ガジェットiPhone生産が労働集約的なため
アップルの中国依存、「解消に20年以上かかる」可能性
アップルはiPhone等の生産拠点および市場として、長年にわたり中国との関係を深めてきた。だが、この関係が米上院議員らに問題視され「維持できない」状態となりつつも、解消するのに20年以上かかるとの予想が報じられている。
ここ数年続いた新型コロナ禍は、アップルがハードウェア製造拠点の大半を中国に置いているリスクを露わにした。世界最大のiPhone組立工場で発生した混乱は、同社に10億ドル/週もの損害をもたらしたと推定されている。
そんな状況のなか、米国内でもアップルの中国依存への批判は高まっている。英Financial Timesによると、米上院では同社が事実上、中国共産党の言いなりになっており、この関係をそのまま続けることは看過できないとの、超党派の懸念があるとのことだ。
たとえば情報特別委員会の委員長である民主党のマーク・ウォーナー氏は、アップルが(iPhone組立工場での労働者の抗議を)支援しなかったばかりか、北京(中国共産党)の要求を受け入れてAirDropの使用を制限したとの趣旨を発言。これらは共産党の「言いなりになる」ことも同然だと指摘したという。
また共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は、アップルが中国に依存しすぎて、米国の基本的な価値観を表現できなくなっていると批判。「アップルと中国との関係は、経済的にも道徳的にも耐え難いものだ」と述べているという。
そんなアップルにとっての活路は、インドに製造拠点の移転を加速していることだろう。2025年までに全iPhoneの4分の1がインドで製造される可能性がある(現状では5%未満)とのアナリスト予測や、2027年までに半分まで比率が上昇するという分析もあった。
米Bloombergは、インドに製造拠点を移そうとする目論見は、約14社のサプライヤーがインド政府の許可を得て、事業を拡大する形で後押しされたと報じている。もっとも、これらサプライヤーが中国企業であることがネックになるという。例に挙げられているLuxshare(AirPodsやiPhoneの組み立て)もレンズメーカーのSunny Opticalも、ともに中国の民間企業である。
インドと中国間には国境紛争をめぐる激しい対立があり、政治的な緊張も進展の妨げになっている。アップルがインド当局に提出したサプライヤーのリストは約17社だが、そのうち数社は断られ、少なくとも1社は中国政府との密接な関係がその理由だったとのことだ。
もう1つの障壁は、最終製品の組立がいまだに非常に労働集約的なことだ。iPhoneの生産ラインは、中国ブランドのAndroidスマートフォン生産と比べて、10倍以上の労働力が必要だという。アップルの厳しい品質基準のため、中国製Androidであれば100人で済むところ、iPhoneは1200人もの人手が掛かるそうだ。
さらには中国での人件費が高騰していることもあり、アップルは長年Foxconn(iPhone組立を請け負う最大のパートナー企業)と最終組立の自動化に取り組んでいる。「ほんの一握りの従業員でiPhone工場全体を運営することを目指している」と報じられたのは、すでに5年以上も前のことだ 。
このプロジェクトに関わったアップルの元エンジニアによると、同社は少なくとも2014年以降、中国国外に事業を移転しようと努力を続けたが、ほとんど進展が見られないという。「中国は、あと20年は労働と生産を支配し続けるだろう」とのことだ。
米Google等はスマートフォンの主要な生産拠点をベトナムに置いているが、アップルの移転先がもっぱらインドに偏っているのは、人海戦術的に大量の人手が必要なためだろう。同社の徹底した品質管理へのこだわりと中国の豊富な労働人口とが固く結びついている以上、今後も米中政府の板挟みとなり、危うい綱渡りが続くのかもしれない。
Source: Financial Times, Bloomberg
via: 9to5Mac
ここ数年続いた新型コロナ禍は、アップルがハードウェア製造拠点の大半を中国に置いているリスクを露わにした。世界最大のiPhone組立工場で発生した混乱は、同社に10億ドル/週もの損害をもたらしたと推定されている。
そんな状況のなか、米国内でもアップルの中国依存への批判は高まっている。英Financial Timesによると、米上院では同社が事実上、中国共産党の言いなりになっており、この関係をそのまま続けることは看過できないとの、超党派の懸念があるとのことだ。
たとえば情報特別委員会の委員長である民主党のマーク・ウォーナー氏は、アップルが(iPhone組立工場での労働者の抗議を)支援しなかったばかりか、北京(中国共産党)の要求を受け入れてAirDropの使用を制限したとの趣旨を発言。これらは共産党の「言いなりになる」ことも同然だと指摘したという。
また共和党のジョシュ・ホーリー上院議員は、アップルが中国に依存しすぎて、米国の基本的な価値観を表現できなくなっていると批判。「アップルと中国との関係は、経済的にも道徳的にも耐え難いものだ」と述べているという。
そんなアップルにとっての活路は、インドに製造拠点の移転を加速していることだろう。2025年までに全iPhoneの4分の1がインドで製造される可能性がある(現状では5%未満)とのアナリスト予測や、2027年までに半分まで比率が上昇するという分析もあった。
米Bloombergは、インドに製造拠点を移そうとする目論見は、約14社のサプライヤーがインド政府の許可を得て、事業を拡大する形で後押しされたと報じている。もっとも、これらサプライヤーが中国企業であることがネックになるという。例に挙げられているLuxshare(AirPodsやiPhoneの組み立て)もレンズメーカーのSunny Opticalも、ともに中国の民間企業である。
インドと中国間には国境紛争をめぐる激しい対立があり、政治的な緊張も進展の妨げになっている。アップルがインド当局に提出したサプライヤーのリストは約17社だが、そのうち数社は断られ、少なくとも1社は中国政府との密接な関係がその理由だったとのことだ。
もう1つの障壁は、最終製品の組立がいまだに非常に労働集約的なことだ。iPhoneの生産ラインは、中国ブランドのAndroidスマートフォン生産と比べて、10倍以上の労働力が必要だという。アップルの厳しい品質基準のため、中国製Androidであれば100人で済むところ、iPhoneは1200人もの人手が掛かるそうだ。
さらには中国での人件費が高騰していることもあり、アップルは長年Foxconn(iPhone組立を請け負う最大のパートナー企業)と最終組立の自動化に取り組んでいる。「ほんの一握りの従業員でiPhone工場全体を運営することを目指している」と報じられたのは、すでに5年以上も前のことだ 。
このプロジェクトに関わったアップルの元エンジニアによると、同社は少なくとも2014年以降、中国国外に事業を移転しようと努力を続けたが、ほとんど進展が見られないという。「中国は、あと20年は労働と生産を支配し続けるだろう」とのことだ。
米Google等はスマートフォンの主要な生産拠点をベトナムに置いているが、アップルの移転先がもっぱらインドに偏っているのは、人海戦術的に大量の人手が必要なためだろう。同社の徹底した品質管理へのこだわりと中国の豊富な労働人口とが固く結びついている以上、今後も米中政府の板挟みとなり、危うい綱渡りが続くのかもしれない。
Source: Financial Times, Bloomberg
via: 9to5Mac