意味があると考えている。これからの試みを評価してもらうためには、私たちがひとつひとつ確実に実績を積み重ねていくしかない。ソニーの復活は、わたし、そして社員ひとりひとりの実行力にかかっている。ソニーの再生、成長への過程では避けて通れない痛みなどもあると思うが、それに臆していてはソニーを変えられない。これからも世界中の人々の好奇心を刺激し、感動を提供する企業で有り続けること、それがソニーのゴール。社員一丸となって徹底的にやり抜く覚悟だ」と強い口調で締めくくった。
以下、発表会で執り行われた質疑応答の主な内容を掲載する。
Q. 近年のソニーは、ウォークマンのようなイノベーティブな商品を送り出せて来られなかったが、これは何が原因だと考えているか。また、それを踏まえた上での戦略はどんなものがあるか。
A. イノベーティブな商品、という定義はいろいろあると思うが、ヘッドマウントディスプレイ「HMZ-T1」などは非常にソニーらしい製品だと評価していただいているし、ミラーレス一眼やプレイステーションシリーズも好評いただいている。
これからの商品については、まず市場のニーズ(特にネットワークを活用した楽しみ方のニーズ)を見極め、それを技術面でどう叶えるかを徹底的に掘り下げていく必要があると考えている。また、商品の魅力をユーザーに効果的に伝えるコミュニケーションやマーケティング能力、セールス、物流パワーなど全てを合わせた総合力でイノベーティブな商品を届けたいと考えている。
Q. これまで良いアイディアがあってもうまく商品に結びつかなかったのは、各事業部間の溝のためだったと言われているが、これは改善されると思うか。また、エレクトロニクス事業の立て直しに注力しすぎるがゆえに、ネットワーク事業での遅れが指摘されているが、この点はどう考えているか。
A. つい先日も、とある部署から200近いアイディアをまとめたものが提出されたが、社内の色々なところにアイディアがあるのだなと感じた。今回の新体制では、事業部間やR&Dのコミュニケーションをスムーズにし、ソニーらしい商品を送り出すためのしくみを強化した。
また、今日はエレクトロニクス事業が喫緊の課題であるということで説明の中心となったが、ネットワーク事業はこれからのソニーのエレクトロニクス事業を大きくしていくうえで非常に重要だと考えている。複数事業を私(平井CEO)が見ていくと経営スピードが遅くなるかも知れないが、担当役員制を設けてそれをカバーしている。
また、テレビ、ネットワーク、SCEについては私が直轄で事業を見ていく部門。スピードの落ちない事業展開をしていきたいと思っている。
Q. 「One Sony」と、ストリンガー氏が提唱した「Sony United」は何が違うのか。
A. 「Sony United」は、これまで部門間、会社間の壁が厚かったので“全社一丸となってやっていこう”という決意の表れ。しかし現在はその壁がだいぶ無くなってきた。「One Sony」は、マネージメントをはじめ様々なものを集中してやっていく、ということを表している。経営スピードなども、マネジメントチームがひとつになり、一度決断が出たらそれを実行に移すというマインドセットと改革が必要であるという姿勢を表現しているものだ。