3階にドラッグコーナーが登場
【販売店レポート】ヨドバシAkiba、インバウンド完全回復。サブカル関連玩具や理美容家電、フルワイヤレスイヤホンが人気
■大きな追い風となる「円安」
平日も日中から多くのお客様で店内が活気を見せるヨドバシカメラ マルチメディアAkiba。コロナ禍には秋葉原の街そのものがすっかり勢いを失っていたが、街にもヨドバシAkibaにも活気ある光景が戻ってきた。その一翼を担う重要な存在がインバウンドのお客様だ。
新型コロナ以前には圧倒的な数で存在感を示していた中国からの団体客が戻り切らない状況だが、同店副店長・松本勝士氏によれば「来店される訪日外国人のお客様の数、そして購入される金額ともに新型コロナ以前の水準まで回復してきています」とのことで、今年に入り急激な上昇カーブを描いている。客層は韓国・台湾をはじめとするアジア、中東、欧州など世界各国に拡がり、「新型コロナ前とは印象が大きく変わっています」と語る。
日本政府観光局によると、2023年8月の訪日外国人数は2,156,900人、2019年同月(2,520,134人)比で85.6%にまで回復した。中国を除く総数では 2019年同月比 118.0%と新型コロナウイルス感染症拡大前の実績を上回っているが、一方で、中国は2019年同月比で36.4%となる364,100人にとどまっている。
インバウンド客の回復は、新型コロナによる制約がなくなったことが一因であることに間違いはないが、松本氏はそれ以上に後押ししている材料として、大きく円安が進行した為替の影響を挙げる。「インバウンド客の消費意欲は大変強いものがあり、高価なものほどよく動いています」と指摘する。
■高価なものほどニーズが高い
かつての“インバウンド消費”と言えば中国人団体客による炊飯器の爆買いシーンなどを思い浮かべるが、現在の売れ筋はどうなのか。同店の幅広い取扱商品全体で見ると、キャラクター関連の玩具やプラモデルが高い人気を集めており、「サブカルチャーに関心の深いお客様がとても多い」と注目する。
日本のサブカルチャーは国境を越えた人気の高さを誇り、お盆に東京ビッグサイトで開催され、2日間で26万人もの来場者を集めた世界最大級の同人誌即売会「コミックマーケット」にも、「コミケのために日本に来た」という訪日外国人の来場者が数多く見受けられた。
8月25日に3階へ新たにコーナーを開設したドラッグコーナーは、訪日外国人客からも人気が高い。「3階にはこのドラッグをはじめとして、化粧品、理美容家電、カメラ、時計などの売り場が揃っており、言わばインバウンドの拠点となるようなフロアです」と説明する。
一方、家電に目を移すと、調理家電に対する関心が大きく、炊飯器もコロナ前のように一人で何台も購入していくシーンは見られないが人気は健在だ。「中国では北の地方ではタイガー、南の地方では象印といったように、地域により人気のブランドが異なる傾向が見受けられます」という。
理美容家電では美顔器、ドライバー、シェーバーなどの引きが強い。「昔は理美容家電と言えば、それこそイコール中国のお客様といった印象が強い商品でしたが、現在は幅広い国のお客様から需要があります」。
イヤホン・ヘッドホンではフルワイヤレスが売れ筋の中心。指名が多いのはボーズやJBL、日本のブランドではソニーとオーディオテクニカの人気が高いという。正式発表前から大きな話題を集めて登場が待望されていたソニーの新製品「WF-1000XM5」は訪日外国人からも高い人気を集めている。
カメラのコーナーも訪日外国人客の姿が目につく。高価な交換レンズへの関心が高く、また、最近人気が急上昇しているのがドローン。取材時も売り場を訪れた3人の訪日外国人客が熱心に品定めをしていた。「円安によるお買い得感が強く、いずれの売り場でも、高価なものほどニーズが高い傾向が見受けられます」と高額商品が人気を集める。中国人団体客の回復の遅れが気にならないくらいに円安効果が大きくものを言っている。
■欲しいものがその場にあることがなにより大事
今後の動向が注目される中国人からの団体客だが、新型コロナ感染拡大で2020年1月以降中止されていた日本への団体旅行は、3年半ぶりに今年8月10日に解禁された。しかし、2週間後の8月24日に東京電力がALPS処理水の海洋放出を開始。このことが影響しているのか、足踏み状態で現時点では増えていない。松本氏も「果たして影響がどこまで長引くのか」と注目する。
しかし、中国からの団体客抜きでも、インバウンド消費の足元は好調に推移。もともと秋葉原が訪日外国人客からの人気が高いエリアだったこともあり、ヨドバシカメラ マルチメディアAkibaでは、店頭に立つ約400名のスタッフのうち約1割が、何らかの外国語への対応力を備えていることは大きな強み。
売り場では個々の商品にPOP等で多言語化して対応することは特になく、お客様の要望に対して販売員がきめ細かに応える。ポケトークも活用しているという。レジカウンターは約2割が免税処理に対応したものとなっている。
「訪日外国人客の日々変化していく嗜好を捉えるために、売上データとにらめっこして、スピード感を持って品揃えに反映させています。お客様からの問い合わせや直に接する販売スタッフからの声も貴重な情報源。短期滞在のお客様になりますから、欲しいものがその場にあることがやはりなにより大事になります」と力を込める。
訪日外国人客からも高い人気と信頼を集めるヨドバシカメラ マルチメディアAkiba。新たにドラッグコーナーも登場。さらに拡大が予想されるインバウンドのビジネスにおいても、“お買い物の一大拠点”として高い存在感を見せつける。