ガジェット着陸地点は、事前調査では湖があったと推測されたものの…
火星探査ローバーPerseverance、着陸後1年間のデータから「液体の水」の痕跡は見つからず
NASAのローバー「Perseverance(パーサヴィアランス)」は、2021年2月19日に火星のジェゼロクレーターに着陸し、現地の探査を始めた。ジェゼロクレーターを着陸地点に選んだ理由は、事前の調査からクレーター内に液体の水による湖やそこに流れ込む川があったと推測できる証拠があったからだった。液体の水が存在したなら、そこに生命がいた、またはいる可能性も高まる。
しかし、11月24日に発表された3つの論文は、まだPerseveranceが液体の水が豊富にあったというに足る証拠にはまだ出会えていないことを示していた。そしてこれまでにPerseveranceが探索した範囲内では、かつて水が露出していたとしても、それが非常に限定的で、ほぼ凍結していた可能性が高いことが示唆されている。そこに湖があったことを示す証拠が今後も出てこないとは限らないが、今のところは、そこは生命が存在できた環境ではなかった可能性が高いということだ。
Perseveranceに搭載される2つのレーザー、4つの分光計を備えたSuperCamや、X線分光器のPIXL、紫外線ラマン分光法などで有機物や鉱物を分析するSHERLOCといった機器をつかったさまざまな分析の結果からは、このローバーが調べられる範囲で調べた火星地表の岩石の多くは風に晒されることで形成され、大気や放射線によって化学変化を起こした可能性がある。また衝突によってできたさまざまな破片も散らばっている。
しかし、それらの物質がいずれも水が存在した痕跡を示しているかと言えば、答えはイエスでもありノーでもあるようだ。たとえば、重要な発見のひとつは、火山性の地質層から、かんらん石と呼ばれる鉱物が豊富な部分が発見されたこと。かんらん石は地球では地殻の下の深いところにあり、水に溶けたり変質しやすい性質がある。火星で見つかったかんらん石は、その1/4〜半分が、水にさらされて変化していることがわかった。
しかし、それは逆に言えば、残りの半分以上はまだ水によって性質が変化していないとも言える。つまりこの岩石が水にさらされた期間は短かかった、もしくは、水が氷点下に近いような非常に冷たい環境であった可能性を示しているのだ。
一方、岩石中の他の堆積物は、より新しい時代に、冷たく高濃度の塩分を含む水が形成に関わったようにみられる。塩分を多く含む水にはかんらん石を溶かす力はない。そのため、塩水は岩石の隙間に、硫酸塩や過塩素酸塩を含む沈殿物を形成するにとどまった。これらの物質は水がそこにあったことを示してはいるが、湖のような大量の水にさらされた場合は溶けて消えてしまう。NASAのチームは論文のひとつを「クレーターの底の領域で、湖のような堆積物の有力な証拠を見つけられなかった」と記して締めている。
ただ、もし湖がごく短期間だけ存在したり、存在した期間の大半で完全に凍結した状態だったという可能性も考えられないわけではない。もしくはPerseveranceは湖の堆積物が浸食されたあと、湖底にあった岩石や、湖が干上がって消えた後で降り積もった火山性物質しか見ていない可能性もある。
かんらん石があるということは、微生物がその周辺環境から養分を得られなかったため、堆積物に存在した生命は鉱物とは密接に関連していなかったことを示している。ローバーは地表の物質から生命活動の証拠にもなり得る有機化学物質の痕跡も発見している。だが、その物質は生命活動以外でも生成されることがあり、やはり決定的な証拠にはならない。
今後も、Perseveranceはまだまだ火星の地表を走り、さまざまな分析を行うはずだ。それによって、少なくともジェゼロクレーターの歴史が少しずつ解明されていくことは間違いない。そしてあるとき、ひょんなことから小さな生命の痕跡が見つかったりすることもあるかもしれない。
Source: Science
via: Space.com, Ars Technica
しかし、11月24日に発表された3つの論文は、まだPerseveranceが液体の水が豊富にあったというに足る証拠にはまだ出会えていないことを示していた。そしてこれまでにPerseveranceが探索した範囲内では、かつて水が露出していたとしても、それが非常に限定的で、ほぼ凍結していた可能性が高いことが示唆されている。そこに湖があったことを示す証拠が今後も出てこないとは限らないが、今のところは、そこは生命が存在できた環境ではなかった可能性が高いということだ。
Perseveranceに搭載される2つのレーザー、4つの分光計を備えたSuperCamや、X線分光器のPIXL、紫外線ラマン分光法などで有機物や鉱物を分析するSHERLOCといった機器をつかったさまざまな分析の結果からは、このローバーが調べられる範囲で調べた火星地表の岩石の多くは風に晒されることで形成され、大気や放射線によって化学変化を起こした可能性がある。また衝突によってできたさまざまな破片も散らばっている。
しかし、それらの物質がいずれも水が存在した痕跡を示しているかと言えば、答えはイエスでもありノーでもあるようだ。たとえば、重要な発見のひとつは、火山性の地質層から、かんらん石と呼ばれる鉱物が豊富な部分が発見されたこと。かんらん石は地球では地殻の下の深いところにあり、水に溶けたり変質しやすい性質がある。火星で見つかったかんらん石は、その1/4〜半分が、水にさらされて変化していることがわかった。
しかし、それは逆に言えば、残りの半分以上はまだ水によって性質が変化していないとも言える。つまりこの岩石が水にさらされた期間は短かかった、もしくは、水が氷点下に近いような非常に冷たい環境であった可能性を示しているのだ。
一方、岩石中の他の堆積物は、より新しい時代に、冷たく高濃度の塩分を含む水が形成に関わったようにみられる。塩分を多く含む水にはかんらん石を溶かす力はない。そのため、塩水は岩石の隙間に、硫酸塩や過塩素酸塩を含む沈殿物を形成するにとどまった。これらの物質は水がそこにあったことを示してはいるが、湖のような大量の水にさらされた場合は溶けて消えてしまう。NASAのチームは論文のひとつを「クレーターの底の領域で、湖のような堆積物の有力な証拠を見つけられなかった」と記して締めている。
ただ、もし湖がごく短期間だけ存在したり、存在した期間の大半で完全に凍結した状態だったという可能性も考えられないわけではない。もしくはPerseveranceは湖の堆積物が浸食されたあと、湖底にあった岩石や、湖が干上がって消えた後で降り積もった火山性物質しか見ていない可能性もある。
かんらん石があるということは、微生物がその周辺環境から養分を得られなかったため、堆積物に存在した生命は鉱物とは密接に関連していなかったことを示している。ローバーは地表の物質から生命活動の証拠にもなり得る有機化学物質の痕跡も発見している。だが、その物質は生命活動以外でも生成されることがあり、やはり決定的な証拠にはならない。
今後も、Perseveranceはまだまだ火星の地表を走り、さまざまな分析を行うはずだ。それによって、少なくともジェゼロクレーターの歴史が少しずつ解明されていくことは間違いない。そしてあるとき、ひょんなことから小さな生命の痕跡が見つかったりすることもあるかもしれない。
Source: Science
via: Space.com, Ars Technica