6月に方策案を公表へ
4K/8K放送普及へメーカーや放送局が提言 − 総務省が「フォローアップ会合」開催
総務省は、4K・8K放送について放送事業者や機器メーカーなど関係各社が協議する「4K・8Kロードマップに関するフォローアップ会合」を開催した。
■放送局やAVメーカーなどが4K・8K推進のために集結
2013年6月に「放送サービスの高度化に関する検討会」において策定された、4K・8K放送の推進に関するロードマップのさらなる具体化と加速化、また課題解決のための具体的な方策を検討するための会合。座長には「放送サービスの高度化に関する検討会」の座長も務めた東京理科大学の伊東晋教授が選出された。
本会では「ロードマップに沿った取り組みの進捗状況の把握」「ロードマップ上の各目標年の取り組みの具体化と加速化」「ロードマップに示された目標実現に対する課題の把握、課題解決のための具体的方策」などを検討。日本テレビをはじめとする民放キー局やNHK、スカパーJSATなどの放送事業者、ソニーやパナソニック、シャープ、東芝といった機器メーカー、民放連や日本ケーブルテレビ連盟など、4K・8K放送に関係する各社・各団体が参加している。
なお、今後は本会合の下にワーキンググループを設置。4K・8K放送実現のための具体的な方策をとりまとめるために議論を進め、6月にその方策案を公表する予定だ。
■4K・8K放送推進の現状 − 4Kテレビ需要は2018年に約6,733万台へ
会合ではまず、事務局が4K・8K放送推進の現状を説明。2014年に、124/128度CSおよびケーブルテレビにおいて4K・スマートテレビを一体として放送開始し、2016年には110度CSへ4K放送を拡大するほか8K放送も開始、2020年にはBSにも放送を拡大するという、既に示されているロードマップを振り返った。
4K・8K放送を取り巻く状況については、日本国内のテレビ受信機市場が'13年に累計出荷台数538万台(2002年の約6割)と依然として厳しい状況にある一方で、大型化や4K対応テレビの販売好調による平均単価の上昇など、回復の材料も見えつつあると述べた。
4Kテレビについても、グローバル市場では2013年に約98万台という需要で、2018年には約6,733万台と急速に普及が進み、国内市場でも2013年実績の約27万台に対し、2018年には518万台まで伸びるというJEITAの予測を紹介した。
また、テレビやプロジェクター、ビデオカメラやタブレットなどで4K対応モデルがすでに発売されていることや、スマートフォンでも4K映像撮影対応モデルが海外メーカー3社(中国1社、韓国2社)から販売中で、国内メーカーもソニーが3月に発売予定であることなども紹介。各国で4K対応ディスプレイの市場が立ち上がっていることや、映画やゲームなどでも4K化が進展していることなど、4Kが普及しつつあることに改めて言及した。
こうした状況において、日本ではスカパー! JSATがJリーグの試合を4Kでライブ伝送してのパブリックビューイングを実施したり、NHK技研でも2014年1月に地上波での8K映像の長距離伝送実験を実施するなど、衛星回線やケーブル綱などにおける伝送実験の取り組みを行ってきた。
なお海外の状況については、韓国で4Kの地上波本放送開始時期を当初予定の2016年から2015年12月に前倒す計画を発表したとの報道があったこと、アメリカでもNetflixが4Kストリーミング配信を2014年内に開始することをCESで発表したことなど、各国で取り組みが進捗していると紹介した。
■4K・8Kに関する技術動向
なお4K・8Kに関する技術動向では、すでに当サイトでも紹介しているように、ITU-T・ISO/IECにおいてHEVCの標準化が進められ、2013年4月にITU-Tにおいて勧告。ISO/IECでもMPEG-H(Part2)HEVCとして国際標準化されている。
また、音声も最大22.2ch対応とすることが国際標準化済み。そのほか新たな多重化方式(MMT)も2013年11月に最終国際規格案が承認されているほか、現行のMPEG-2 TS方式についても、HEVCに対応するための最終追補案が2013年9月に承認されている。
そして、総務省 情報通信審議会の放送システム委員会では、BS/110度CSの広帯域伝送での4K/8K対応のため、新たな伝送路符号化方式を採用することで伝送容量をBSで現行の最大約52Mbpsから約100Mbpsへと拡大させる案を提示済み。新たな変調方式として16APKS(16-ary Amplitude and Phase Shift Keying)を採用することで、1トラポンで8Kを1ch、または4Kを3ch伝送することが可能になる。
また、124/128度CSでの狭帯域伝送においては、映像フォーマットを4Kまでに設定。現行の8PSKで最大約45Mbpsの伝送容量があり、1トラポンで4Kを1ch伝送することができるとしている。
■AVメーカー各社が4K推進へ提言
本日の会合では参加各社・各団体が自らの4K・8Kへの取り組みの現状を報告。今後の課題などにも言及した。
機器メーカー側からは「ロードマップのおかげで社内でも活発な議論ができるようになった。今後は8Kのフルスペックのパネル開発を早急にやらなければならないと思っている」(シャープ 関口氏)とロードマップ策定を歓迎する声が挙がったほか、「メーカーとしては4K関連の事業が立ち上がり始めたかなと感じている」(パナソニック 岡氏)など、4K関連がビジネスとしても軌道にのりつつあるとの発言もあった。
また、ソニーの島田氏は「スマートフォンでの4K撮影が早い時期に普及していくとみているし、エンコーダの技術開発も進んでいると聞いている。この会合で取り組みを加速していきたい」とコメント。
一方で東芝の安木氏は「テレビの数が増えないとコンテンツも出しにくい。コンテンツが増えれば受信機も増えるだろう。テレビ受信機の数とコンテンツのバランスが重要と考えている」とコメント。「一般ユーザーが4Kを素晴らしいと思ってもらえるようなモノが必要だろう。『試験放送』から『本放送』という名前に変わってこないと難しいのでは」とも述べたほか、「諸外国の動きが非常に速いのは懸念。日本で早く起ち上げて、世界に技術的なリードをいただけるようにもしてもらえればと思う」と提言した。
■放送局側からも4K撮影の課題が続出
放送局側からは、2013年2月に開催された「放送サービスの高度化に関する検討会」において「ユーザーの本当のニーズに応えながら、スケジュールを前倒ししようというのは、奇跡を起こそうということと同じ」だと発言した日本テレビの石澤氏(関連ニュース)が、「あれから1年余りだが、確実に進んでいるなと実感している」とコメント。「しかし事業性の面で考えると、奇跡的な努力とブレークスルーが必要なのではないか。放送局としては24時間4Kを作り続けないといけないが、今の状況はほど遠い。また、作ったものをどう回収していくのかも不透明だ」と、課題も口にした。
こうした課題については、「バレリーナの靴下の穴の破れまで見えるくらい高精細だ」と4Kの画質を評価するTBSの井川氏も「どれくらいのチャンネルプランができあがり、どう我々が関わっていくのかが見えないので、そこをどうとりまとめていくかだ」とコメント。
また、テレビ東京の松下氏は「ロードマップ成功のためには、視聴者が見たいと思われなければいけない。趣向が多様化しているので、『こういう番組が4K8Kに合う』とテレビ局が決めてしまうのでなく、今作っている番組を同じように4Kで制作できないか」とコメント。「我々はかなり早い段階で4Kカメラを購入して番組を制作しているが、撮影後に結果的にフォーカスが甘かったことが判明するなど、4Kで本当に美しい映像をとるのは難しい面もある」としたほか、「4Kビューワー、カメラやモニターのUIなどシステマチックなものもない。かなり力づくで作っている状況だ。多種多様な番組を量産化するのはかなりハードルが高い現状」だと述べた。
こうした映像制作の難しさについては、テレビ朝日の川口氏も「4Kは没入感もあるが、酔っぱらうような部分もある。どのようなサイズで、どのように画作りをしたらよいのか研究している。また、編集にも時間がかかる」と指摘。フジテレビの山口氏も「ピントが合いにくい、コストがかかるなど難しい点もいくつか検証できた」とコメント。「現状では費用も持ち出しであったり、非常に手間のかかる部分を、制作陣のやる気で補っている現状。ビジネスのためにはブレークスルーが必要というのは同感で、国には機材整備や制作予算的な支援などをお願いしたい」と、4Kコンテンツ充実のための課題に言及した。
ただ、4K映像のクオリティそのものについては「表現力の高さは現場の人間も非常に高く評価し、喜んで制作した。それをみた関係者もキレイだと評価した」(フジテレビ山口氏)といったように、各社とも高く評価。山口氏はまた「編成制作局としても来年度の予算に4Kの枠を設けた。来年度は、大幅に制作本数を上げていかねばならないと思っている」とし、「継続的に4Kコンテンツを作っていくのであれば、地上波の2Kの番組制作を4Kでやって、ダウンコンバートして放送していくというのでないと継続性が確保できない。多岐に渡る番組を作ることになるかと思うが、やる気のある作り手に予算を渡してやっていきたい」と意欲を見せた。
そして会合の最後に座長の伊東教授は「世界に先駆けて先頭を走らなければというのがある一方で、またガラパゴスになっても困る。これは矛盾しているが、先を読んで進めていかなければならない」とあいさつ。「これから技術基準の策定も含めて進めていきたい」と述べた。
■放送局やAVメーカーなどが4K・8K推進のために集結
2013年6月に「放送サービスの高度化に関する検討会」において策定された、4K・8K放送の推進に関するロードマップのさらなる具体化と加速化、また課題解決のための具体的な方策を検討するための会合。座長には「放送サービスの高度化に関する検討会」の座長も務めた東京理科大学の伊東晋教授が選出された。
本会では「ロードマップに沿った取り組みの進捗状況の把握」「ロードマップ上の各目標年の取り組みの具体化と加速化」「ロードマップに示された目標実現に対する課題の把握、課題解決のための具体的方策」などを検討。日本テレビをはじめとする民放キー局やNHK、スカパーJSATなどの放送事業者、ソニーやパナソニック、シャープ、東芝といった機器メーカー、民放連や日本ケーブルテレビ連盟など、4K・8K放送に関係する各社・各団体が参加している。
なお、今後は本会合の下にワーキンググループを設置。4K・8K放送実現のための具体的な方策をとりまとめるために議論を進め、6月にその方策案を公表する予定だ。
■4K・8K放送推進の現状 − 4Kテレビ需要は2018年に約6,733万台へ
会合ではまず、事務局が4K・8K放送推進の現状を説明。2014年に、124/128度CSおよびケーブルテレビにおいて4K・スマートテレビを一体として放送開始し、2016年には110度CSへ4K放送を拡大するほか8K放送も開始、2020年にはBSにも放送を拡大するという、既に示されているロードマップを振り返った。
4K・8K放送を取り巻く状況については、日本国内のテレビ受信機市場が'13年に累計出荷台数538万台(2002年の約6割)と依然として厳しい状況にある一方で、大型化や4K対応テレビの販売好調による平均単価の上昇など、回復の材料も見えつつあると述べた。
4Kテレビについても、グローバル市場では2013年に約98万台という需要で、2018年には約6,733万台と急速に普及が進み、国内市場でも2013年実績の約27万台に対し、2018年には518万台まで伸びるというJEITAの予測を紹介した。
また、テレビやプロジェクター、ビデオカメラやタブレットなどで4K対応モデルがすでに発売されていることや、スマートフォンでも4K映像撮影対応モデルが海外メーカー3社(中国1社、韓国2社)から販売中で、国内メーカーもソニーが3月に発売予定であることなども紹介。各国で4K対応ディスプレイの市場が立ち上がっていることや、映画やゲームなどでも4K化が進展していることなど、4Kが普及しつつあることに改めて言及した。
こうした状況において、日本ではスカパー! JSATがJリーグの試合を4Kでライブ伝送してのパブリックビューイングを実施したり、NHK技研でも2014年1月に地上波での8K映像の長距離伝送実験を実施するなど、衛星回線やケーブル綱などにおける伝送実験の取り組みを行ってきた。
なお海外の状況については、韓国で4Kの地上波本放送開始時期を当初予定の2016年から2015年12月に前倒す計画を発表したとの報道があったこと、アメリカでもNetflixが4Kストリーミング配信を2014年内に開始することをCESで発表したことなど、各国で取り組みが進捗していると紹介した。
■4K・8Kに関する技術動向
なお4K・8Kに関する技術動向では、すでに当サイトでも紹介しているように、ITU-T・ISO/IECにおいてHEVCの標準化が進められ、2013年4月にITU-Tにおいて勧告。ISO/IECでもMPEG-H(Part2)HEVCとして国際標準化されている。
また、音声も最大22.2ch対応とすることが国際標準化済み。そのほか新たな多重化方式(MMT)も2013年11月に最終国際規格案が承認されているほか、現行のMPEG-2 TS方式についても、HEVCに対応するための最終追補案が2013年9月に承認されている。
そして、総務省 情報通信審議会の放送システム委員会では、BS/110度CSの広帯域伝送での4K/8K対応のため、新たな伝送路符号化方式を採用することで伝送容量をBSで現行の最大約52Mbpsから約100Mbpsへと拡大させる案を提示済み。新たな変調方式として16APKS(16-ary Amplitude and Phase Shift Keying)を採用することで、1トラポンで8Kを1ch、または4Kを3ch伝送することが可能になる。
また、124/128度CSでの狭帯域伝送においては、映像フォーマットを4Kまでに設定。現行の8PSKで最大約45Mbpsの伝送容量があり、1トラポンで4Kを1ch伝送することができるとしている。
■AVメーカー各社が4K推進へ提言
本日の会合では参加各社・各団体が自らの4K・8Kへの取り組みの現状を報告。今後の課題などにも言及した。
機器メーカー側からは「ロードマップのおかげで社内でも活発な議論ができるようになった。今後は8Kのフルスペックのパネル開発を早急にやらなければならないと思っている」(シャープ 関口氏)とロードマップ策定を歓迎する声が挙がったほか、「メーカーとしては4K関連の事業が立ち上がり始めたかなと感じている」(パナソニック 岡氏)など、4K関連がビジネスとしても軌道にのりつつあるとの発言もあった。
また、ソニーの島田氏は「スマートフォンでの4K撮影が早い時期に普及していくとみているし、エンコーダの技術開発も進んでいると聞いている。この会合で取り組みを加速していきたい」とコメント。
一方で東芝の安木氏は「テレビの数が増えないとコンテンツも出しにくい。コンテンツが増えれば受信機も増えるだろう。テレビ受信機の数とコンテンツのバランスが重要と考えている」とコメント。「一般ユーザーが4Kを素晴らしいと思ってもらえるようなモノが必要だろう。『試験放送』から『本放送』という名前に変わってこないと難しいのでは」とも述べたほか、「諸外国の動きが非常に速いのは懸念。日本で早く起ち上げて、世界に技術的なリードをいただけるようにもしてもらえればと思う」と提言した。
■放送局側からも4K撮影の課題が続出
放送局側からは、2013年2月に開催された「放送サービスの高度化に関する検討会」において「ユーザーの本当のニーズに応えながら、スケジュールを前倒ししようというのは、奇跡を起こそうということと同じ」だと発言した日本テレビの石澤氏(関連ニュース)が、「あれから1年余りだが、確実に進んでいるなと実感している」とコメント。「しかし事業性の面で考えると、奇跡的な努力とブレークスルーが必要なのではないか。放送局としては24時間4Kを作り続けないといけないが、今の状況はほど遠い。また、作ったものをどう回収していくのかも不透明だ」と、課題も口にした。
こうした課題については、「バレリーナの靴下の穴の破れまで見えるくらい高精細だ」と4Kの画質を評価するTBSの井川氏も「どれくらいのチャンネルプランができあがり、どう我々が関わっていくのかが見えないので、そこをどうとりまとめていくかだ」とコメント。
また、テレビ東京の松下氏は「ロードマップ成功のためには、視聴者が見たいと思われなければいけない。趣向が多様化しているので、『こういう番組が4K8Kに合う』とテレビ局が決めてしまうのでなく、今作っている番組を同じように4Kで制作できないか」とコメント。「我々はかなり早い段階で4Kカメラを購入して番組を制作しているが、撮影後に結果的にフォーカスが甘かったことが判明するなど、4Kで本当に美しい映像をとるのは難しい面もある」としたほか、「4Kビューワー、カメラやモニターのUIなどシステマチックなものもない。かなり力づくで作っている状況だ。多種多様な番組を量産化するのはかなりハードルが高い現状」だと述べた。
こうした映像制作の難しさについては、テレビ朝日の川口氏も「4Kは没入感もあるが、酔っぱらうような部分もある。どのようなサイズで、どのように画作りをしたらよいのか研究している。また、編集にも時間がかかる」と指摘。フジテレビの山口氏も「ピントが合いにくい、コストがかかるなど難しい点もいくつか検証できた」とコメント。「現状では費用も持ち出しであったり、非常に手間のかかる部分を、制作陣のやる気で補っている現状。ビジネスのためにはブレークスルーが必要というのは同感で、国には機材整備や制作予算的な支援などをお願いしたい」と、4Kコンテンツ充実のための課題に言及した。
ただ、4K映像のクオリティそのものについては「表現力の高さは現場の人間も非常に高く評価し、喜んで制作した。それをみた関係者もキレイだと評価した」(フジテレビ山口氏)といったように、各社とも高く評価。山口氏はまた「編成制作局としても来年度の予算に4Kの枠を設けた。来年度は、大幅に制作本数を上げていかねばならないと思っている」とし、「継続的に4Kコンテンツを作っていくのであれば、地上波の2Kの番組制作を4Kでやって、ダウンコンバートして放送していくというのでないと継続性が確保できない。多岐に渡る番組を作ることになるかと思うが、やる気のある作り手に予算を渡してやっていきたい」と意欲を見せた。
そして会合の最後に座長の伊東教授は「世界に先駆けて先頭を走らなければというのがある一方で、またガラパゴスになっても困る。これは矛盾しているが、先を読んで進めていかなければならない」とあいさつ。「これから技術基準の策定も含めて進めていきたい」と述べた。