HOME > ニュース > パロット「Zik 2.0」開発者インタビュー − 超多機能“全部入り”ヘッドホンがさらに進化

NC機能や音質、機能などが充実

パロット「Zik 2.0」開発者インタビュー − 超多機能“全部入り”ヘッドホンがさらに進化

公開日 2014/11/17 19:14 山本敦
  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE
フランスの「Parrot(パロット)」からBluetooth対応のワイヤレスヘッドホン「Zik 2.0」が発売される。タッチ操作対応やノイズキャンセル機能搭載による多機能ヘッドホンとして注目を集める「Zik」の後継モデルが今回どんな進化を遂げたのか、パロットのクリス・ロバーツ氏にインタビューした。

パロット オーストラリア・ニュージーランド(株)日本・環太平洋 専務取締役 クリス・ロバーツ氏

パロットといえばヘッドホン「Zik」のほか、スマートフォンやタブレットで操作できるマルチコプター「Bebop Drone」や二輪ホイール搭載「Jumping Sumo」など、ドローン製品でも注目を集めている。設立は今から約20年前で、バックグラウンドにはDSPや音声認識の先進技術の蓄積がある。それぞれの技術は「Zik 2.0」とも密接につながっている。

最新モデルの「Zik 2.0」

ノイキャン機能がフルデジタル対応になり音質がグレードアップ

「Zik」シリーズの魅力は“全部入り”のヘッドホンであるところだとロバーツ氏は語る。「2012年に初代のZikを、著名プロダクトデザイナーのフィリップ・スタルク氏とのコラボレーションにより発売しました。画期的なデザインだけでなく、イヤーカップに搭載したタッチパッド・コントローラーやアクティブNC機能、モバイルアプリによるカスタマイズ性などが評価され、世界各国で成功を収めました。スマホやタブレットで音楽を聴く方から、デジモノ好きのアーリーアダプター、デザインコンシャスなプロダクトを好む方まで、本当に幅広いユーザーに使っていただいています。その成功をベースに今回、Zikは“2.0”へと進化しました」。

本体はフォールド機構を採用

右のイヤーカップ外側がタッチパッドになっている

まず気になるのは、音質面がどれほど強化されたかというところ。初代Zikと同じ40mm口径のネオジウムドライバーをベースに、新たにアナログ方式からフルデジタル方式になったノイズキャンセリング機能が搭載された。その特徴をロバーツ氏は次のように説明する。「新搭載の“Adaptive Noise Cancelling”の技術は特許も取得済みのものです。本体に搭載する8基のマイクのうち6基をノイズキャンセリング用に使っています。従来のアナログNCの場合は、機能をONにしてヘッドホンを装着すると完全に外界の音が遮断されてしまいましたが、新しいZikでは周辺環境に合わせてNC効果のレベルを調節できます」。

本体左右のハウジングに3基ずつのマイクが搭載されている。NC効果の調整はBluetoothでペアリングしたスマホ・タブレットにインストールした専用アプリ「Parrot Zik 2.0」から行える。例えば電車や地下鉄など、周囲の騒音レベルが高い場所で音楽を聴く際にはNC効果を高め、オフィスでZik 2.0を使って音楽を聴きながら仕事をしたいときには、同社の特許技術“ストリートモード”を活用する。“ストリートモード”に切り替わると、NCを効かせながら周辺の音もヘッドホンから聞くことができる。原理としてはヘッドホンに搭載されている6つのマイクで周囲の音を拾って、ヘッドホンのスピーカーから音楽とともに出力するというものだが、集音レベルをアプリで自在に調節できるのが特徴だ。

Zik 2.0はスマホをペアリングしてハンズフリー通話にも使えるヘッドセットの機能も備えているが、ストリートモードはハンズフリー通話の際にも効果を発揮するとロバーツ氏は語る。「従来のヘッドセットでハンズフリーコールをすると、自分の声が聞こえづらくなって大声で話さざるを得ませんでした。Zik 2.0では電話を受けると自動的にストリートモードに切り替わり、自分の声もマイクで拾いながら快適なハンズフリー通話ができます」。

本体正面に向かってイヤーカップにマイクユニットを搭載

ハンズフリーの通話機能について、「エンジニアの観点からすれば、ヘッドホンで高品質なハンズフリー機能を搭載することは技術的にとても困難です。にもかかわらず、パロットでは色々な技術を駆使して高品位なハンズフリー通話を実現しています」とロバート氏。その一つは先述のストリートモードになるのだが、もう一つの特徴が左側のハウジングに内蔵されている骨伝導センサーだ。ユーザーの顎の骨の動き(振動)を検知しながら、例えば風の強く吹く環境でもクリアな音声を通話相手に届けられる。8つの内蔵マイクのうち、NC用の6つを引いて残る2つのマイクと併用することで、特に通話の低周波数帯域が聞こえやすくなるという。

ほかにもハンズフリー通話に便利なのがSiri/Google Voiceなどスマホに内蔵されている音声認識エンジンとの連携機能だ。スマホの電話帳に登録されている友人の名前を発声すれば、自動でダイヤルができる。電話帳に登録されている相手であれば、着信した際にその名前が読み上げられ、コールに応答するか、拒否するかも訊ねられる。読み上げの言語は日本語もサポートする。ロバート氏は「これらトータルの技術でハンズフリー通話の使い勝手を高めています」とその完成度に自信をみせる。

本体のハンドリング性能やバッテリーライフも強化

本体のデザインや使い勝手についても、初代機から変更された点が少なくない。「本体の質量は17%ほど軽くなっています。270gという軽量設計は、同クラスのBluetoothワイヤレスヘッドホンと比べてもかなり魅力的だと思います。ヘッドバンドは少しワイドになって、パッドも厚くしていますので装着時の快適性もさらに洗練されました。楕円形のイヤーカップも縦寸法を若干長めにして、様々なユーザーの耳のサイズに余裕をもってフィットするように設計されています。こちらもクッションを厚くしています」(ロバーツ氏)。

曲線を活かしたヒンジのデザイン。接続部分にはブランドのテーマカラーであるオレンジをワンポイントとして配置した

初代Zik(左側)との比較。緩やかな曲線を活かしたデザインになっている

本体に搭載されるボタンは電源のみ。スタルク氏らしいミニマルデザインが踏襲された。右側イヤーカップの表側がタッチパッドになっており、音楽の再生コントロールから音声認識のアクティベートなど通話機能もヘッドホンを装着したまま行える。イヤーパッドは厚くしながら、内部の構造を見直したことで、初代Zikよりもヘッドホン本体を薄型化することに成功している。レザーライクな本体外装素材もより柔らかなものに変更され、フォルムもエッジを緩やかにカーブさせた優しい佇まいとした。

イヤーカップの厚みが薄くなっているのがわかるだろうか。左側が新しいZik 2.0

本体色についても、初代Zikの全2色から大きくカラーバリエーションが広がり、ホワイト/ブルー/イエロー/モカ/オレンジ/ブラックの6色で展開する。「原色系のカラバリも、ビジネスウェアやシックなドレスアップにも自然にマッチするような色彩を選んでいるのが特徴です」と語るロバーツ氏。この日はスーツ姿でインタビューに答えてくれたが、オレンジやイエローなど派手めに感じられるカラバリモデルを違和感なく着こなしてみせた。

6色のカラフルなバリエーションが揃った

オレンジのカラバリモデル

イエローのカラバリモデル

本機の使い勝手を高める機能に「プレゼンスセンサー」がある。「右ヘッドホンに取り付けたセンサーによって、ヘッドホンを頭に装着すると自動的に音楽が再生されます。外して首にかけると音楽は一時停止します。機能はアプリからON/OFFが選べます」(ロバーツ氏)。

他にもUSB給電や、3.5mmのヘッドホン入力によるワイヤードリスニングへの対応など、ポータブルユースのバックアップ機能も万全の構えだ。モバイル端末とのペアリングは、相手が対応する機器であれば、Zik 2.0もNFCによるワンタッチペアリングに対応。Bluetoothの高音質オーディオコーデックはAACをサポート。aptXは非対応となる。

後ろ側に電源ボタン。その側には3.5mmイヤホンプラグとmicroUSB端子を備える

付属のポーチとUSB、イヤホンケーブル

バッテリー寿命も強化されている。「新しいZik 2.0には3つのリスニングモードがあります。“フライト”ではNC機能を有効にしながら、ケーブル接続で約18時間の連続リスニングが可能です。“エコ”はNC機能と立体音響が有効な状態で、ワイヤードで約7時間、“ノーマル”はワイヤレスで約6時間の連続リスニングを楽しんでいただけます」というロバーツ氏。バッテリーパックは800mAhから830mAに大容量化されているが、さらなる長時間駆動を実現するため、パロットのソフトウェア・エンジニアリングによるチューニングが各所に施されているという。左側イヤーカップの外蓋を外して、バッテリーが簡単に交換できるようになっているのも便利だ。

左のイヤーカップの蓋は簡単に外れる。中にはNFCのタッチポイントとバッテリーが格納されている

バッテリーパックのサイズ比較。右側の2.0のものは薄くなった上に少し容量がアップしている

専用アプリによるカスタマイズも楽しめる

パロットの独自開発によるモバイルアプリ「Parrot Zik 2.0」により、NC機能をはじめオーディオ周りのチューニングを行って、ユーザーの好みに追い込んだ設定を保存しておくこともできる。アプリはiOS/Android対応が済んでおり、近くWindows版もリリースされる予定だ。

「パロットでは製品本体と同じぐらいアプリの開発を重要視しています」と語るロバーツ氏。アプリそのものが製品全体のユーザーインターフェースを構成する大切な要素だから、とその理由を説明する。アプリ開発のビジョンとして、指一本でスワイプしながら使えるシンプルさと、アプリ経由でソーシャルにつながって、Zik 2.0で聴く音楽体験をよりリッチなものにできるコミュニケーション機能を充実させることを特に重要視しているという。

アプリを起動するとファーストスクリーンにバッテリーメーターが表示される。下側にはNC機能、イコライザー、音場設定のショートカットが設けられているが、それぞれ機能別のメイン画面にホーム画面を左から右へスワイプして遷移できる。

アプリのファーストスクリーン。バッテリー残量を表示

NC機能の効果もグラフィカルなUIを見ながら直感的に行える。サークル状のコントローラーに表示されるオレンジの円を、小さくすればNCのレベルが最大になり、大きくしていくことで「ストリートモード」に切り替わり、環境音の集音レベルが高まっていく仕組みだ。

サークル状のUIのオレンジのラインを大小することでNCの効果をコントロールできる。円を小さくするとNC効果が強くなる

円を大きくすると「ストリートモード」になり、周囲の音がヘッドホンを着けたまま聞こえるようになる

イコライザーや音場設定も、ユニークなUIを見ながら片手で簡単に操作ができ、ヘッドホンで音の変化をモニターしながら設定できるのが特徴だ。

ユーザーがカスタマイズした音質設定を登録しておき、さらに特定の音楽ジャンルやアーティストに「タグ付け」しておくことで、関連するジャンルやアーティストの音楽を再生した時に一発で呼び出してユーザー設定の音質で楽しめる機能もユニーク。さらにカスタマイズ設定値をアプリ経由で公開して、他のZikシリーズのユーザーと共有できるコミュニケーション機能も備える。

イコライザーのGUI

音場設定のGUI

これらのカスタマイズが面倒というユーザーには、有名アーティストがプロデュースしたプリセットをダウンロードして楽しむこともできる。ロバーツ氏は「発売時は5種類ですが、今後新しいプリセットをダウンロードして追加することもできるようになります。日本のアーティストも含めて、様々なプリセットを用意する予定なので、ぜひご期待下さい」と語る。

ユーザー任意のイコライザー設定をつくって保存できる

保存されているプリセットの一覧

著名アーティストのプリセットも用意されている

パロットが誇る最先端のデジタルオーディオ技術を惜しみなく注ぎ込んで完成したヘッドホンが「Zik 2.0」である。ロバーツ氏は「音質チューニングのパラメーターを大胆に開放したことで、あらゆるユーザーのフェイバリットに答えるサウンドをZik 2.0は提供します」と語り、新モデルの完成度の高さをアピールした。

この記事をシェアする

  • Twitter
  • FaceBook
  • LINE

関連リンク

トピック