「One Sony」で積極事業展開
<IFA>ソニー平井社長に聞く、いま「4K」「ハイレゾ」へ注力する理由
IFA2013開催期間の4日に開催されたプレスカンファレンスで、ソニーはフラグシップスマートフォン「Xperia Z1」を発表した。同社のエレクトロニクスのコア事業であるモバイルとデジタルイメージングのノウハウによる結晶でもある“最強のスマートフォン”は、発表後も大いに注目を集めている。また4Kやハイレゾオーディオを中心としたクオリティ訴求においても、対応する数多くの新製品やサービスをソニーはかたちにしてきた。
5日には日本のジャーナリストを対象としたラウンドテーブルが催され、社長兼CEOの平井一夫氏がIFAで発表された新製品を軸とした事業戦略を説明した。
会の冒頭に挨拶を行った平井氏は、2013年度の経営方針説明会でも語った通り「エレクトロニクスはモバイル・デジタルイメージング・ゲームとネットワークサービスをコアビジネスとして、集中的に強化していく」継続的な考えを示した。またテレビ事業の復活、新興国での成長戦略の推進、ポートフォリオの見直しなど取り組みを括って“One Sony”で推し進めていく考えについて改めて強調した。
平井氏は「IFA2013ではこれらの集中領域であるコアビジネスに関わる、力強い商品を発表できた手応えがある」とコメント。また「“レンズスタイルカメラ”QX100/QX10に象徴される“One Sony”の活動から生まれてきた新しい商品を、いよいよユーザーへご提供できるのは大変喜ばしいこと」としながら、これからもソニーの持てる様々な技術を、事業部の枠組みを超えてつなげて行きながら、魅力的な商品を数多く提供していく考えを述べた。
平井氏への記者会見と質疑応答については、ソニー・ヨーロッパ社長の玉川勝氏も列席するかたちで、日本人記者によるラウンドテーブル形式で実施された。記者からはやはり、“One Sony”を象徴するフラグシップスマートフォン「Xperia Z1」に関する質問が数多く寄せられた。
「Xperia Z1」を軸に商品力を強化
ー 今回「Xperia Z1」をはじめ、ハイエンドオーディオから4K、モバイルまで様々な新商品を発表したが、この時期に様々な商品を固めて発表した意図はどこにあるのか。
平井氏:Xperia Z1や新しいQX100/QX10、4K、ハイレゾ新商品など様々に発表した。これは約1年半前に社長に就任してから、エレクトロニクスの復活に奇策はないと考えた。お客様に感動していただける製品を積極的にマーケットに出して、リスクもとるということを考えて進んできた。やっと面白いねといっていただける商品が新旧領域で出せるタイミングになったので、これを発表していくタイミングが訪れたと言うこと。特にIFAに合わせたわけでなく、これからも様々な機会で発表していく考えだ。
− ヨーロッパ市場を見ると、スマートフォンを含めて様々なカテゴリーで強いブランドがひしめいているが、ソニーとしてどのように対抗していくのか。
平井氏:最も大事なことはソニーの持っている「強み」は何かを考えて、ソニーグループとして事業部の垣根を越えて魅力的な商品を市場に提案していくことだ。昨今は普及価格帯のコンパクトデジタルカメラの市場がスマートフォン市場の成長を受けて鈍化しているが、ソニーの“サイバーショット”のユーザーが他社のスマートフォンに流れていくことは絶対あってはならないと考えている。ソニーファンとしてとどまってもらうために、ソニーの強みを活かしながら差異化を図り、スマートフォンをはじめ様々な商品を提案していくことが大切だ。
ー スマートフォンの市場で闘う体制は整ったが、これからスマートフォン本体のビジネスだけで利益を出していくのは難しいのではないか。周辺機器ビジネスにはどのようにして取り組んでいくのか。
平井氏:スマートフォン自体で生む利益ための仕組みについては、平均販売価格を維持するためにはまずスマートフォンそのものを強い商品にする必要がある。周辺アクセサリーでスマホ体験をより高めて行くためには、これもクリエイティブな商品を展開しなければならない。または「Xperia Z1」を軸に、SNEやPlayStation Mobileのようなネットワークサービスを楽しんでいただくのも一つの方法と考えている。
ー ソニーの技術を「Xperia Z1」に集約してきたが、これからはその成果を各商品カテゴリーに戻していくことが必要になるのでは。
平井氏:デジタルイメージングを例にとって一つの考え方を述べたい。これから普及価格帯のデジタルカメラがスマートフォンと対峙して行くならば、どのようにしてデジタルイメージングの商品や技術を継続していくことができるのかを考えなければならない。サイバーショットのDSC-RX100のように徹底してプレミアム方向に集中していくのも一つの方法だ。またソニーではNFCを中心としたプラットフォームも積極的にアピールしている。今後NFC対応の製品がおよそ100点ほど揃ってくるので、以後はコンテンツの往来を活発化させる手段についても策を講じていく。
ー 「Xperia Z1」の周囲を固めるミドルエンドやローエンドのスマートフォンはどのように展開していくのか。
平井氏:「Xperia Z1」を頂点とした商品展開を計画している。それぞれの地域ごとに特性があり、日本では出さないローエンド製品を地域によっては展開していることもある。全世界でみると、かなり商品は多様化していると思う。
ー Android OS以外のOSに興味はあるか。
平井氏:Mobile World CongressではFirefox OSベースの製品をご紹介したこともある。何が何でもAndroidに固執するつもりはない。
ー 自信作の「Xperia Z1」だが、今期のスマートフォンの世界販売計画は上方修正しないのか。
平井氏:全体の戦略は発表の通り「4,200万台」を目指して様々に活動していく。その中心にあるのがZ1と考えて欲しい。
「モバイル」と他の事業分野の連携は加速していくのか
ー 「Z1」は「One Sony」を体現した商品でもあるが、カメラやディスプレイ以外にXperiaシリーズと連携していく、他のソニーの技術はあるのか。例えばXperiaでハイレゾが聴けるようになることも考えているか。
平井氏:ソニーの商品を展開するなかで、差異化できるポイントはまだまだたくさんあるとみている。Xperiaをさらに魅力的にするために、足して行くべき機能であれば財産は積極的に投入したいと思う。
ー Xperiaを「ゲーム」事業に連動させる考えはないのか。
平井氏:ゲームとの連携については特に奇策はない。一番大事なことはPlayStationの世界と、AndroidベースのPlayStation mobileの世界をどうつなぐかという観点だ。そこがつながるメリットを以下にうまくアピールするかがポイントだと思う。
ー PS4の予約状況についてはどう評価する。
平井氏:今のところは北米・欧州で発売日と値段を発表しているが、100万台ずつプリオーダーが入っている。発売は11月だが、その日に向けて早い段階で予約が集まっていることには力強い手応えを感じている。
ー スマートフォンは北米市場が苦戦しているようだが、対策は講じていくのか。
平井氏:北米市場はかなり大きな市場であり、様々な意味でマーケティングも含めた投資が必要になる。ソニーモバイルのビジネス規模を考えると、現時点で日本、欧州、中国、北米と一度に闘うのは現実的ではない。まずはホームグラウンドの日本で足固めをして、その次に現在2・3位のシェアを持つヨーロッパで成功できたら、その後に北米・中国とプライオリティをつけながら取り組む考えだ。そのうち徹底的に攻め込んでいく時期もあるだろうとみている。
ー マイクロソフトが独自のデバイス開発を活発化させているが、同社によるノキアの携帯電話事業の買収をどうみている。将来どのように闘っていけるのか。
平井氏:今後マイクロソフトがノキアを買収して、どんな戦略を打ち立てていくのか、色々と考えを巡らせる必要がある。今のところはAndroidベースのスマートフォンを手がけているが、今後Windows PhoneベースのOS採用も含めて様々な研究を重ねたい。
4K/ハイレゾへのこれからの取り組みは
ー プレスカンファレンスなどの場で、これまでのソニーとメッセージの発信の仕方が少し変わったように感じている。
平井氏:意図的に変えたわけではない。エレクトロニクスのビジネスで「スター」はあくまで「商品」だ。スターに輝いてもらうためにも、まずは徹底的に商品を作り込むことを私はこだわってきた。様々なショーで、スターである商品が際立ってきれいに見えるよう、展示仕方にも細かな指示を加えてきたつもりだ。店頭に足を運び、コンシューマーとのコミュニケーションも図ってきた。こうした流れの中で、ソニーとして全社的に商品を「スター」にするための取り組みを徹底しているし、それが皆様に伝わったようであれば幸いだ。
ー これからはコンテンツが持つ価値が従来と変わってくるのでは。
平井氏:コンテンツビジネスについては先だって米サード・ポイントからの提案もあったが、これが切っ掛けとなってソニーグループとしてのエンターテインメントビジネスの価値に感心が高まったのは私にとってはプラスと捉えている。ソニーはエレキの会社という先入観が強くあるのだとしたら、当社のエンターテインメントビジネスが注目されてよかったという考え方もできる。ソフトビジネスとのシナジー効果を取りざたされることもあるが、モバイルやクラウドなど、様々なビジネスでソフトの価値が飛躍的に上がりつつあるのを実感している。エレキのビジネスもしかりで、ソニーにとってコンテンツビジネスがあることは大きなメリットだ。
ー “ハイレゾ”には映像と音の両方があるが、今回のソニー製品は特に音が非常にハイレゾになっていることを実感した。今後は音のハイレゾに対してはどのように取り組む考えか。
平井氏:これまでデバイスに乗っていた機能がクラウドへシフトしている。だが、唯一クラウドに持って行けないのが、人間の五感に直接触れるところである、「音が良い」「画がキレイ」「手触りや質感」といった要素だ。ところがこれらはいずれも昔からソニーが得意としてきた分野の価値観だ。五感に直結する“ハイレゾ”については「ソニーがやらなくてどうする」と考えた。4Kやトリルミナスも含む、人間が持つ五感をクラウドの時代だからこそアピールする必要があると感じている。
ー DSD対応のハイレゾ機器も発表されたが、DSDのコンテンツはどのように拡充していくのか。
平井氏:現在SMEグループを含めて、アップコンバートの可能性も含めて様々なディスカッションを重ねているところだ。
ー 4Kコンテンツについて欧州の今後の展開は。
平井氏:アメリカでは4Kメディアプレーヤー「FMP-X1」の提供を開始した。本体に映画10作品をプリインストールして販売しているが、9月1日からはダウンロードもスタートした。今後の評価をみながらアメリカ以外の海外展開も検討したい。スポーツ系コンテンツは重要なカギになるはずだ。
ー IFAのブースにも展示された56V型の4K有機ELテレビや湾曲タイプの液晶テレビについて、今後の商品展開は。
平井氏:有機ELは現在、鋭意開発中だ。曲がる液晶テレビについては、今回のIFAでは参考展示としたが、実は“カサミラ”シリーズとしては中国とロシア、北米で発売してる。新しいコンセプトの商品だが、反響を見ながら展開拡張も考えたい。
ー 「Music Unlimited」は使い勝手が洗練されてきたが、「Video Unlimited」の変化が近年乏しいように思う。
平井氏:ご指摘は確かにそうだと感じている。PlayStation Networkでの動画サービスも含めたかたちで、これからユーザー体験の向上を検証していきたい。
ー 日本国内で4Kが普及するタイミングはいつ頃とみている。開発の中で障害になっているものはあるのか。
平井氏:日本ではいま総務省を中心に4Kへの議論が進んでいるが、試験放送から本放送へ、コンテンツを早期にお届けすることが非常に大きなポイントだと思っている。理想は4K放送がスタートすることだと思う。韓国で4K放送の取り組みが積極化してきて、日本でも総務省が本腰を入れている。4K放送の実現は意外に早く来るのではないかとも考えている。
ウェアラブルやタブレットはどうなる
ー スマートテレビ戦略は日本では出遅れていて、プラットフォームも乱立しているようだ。ソニーとして今後どのように関わっていくのか。
平井氏:スマートテレビの推進については総務省を中心とした取り組みが行われており、ソニーとしても技術中心の分科会にキーパーソンを送り込んでいるし、私も様々な場所で発言している。当社の場合はテレビメーカーとして色々と意見を述べているが、一方ではコンテンツのメーカーとして、様々な提言をしていきたい。
ー ソニーはウェアラブル端末はやらないのか。
平井氏:確かにスマートウォッチはこれから伸びる市場と捉えている。しかし一方で、ウェアラブルデバイスは、人が一度に身につけられる数に限界がある。人間の体という不動産は非常に価値が高いもので、どんな製品をどうやって快適に身につけてもらうかについては深く検証していく必要があるとみている。もちろんチャレンジはするべきだと思う。今は様々な可能性を探っている段階だ。
ー タブレットは今後どのように展開していく。
平井氏:PCとタブレット、スマートフォンの境界線が曖昧になりつつある。タブレットは既存のPCと違う使い方を提案していくことが大事と思う。ソニーの場合はスタミナ性能、スタイリッシュ、他の独自サービスを含めた横展開をアピールしてきた。スマートフォンについては製造設計から生産に至までの様々なノウハウが効いてくるはず。今後製品の境目がなくなってくれば、コンバージェンスが起きると思う。その際に、ソニーが持っている強みが活かせるチャンスを捉えていく。
5日には日本のジャーナリストを対象としたラウンドテーブルが催され、社長兼CEOの平井一夫氏がIFAで発表された新製品を軸とした事業戦略を説明した。
会の冒頭に挨拶を行った平井氏は、2013年度の経営方針説明会でも語った通り「エレクトロニクスはモバイル・デジタルイメージング・ゲームとネットワークサービスをコアビジネスとして、集中的に強化していく」継続的な考えを示した。またテレビ事業の復活、新興国での成長戦略の推進、ポートフォリオの見直しなど取り組みを括って“One Sony”で推し進めていく考えについて改めて強調した。
平井氏は「IFA2013ではこれらの集中領域であるコアビジネスに関わる、力強い商品を発表できた手応えがある」とコメント。また「“レンズスタイルカメラ”QX100/QX10に象徴される“One Sony”の活動から生まれてきた新しい商品を、いよいよユーザーへご提供できるのは大変喜ばしいこと」としながら、これからもソニーの持てる様々な技術を、事業部の枠組みを超えてつなげて行きながら、魅力的な商品を数多く提供していく考えを述べた。
平井氏への記者会見と質疑応答については、ソニー・ヨーロッパ社長の玉川勝氏も列席するかたちで、日本人記者によるラウンドテーブル形式で実施された。記者からはやはり、“One Sony”を象徴するフラグシップスマートフォン「Xperia Z1」に関する質問が数多く寄せられた。
「Xperia Z1」を軸に商品力を強化
ー 今回「Xperia Z1」をはじめ、ハイエンドオーディオから4K、モバイルまで様々な新商品を発表したが、この時期に様々な商品を固めて発表した意図はどこにあるのか。
平井氏:Xperia Z1や新しいQX100/QX10、4K、ハイレゾ新商品など様々に発表した。これは約1年半前に社長に就任してから、エレクトロニクスの復活に奇策はないと考えた。お客様に感動していただける製品を積極的にマーケットに出して、リスクもとるということを考えて進んできた。やっと面白いねといっていただける商品が新旧領域で出せるタイミングになったので、これを発表していくタイミングが訪れたと言うこと。特にIFAに合わせたわけでなく、これからも様々な機会で発表していく考えだ。
− ヨーロッパ市場を見ると、スマートフォンを含めて様々なカテゴリーで強いブランドがひしめいているが、ソニーとしてどのように対抗していくのか。
平井氏:最も大事なことはソニーの持っている「強み」は何かを考えて、ソニーグループとして事業部の垣根を越えて魅力的な商品を市場に提案していくことだ。昨今は普及価格帯のコンパクトデジタルカメラの市場がスマートフォン市場の成長を受けて鈍化しているが、ソニーの“サイバーショット”のユーザーが他社のスマートフォンに流れていくことは絶対あってはならないと考えている。ソニーファンとしてとどまってもらうために、ソニーの強みを活かしながら差異化を図り、スマートフォンをはじめ様々な商品を提案していくことが大切だ。
ー スマートフォンの市場で闘う体制は整ったが、これからスマートフォン本体のビジネスだけで利益を出していくのは難しいのではないか。周辺機器ビジネスにはどのようにして取り組んでいくのか。
平井氏:スマートフォン自体で生む利益ための仕組みについては、平均販売価格を維持するためにはまずスマートフォンそのものを強い商品にする必要がある。周辺アクセサリーでスマホ体験をより高めて行くためには、これもクリエイティブな商品を展開しなければならない。または「Xperia Z1」を軸に、SNEやPlayStation Mobileのようなネットワークサービスを楽しんでいただくのも一つの方法と考えている。
ー ソニーの技術を「Xperia Z1」に集約してきたが、これからはその成果を各商品カテゴリーに戻していくことが必要になるのでは。
平井氏:デジタルイメージングを例にとって一つの考え方を述べたい。これから普及価格帯のデジタルカメラがスマートフォンと対峙して行くならば、どのようにしてデジタルイメージングの商品や技術を継続していくことができるのかを考えなければならない。サイバーショットのDSC-RX100のように徹底してプレミアム方向に集中していくのも一つの方法だ。またソニーではNFCを中心としたプラットフォームも積極的にアピールしている。今後NFC対応の製品がおよそ100点ほど揃ってくるので、以後はコンテンツの往来を活発化させる手段についても策を講じていく。
ー 「Xperia Z1」の周囲を固めるミドルエンドやローエンドのスマートフォンはどのように展開していくのか。
平井氏:「Xperia Z1」を頂点とした商品展開を計画している。それぞれの地域ごとに特性があり、日本では出さないローエンド製品を地域によっては展開していることもある。全世界でみると、かなり商品は多様化していると思う。
ー Android OS以外のOSに興味はあるか。
平井氏:Mobile World CongressではFirefox OSベースの製品をご紹介したこともある。何が何でもAndroidに固執するつもりはない。
ー 自信作の「Xperia Z1」だが、今期のスマートフォンの世界販売計画は上方修正しないのか。
平井氏:全体の戦略は発表の通り「4,200万台」を目指して様々に活動していく。その中心にあるのがZ1と考えて欲しい。
「モバイル」と他の事業分野の連携は加速していくのか
ー 「Z1」は「One Sony」を体現した商品でもあるが、カメラやディスプレイ以外にXperiaシリーズと連携していく、他のソニーの技術はあるのか。例えばXperiaでハイレゾが聴けるようになることも考えているか。
平井氏:ソニーの商品を展開するなかで、差異化できるポイントはまだまだたくさんあるとみている。Xperiaをさらに魅力的にするために、足して行くべき機能であれば財産は積極的に投入したいと思う。
ー Xperiaを「ゲーム」事業に連動させる考えはないのか。
平井氏:ゲームとの連携については特に奇策はない。一番大事なことはPlayStationの世界と、AndroidベースのPlayStation mobileの世界をどうつなぐかという観点だ。そこがつながるメリットを以下にうまくアピールするかがポイントだと思う。
ー PS4の予約状況についてはどう評価する。
平井氏:今のところは北米・欧州で発売日と値段を発表しているが、100万台ずつプリオーダーが入っている。発売は11月だが、その日に向けて早い段階で予約が集まっていることには力強い手応えを感じている。
ー スマートフォンは北米市場が苦戦しているようだが、対策は講じていくのか。
平井氏:北米市場はかなり大きな市場であり、様々な意味でマーケティングも含めた投資が必要になる。ソニーモバイルのビジネス規模を考えると、現時点で日本、欧州、中国、北米と一度に闘うのは現実的ではない。まずはホームグラウンドの日本で足固めをして、その次に現在2・3位のシェアを持つヨーロッパで成功できたら、その後に北米・中国とプライオリティをつけながら取り組む考えだ。そのうち徹底的に攻め込んでいく時期もあるだろうとみている。
ー マイクロソフトが独自のデバイス開発を活発化させているが、同社によるノキアの携帯電話事業の買収をどうみている。将来どのように闘っていけるのか。
平井氏:今後マイクロソフトがノキアを買収して、どんな戦略を打ち立てていくのか、色々と考えを巡らせる必要がある。今のところはAndroidベースのスマートフォンを手がけているが、今後Windows PhoneベースのOS採用も含めて様々な研究を重ねたい。
4K/ハイレゾへのこれからの取り組みは
ー プレスカンファレンスなどの場で、これまでのソニーとメッセージの発信の仕方が少し変わったように感じている。
平井氏:意図的に変えたわけではない。エレクトロニクスのビジネスで「スター」はあくまで「商品」だ。スターに輝いてもらうためにも、まずは徹底的に商品を作り込むことを私はこだわってきた。様々なショーで、スターである商品が際立ってきれいに見えるよう、展示仕方にも細かな指示を加えてきたつもりだ。店頭に足を運び、コンシューマーとのコミュニケーションも図ってきた。こうした流れの中で、ソニーとして全社的に商品を「スター」にするための取り組みを徹底しているし、それが皆様に伝わったようであれば幸いだ。
ー これからはコンテンツが持つ価値が従来と変わってくるのでは。
平井氏:コンテンツビジネスについては先だって米サード・ポイントからの提案もあったが、これが切っ掛けとなってソニーグループとしてのエンターテインメントビジネスの価値に感心が高まったのは私にとってはプラスと捉えている。ソニーはエレキの会社という先入観が強くあるのだとしたら、当社のエンターテインメントビジネスが注目されてよかったという考え方もできる。ソフトビジネスとのシナジー効果を取りざたされることもあるが、モバイルやクラウドなど、様々なビジネスでソフトの価値が飛躍的に上がりつつあるのを実感している。エレキのビジネスもしかりで、ソニーにとってコンテンツビジネスがあることは大きなメリットだ。
ー “ハイレゾ”には映像と音の両方があるが、今回のソニー製品は特に音が非常にハイレゾになっていることを実感した。今後は音のハイレゾに対してはどのように取り組む考えか。
平井氏:これまでデバイスに乗っていた機能がクラウドへシフトしている。だが、唯一クラウドに持って行けないのが、人間の五感に直接触れるところである、「音が良い」「画がキレイ」「手触りや質感」といった要素だ。ところがこれらはいずれも昔からソニーが得意としてきた分野の価値観だ。五感に直結する“ハイレゾ”については「ソニーがやらなくてどうする」と考えた。4Kやトリルミナスも含む、人間が持つ五感をクラウドの時代だからこそアピールする必要があると感じている。
ー DSD対応のハイレゾ機器も発表されたが、DSDのコンテンツはどのように拡充していくのか。
平井氏:現在SMEグループを含めて、アップコンバートの可能性も含めて様々なディスカッションを重ねているところだ。
ー 4Kコンテンツについて欧州の今後の展開は。
平井氏:アメリカでは4Kメディアプレーヤー「FMP-X1」の提供を開始した。本体に映画10作品をプリインストールして販売しているが、9月1日からはダウンロードもスタートした。今後の評価をみながらアメリカ以外の海外展開も検討したい。スポーツ系コンテンツは重要なカギになるはずだ。
ー IFAのブースにも展示された56V型の4K有機ELテレビや湾曲タイプの液晶テレビについて、今後の商品展開は。
平井氏:有機ELは現在、鋭意開発中だ。曲がる液晶テレビについては、今回のIFAでは参考展示としたが、実は“カサミラ”シリーズとしては中国とロシア、北米で発売してる。新しいコンセプトの商品だが、反響を見ながら展開拡張も考えたい。
ー 「Music Unlimited」は使い勝手が洗練されてきたが、「Video Unlimited」の変化が近年乏しいように思う。
平井氏:ご指摘は確かにそうだと感じている。PlayStation Networkでの動画サービスも含めたかたちで、これからユーザー体験の向上を検証していきたい。
ー 日本国内で4Kが普及するタイミングはいつ頃とみている。開発の中で障害になっているものはあるのか。
平井氏:日本ではいま総務省を中心に4Kへの議論が進んでいるが、試験放送から本放送へ、コンテンツを早期にお届けすることが非常に大きなポイントだと思っている。理想は4K放送がスタートすることだと思う。韓国で4K放送の取り組みが積極化してきて、日本でも総務省が本腰を入れている。4K放送の実現は意外に早く来るのではないかとも考えている。
ウェアラブルやタブレットはどうなる
ー スマートテレビ戦略は日本では出遅れていて、プラットフォームも乱立しているようだ。ソニーとして今後どのように関わっていくのか。
平井氏:スマートテレビの推進については総務省を中心とした取り組みが行われており、ソニーとしても技術中心の分科会にキーパーソンを送り込んでいるし、私も様々な場所で発言している。当社の場合はテレビメーカーとして色々と意見を述べているが、一方ではコンテンツのメーカーとして、様々な提言をしていきたい。
ー ソニーはウェアラブル端末はやらないのか。
平井氏:確かにスマートウォッチはこれから伸びる市場と捉えている。しかし一方で、ウェアラブルデバイスは、人が一度に身につけられる数に限界がある。人間の体という不動産は非常に価値が高いもので、どんな製品をどうやって快適に身につけてもらうかについては深く検証していく必要があるとみている。もちろんチャレンジはするべきだと思う。今は様々な可能性を探っている段階だ。
ー タブレットは今後どのように展開していく。
平井氏:PCとタブレット、スマートフォンの境界線が曖昧になりつつある。タブレットは既存のPCと違う使い方を提案していくことが大事と思う。ソニーの場合はスタミナ性能、スタイリッシュ、他の独自サービスを含めた横展開をアピールしてきた。スマートフォンについては製造設計から生産に至までの様々なノウハウが効いてくるはず。今後製品の境目がなくなってくれば、コンバージェンスが起きると思う。その際に、ソニーが持っている強みが活かせるチャンスを捉えていく。